愛知県は、介護職の魅力を広く知ってもらうことで福祉・介護職への理解を促し、関心を高める取り組みとして平成29年度から介護理解促進福祉協力校事業を実施しています。県内の高等学校を協力校として指定し、介護職の就労体験や専門職員の講話などを行うものです。今回は令和6年度指定校の一つ、学校法人愛知真和学園大成高等学校(一宮市)の取り組みを紹介します。
- [令和6年度介護理解促進福祉協力校](5校)
-
学校名 所在市町村 学校法人さくら学園安城生活福祉高等専修学校
安城市 愛知県立吉良高等学校 西尾市 名古屋市立西陵高等学校 名古屋市 学校法人愛知真和学園大成高等学校 一宮市 愛知県立津島北高等学校 津島市
事前学習会
取材日:2024年7月10日 講師:株式会社経営支援 塚本聡美さん(社会福祉士) 大成中学・高等学校ではインターアクトクラブの中学2年生から高校2年生、35人が事前学習会を行い、夏休み中に特別養護老人ホームちあき(一宮市)で各自1日の介護体験学習に参加しました。
7月に行われた事前学習会では、社会福祉士の塚本聡美さんによる「福祉って何だろう?」をテーマにした福祉・介護の仕事を理解するための講義を受講。まず「年をとって老化するとどんなことに困るか?」をグループで話し合い、発表しました。
生徒からは「五感がにぶくなる」「階段の上り下りがきつくなる」といった体の衰えによる変化とともに、「認知症になって会話が難しくなったりコミュニケーションがとりにくくなる」といった意見も。施設での体験学習の際は「目線を合わせることを意識して、ゆっくり、短く、落ち着いた声で話すことが大事」とのワンポイントアドバイスが塚本さんからあり、生徒たちは真剣な面持ちで話に耳を傾けていました。
施設体験学習
取材日:2024年8月21日生徒たちは夏休み中、一宮市の特別養護老人ホーム・ちあき、ちあき第二で1日ずつ介護体験学習を行いました。取材した日は高校1年生の男子生徒2人、2年生の女子生徒2人が参加。職員から施設の概要や体験中の注意事項を聞いた後、男子は1人ずつ1ユニット(利用者10人)、女子は2人で1ユニットに分かれ、配膳や環境整備、利用者さんの話し相手など職員の手伝いをしました。体験終了前には集まって振り返りミーティングを行い、体験を共有しました。
◆参加した生徒の感想◆

ご飯の準備をしたり、利用者さんとの話し相手をしたりしました。老人ホームに来たのは初めてです。ここに来るまで老人ホームはにぎやかなところだと思っていましたが、来てみたら思ったより静かでした。僕は普段からコミュニケーションを取るのが得意な方ではないので、利用者の方とも会話をするのが難しく、職員さんはちゃんと会話ができていてすごいなと思いました。

お昼ごはんの配膳や、おやつの準備などを手伝いました。アニメなどで出てくる老人ホームのイメージと違って、みんなが集まる広間みたいなところはありますが、個人の部屋があってプライバシーがちゃんと保たれていると感じました。ご飯を配膳するとき、この人は硬いご飯、別の人は柔らかいご飯と一人ひとりの状態を覚えていて食事介助を行っているのが、本当に尊敬します。

老人ホームのイメージは病院っぽくて白い壁に消毒液の匂い…みたいな感じでしたが、実際はおばあちゃんのお家のような温かい雰囲気のところで居心地がいいです。職員さんは全然動けない人、動きづらい人、少し動ける人など利用者さんそれぞれに合わせた介助をされていて、すごいと思いました。

利用者さんと洗濯物を畳んだり、レクリエーションをしました。普段、雑炊など柔らかいものだけを食べていると想像していたのですが、献立表にはカレーがあったり、お菓子やゼリーが付いていたりしておいしそうなメニューが並んでいるのが意外でした。介護士の叔父から大変な仕事だとは聞いていて、今は想像していた以上に大変だと感じています。将来は看護師になりたいので、貴重な経験ができました。
事後学習会
取材日:2024年10月25日 講師:株式会社経営志援 塚本聡美さん(社会福祉士)10月に開催された事後学習会では、生徒たちがグループになって施設体験実習を振り返り、気付いたことを発表。体験を共有しました。
◆実習を終えた生徒の感想◆

施設では皿洗いやストレッチ体操、ベッドメイクのお手伝いをしました。話せるお年寄りが多いイメージでしたが、話ができる人は少なくてフロア全体が静かでした。体験を通して介護職員が少ない、スペースの余裕が無い、職員に八つ当たりするお年寄りがいるなど介護現場の実態、問題点に気付きましたが、職員さんは優しく対応していました。

配膳などの体験を通し、入居しているお年寄りはみんな明るくていいなと思いました。体験後はポジティブに介護の仕事を捉えられるようになり、介護の職場はどのようなものか知ることができて良かったです。

車椅子での移動や配膳、おしゃべりをしたり、ベッドメイクなどのお手伝いをしました。体験したことでお年寄りが必要な介護のレベルに差があることを知りました。また、職員さんは少ない人数で働いていて、思ったより仕事が多いことが分かりました。普段高齢者の方々と関わりが無いので、関わることができて良かったと思います。

施設の納涼祭の時期だったので、祭りの準備を手伝いました。体験で気付いたことは、静かで会話が少なく、食事も黙食でした。職員さん同士の仲が良く、チームワークが凄いと感じました。納涼祭で浴衣を着ることができて楽しかったです。
生徒たちの感想を聞いた講師の塚本さんは「施設内の会話が少ないと感じたという感想がありました。職員さんは声掛けをするけど、利用者さんの反応が薄いと思ったかもしれません。暴言を吐く利用者さんは心の病や認知症だったりもするので、うまく受け流すことも介護技術であると思います」と生徒たちが体験した出来事を解説。「介護の仕事はニーズが高まり、賃金や待遇も改善され、とても将来性のある仕事です。お年寄りに笑顔になっていただくためにどんなことができるかを考えるクリエイティブな仕事でもあります。誰かのためになる仕事をやりたいと思う人にはうってつけの仕事です」と介護の仕事の魅力を語り、介護の仕事のキャリアアップについても説明。生徒たちは熱心に耳を傾けていました。
担当教員の声〈酒井雅之教諭〉

今回、介護理解促進福祉協力校に応募したのは、生徒に色々な経験を積んでもらうことが、その後の人生にプラスになるとの思いからです。お金ではなく知識や人生経験が、どれだけ人生を豊かにするかということを伝えたい、体験してほしいとの思いがありました。人の感じ方は千差万別です。生徒の感想にもありましたが、反応が良かったお年寄りもいらっしゃれば、まったくもって真逆の反応の方もいた。その現実を実感してもらえたのが良かったのではないでしょうか。自分の肌で触れて知ってこそ、そこから何かしなければいけないということに気付けると思うので、今はとにかく色々なものをたっぷり知識として蓄えたり体験したりすることが大事。たとえ体験から反感を抱いたとしても、次にその反感を生かした対策が取れたり、何かを作り上げたりすることができると思います。
若者が介護の仕事に興味を持つためには、施設を利用する側、例えば将来の僕たちが施設に入居することに対して明るくポジティブな気持ちを持つことが必要だと思います。やむを得ず行くという感じではなく、自分で選んで行く。施設を人生の延長上にある明るいところにすれば、そこで働く人も人生のお手伝いをクリエイティブかつポジティブにする仕事だとイメージが変わるのではないでしょうか。介護の仕事の魅力は、人生の最期をクリエイティブな力で上向きにさせる仕事だと思います。そこで働くことにも夢がある。そこを引き出せることができれば、介護職への理解も深まるはずです。
◆社会福祉法人 尾張健友福祉会 特別養護老人ホーム・ちあき、ちあき第二◆
人格と尊厳、その人らしい個別ケアを大切にし、いきいき楽しく過ごせる暮らしの場となるようユニット方式で運営しています。千秋病院に隣接する立地は医療面でも安心。居間や食堂で気楽に過ごすことができ、顔なじみのスタッフによる心通い合うケアを行っています。
社会福祉法人 尾張健友福祉会
〒491-0814 一宮市千秋町小山字山王22-1
TEL:0586-81-7021
FAX:0586-81-7031
URL:https://www.chiaki.com/fukushi/page_212.html