２　子育て支援の充実

• 子どもが健やかに成長し、人間性豊かな社会人として育つ上で、家庭や地域の役割は極めて大きいものがありますが、近年の少子化、核家族化の進行に伴う家族形態の変化や都市化の進展に伴う近隣との人間関係の希薄化などにより、家庭や地域における子育て機能の低下が指摘されています。
  
  
• 近年では、「密室育児」による孤立、閉塞感及び子育てへの不安や負担感を増大させている子育て中の親が増えており、専業主婦家庭や母子家庭等を含めたすべての子育て家庭への支援を行う観点から、地域における様々な子育て支援サービスの充実を図っています。
  
  
• 市町村においては、保育所等の施設や児童及びその保護者の居宅において児童の養育を支援する事業、及び保護者からの相談に応じ、情報の提供及び助言を行う事業を着実に実施することが求められています。
  
  
• 保育所は、保護者の就労等により家庭において養育することができない乳幼児の保育を行うための福祉施設であり、本県においては、約13万人の児童が入所しています。
  
  
• 愛知県においても全国的な傾向と同様に出生数は低下しつつありますが、女性の就労率の上昇などにより学齢前児童数に対する保育所入所児童数の割合は、増加してきており、保育実施児童数も微増傾向にあります。
  
  ＜表　３章−I−10＞

  全国と愛知県との保育所定員等の比較　　　　　（平成16年４月１日現在） 区分 学齢前児童数 保育所定員 保育実施 児 童 数 学齢前児童数に 占める定員の割合 定員充足率 全　国 約700万人 2,028,045 1,966,929 29.00% 97.00% 愛知県 約25万人 （約44万人） 89,067 （144,137） 79,266 （130,691） 35.60% （32.80%） 89.00% （90.70%） ※　愛知県の（　）は、名古屋市、中核市を含む。

  
  ＜表　３章−I−11＞

  県内の保育所数・保育所定員数　　　（平成16年４月１日現在） 区分 公立 私立 計 保育所数 621(830) 126(352) 747(1,182) 定員数 73,710 (96,593) 15,357 (47,544) 89,067 (144,137) ※　（　）は、名古屋市、中核市を含む。

  
  
• 愛知県においては、従来から全国と比較して、就学前児童数に対する保育所定員の割合が大きく、保育所受入れ枠については、比較的余裕がありますが、保育需要の急増している一部地域において、入所待機が発生しています。
  
  ＜表　３章−I−12＞

  全国と愛知県における待機児童数及び待機率（平成16年４月１日現在） 区分 待機児童数 待機率 愛知県 184人(663人) 0.2％(0.5％) 全国 24,245人 1.20% ※　愛知県の（　）は、名古屋市、中核市を含む。

  
  
• また、小売・飲食サービス業などの第３次産業を中心に、就労形態がますます多様化しているとともに、共働き世帯の増加やパート就労者の増加などに伴って短時間もしくは断続的な一時預かりの需要が増加しています。
  
  
• 保育の実施主体は市町村であり、愛知県では、民間保育所の運営に要する費用への助成を行っています。
  
  
• 知県では、地域の子育て支援や多様な保育ニーズに対応できる高度な専門性と実践力を持つ保育士が求められていることから、人材の確保や養成に努めることとして、現任保育士指導者養成研修を実施しています。
  　 平成16年度においては、現任保育士指導者養成研修（園長・主任コース、中堅コース各60人）を実施しました。
  　 また、愛知県教育委員会においても、各種研修事業を実施し、幼稚園教員や保育士の指導力や資質の向上を図っています。
  
  
• 愛知県が愛知県社会福祉協議会に委託して実施している社会福祉関係職員研修事業や民間で行われている各種研修会の情報を保育所などに提供し、保育士の研修への参加を促しています。
  
  
• 愛知県では、市町村が実施する次の保育・子育て支援事業について、着実な推進を図るため助成その他の支援を行っています。

  ・　保護者の働き方の多様化に伴う保育ニーズにこたえるため、保育所における休日保育の実施、及び継続的に週２、３日程度保育に欠ける児童を預かる「特定保育事業」の実施

  ・　保護者の急病や保護者の育児疲れの解消のために一時的に預かる「一時保育事業」の実施

  ・　子育てに関する相談や情報発信を行い地域における子育て家庭を支援する中核的役割を担う、「地域子育て支援センター事業」の実施

  ・　保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している子どもが、授業の終了後、安全な場所で、遊びを通じて自主性、社会性、創造性などを養う、「放課後児童健全育成事業」の実施

  ・　放課後児童クラブなどの子育ての支援を行う際の拠点となる施設の整備の促進
  
  

• 子育ては妊娠を自覚したときから始まり、そのときの気持ちが子どもが誕生してからの子育てに影響すると言われています。
  　 このため、愛知県では、産後うつ病など養育支援が必要な家庭への支援を医療機関（地域周産期医療センター）や保健医療等関係機関と協力して実施しています。
  
  
• 愛知県では、子育て支援ＮＰＯが、地域の既存資源である商店街の空き店舗を利用して、親子が集う場所を提供し及び子どもを一時預かる「子育て広場」を設置・運営する事業に対して助成しています。
  
  
• 愛知県では、私立幼稚園に対する補助制度（幼児教育充実推進費補助金（預かり保育推進分、休業日預かり保育推進分、子育て支援分））を通じて、預かり保育の実施や、地域の幼児教育センターとして施設や機能を地域に開放し子育てを支援するなど、幼稚園における養育支援の充実に努めています。
  
  
• 愛知県では、地域子育て支援ＮＰＯ、子育て支援サークル等が企画する「みんなで子育て推進モデル事業」の実施やその成果の普及などを通じて、地域における子育て支援に関する広報・啓発に努めています。
  
  
• 愛知県では、ホームページ「あいち子育てネット」を開設し、各種子育て支援や相談に関する情報を提供しています。
  
  
• 愛知県では、乳児が必要な医療を容易に受けられるとともに、子育ての経済的負担を軽減するために乳幼児医療費支給制度を行っています。
  　 また、子育て家庭の生活の安定と子どもの健全な育成を目的として、小学校３年生までの子どもを養育している人に対して、国の制度に基づき児童手当を支給しています。さらに、教育費にかかる負担を軽減するため、私立幼稚園や私立高等学校における授業料の軽減等の各種支援を行っています。
  
  
  

• 愛知県においては、就学前児童数に対する保育所定員の割合が全国に比べ高く、さらに、今後学齢前児童人口が減少していくことが見込まれることから、県全体としての保育所定員は、今後の保育需要に対して概ね充足している状況にありますが、保育需要が急増している名古屋市周辺など一部の市町村では入所待機児童が発生している状況にあり、この解消を進める必要があります。
  
  
• 児童虐待、家庭での子育て機能の低下など、社会情勢の変化に伴い、時代時代で変化していく保育士に求められる知識、技能の習得などに対応した研修を実施する必要があります。
  
  
• 保護者の就労形態の多様化などに伴う休日保育、一時保育の需要や、保護者の育児負担感を軽減する取組の重要性が増してきていますが、ニーズに十分応えられるようサービスの供給体制が整っていないことから、サービス供給の充実を図るため支援していく必要があります。
  
  
• 放課後児童健全育成事業については、核家族化や女性のフルタイム労働の増加などライフスタイルの多様化や、高学年の児童の居場所の確保や異年齢のつながりも大切になっている中で、今後とも需要が増加するものと考えられることから、地域の需要に適切に対応していく必要があります。
  
  
• 育て支援、児童虐待の予防は、妊娠中からの対策が必要であり、また、養育支援を必要とする家庭の情報を早期に把握し支援するため、保健、医療等関係機関の連携を強化する必要があります。
  
  
  

• 名古屋市周辺など一部の市町村に入所待機児童が発生していることから、この解消に向けてそれぞれの市町村の地域実情を踏まえて効果的な解消対策が図られるよう、市町村を指導・支援していきます。
  
  
• 休日保育、夜間保育など、保護者の働き方に応じた多様な保育サービスの充実を支援していくとともに、一時保育・特定保育については、地域のニーズに応じて実施されるよう取組の促進を図っていきます。
  
  
• 現任の保育士や幼稚園教員に対する研修を引き続き行って、保育に係る様々な知識・技術だけでなく、地域の子育て支援や多様な保育ニーズに対応できる専門性や実践力といった資質の向上を図っていきます。
  
  
• 保育所のサービス内容を評価する仕組みを設けるとともに、評価制度の定着を促進し、保育サービスの質の向上を図っていきます。
  
  
• 平成18年度に制度化される就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設については、市町村の意向を踏まえ、その設置に向けた技術的な支援をしていきます。
  
  
• 地域子育て支援センターについては、ニーズの極小な市町村を除き、すべての市町村において設置され、子育て支援ＮＰＯ等との連携により事業を効果的に実施できるよう支援していきます。
  
  
• 放課後児童健全育成事業については、小学校区に１か所程度の実施が望まれますが、地域の実情に応じ、待機児童が生じないようにクラブの充足を図るなど引き続き働きかけます。
  
  
• 養育支援を必要とする家庭の情報を早期に把握し支援できるよう、関係機関との連携等体制の整備を推進し、必要な家庭に対し家庭訪問等が実施できるよう市町村に対し技術的支援をしていきます。
  
  
• 地域における子育て支援の充実を図るため、広報・啓発の取組に子育て支援ＮＰＯ等の参加を促進していきます。
  
  
• 乳幼児医療費支給制度などの子育ての経済的負担を軽減するための支援を実施していきます。
  
  
• 保育所における保育については、「保育所保育指針」に基づき実施されることはもちろんのこと、その運営に際し、特に次の点について重点的に指導していきます。 　

  ・　児童の安全対策、地震等災害対策、虐待防止対策などにおける地域との連携の推進
  ・　地域の乳幼児などの養育に関する相談に応じ、助言するなど、その専門的機能の地域への提供の推進
  ・　「人権を大切にする心を育てる」保育の一層の推進
  ・　「食育」の推進
  ・　保育サービスの評価など保育の質の向上のための取組の推進
  
  

  　　 　　
• 市町村が行動計画に定め、地域の特性や創意工夫を活かしつつ重点的に実施する、次世代育成支援対策交付金の対象事業については、円滑に実施されるよう情報提供、相談、助言などの支援を行っていきます。交付金の対象となる主な事業は、次のとおりです。

  ・つどいの広場事業
  　 乳幼児を養育する親とその子が気軽に集える場所を提供し、育児相談や子育て関連情報の提供を行う。
  ・子育て短期支援事業
  　 親の病気、残業などの場合に児童養護施設等において一時的に預かるショートステイ、トワイライトステイを実施する。
  ・乳幼児健康支援一時預かり事業
  　 保育所に通所中の児童が病気の回復期にあり集団保育が困難な時期に、児童の保育所、病院等における一時預かり等の事業を行う。
  ・ファミリー・サポート・センター事業
  　 子育て中の労働者や主婦等を会員として、地域における育児の相互援助活動を行う。
  ・延長保育促進事業
  　 保育所の基本的な開所時間である11時間を超えて保育を実施する。
  ・育児支援家庭訪問事業
  　 出産後間もない時期や養育が困難な家庭に対して、育児・家事の援助や、技術指導等を行うことにより、個々の家庭の抱える養育上の諸問題の解決、軽減を図る。
  ・総合施設モデル事業（平成17年度限り）
  　 就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設について、平成18年度の本格実施に向けて、教育・保育の内容や職員配置、施設設備のあり方に関する検討を行うためのモデル事業
  　　 　　 　　

• 待機児童の約８割が低年齢児であることから、低年齢児の受入れ拡大を促進していくため、県が独自に助成している１歳児保育実施事業を継続していきます。
  
  
• 現任の保育士・幼稚園教員に対する研修を、引き続き実施していきます。
  
  
• 休日保育事業を、市町村が設定した目標の達成に向け、引き続き促進していきます。
  
  
• 夜間における保育ニーズに対応する夜間保育所の運営費に対し支援していきます。
  
  
• 一時保育事業を、市町村が設定した目標の達成に向け、引き続き促進していきます。
  
  
• 特定保育事業を、市町村が設定した目標の達成に向け、引き続き促進していきます。
  
  
• 私立幼稚園に対する補助制度を通じて、引き続き幼稚園における養育支援の充実に努めていきます。
  
  
• 地域子育て支援センター事業を、市町村が設定した目標の達成に向け、引き続き促進していきます。
  
  
• 放課後児童健全育成事業を、市町村が設定した目標の達成に向け、引き続き促進していきます。
  
  
• 地域における子育て支援に関する広報・啓発の取組に、引き続きＮＰＯ等の参加を促進していきます。
  
  
• 乳幼児医療費支給制度を、引き続き実施していきます。
  
  
• 児童手当を、引き続き支給していきます。
  
  
• 次世代育成支援対策交付金の対象事業については、市町村が設定した目標の達成に向け、支援していきます。

項目	実施主体	現状	平成21年度までの目標
地域の実情に応じた 保育所定員の確保 （保育所定員）	市町村	保育所定員 89,067人(144,137人)	89,000人(142,500人)
地域の実情に 応じた保育所定員の確保 （低年齢児保育実施児童数）	市町村	低年齢児の保育実施 12,882人(26,834人)	17,400人(32,700人)
休日保育の促進	市町村	休日保育実施保育所 7か所・5市町村 (10か所・7市町村)	35か所・31市町村 (58か所・35市町村)
夜間保育の促進	市町村	夜間保育所数 　　−　　 (4か所・1市町村)	1か所・1市町村 (6か所・3市町村)
特定保育の促進	市町村	特定保育　　1か所・1市町村 （1か所・1市町村）	21か所・15市町村 (29か所・17市町村)
一時保育の促進	市町村	一時保育　125か所・40市町村 （188か所・44市町村）	197か所・61市町村 (333か所・65市町村)
地域子育て支援 センターの設置の促進	市町村	地域子育て支援センター 57か所・44市町村 （77か所・48市町村）	107か所・68市町村 (179か所・72市町村)
放課後児童健全 育成事業の促進	市町村	放課後児童クラブ 413か所・65市町村 （722か所・69市町村）	496か所・72市町村 (849か所・76市町村)

<次世代育成支援対策交付金対象事業>

項目	実施主体	現状	平成21年度までの目標
つどいの広場の 設置の促進	市町村	つどいの広場　　　　− (1か所・1市町村)	41か所・28市町村 (58か所・31市町村)
乳幼児健康支援 一時預かり事業 (病後児保育)の 促進（施設型）	市町村	施設型　　　6か所・6市町村 (8か所・8市町村)	30か所・27市町村 (41か所・31市町村)
乳幼児健康支援 一時預かり事業 (病後児保育)の 促進（派遣型）	市町村	派遣型　　　　　　1市町村 (1市町村)	2市町村 (3市町村)
子育て短期支援 事業の促進	市町村	子育て短期支援事業 38か所・17市町村 (60か所・21市町村)	52か所・23市町村 (82か所・27市町村)
ファミリー・サポー ト ・センターの 設置の促進	市町村	ファミリー・サポート・センター 24か所・24市町 (28か所・28市町)	36か所・36市町 (40か所・40市町)
延長保育の促進	市町村	延長保育実施保育所 191か所・46市町村 (367か所・50市町村)	328か所・70市町村 (594か所・74市町村)
育児支援家庭訪 問事業の促進	市町村	育児支援家庭訪問事業 11市町(11市町)	すべての市町村

※　（　　）は名古屋市・中核市を含む。

 

【 待機児童の待機率 】
待機率＝待機児童数÷保育所入所児童数×100

【 低年齢児 】
保育所入所児童のうち３歳未満の児童を言います。

【 夜間保育所 】
認可保育所としての設置要件を満たすもののうち、主に夜間に保育を行う夜間保育所として、別に認可を受けた施設であり、開所時間は、概ね午前11時から午後10時までの11時間です。

【 幼児教育充実推進費補助金（預かり保育推進分） 】
通常の教育時間の終了後、希望者を対象として行う預かり保育を２時間以上実施している幼稚園に対して補助するものです。

【 幼児教育充実推進費補助金（休業日預かり保育推進分） 】
休業日に預かり保育を実施している幼稚園に対して補助するものです。

【 幼児教育充実推進費補助金（子育て支援分） 】
地域の幼児教育センターとして施設や機能を地域に開放し、積極的に子育てを支援していく役割を果たす事業を実施する幼稚園に対して補助するものです。