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介護理解促進福祉協力校

 愛知県では、介護職の魅力を広く知ってもらうことで福祉・介護職への理解を促し、関心を高める取り組みの一環として、県内の高等学校を介護理解促進福祉協力校に指定。介護体験や介護職員との交流を行う「介護理解促進福祉協力校事業」を実施しています。新型コロナウイルスの影響により令和2、3、4年度と介護体験学習が中止となっていましたが、今年度から復活。指定校5校のうち学校法人尾張学園名古屋大谷高等学校(名古屋市)の生徒たちの学びを紹介します。

【令和5年度介護理解促進福祉協力校】(5校)
学校名 所在市町村

学校法人安城学園 安城学園高等学校

安城市
学校法人河原学園 人間環境大学附属岡崎高等学校 岡崎市
学校法人黄柳野学園 黄柳野高等学校 新城市
学校法人高倉学園 豊橋中央高等学校 豊橋市
学校法人尾張学園 名古屋大谷高等学校 名古屋市

※50音順

取組の一例紹介~名古屋大谷高等学校~ 取組の一例紹介~名古屋大谷高等学校~

事前総合学習会

取材日:2023年7月12日 講師:株式会社経営志援 塚本聡美さん(社会福祉士)

 名古屋大谷高等学校では、普通科福祉・医療進学コース福祉進学クラス3年生の20人が夏休み中、特別養護老人ホーム美保岐の丘(名古屋市瑞穂区)と、特別養護老人ホームメリーホーム大喜(名古屋市瑞穂区)で2日間の介護体験学習を行いました。福祉進学クラスは社会福祉士、介護福祉士、保育士、幼稚園教諭などを目指すクラスで、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格取得に取り組んでいます。
 7月に同校で行われた「事前総合学習会」では、社会福祉士の塚本聡美さんが福祉・介護の仕事を理解するための概要、魅力を伝えました。
 塚本さんが最初に「福祉とは何だろう?」と生徒に投げかけると「人が幸せになれる」「支え合い」「みんなが幸せに生活できる」などの回答が生徒たちから挙がりました。塚本さんは「ふつうのくらしのしあわせ」が福祉(ふ・く・し)であると説明。続いて「介護の仕事ってどんな仕事?」の問いには、「肉体的に大変」「力が必要」「障害者、高齢者を助ける」「利用者のことは考えられているけれど職員のことは考えられていない」など体への負担が大きいことへのネガティブなイメージが生徒から多数出てきました。しかし塚本さんは自分にも相手にも負担をかけない介助技術が進んでいることを紹介。介護が必要な人に対して、専門的な知識を用いてその人がその人らしく生きていくことをサポートする専門職が介護の仕事であると伝えました。
 そして、夏休みに予定されている介護体験のポイントとして「積極的なコミュニケーション」が大事だと話し、そのためには笑顔を大切に、大きなはっきりとした声で挨拶しようとアドバイスしました。

  • 講座風景
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介護体験学習

取材日:2023年8月8日

 夏休み中、特別養護老人ホーム美保岐の丘(名古屋市瑞穂区)と、特別養護老人ホームメリーホーム大喜(同)で、生徒が2日間ずつ介護体験を行いました。施設来所後、オリエンテーションで1日の流れや注意事項を聞き、食事やおやつの配膳や掃除、コップなどの洗い物、シーツ交換など介護職員さんの手伝いを行いました。
 最初は緊張していた生徒も、2日目は笑顔で利用者さんたちと交流できるようになり、一緒に話をしたり、テレビを見たりして、おだやかな時間を過ごしました。

  • 講座風景
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◆参加した生徒の感想◆

【3年生女子】
机の消毒や洗い物など職員さんの業務の補助を行いました。排泄介助も少し見せてもらいましたが、体格が大きな人の介助は大変そうだと感じました。でも、私の入らせてもらったユニット(10人1組の介護単位)では、忙しいときはあっても、意外に雰囲気がゆったりしていて落ち着く感じでした。将来、介護の仕事に就くとしたら大変だとは思いますが、利用者さんのかわいらしい面も見られたので、楽しいことも多そうです。
【3年生女子】
1人の職員さんが10人の利用者さんをきちんと見ているのがすごいです。目が行き届いていなさそうなのに、実際は全体を見ています。ここに来るまでは、もっと利用者さんがまとまって同じ行動するのかと思っていましたが、実際は皆さん自由に暮らしていて驚きました。ここでの体験で、知識が無いまま介護の仕事をするのは大変だと感じたので、その前に専門的な知識や技術を学ぶ必要があると思いました。
【3年生女子】
学校なら何時から何時までは授業で、放課は何時何分と決まっています。ここでは一人ひとりが自由で、ご飯も配膳後すぐ食べずに後で食べたりと自分の時間が持てているなと感じます。介護の仕事は大変ですが、利用者さんと話をしていて楽しいと思うことも多かったので、ポジティブな感想を持つことができました。

事後総合学習会

取材日:2023年9月13日 講師:株式会社経営志援 塚本聡美さん(社会福祉士)

出張講座最終日は施設体験実習を振り返り、利用者さんや職員さんについて気付いたことを発表しました。

  • 講座風景
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◆実習を終えた生徒の感想◆

【女子生徒】
寝たきりの利用者さんの入浴介助の際、機械を使った入浴が職員さんの助けになると感じました。
【女子生徒】
職員さんは利用者さん一人ひとりの個性に合わせて対応されていました。
【女子生徒】
集団で生活しながらも、職員さんは一人ひとりの生活リズムで動いていました。
【女子生徒】
利用者さんは自由に好きなことをやっていて楽しそうでした。
【男子生徒】
職員さんが利用者さんに話かけるときは、大きな声で話すだけでなく、最初に名前を呼んでいました。
【男子生徒】
大変できつい仕事だと思っていましたが、やりがいがある仕事だと思いました。若いころの話をしてもらって楽しかったです。
【女子生徒】
移乗は学校で習いましたが、実際はできないことが多くありました。
【女子生徒】
施設内の実際にゆったりした雰囲気を感じることができて良かったです。
【女子生徒】
褥瘡(じょくそう)を防ぐためのクッションの置き場所を職員さんに教えてもらい、実践的なことを学ぶことができました。

 講師の塚本さんは、介護の仕事の将来性について、介護が必要な高齢者が増え2025年には30万人を超えることが予測されている。そのため介護の仕事はニーズが高く、賃金や待遇も改善されていると解説しました。
 そして介護の仕事のキャリアアップと、どのような研修や資格があるのかを説明。介護の仕事の魅力を、一人ひとりの生活を介護で幸せにする、笑顔にするためにはどうしたら良いかを考えるクリエイティブな仕事であると伝えました。更に、介護の仕事でしか味わえない感動や経験を得ることができ、自分自身を成長させ続けることができる職業であるとの話に、生徒たちは真剣に耳を傾けていました。

担当教員の声〈神谷栄司教諭、楠靖子教諭〉

実際の現場でしか感じられないことを体験してほしかった 実際の現場でしか感じられないことを体験してほしかった

神谷栄司教諭、楠靖子教諭
神谷先生:コロナ以前は毎年、介護職員初任者研修の実習や、ボランティア活動などでデイサービスや特別養護老人ホーム、自閉症の子どもたちのサポートなどに行っていたのですが、コロナ禍で行けなくなり、ここ数年、資格は取れるものの現場を知らないまま卒業していく生徒もいました。卒業後、施設に就職する生徒もいるので介護の実際を体験してほしいとの思いがあり、福祉協力校にチャレンジしました。

楠先生:現場では利用者さんとのコミュニケーションの難しさを実感してほしい。家族や友達以外の人生の先輩たちにどう話しかけるのか。まずはそういったことを知ってほしいなと思っていました。現場を見る、利用者さんと接することが福祉や介護の職業に興味を持つきっかけになると思います。私たちが生活している社会にはいろいろな人がいて、いろいろな仕事があるということを知る機会が大事。地域によっては小学校のときから福祉学習を行うところもありますが、若いうちから触れることで、福祉というのが特別なことではなく身近なものなのだということを知り、職業選択にも結びつくのではないかと思います。ありがとうと言ったり、言われたりすることは気持ちがいいことです。今回の体験を通して生徒たちは、介護の仕事は人間の柔らかいところに触れられる仕事であること、そして弱い方、支援が必要な方に接するときの自分と、普段友達や家族と接しているときの自分との違いに気づくことができたと思います。

神谷先生:施設では高齢者の体に触れて、生徒同士で学ぶ身体介護とは違うところを感じることができたと思います。介護の仕事はやりがいのある仕事だと思いますが、現場では生の人間相手なので、いろいろなことがあります。それがあまりにも辛いということであれば、やはり介護の仕事が合わないということになるでしょう。ですから現場に行って体験することは大事なこと、今回はその大事な体験をさせていただき、生徒たちも考えることも多かったはずです。この体験を今後の職業選択にも活かしていってほしいと考えています。

〈介護体験学習先施設紹介〉
◆特別養護老人ホーム美保岐の丘◆
名古屋市中川区と瑞穂区で特別養護老人ホーム、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援事業所、知的障害者生活介護事業所を運営する社会福祉法人富田福祉会の施設。「心のこもったやさしさ」を法人理念として掲げ、「先意承問」「和顔愛語」を施設モットーにサービスの提供を行っています。

社会福祉法人富田福祉会 特別養護老人ホーム美保岐の丘
〒467-0027 名古屋市瑞穂区田辺通一丁目21番地
TEL:052-833-3385
FAX:052-833-3366
URL:http://shoujyuen.com/mihogi.aspx

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