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働く人のゴカイ インタビュー

社会福祉法人昌明福祉会 グループホーム敬親庵 町上貴也さん

取材:2023年2月9日

自分の学びも多い、生活支援の仕事

 介護職を目指したきっかけは、テレビのドキュメンタリー番組で認知症支援について知ったことです。「自分がやりたいのは、これだ!」と思いました。
 それは、インドから帰国して間もない頃のことでした。僕は大学を卒業してワーキングホリデーでニュージーランドに行き、その後、海外で仕事をしたいと、インドの農村開発プロジェクトに5年間携わったんです。インドでは貧困対策や生活向上のため、資金繰り、物品調達、現地職員のマネジメントなどを行っていました。5年後に帰国し、やれることがないなと思っていた時に、認知症支援に出会ったのです。農村の生活支援も、高齢者の自立支援も、“支援”というテーマは同じ。「本当の支援とは?」を考えるきっかけにもなりました。

町上貴也さん

 そして、番組で取り上げられていた名古屋市内のグループホームで3年間しっかりと経験を積んだ後、現在勤める昌明福祉会に入職し、名古屋市港区のグループホームで働いています。この施設を選んだのは、自分が生まれ育ったコミュニティーの高齢者を支援したいと思ったからです。地域の中で生活し、仕事し、地域とつながる。それを大切にしたいのです。
 地域の中で生きたいと思うようになった理由の一つは、インドで目にした光景にあります。家ではおじいちゃんやおばあちゃん、小さな子供たちのいる大家族が一間で暮らし、家族のつながりも、周りの人や地域との関わりも強い。とても人間的な暮らしに多くを学びました。
 今、仕事で魅力を感じるのも、地域の中で助け合いの風景を見られることです。例えば、公共交通機関で利用者さんに席を譲ったり手を貸してくれたりすると、周囲の人がサポートしてくれる良い社会だなと感じます。高齢者への生活支援を通して、社会や自分自身の生活・家族について考える機会を持てるのが、この仕事の良いところだと思います。

たくさんの経験や出会いが、後から活きてくる

 実は、最初のグループホームを退職後、仕事はせず、1年間休みました。子供が生まれたばかりだったので、育児に専念したんです。毎日、オムツを替えて、ごはんを作って…。こうしたことはグループホームで当たり前にしていたので結構手際よくできました。オムツ替えというと、汚物に抵抗感を持つ人もいるかもしれませんが、僕の場合はニュージーランドでは牛舎で働き、インドでは路上に牛のふんが落ちている環境だったからか、いやな感じが全然ありませんでした。

町上貴也さん

 思わぬことが後から役立つので、可能な限り様々な経験をした方がいい。それが“生きる力”につながっていくと思います。また、いろいろな人と関わると、自分自身が変わっていきます。僕はこの仕事に就いて、よく笑うようになったし、気持ちが楽になった。これまでの経験を通して、支援するとこちらが励まされると実感しています。
 もし今、「自分のことがよく分からない」「自信がない」と思っている人がいたら、“支援”してみることをお勧めします。他人と関わることで、自分自身が見えてきたり、存在感を確認できたりするからです。介護職に就こうとは思っていなくても、人生のどこかで介護体験してみると、将来役立つ可能性もありますし、発見や気付きがあり、視野が広がるのではないでしょうか。
 また、介護職の利点は、どこでもいつでも仕事があることです。言ってみれば、人生の中で休業期間をつくることが可能な職種。子供との時間を大切にするために休業しても、社会で必要とされているので、仕事を再スタートしやすいと思います。

支援のバリエーションを増やし、新しい形の介護を

 現在、所長を務めている一方、職員と同じ目線で同じように利用者さんの生活を支援しています。協力して一緒にやることで、コミュニケーションを通してグループホームとしてのケア方針を伝え、意識付けできればと思います。その上で、改善点や今後の方向性を考えています。

町上貴也さん

 これからも介護の現場を離れる気持ちはなく、管理職を目指すというより、現場で新しい形の介護支援ができないかを検討していきたいですね。地域のシェアハウスのような“グループホームの進化形”をつくったり、家族の拡大版のような関係を地域に築いたり…支援のバリエーションを増やしたいと思うんです。例えば、地域の人がサポーターとなり、祭りやイベントなど高齢者が外へ出られる機会をつくり、そうした外出や旅行を手助けしてくれるといいな、と。この町で暮らす人たちと連携して、地域の生活支援を突き詰めていきたいと思っています。

社会福祉法人昌明福祉会 グループホーム敬親庵
社会福祉法人昌明福祉会 グループホーム敬親庵

「明るく、楽しく、自分らしく」過ごしてほしいと、高齢者のトータルケアを目指す昌明福祉会が運営するグループホーム。介護保険の地域密着型サービス「認知症対応型共同生活介護」を行う施設です。認知症の方々が少人数で共に生活をする場で、食事の準備、掃除、洗濯などをスタッフと一緒に行っています。明るいリビング、簡単な調理のできるユニット、通信カラオケなどを備え、落ち着いた家庭的な雰囲気の中で過ごすことで、認知症の進行を穏やかにしようと努めています。

問い合わせ先:社会福祉法人昌明福祉会 グループホーム敬親庵
名古屋市港区寛政町7丁目18番地

TEL:052-304-9810

FAX:052-304-9812

URL: https://www.shoumei.or.jp/f_keishinan.html

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