取材:2019年3月5日
母親が介護施設の厨房で働いていて、自分は学校が終わると帰るのは近所のお婆ちゃんの家。母親の勤め先にもたまに遊びに行ったりしていたので、子どものころからお年寄りは好きでした。高校生になって進路を決めるとき、もともと家を建てたり、物をつくることに興味があったので大工になろうと思っていたのですが、先生から「何かをつくるのが好きなんだったら、お年寄りの笑顔をつくってみちゃどうだ?」と言われて。お年寄りが好きだし、それもありなのかなーと思って福祉の専門学校に進学したのが介護職になったきっかけです。
専門学校に入学するまで、介護はお年寄りのお世話をするだけだと思っていたのですが、実際はいろいろな知識が必要で、覚えることもたくさんあるということが分かりました。でもそこが面白く、実習でお年寄りと触れ合ってみて、やっぱり物を作るのではなく人、しかもお年寄りと関わっていきたいという思いが強くなりました。卒業と同時に介護福祉士の資格を取得し、今働いている施設に就職して10年になります。
従来型特別養護老人ホームで約30人を担当していますが、日本拳法をずっとやっていたので体力には自信があり、肉体的な苦労はあまり感じません。ただいろいろ考えながら動かなければいけないところが学生のときの実習との違いです。この仕事は大変なこともありますが、利用者さまのことを考えて行動したことが良い変化に繋がり、結果に結びつくと達成感があり、介護職に就いて良かったと思います。

利用者さまから「ありがとう」と言ってもらえるときも、やっぱり嬉しいですが、中には言えない方もいらっしゃいます。その方の思いをどう汲み取るか。上手に汲み取ることができたときは、こちらもうれしいです。でも汲み取ることができないことも多く、もどかしさと一緒に仕事をしている感じもあります。
現在フロアのリーダーで、新人を指導する立場でもあります。職員をまとめる立場になって心がけていることは、自分が気になったことはなるべくその場で言うということです。時間が経ってから言っても響かなかったり、どんな対応をしたか本人が忘れてしまうこともありますから。自分のキャリアアップに関しても考えなければならない年齢ですし、いつまでも現場にいることは無理だとは分かっているのですが、今のところはまだ現場にいたいという気持ちが強いです。キャリアアップするために資格を取ると、多分他の業務が増えてお年寄りと接する時間が少なくなってしまいます。自分はプランを立てて他の人にやってもらうより、立ててもらったプランを実践したい。いつかは資格を取ってステップアップしなければいけないと分かってはいますが、でもまだいいかなーと思っています。
介護職にはキツくて給料が安いイメージがあると聞きますが、自分は全くそう思いません。給料も残業ばかりの工場勤務の友達と比べれば少ないですが、普通に稼いで家も建てました。勤務も8時間で終わりますし休みも平均月に10日あります。子どもと触れ合う時間もちゃんとあるので、まったく3Kだとは思いません。

介護職に就こうかどうか迷っている人がいたら、とにかく1回見に来れば?と声を掛けたいです。ここの施設もそうですが、どの事業所も人手は欲しいので、見学を断るところは無いと思います。見学や体験をした上で介護の仕事に就こうと決めたら、あとはどの施設や事業所が自分に合っているか。施設や事業所によって考え方や、やり方が違うので、事業所の方針と、自分がどういう介護職になりたいのかがマッチしているかどうか。そこはじっくり見極めた方がいいと思います。自分の考えに近い事業所を見つけられれば、やりたい介護が実現できる可能性も高いですし、長く勤めることもできると思います。