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介護理解促進福祉協力校

 愛知県では、高校生に介護職の魅力を広く知ってもらうことで、福祉・介護職への理解を促し関心を高める取組の一環として、県内の高等学校等を介護理解促進福祉協力校として指定し、介護体験等を行う「介護理解促進福祉協力校事業」を実施してきました。令和2年度は新型コロナウイルスの影響で、内容を施設での介護体験学習から協力校への出前介護講座(3回シリーズ)に変更。今回は、協力校の一つ、愛知県立岡崎東高等学校の生徒たちの学びを紹介します。

【令和2年度介護理解促進福祉協力校】
学校名 所在市町村

学校法人さくら学園 安城生活福祉高等専修学校

安城市
愛知県立岡崎東高等学校 岡崎市
学校法人名古屋石田学園 星城高等学校  豊明市
学校法人豊川閣妙厳寺豊川学園 豊川高等学校 豊川市
愛知県立尾西高等学校 一宮市

※五十音順

取組の一例紹介~愛知県立岡崎東高等学校~

出前介護講座①

取材日:2020年12月8日
講師:日本福祉大学 非常勤講師 大林由美子先生

 愛知県立岡崎東高等学校では「生活支援技術」の授業を選択する2年生8人の生徒が出前介護講座を受講しました。認知症グループホームの管理者、ケアマネジャーでもある大林由美子先生が「介護の仕事を理解しよう」をテーマに講義を実施。クリエイティブで地域社会に貢献できる介護の仕事の魅力について話しました。生徒たちは介護の仕事についてイメージを問われると「やりがいがあるけど大変な仕事のイメージ」と返答。ただ身の回りのお世話をするだけではなく、「その人らしく生きていくことを支えていく仕事」との大林先生の話に、熱心に耳を傾けていました。

出前介護講座②

取材日:2020年12月15日
講師:社会福祉法人瑞穂会 特別養護老人ホームくわがい 介護主任 小林舞子さん

 出前介護講座の2回目は実際に現場で働く介護福祉士の方を招いての介護講座です。小林舞子さんは介護職の具体的な仕事内容や資格、介護施設の職種について解説。特別養護老人ホームでの経験を通して感じた介護の仕事の魅力ややりがい、力任せの介護をしないためのポイントなどについて話されました。
 「介護の仕事は『命の在り方』について学べる仕事」という、介護の現場に携わってきた人ならではの言葉を頷きながら聞く生徒たち。実際に介護施設で働いている人の話を聞くのは初めての生徒にとって、発見に満ちた貴重な機会となりました。

【講義を受けた生徒の感想】

介護の仕事は「命の在り方」について学べる仕事だとおっしゃっていましたが、それは将来自分が就きたいと思っている看護師の仕事でも同じだと思いました。介護の仕事も看護に通じると思うので、介護についてもう少し勉強したいです。
施設にどんな人がいるのか、どんなことをしているのか、資格についてもどのようなものがあるのか知ることができました。看取りはとても怖いと思ってしまいますが、自分自身のことも考える良いきっかけになることを知り、介護って素晴らしいと思いました。
私が一番心に残ったのは、「命の在り方」について学べる仕事ということです。介護の仕事に就く人は、日ごろ利用者との交流も多く「老い」や「死」とも向き合う機会があるからこそ、自分の将来像を考えることができるので、とても良いと思いました。
職場のことを知る機会はなかなか無いので、とても貴重な経験になりました。それぞれの職種の方々の協力が大切だと改めて思いましたし、介護の仕事について知ることができて将来の選択肢が増えました。
職種についてあまり知りませんでしたが、介護はケアマネジャーや生活相談員、機能訓練指導員といった専門的な職種無しには成立しないと初めて知りました。また、介護についてもっと知りたいと思いました。
介護の仕事は大変そうなイメージが強かったのですが、今日のお話を聞いて、大変なこともあるけれど楽しい、やりがいを感じる仕事だと伝わってきました。おばあちゃん、おじいちゃんが大好きなので今日の話を普段の生活にも役立てたいです。
介護の仕事にはたくさんの職種があり、専門的な知識を持って仕事ができるのは魅力だと思います。「感動、健康、工夫」の3Kを体験できる介護職は、命の在り方も学べて本当に素晴らしいと感じました。
私は将来介護福祉士になって高齢者の介護の仕事をしたいと考えています。入居者さんの人生の最終章に関わることができ、死生観を養うことができることは他の仕事ではあまり無い、責任のある仕事だと改めて感じました。

出前介護講座③

取材日:2020年12月22日

 出前介護講座の最終回は、初回に授業を行った大林先生がまとめの講義を行い、生徒たちがお互いの学びと感じたことを共有しました。大林先生が投げかけた質問は「介護の仕事・福祉の仕事のイメージが変わったとしたら、それはどんなことか」「将来の夢や自分が就きたい職業」「80歳のわたしへ」。質問の中から生徒たちは自分が答えたいと思った項目と「どのような世の中になったら良いと思うか」を発表しました。

【介護の仕事・福祉の仕事のイメージが変わったこと】

介護の仕事は大変なことも多いけど、利用者さんから感謝され、やりがいがあり、資格を取れば給料も上がると知りました。利用者さんの最期を看取ることもある責任のある仕事だと思います。      
介護は大変そうなイメージでしたが、実際はいろいろな利用者さんがいるため変化もあり、楽しそうな仕事だとイメージが変わりました。
介護の仕事は感動に出会える仕事。お年寄りの目線で相手の気持ちや状態を考えながら、思いやりを持って人と関わることのできる、やりがいのある仕事だと思います。
今回の授業を通して、介護の仕事は人を介助するだけではなくケアマネジャーや社会福祉士のように人を支える職業があり、魅力とやりがいがある職業だということを知りました。

【将来、自分が就きたい職業】

将来の夢である小児科の看護師になって、子どもたちを精神面でも支えてあげられる看護師になりたいです。            

将来看護の道に進みたいと思っています。看護と介護は重なるところが多いと思います。人との関わりを大切にして、たくさんの人を笑顔にできる看護師になりたいです。

【80歳のわたしへ】

80代になっても毎朝散歩に行けるくらい健康に暮らしたいですが、足腰が弱って長い間立っていられず、背が縮んで高いところにあるものが取れなくなっていると思います。そんな80歳のわたしに、高いところにあるものを取ってあげたり、話し相手になってあげたい。

 

 そして大林先生からの「どのような世の中になったら良いと思うか」の質問に対しては、「誰もが幸せになれる世の中」「みんなで助け合って生きる世の中」、コロナが収束して自分のやりたいことを存分にできる「当たり前の世の中」、自分のことを大事にできる「Love myselfな世の中」「支えあえる世の中」「いじめのない世の中」「多くの人が笑顔で過ごせる世の中」「戦争がない平和な世の中」という答えが挙がりました。大林先生は「“ふつうのくらしのしあわせ”が“ふくし”です。普通(普段)の暮らしの幸せがあり続ける世の中になってほしいですし、自分の身の回りの人、地域の人たち、ちょっと誰かのことを気にかけたり手助けしたりすることが“普通の暮らしの幸せ”に繋がるのではないかと思います」と語りかけました。

担当教員の声〈総合学科主任、JRC部顧問 塚元雅則教諭〉

現場で働く人の生の声を聞き、職業としての介護への理解が深まる

先生
 今回の出前介護講座は2年生の「生活支援技術」を選択している生徒が受講しました。岡崎東高校ではJRC(Junior Red Cross‟青年赤十字‟)部の活動も積極的に行っていて、高校生手話パフォーマンス甲子園全国大会やボランティア・アワード全国大会に出場したり、日本赤十字社国際交流事業の愛知県代表として参加しています。今年度もボランティア・アワード2020で平原綾香賞をいただきました。しかし、「生活支援技術」を選択している生徒もJRCの部員も、介護に目が向く生徒は多くありません。そこで、高齢者や障害者への介護という視点を持ってくれる生徒が増えることを期待して介護理解促進福祉協力校に指定していただくことになりました。
 出前介護講座では現場で働きながら大学で教えていらっしゃる先生と、身近な施設で働いていらっしゃる介護職員の方のお話を聞くことで、生徒たちは仕事としての介護をきちんと捉えてくれました。本来であれば体験実習に行き、直接利用者さんと関わることで、いろいろ見えてきたり感じることもあったかと思いますが、講師の先生方が現場の話をたくさんしてくださり、理解を深めることができました。
 まだまだ現実には、「介助イコール介護」だと思っている人が多いように感じます。もちろん介助も介護の一部ですが、生徒たちには介護職の本当の魅力を知ってほしい。利用者さんの思いを汲み取った上で利用者さんを支えていく―。利用者さんの望む人生をかなえていくにはどうしたらいいのかを、専門性を生かし多職種と連携しながら実践していく―。そんな介護の仕事の魅力を知り、職業選択の際に役立ててほしいと思います。
 「生活支援技術」の授業は3年時に校外実習も予定されていますが、新型コロナウイルスの影響で実施できるか不確定な状況です。JRCも現在対面する活動は全て休止しています。しかし対面でなくてもできること、例えばボランティアで関わった高齢者の方々へ手紙を書くなどの活動を、工夫しながら続けていきたいと思っています。
〈出前介護講座②講師 勤務施設紹介〉
◆社会福祉法人瑞穂会 特別養護老人ホームくわがい◆
 居室は全て個室でプライバシーを尊重。居間の自由な交流や、木の香り漂う1人浴槽でのゆったりとした入浴など、自由でゆとりある生活を送っていただけます。

社会福祉法人瑞穂会 特別養護老人ホームくわがい
岡崎市桑谷町字西平地45番地
TEL:0564-48-8780
FAX: 052-722-2239
URL: http://www.mizuho-kai.or.jp/kuwagai.html

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