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働く人のゴカイ インタビュー

クロストーク:管理者 野呂泰広さん×保護者 松原みかさん

取材:2017年1月13日

管理者 野呂泰広さんの写真 職員プロフィール
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持つ5歳と2歳の父
大学卒業後、一旦は企業へ就職し営業職に。その後、介護職へ転職した。
保護者 保護者 松原みかさんの写真 保護者プロフィール
娘の朱里さんが同朋大学社会福祉学部に在学中の2年生。
栄養士の資格を持っているが、これまで介護業界に関わったことは無い。

介護職の現実と不安を本音でトーク

野呂 泰広さん 松原 みかさん

松原:
今日は介護職の現場のことを教えていただきたいと思っています。野呂さんが介護職に就いた理由と経歴、現在はどのようなお仕事をされているのか教えていただけますか。
野呂:
私は文系の4年制大学を出て工作機械の営業職に就きました。なぜ介護業界に転職したかというと、元々人と関わることが好きで、人のためになる仕事がしたかったということ。行政で介護保険を担当していた父から、介護業界に向いているんじゃないかとのアドバイスをもらい、興味を持ったことがきっかけです。それまで関心すらなかったのですが、現場を知るために飛び込みでボランティアに行き、そこで介護職員さんや利用者さんの様子を見て、こういう仕事もいいなと思いました。働きながら社会福祉士の夜間学校に通い資格を取得し、最初は老健で相談員をやりました。しかし現場経験が少なかったため原点に戻ろうと介護現場に2年勤めました。今の施設に異動し生活相談員を4年、副施設長を経て施設長になり4年目です。
松原:
介護職は体がきついわりにお給料が安いというイメージですが、実際はどうですか。
野呂:
私も就職活動をやっていて思ったんですけど、そんなにむちゃくちゃ安いわけでもないです。例えば私は介護職員のときに一人暮らしをしていて、貯金もできていました。厳しいかどうかというのは、その人の生活水準、何をしたいかによって違うと思います。松原さんは娘さんが同朋大学の2年生に在学中と伺いました。娘さんから介護の道に進みたいと聞いたときは、どんなお気持ちでしたか。
松原:
主人も私も本人の決めた道なので反対はしませんでした。娘は中学2年生の時、職場体験に行ったときから介護の職に就くと決めていて、進学先も自分で決めていました。同朋大学のオープンキャンパスに行きたいと言われて、付いて行ったという感じです。介護の現場を知らないため、きつくてお給料が安いイメージがありましたので、今施設長さんのお話をうかがい、そうでもないと安心しました。

夜勤やキャリアアップの現状はどうなっていますか(松原)

松原:
野呂さんはお父さんのアドバイスがヒントになったようですが、介護職に就きたいとの話をした際、ご家族の反応はどうでしたか。
野呂:
母親が商売をしていて小さいときから店番をやったりしていたものですから、人と接するのが好きでしたし、この仕事に向いていると両親も認識していたのだと思います。適性といいますか、その子に合っている職種に就いた方が長く続くと思います。松原さんの娘さんのように、学生の段階でこの仕事に就きたいと思える仕事があることは幸せです。そういう志を持った学生さんが福祉のイメージを変えていって欲しいです。松原さんは具体的に介護の現場のどういうことが不安だと思われていますか。
松原 みかさん
松原:
認知症の方は夜間に徘徊などするので夜勤は大変ではないかと心配です。夜勤の回数も多いのではないですか?
野呂:
施設によって違いますが夜勤は月に4回か5回。トイレに行きたい方を手伝ったり、おむつの交換をしたりします。基本、夜にバタバタ動くということは少ないですね。認知症の方のお話が出ましたが、在宅でご家族が介護しているときは、どうしても今までとは違う親や祖父母の姿を受け入れがたいということがあります。夜中に起きてきてゴソゴソしたり、急に歩きだすといったことをするとイライラしてしまいヒステリックに責め立ててしまうことも少なくありません。しかし認知症は病気です。介護職員は認知症の方の個人の尊厳を認め、徘徊にも理由があるかもしれないと考えます。もしかしたらトイレに行きたくてもトイレという言葉が出てこないのかもしれない。赤ちゃんが泣いて訴えるのをお母さんは何だろう?と予測を立てますよね。介護職員もそうなんです。普段ずっとそばで見ているので予測できる。例えば3日間便が出ていなかったら腹痛かもとか、面会したばかりだから家族が恋しくて探しているのか、といったことです。徘徊と一言でくくってしまいがちですが、理由があるかもしれないと考えるのは介護職としての専門性。認知症の方の行動障害に、どのように対応するかは仕事の一つです。
松原:
お休みやキャリアアップに関してはどうですか。
野呂:
休日が少ないイメージかもしれませんが、うちの場合は月9回休みがあります。ただ平日休みなので抵抗がある人はいるかもしれません。でも私も土日休みの業界から平日休みになりましたが、どこに行ってもすいているので、平日休みはいいですよ。キャリアアップに関しては、例えば未経験、無資格でも働くことはできます。介護職員初任者研修を取得し、3年間実務経験を積み介護福祉士実務者研修が修了すると介護福祉士の国家試験を受験することができます。その後、介護支援専門員、社会福祉士など経験を積みながら自分のやりたい道で必要な資格を取得してステップアップしていくことが可能です。福祉系の大学を出て社会福祉士の資格を取れば、就職後すぐに相談員になれますが、どこの施設もまずは現場を経験してくださいと言うと思います。現場を経験することによって専門職として色々なアドバイス、より良い選択ができると思います。
松原:
資格を取ってステップアップするに従い、お給料にも反映されますか。
野呂:
資格手当が付きますし、職種が変われば内容も変わってくるので仕事の幅が広がります。

やりがいを感じながら、一生続けられる職業です(野呂)

松原:
野呂さんは転職後、挫折や悩んだことはありますか。
野呂:
人間関係がうまくいかないとき、仕事に行き詰まることもあります。介護職員の場合、どうしても利用者さんが亡くなったときショックを受けます。中には自分だけでは乗り越えられない職員もいるので、利用者さんを看取った後、グリーフケアといってチームで集まって看取りの感想を話し合って介護職員の辛く悲しい気持ちをお互いに認め合い、チームで共有する取り組みをしています。先輩職員や上司がチームでどう支え合っていくかを考えていくことができるのはこの業界ならではかもしれません。
野呂 泰広さん
松原:
娘と同年代の経験の少ない職員さんの様子はいかがですか。最近の若者の特徴などありますか。
野呂:
怒られ慣れていないせいで傷付きやすいように思います。なぜ駄目なのかを分かるように説明しないと納得しない。納得できないと辞めてしまうので、リーダーたちには言葉を乱暴に使ってはいけないと言っています。松原さんの娘さんは介護の仕事に向いていますか。
松原:
障害者施設でのアルバイトをしているのですが楽しそうですし、資格取得にも意欲を持っています。ただ、私の娘が人のお世話なんてできるのかと心配です。
野呂:
介護の仕事は食事、入浴、排泄のお手伝いだけではありません。施設や自宅で生活する利用者さんが残りの人生をどう自分らしく生きるか、どう自己実現してもらうかを考え、お手伝いするのが仕事です。私の経験ですが、長く入院していらっしゃる方が100歳の誕生日は自宅に帰りたいと希望していました。ご家族は病院生活が長いので食事や排泄介助もできないと悩んでいらっしゃった。そこで自分がお手伝いしようと看護師さんやご家族と自宅の机の高さや食事内容も打ち合わせして誕生日会をやったんです。親類も遠くから駆け付けてくれて、ご本人もすごく喜んでいらっしゃった。その方が亡くなった後もご家族からも感謝されました。身体介助だけではなく、そういったことが実現できると介護の仕事は面白さが分かってもらえると思います。
松原:
やりがいのあるお仕事ですが、責任も重いように感じます。
野呂:
そうですね。でもあまり構えず興味や関心があり、人の役に立つ仕事がしたいという思いがある方に来ていただきたいですね。例えばお腹がすいたらご飯を食べる、トイレに行きたくなったらトイレに行く。それって普通の感覚ですよね。その感覚で目の前にいるお年寄りと接する仕事です。知識や技術が必要ですが、特別難しい仕事ではありません。人の人生に寄り添う仕事でもあるので社会勉強、人生勉強になると思いますし、自分の未来を見るわけじゃないですか。こういう経験はほかの職業ではなかなかできないと思います。
野呂 泰広さん 松原 みかさん
松原:
今日、お話をうかがって、思っていたより待遇もしっかりしていますし、やりがいのあるお仕事だということが分かりました。
野呂:
特に女性は出産で辞めたとしても復帰しやすい。お給料をもらいながら社会貢献、地域貢献ができる仕事です。今後の高齢社会の中でも重要な位置を占め、明るい未来のある業界であると思います。
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