取材:2022年8月2日
私が物心ついたときから祖母が要介護状態で姉に知的障害があったこともあり、「福祉」に関係した仕事に就きたいと子どものころから思っていました。また、父親が小学校3年生のときに他界して手に職がほしかったので、高校進学の際は興味を持っていた介護の仕事に進もうと日本福祉大学付属高校に進学しました。卒業後は日本福祉大学中央福祉専門学校で学び、介護福祉士の資格を取って介護老人保健施設(老健)に就職しました。
老健では3年間、介護職員として働きました。ただ、老健は自宅と急性期病院との中間施設という位置付けです。一生懸命利用者さまのことを思って対応していても最期の時間を一緒に過ごせないことや、元気になったらそこで関係が終わってしまうことが寂しいと感じていました。特別養護老人ホーム(特養)であれば、終の棲家として人生の最期まで入居者さまと関わらせていただける。それで椎の木福祉会に転職し、今に至ります。
椎の木福祉会では介護職員を経験したあと、生活相談員としても経験を積み、今は介護課長に就任しました。ケアの質向上に関する取り組みやスタッフの育成などの管理・マネジメント業務が主な仕事です。
介護職員、生活相談員を経験したことで、両方のやりがい、魅力を感じることができました。介護職員は目の前にいる入居者さまのお手伝いをすることで、その場で直接「ありがとう」の言葉をもらえます。入居者さまの一番近い存在でいられることが、自分のやりがいになっていました。介護に関する他の職種と比べても、直接的に関われる点が介護職員の一番の魅力であると思います。一番近い所で入居者さまの暮らしを支え、笑顔を感じることが出来る仕事です。
生活相談員になってからは、入居者さまや家族さまの想いを受け止めて、各専門職同士を繋ぐ多職種連携の要としての役割を期待されていました。対外的には行政、社会福祉協議会、他事業所、病院など様々な関係機関との調整が主な仕事になります。また、介護保険制度をはじめ、色々な制度を理解することも求められます。ベッドコントロールを通じて経営についても考える機会があり、介護職とはまた違った経験を積むことができました。「施設の顔」として、大事な役割を任されている充実感もあり、そこも大きなやりがいでした。
介護職と生活相談員という二つの職種を経験したことで色々と見識が広がったと思います。入居者さまの生活や想いを支える存在は決して一人ではありません。多職種が連携し、チームとして機能してこそ、はじめて質の高いケアを提供することができるというチームケアの大切さを実感しました。また、「ご家族さまの視点」でもケアを考えられるようになったことも大きいです。もちろん一番は入居者さまご本人の気持ちですが、ご家族さまの「大切な父親や母親を預けている」という気持ちにも寄り添うことがとても大切です。このような考え方は、どちらか一つの経験では得ることが出来なかったと思います。今は介護課長として、スタッフの管理を任せられる立場になりましたので、こういった貴重な経験をしっかりとスタッフに伝えていきたいと思っています。
介護課長になって1年半が経過しました。これからも高い志を持って仕事に励んでいきたいと思っています。質の高いケアで入居者さまの暮らしを支え、ご家族さまも安心して大切な方を預けられることができるような施設にしていきたいです。また、スタッフにとっても働きやすい環境を作っていくことも使命だと思っています。個人としては、さらに上のポストである、法人本部の統括介護長や介護副長といった立場も目指しています。
世間には物を作る仕事や商品を販売する仕事などさまざまな仕事、職種があります。その中でも介護の仕事は利用者さまから直接「ありがとう」と言ってもらえる仕事です。人の役に立たない仕事なんて存在しないかもしれませんが、「誰かの支えになっている」「誰かから感謝される」ことをダイレクトに実感できる仕事です。私自身、親から、介護の仕事は給料が安くて家族を守れないからやめておけと言われたことも正直ありました。でも10年前とは違い、現在では他の職種と比べても遜色無い給料水準になっています。結婚して子どもを育て、家も持つこともできます。もし男性で給料に関して心配しているようでしたら、そこは伝えたいと思います。福祉=給料が安いなんていうイメージは古いと思います。もちろん会社によって給与体系は異なりますので、就職活動の際にしっかりと条件などの説明を聞くことも大切です。
福祉の仕事に興味はあるけど経験がなくて一歩を踏み出せない方、やりがいをもって働きたい方、人の役に立ちたいなんて漠然とした気持ちでも大丈夫です。介護の仕事を候補に挙げてもらえたらいいかなって思います。全くの未経験でもうちの法人のように育成体制が整っているところもありますので、ぜひ検討してみてください。