３ 要保護児童等への支援の充実
（1）児童虐待防止対策等の充実
- 児童虐待は、児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことから、児童虐待の予防及び早期発見、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援が重要となります。
- 児童虐待は、年々増加の一途をたどっています。
＜表 ３章−I−16＞
愛知県の児童相談センターにおける虐待相談件数の推移 （件）
※ 名古屋市を除く。年度
9年度
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
件数
170
191
243
547
572
709
734
- 児童虐待は、以下の４つに分類され、その内「身体的虐待」が最も多く、虐待者は実母が約６割を占めています。
■「児童虐待」とは、保護者（親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。）がその監護する児童（18歳に満たない者をいう。以下同じ。）に対し行う次に掲げる行為をいう。
- 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
- 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること
- 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前２号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
- 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力（配偶者（婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。）の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。）その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
＜表 ３章−I−17＞
※ 名古屋市を除く愛知県の児童相談センターにおける虐待の種類別相談件数（平成15年度） （件） 身体的虐待
ネグレクト
性的虐待
心理的虐待
合計
件数
372
270
24
68
734
（％）
50.7%
36.8%
3.3%
9.2%
100%
＜表 ３章−I−18＞
※ 名古屋市を除く愛知県の児童相談センターにおける主たる虐待者別相談件数（平成15年度）（件） 父
母
その他
合計
実父
実父以外
実 母
実母以外
件数
164
47
452
23
48
734
（％）
22.4%
6.4%
61.6%
3.1%
6.5%
100%
- 平成16年10月1日から施行された改正後の「児童虐待の防止等に関する法律」（平成12年法律第82号）では、「国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援、並びに児童虐待を行った保護者に対する親子の再統合の促進への配慮、その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならない」とされており、児童虐待の予防や発見から保護後のケアまで、切れ目のない体制の整備を行っています。
- 児童委員は、地域において住民の立場に立って、子どもや家庭に関する相談、援助活動を行っています。また、児童福祉に関する事項を専門的に担当する主任児童委員が設置されています。
- 愛知県では、児童虐待対応の中心的機関である児童相談センターの体制強化を図っています。
・児童福祉司の増員（平成12年度→平成16年度28人増）
・児童虐待対応弁護士の設置
児童相談センターの法的なバックアップを行う弁護士を配置する。・児童虐待対応協力員の設置
児童相談センターにおいて児童福祉司と協力して児童虐待に関する調査、関係機関との連絡調整を行う協力員を配置する。・児童虐待対応精神科医師の設置
被虐待児童や保護者のカウンセリングが効果的に行われるよう精神科医師を配置する。・児童虐待対応法医学専門医師の設置
児童の受けた傷害が虐待によるものであるかの鑑別診断を行う法医学の専門医師を児童相談センターに配置する。
- 愛知県では、児童虐待事例に対して関係機関が連携して迅速かつ適切な対応ができるよう児童虐待対応のネットワークやサポートチーム体制の構築、連携のためのマニュアル作成を行っています。
・関係機関連絡調整会議
児童相談センターごとに、管内関係機関によるネットワーク会議を開催する。・危機児童・家庭サポートチームの設置
・児童虐待対応関係機関連携マニュアルの作成
単独では対応困難な事例に対し、児童相談センターを中心に地域関係機関の実務担当者がチームを組み協働して対応する。
- 愛知県では、被虐待児の保護後のケア体制を充実するため、一時保護所への心理職員の配置や、里親や施設へ委託した際の支援を行っています。
・一時保護所への心理職員の配置
被虐待児を一時保護所において適切に処遇できるよう心理職員を配置する。・里親への支援
被虐待児を里親の家庭的な環境の中で養育するため、里親に対し、研修や相談指導等の支援を行う。・一時保護委託施設への支援
施設等に一時保護委託した場合、委託費に含まれない教材費等や健康診断費用の一部を支援する。
- 愛知県では、児童虐待防止のための県民や関係機関職員等に対する啓発や研修を実施しています。
・虐待防止キャンペーン事業
児童虐待防止のために広報・啓発を行い、県民一丸となって児童虐待防止に努める体制を作る。・主任児童委員等研修会
主任児童委員等地域の児童福祉関係者を対象として研修を実施する。・ＮＰＯとの連携による研修の実施
児童虐待対応に関する関係機関職員向けセミナーを「ＮＰＯ法人 子どもの虐待防止ネットワーク・あいち（ＣＡＰＮＡ）」に委託する。
- 愛知県では、子どもを持つ家庭の悩みや問題等について電話での相談を受け付けています。
・家庭支援相談等事業（子ども・家庭110番） 電話052-953-4152
中央児童・障害者相談センターにおいて電話相談を実施している。一般相談だけでなく、心理・教育・法律等の専門家による相談も受け付けている。
また、インターネット、電子メールの利用者が増えていることから、相談受付体制の整備のため「子どもwebページ」を開設している。
＜アドレス＞ https://www.pref.aichi.jp/jiso/
- 児童虐待は依然として増え続けており、これまでの児童虐待対応体制を更に強化する必要があります。
- 児童虐待を未然に防止するため、市町村における子育て支援や児童相談体制整備などの予防対策を充実させていく必要があります。
- 子育て支援、児童虐待の予防は、妊娠中からの対策が必要であり、また、養育支援を必要とする家庭の情報を早期に把握し支援するため、保健、医療等関係機関の連携を強化する必要があります。
- 児童福祉法（昭和22年法律第164号）の改正により、県民に身近な立場にある市町村が一義的な児童相談の窓口と位置付けられたことから、市町村では早急な相談体制整備が必要です。
特に、児童虐待の早期発見や早期対応、虐待のある家庭への総合的支援のために、市町村が関係機関と連携し協働して対応することが重要となります。県としては、市町村をバックアップしていく必要があります。
- 市町村が行う児童相談において、適切に対応ができるよう、児童相談センターの専門的機能を強化し、バックアップしていきます。
- 児童虐待の予防や発見から保護後のケアまで、切れ目のない対応ができるよう、市町村のネットワーク構築など体制を整備し、地域における関係機関の連携強化を支援していきます。
- 市町村による要保護児童のいる家庭への支援に対し連携して対応していきます。また、虐待を受け保護した児童の入所する施設等におけるケア体制（一時保護体制、里親への支援など）を充実していきます。
- 養育支援を必要とする家庭の情報を早期に把握し支援できるよう、関係機関との連携等体制の整備を推進し、必要な家庭に対し家庭訪問等が実施できるよう市町村に対し技術的支援をしていきます。
- 県民や関係機関職員等に対する児童虐待防止のための啓発や、児童虐待対応に関する関係機関職員向けセミナーなどの研修を実施していきます。
- 子育てに関わるＮＰＯなどの団体が実施する地域における児童虐待防止活動を支援していきます。
- 子どもを持つ家庭の悩みや問題等に関する電話相談（子ども・家庭110番）については、中央児童・障害者相談センターにおいて実施していきます。
また、インターネットや電子メールを活用した相談受付体制として、「子ども相談webページ」を開設していきます。
- 市町村に対する後方支援の役割を担う児童相談センターが有する必要な情報やノウハウを市町村に提供することにより、地域における児童虐待対応体制、児童相談体制の整備を支援していきます。
- 家庭の養育環境に恵まれないなど様々な問題を抱え、保護を必要とする子どもとその家庭に対し、児童養護施設等の児童福祉施設の充実を図るなど、自立に向けた支援を推進していきます。
- 児童養護施設等の児童福祉施設については、保護を必要とする子どもの受入れに積極的に対応し、入所児童の処遇の向上を図るよう、整備を促進していきます。
- 里親制度の活用を図るなどして、両親が死亡したり、長時間家庭復帰が困難な子どもを、家庭的雰囲気の中で養護できるようにしていきます。
- 児童相談センターの専門的機能を、引き続き強化していきます。
- すべての市町村におけるネットワークの構築を目標とするなど、地域における関係機関の連携強化を、引き続き支援していきます。
- 虐待を受け保護した児童の入所する施設等におけるケア体制（一時保護体制、里親への支援など）を、引き続き充実していきます。
- 児童虐待防止のための啓発や研修を、引き続き実施していきます。
- 電話相談「子ども・家庭110番」や「子ども相談webページ」を、引き続き実施していきます。
- 市町村における児童虐待対応体制、児童相談体制の整備を支援していきます。
- 児童福祉施設は、引き続き整備を促進していきます。
項目 |
実施主体 |
現状 |
平成21年度までの目標 |
児童虐待に対応する関係機関の連携強化 |
市町村 |
児童虐待に対応するネットワークの構築（47市町村） |
すべての市町村 |