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介護理解促進福祉協力校

 愛知県では、介護職の魅力を広く知ってもらうことで、介護に関する肯定的イメージの醸成を図る取組の一環として、県内の高等学校を介護理解促進福祉協力校として指定し、介護体験等を実施する「介護理解促進福祉協力校事業」を実施しています。今回は、平成30年度の指定協力校の一つ、中部大学春日丘高等学校の生徒たちの活動と学びを紹介します。

【平成30年度指定協力校】
学校名 所在市町村
学校法人中部大学 中部大学春日丘高等学校 春日井市
学校法人愛知享栄学園 栄徳高等学校

※高校HPに掲載されている「実施報告」はコチラ

長久手市
学校法人桜花学園 桜花学園高等学校 名古屋市
愛知県立幸田高等学校 幸田町
愛知県立半田農業高等学校 半田市

※五十音順

取組の一例紹介~中部大学春日丘高等学校~

介護体験学習

取材日:2018年8月21日

 中部大学春日丘高等学校インターアクトクラブ(顧問・松本誠太教諭)の生徒が夏休み期間中、春日井市の特別養護老人ホーム春緑苑で4日間の介護体験学習を行いました。インターアクトクラブは引退した3年生を含めて部員約60人。日ごろから障害者施設、高齢者施設、学童保育、特別支援学校、児童養護施設などを訪問したり、地域のイベントで障害者支援品の販売やダンスパフォーマンスを披露するなどのボランティア活動をしています。
 今回取材した期間での春緑苑の介護体験には希望者5人が参加。事前オリエンテーションで体験中の注意事項や心構えを聞いた後、生徒1人ずつ1ユニット(利用者10人)ごとに分かれて台拭きやお茶、おしぼり配りといった食事の準備、利用者とのコミュニケーション、洗濯物たたみなど介護職員のお手伝いをしました。  
 9月には同校で介護体験後の事後学習会を実施。介護支援専門員で介護福祉士、認知症ケア専門士でもある服部暁生さんを講師に迎え、振り返りを行いました。

【参加した生徒の感想】

【1年生男子】
自分のおばあちゃんはまだ72歳で戦争の話は聞けないので、戦争や昔の話が聞けて良かったです。体験で来ているので大変なことはしていません。楽しいことの方が多かったです。思っていた以上にコミュニケーションも取れました。特別養護老人ホームに行こうと思ったきっかけは、これまでデイサービスは行ったことがあったのですが、特別養護老人ホームは無く、どんなところか知りたかったからです。
【1年生女子】
特別養護老人ホームに行こうと思ったきっかけは、母が介護職員初任者研修の資格を持っていて介護の仕事に興味があったからです。普段、祖父母と一緒に暮らしていないため、お年寄りとあまり話す機会がなく、たくさんおしゃべりして楽しかったです。自分から話しかけるのは得意ではないのですが、お年寄りから話しかけてくださいました。
【2年生女子】
お年寄りに「ありがとう」と何度も言ってもらえて、すごく嬉しかったです。祖母が老人ホームにいて、そこで働く介護職員さんの仕事に興味があり特別養護老人ホームに行ってみたいと思いました。何を話せばいいのか最初は分からず、コミュニケーションを取るのが難しかったのですが、徐々にいろいろなことを話せるようになり、会話が楽しくなりました。
男性
【2年生女子】
デイサービスは何度か行ったことがありましたが特別養護老人ホームは初めてです。ここでは職員さんと利用者さんが自然に会話を楽しんでいて、いいなぁと思いました。職員さんと利用者さんが一日中一緒にいるところが違いかなと思います。最初にお話する際、自分の話に反応してくれるのか不安でした。でも実際はちゃんと返事をしてくださって嬉しかったです。

事後学習会

取材日:2018年9月20日

 事後学習会では、介護体験学習を行った生徒が「行く前のイメージと違っていたこと」「施設で行ったこと」「体験を通して感じたこと」などを発表し、情報を共有。講師との質疑応答が行われました。
 介護福祉士を志望する生徒から、働く場所について特別支援学校か介護施設かで悩んでいるという相談に、講師は「実際にやってみる、見てみることが大事」と、施設での職場体験やボランティアが職業選択の参考になるとアドバイスしていました。
 また、「特別養護老人ホームは病院のように閉鎖された空間だと思っていましたが、実際はうちのような感じ。利用者さんが好きな曲をすぐにかけられるようにCDが用意されていたり、将棋好きな人のために将棋盤があったりと、利用者さんがやりたいことができるよう配慮されていました」と感想を述べる生徒に対して講師からは、利用者さんの人生を大切にして、これまでの生活と継続性を保っていることができていますね、と解説がありました。

【生徒の感想(事後学習会を終えて)】

実際行ってみたらイメージと違った特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームに行くのは初めてで、明るくて職員さんも優しく接してくれました。入部前、介護職に興味を持っていましたが、皆に大変だよと言われて諦めていました。でも今回実際に行ってみると楽しくて介護に対するイメージが変わり、やっぱり介護職に就きたいとまた思うようになりました。食事の準備をしているとき、つまみ食いをしようとしている利用者さんに、職員さんが面白く誘導しているのが印象に残っています。
利用者さんと恋バナで盛り上がる
特別養護老人ホームというと、行く前はもっと重度の方がいるところだと思っていましたが、思ったより皆元気でおしゃべり。記憶力もすごくて、2日目には「また来てくれたの!」と言ってくれました。職員さんのサポートを受けながら、利用者さんと一緒にパターゴルフを楽しんだり恋バナで盛り上がりました。
特別養護老人ホームでの体験を自宅での介護に生かす
うちのおじいちゃんは要介護4でデイサービスに通っています。特別養護老人ホームに体験に行ったことを生かして、家でもこうやってあげると喜ぶかなとか、おやつもこうやってあげるといいなとかを考えて行うようになりました。
大変そうだった職員さん
朝礼で職員さんが一人いなくなったとき、利用者さんが、やってほしいことをいろいろと言い出し、何をどうしたら効率的にできるかを考えながら仕事をこなしていて忙しそうでした。
知らなかった介護の現場を垣間見る
行く前は介護について何も知らなかったのでイメージ自体持っていませんでしたが、行ってみて良いイメージを持ちました。
コミュニケーションの大切さ実感
どんな施設でもコミュニケーションが一番大事なのかなと思います。初めて会う人には毎回何を話せばいいんだろう?と思うのですが、例えば将棋が好きな方がいらっしゃったら、次の日に将棋のやり方を覚えて行けば仲良くなれました。好きなことを調べて接すれば仲良くなれます。認知症の方でもそれは一緒だと思います。
職員さんと利用者さんの関係は「家族」
事前研修のときは正直まだ想像できませんでした。病院みたいなところだと思っていましたが、実際はおうちみたいで職員さんが優しく明るく楽しかったです。介護職に対するイメージが変わりました。職員さんと利用者さんが家族のような関係で、介護職っていいなーと思いました。

松本誠太教諭の話

ボランティア活動での経験を自分らしい生き方考える機会に

先生
 中部大学春日丘高等学校インターアクトクラブの活動先はほぼ先方からのご依頼です。何のボランティアに参加するかは基本、生徒の立候補ですが1年生のうちは、できるだけさまざまな施設を回るようにしています。2年生になってからは生徒が自分の好みや性格を考えて選んでいます。生徒たちの中には体験からなりたい職業を決める子もいますし、逆に体験したことで希望しなくなることもあります。私もキャリア教育の一環としてクラブでの体験が進路を考える機会になれば良いと思っています。
 介護・福祉や町づくりの経験を3年間続けることで、経験値も技術、知識も付いてきます。しかし、あくまで高校生で何の資格もありませんので、経験を積んだと言っても、そこで分かるのは「まだまだ自分はこんなことしかできない」ということ。こんなことでは自分たちがお世話になっている高齢者、障害のある方を救うことはできないし、子どもたちを教えることもできない。自分たちでは全然足らないということが分かる。だから大学に言って学ぼう、仕事は甘くない、プロになるのは大変だということを3年間かけて学ぶ機会になってくれたらいいなと思っています。
 私が顧問になって8年になりますが、卒業生の中にはクラブ活動がきっかけで介護・福祉関係やリハビリ職に就いている生徒も多いです。介護職は直接、人と関わることができてありがとうと言われるところが魅力だと思います。ひょっとするとその人の人生を救うかもしれない存在になれる。そこがやりがいではないでしょうか。
 いろいろなところに行くと生徒は楽しいですし、活動先で高校生が来て良かったと思ってもらえるとまた依頼が来る。依頼が来ると生徒もうれしい。また来てくださいと言っていただいたり、地域から頼まれると生徒たちもモチベーションが上がります。介護・福祉は一見マイナスイメージの職種かもしれませんが、実際やってみるとそうでもないよねと。体験前と体験後の座学も含め、今回の介護体験は生徒たちにとってとても有意義だったと思います。
〈介護体験学習先施設紹介〉
◆特別養護老人ホーム 春緑苑◆
 春日井市で最初の特別養護老人ホームとして昭和61年に開設。地域に開かれた施設づくりに取り組み、夏祭りや開設記念祭など多くの地域住民の方に足を運んでいただいています。
平成22年10月にユニット型特別養護老人ホームとして改築。170人定員の施設として再スタートしました。

社会福祉法人恩賜財団愛知県同胞援護会
特別養護老人ホーム春緑苑
愛知県春日井市廻間町字神屋洞703番地1
TEL:0568-88-5585
FAX: 0568-88-5704
URL: https://douen.or.jp/list/tokuyou_syunryokuen/

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