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介護理解促進福祉協力校

 愛知県は介護職の魅力を知ってもらうことで福祉・介護就労への理解を促し感心を高めてもらう取り組みの一環として、介護理解促進福祉協力校事業を実施しています。県内の高等学校を協力校として指定し、介護職の就労体験や専門職員の講話などを行うものです。今回は新型コロナウイルスの影響により就労体験は行えませんでしたが、各校で講師による出前講座が行われました。5校の指定校のうち、愛知県立五条高校(あま市)の学びを紹介します。

【令和4年度介護理解促進福祉協力校】(5校)
学校名 所在市町村

愛知県立岡崎高等学校 ※定時制

岡崎市
愛知県立五条高等学校 あま市
学校法人愛知江南学園 誠信高等学校 扶桑町
愛知県立瀬戸工科高等学校 ※定時制 瀬戸市
愛知県立豊橋西高等学校 豊橋市

※50音順

取組の一例紹介~愛知県立五条高等学校~ 取組の一例紹介~愛知県立五条高等学校~

出前介護講座①

取材日:2022年7月14日 講師:株式会社経営志援 塚本聡美さん(社会福祉士)

 五条高校JRC部の18人(1年生15人、2年生3人)が「福祉・介護のしごとを理解しよう」をテーマにした出前講座を受講しました。社会福祉士でもある講師の塚本さんが高齢者の現状を、データを含めて解説。「福祉」と聞いてイメージすることを一緒に考えました。更に「介護」からイメージする言葉をグループで話し合い、発表しました。
 生徒からは「自宅や病院、施設で、一人で生活をしていくのが難しい人を助ける」「身の回りの世話だけでなく心のサポートもしなければならない大変な仕事」というイメージと共に「老々介護」「ヤングケアラー」という社会の課題となっている言葉も挙がりました。
 塚本さんは「介護の仕事とは、何を支援すれば、その人がその人らしく生きられるのかを常に考え、その実現を本人とともに目指していく仕事」と伝え、部員たちは熱心に聞き入っていました。
※JRC部…JRCとは「Junior Red Cross」の略で「青少年赤十字」を意味し、活動としてはボランティアや日本赤十字のイベントなどへの参加があります。五条高校のJRC部は、ペットボトルキャップの回収や、学祭で車いす体験の企画などを行っています。

  • 講座風景
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出前介護講座②

取材日:2022年8月17日 講師:特別養護老人ホーム 第Ⅱあま恵寿荘
施設長 加藤美由紀さん
相談員兼主任 小林正和さん
介護主任 田口守さん
介護副主任 野村昂生さん

 夏休み中の出校日に当たるこの日、JRC部の1、2年生13人が出前講座を受講しました。テーマは「働く介護の現場」。講師はあま市にある特別養護老人ホームの施設長と職員の皆さんです。
 まず加藤施設長が「特別養護老人ホーム(特養)とは」を解説。24時間365日、生活全般的な介助が必要な高齢者が生活しているのが特養で、どのような職種の人が働いているかを解説しました。続いて、介護職員には高いコミュニケーションスキル、医療的な知識、介護の技術が必要で、入居者さんができるだけ最期まで自立した生活を実現できるようサポートする仕事だと説明。カルテのデータ化や見守りセンサーなど介護の現場でもIT化が進み、リフトやボード、ロボットなどによって介護する側の体を守る方法もあることを伝えました。
 次に行われたのが「車いす体験」。生徒たちは2人1組になり、高齢者の不自由さを疑似体験するために目隠し・耳栓をして車いすに乗る役と、車いすを押す役を交代で体験しました。車いすに乗るのは全員が初めて。使い方の説明を受けたあと、職員さんたちが手作りで準備してくれた障害物を越えながら、少しずつ前に進みます。
 車いすを押す人は、力を入れて押すもののなかなか進まず立ち往生してしまう場面も。中には乗る人に車いすを手で触ってもらってから座ってもらう生徒や、終わった合図に肩を軽く叩くといった工夫をする生徒もいました。乗る方も「自分が今どこにいるか分からなくて怖かった」と感想を。加藤施設長の「一番大事なのは声掛け。なぜなら乗る方は身構えることができるから」との言葉に大きくうなずいていました。

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出前介護講座③

取材日:2022年9月26日 講師:株式会社経営志援 塚本聡美さん(社会福祉士)

 出前講座最終回は1回目の講師、塚本さんによる「もっとみんなで介護を理解しよう」をテーマにした講義です。生徒たちは講座を受けて①今まで持っていた介護のイメージとどのように変わったか、②将来、どんな社会になったらいいと思うかを考えました。

  • 講座風景
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【生徒の発表】①介護のイメージがどのように変わったか

【男子生徒】
大変な仕事からやりがいのある仕事に変わりました
【男子生徒】
苦しくて大変な職業から人の役に立つ職業だと思うようになりました
【男子生徒】
暗いイメージだったのが施設も綺麗で明るいイメージになりました
【男子生徒】
介護は介護職員の方がするのではなく社会全体でするものと考えるようになりました
【男子生徒】
介護をする人は多くの身体的ダメージを負うと思っていましたが、今は機械も発達して待遇も良くなってきていると感じました
【女子生徒】
介護の現場はマイナスイメージでしたが、一人ひとりが関わり合う温かい場所だとわかりました
【女子生徒】
やりがいがあり、社会から必要とされている職業だと感じました

【生徒の発表】②将来、こんな社会になったらいいと思う

【男子生徒】
争いの無い平和な社会
【男子生徒】
すべての高齢者が住みやすく生きやすい社会
【男子生徒】
介護職員を支える人がいないので社会全体でささえるべき
【男子生徒】
一人ひとりが助け合う社会
【女子生徒】
技術を取り入れ、みんなが助け合える社会
【女子生徒】
偏見の無い社会
【女子生徒】
もっと介護をする人を増やすべき
【女子生徒】
若い人たちが介護のためにやりたいことを諦めることのない社会
【女子生徒】
誰もが介護の知識を持てる社会になってほしい

 介護職がポジティブなイメージに変わった発言を受け、塚本さんは「②で描いた社会を実現するのは皆さんです」と話し、介護の仕事の将来性についても解説しました。また、介護の資格にはどのようなものがあり、どうすれば取得できるかを説明。いろいろなキャリアアップが考えられる仕事であること、そして介護の仕事でしか味わえない感動や経験を得ることができると説き、生徒たちは真剣に耳を傾けていました。

担当教員の声〈JRC部顧問・深和龍夫教諭、加藤靖子教諭〉

介護職の仕事内容や資格について知り、地域での活動に生かす 介護職の仕事内容や資格について知り、地域での活動に生かす

深和先生・加藤先生
深和先生:コロナ禍でJRC部の部活動も制限がある中、生徒たちは花壇の花を植えたり、ペットボトルのキャップを集めて世界の子供たちにワクチン支援を行うなど安全を考慮した上で工夫して活動を続けています。
 今回、介護理解促進福祉協力校に応募した理由は、やはり新型コロナウイルスの影響が大きいです。地域のイベントやお祭りが中止になり正直、活動に困っていました。地域に出て活動ができない分、校内でできることをやりたいとの思いでした。
 五条高校では1年生全員を対象に毎年「福祉実践教室」を開催していますが、手話や点字体験などが主で介護の仕事については触れません。今回の出前講座では介護福祉士やケアマネジャーなど介護の仕事の内容や、どうしたら資格を取得できるのか、資格を取るための支援制度はどんなものがあるのかなど学ぶことができ、生徒たちにとって、とても役立つものでした。今後、JRC部の一員として、地域の方々の依頼に応えながらボランティア活動を行う上でも意義のある時間であったと思います。

視野を広げ、相手の立場になって考える心を養うきっかけに 視野を広げ、相手の立場になって考える心を養うきっかけに

加藤先生:核家族化が進み、お年寄りと一緒に住んでいる生徒も少ない中、介護に関する経験が無い生徒たちの視野が広がればと考えたことが協力校に応募した理由の一つです。十代の子どもたちが介護について知る機会は多くありません。今回のように、介護の仕事について学べる機会は貴重ですし、国家資格の取得も目指せると知ったことも有意義でした。
 出前講座の後、学園祭「五条のつどい」で施設での介護実習報告をする予定でしたが、残念ながら実習ができませんでした。そこで生徒たちが思いついたのが出前講座2回目の車いす体験です。社会福祉協議会から車いすを2台お借りして「五条のつどい」でルートを再現。来場者に体験してもらいました。
 生徒たちは目隠しをして車いすに乗る際、声を掛けてもらうことで怖さが軽減された体験を生かし、車いすを押す立場になったとき、乗る人が安心できるよう声掛けをするようになりました。これに限らず相手の立場になって考えることが自然にできるようになってくれればとの思いです。

〈出前介護講座②講師 勤務施設紹介〉
◆特別養護老人ホーム 第Ⅱあま恵寿荘◆
 住み慣れた自宅での生活が困難になったときの、安心して暮らせる場所、自分らしくいられる場所の一つとして私たちの施設があります。季節の行事や防災対策に力を入れながら、人を尊び心に寄り添う笑顔あふれるケアを実現。施設に関わるすべての人が、自分らしくいられるよう地域に根を張り、地域の人々から必要とされる心地よい居場所を目指します。

社会福祉法人嘉祥福祉会 特別養護老人ホーム 第Ⅱあま恵寿荘
〒490-1115 あま市坂牧向江24
TEL:052-462-0124
FAX:052-462-0125
URL: https://www.ama-k.com

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