取材:2023年4月28日
前職はすし職人で、おすしを握ったり、接客したりという仕事をしていました。勤務体制がなかなか大変だったので転職しようといろいろ探す中で見つけたのが介護施設での仕事です。この時ポイントにしたのは、人と関わる仕事であること。加えて、休日や勤務時間が明確だったので、安心して働ける条件にも惹かれて入職を決めたんです。当時は介護の知識や経験はまったくなく、周りに介護職に携わっていた友人知人もいなくて、介護業界について本当に何も知りませんでした。いわゆる“きつい”というイメージすらなく、抵抗感も不安もなかったですね。家族も同じような感じで、介護業界への転職に対して、新しい仕事をがんばってね、という反応でした。
新しい勤務先となった介護老人保健施設では、オリエンテーションや研修を経て、入社1ヶ月以内に現場で働き始めました。するとスケジュールが過密で、いつも時間に追われていました。限られた時間内に、食事、トイレ、お風呂などの介助を完了しなくてはなりませんから。「より早く、よりきれいに」を追求してバリバリ進めていくのは大変でしたが、でもそれが楽しいところでもあります。業務を少しでも早くやって、できた時間で利用者さんと話したいと思っていましたね。同年代の男性職員もいて心強かったし、次第に仕事にも職場にも馴染んでいきました。研修制度が充実していて勉強する機会に恵まれ、実務経験を積んだ3年後には介護福祉士の資格を取得しました。
介護老人保健施設で4年ほど働いた後、もっと利用者さんとじっくり関わりたいと今の職場に転職しました。現在、ここで11年目、介護主任になって6年目を迎えます。介護主任になってからは、介護の質をより高めようと努めています。それまでにあった簡易的なマニュアルをもっと詳しく作り直したり、人材育成に力を入れたり。2、3年前からは研修制度を充実させるため、スタッフが外部研修などを受けられる体制を整え、もちろん自分自身も受講しています。目指しているのは、職員が気持ちよく働け、利用者さんがその人らしい暮らしをできる場所です。職員は十人十色なのでそれぞれの個性を活かしつつ、利用者さんが心地よく過ごせるよう取り組んでいきたいですね。
介護の仕事は、様々な利用者さんと関われるのが何にも変え難い魅力。日々笑顔で話せるような状態を保ったり、それを支えたりすることがやりがいです。年齢を重ねるとどうしても体力は落ちてきますが、コミュニケーションで心が和み、たわいもない話で笑ってくれるといいなと家族みたいな感覚で接しています。
今後の目標は、介護の仕事で収入を上げることです。「そんなことはできないだろう」という既成概念を崩したいんです。ゆくゆくは、施設長に就き、さまざまな場所で研修の講師を務めたいですし、この業界で現在では多くの法人や事業所で禁止されているダブルワークを可能にする体制が、業界全体に広がるような働きかけを行っていければと考えています。
研修の講師というのは、実は資格を取るのが楽しくて、これまでに10種類以上は取得したので、得た知識を後輩のために活かしたいという思いからです。取得資格は、認知症関連の3種類をはじめ、ケアマネジャー、訪問介護員、生活援助従事者、メンタルヘルス、さらには住環境コーディネーターやファシリテーターなど様々な分野に広がっています。これらを自分のためにもほかの人たちのためにも活用し、介護職員のキャリアアップにつなげたいと思うんです。もちろん、知識があると現場でも様々な状況に対応できます。感情論ではなく、裏付けのしっかりした根拠で判断することが大切です。
介護の仕事や業界をあまり知らない若い世代の人たちに伝えたいことは、「今の介護は楽しい」ということ。以前は“きつい”という側面があったものの、仕事の方法は変化してきています。巡回にはモニターを活用したり、施設によっては介護ロボットを採り入れたりして負担は減っています。僕自身の場合も、以前より業務量が減ったと感じています。当施設では部署を分けて、仕事量が偏らないように改変したためです。業界全体として、休みが取りやすく、働きやすい職場になってきているので、もし興味があればぜひチャンレジしてみてくださいね!