３　要保護児童等への支援の充実

• 本県の18歳未満の障害児については、各手帳所持者数でみると、身体障害のある子どもは横ばいの傾向にありますが、知的障害のある子どもは、増加の傾向にあります。
  
  ＜表　３章−I−21＞
  県内における18歳未満の障害児(手帳所持者)数の推移（各年４月１日現在の人数）
  

  区分		平成14年	平成15年	平成16年
  身体障害者手帳所持者数 ※（　）は、名古屋市・中核市を除く。	視覚障害 聴覚平衡障害 音声言語障害 肢体不自由 内部機能障害	204(121) 736(421) 22(9) 2,952(1,715) 1,098(644)	195(92) 763(382) 25(10) 2,995(1,597) 1,048(576)	190(89) 774(383) 26(9) 3,083(1,625) 1,007(566)
  	計	5,012(2,910)	5,026(2,657)	5,080(2,672)
  療育手帳（知的障害）所持者数 ※（　）は、名古屋市を除く。		8,519(5,885)	8,900(6,323)	9,546(6,755)

  
  
• 障害は、できる限り早期に機能訓練等適切な対応をすることにより、障害を軽減したり、運動機能を回復したり、社会的な自立が可能となります。そのため、障害の早期発見・早期療育体制の充実や、保健・医療・福祉の連携に努めています。
  
  
• 愛知県では、在宅の障害のある子どもが、身近な地域で療育指導、相談が受けられるよう、訪問や外来による健康診査、保護者や関係者へ療育指導や助言を行う障害児（者）地域療育等支援事業を実施しています。
  
  ＜表　３章−I−22＞
  県内における障害児（者）地域療育等支援事業実施施設（平成16年４月１日現在）
  

  愛知県心身障害者コロニー、愛知県青い鳥医療福祉センター、愛知県立心身障害児療育センター第二青い鳥学園、知的障害者更生施設「まどか」、知的障害者通所授産施設「西尾作業所」、知的障害児施設「岩崎学園」、肢体不自由児通園施設「豊橋あゆみ学園」、豊田市こども発達センター、知的障害者更生施設「愛知県弥富寮」

  
  
• 心身障害者コロニーの中央病院は、障害のある人の専門病院として障害の予防と治療にあたっています。発達障害研究所は、心身障害の発生を未然に防ぐことを究極の目的とし、心身障害の原因とそれに基づく予防対策の樹立や、障害のある人の治療・教育方法、福祉に関する総合的な研究を行っています。
  　 また、コロニー内に自閉症・発達障害支援センターを設置し、相談、療育・就労支援、関係機関・施設とのネットワーク化を図っています。
  
  
• 愛知県では、障害のある子どもたちが、身近な地域で安心して生活できるよう、次の居宅生活支援に取り組む市町村に対して助成しています。
  ・　居宅で日常生活を営むため、ホームヘルパーを派遣して、入浴、排泄及び食事等の介護を行うこと。
  ・　通園の方法により日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練を行う児童デイサービスを実施すること。
  ・　保護者が病気などの理由により、一時的に子どもの介護ができない場合に、子どもを短期間施設で保護を行うショートステイを実施すること。
  
  
• 愛知県では、在宅の重症心身障害児が施設に通園して、そこで運動機能の低下防止及び発達を促す訓練などの療育や、保護者等が家庭における療育技術を習得する重症心身障害児（者）通園事業を実施しています。
  
  
  
• 障害児施設において、障害のある子どもの治療や生活指導を行っています。
  
  ＜表　３章−I−23＞
  県内における障害児施設の整備状況　　　　　　　（平成16年４月１日現在）
  

  施設種別	施設数	定員	利用者数	備考
  知的障害児施設	6か所	469人	362人
  知的障害児通園施設	20	651	606
  盲ろうあ児施設	2	47	41
  肢体不自由児施設	2	190	98	通園部門含む
  肢体不自由児通園施設	5	180	164
  重症心身障害児施設	2	300	296

  
  
• 障害のある子どもについては、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、一人一人の障害の状態に応じ、特別な配慮の下に、きめ細かな教育を行う必要があります。
  　 このため、障害のあることにより、通常の学級における指導だけではその能力を十分に伸ばすことが困難な子どもについては、盲学校、聾学校及び養護学校や小・中学校の特殊学級における教育、あるいは通級による指導を実施しています。
  
  
• 県教育委員会では、特殊教育を担当する指導主事の見識を深め指導力の向上を図るため、特殊教育に携わる教員の研修を実施しています。
  
  ＜表　３章−I−24＞
  特殊教育に携わる教員を対象とした研修　　　（平成15年度）
  

  研修名	対象者
  通級指導担当指導教員研修	小・中学校特殊学級担当教員
  特殊教育研究発表大会	盲・聾・養護学校教員 小・中学校特殊学級担当教員
  学習障害児理解推進事業	小・中学校校長・教頭
  教育課程研究集会	盲・聾・養護学校教員 小・中学校特殊学級担当教員
  情報発信ネットワーク研修	盲・聾・養護学校教員

  
  
• 県教育委員会では、障害のある生徒の学校生活から社会生活への円滑な移行を図るため、産業現場における実習を通して職業生活の実際を体験させる、自立支援推進事業を実施しています。
  　 また、個々の障害児の障害の実態に応じた教育を推進するため、関係機関が連携して入学前就学相談や養護学校体験入学を実施するなど、適切な就学ができるよう支援を行っています。
  　 さらに、聴覚に障害のある幼児には、発音発語や言葉の獲得のため、早期からの教育が必要であり、また、保護者は、保護者の果たす役割を正しく認識し、家庭で配慮することについて理解し、日常生活の中で留意する必要があるため、聾学校が相談に応じ、保護者の支援を行っています。平成15年度において、産業現場実習を高等部生徒960人、入学前就学相談を８か所（相談員120人）、養護学校体験入学を28回（14校）、聾幼児教育相談事業を４校（相談員５人）実施しました。
  
  
• 県教育委員会では、平成15年度から「『地域・人・未来』へ発信する学校づくり推進事業」として、盲・聾・養護学校の中から３校を指定し、各学校が創意工夫を生かして魅力ある学校づくりを進めています。
  
  
• 平成15年度から、日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒の自立の促進、健康の維持増進を図ることを目的として、看護師資格のある者を肢体不自由養護学校に配置して研究を行う「医療的ケア実践研究事業」を実施しています。
  
  
• 平成16年度に、養護学校の過大化に伴う課題の解決に向けた検討を行うため、県教育委員会関係者、県立盲・聾・養護学校の障害種別代表校長等で構成する養護学校課題研究調査委員会及び同専門部会を組織して調査研究を進めています。
  
  
• 愛知県では、障害児を２人以上就園させている私立幼稚園に対して助成を行うことにより、私立幼稚園における障害児教育の充実に努めています。
  　 また、市町村では、保育所において障害児を積極的に受け入れており、多くの障害児が入所しています。
  
  
• 愛知県では、市町村において、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生が利用する放課後児童クラブへの障害児の受入れが促進されるよう、助成等の支援に努めています。
  
  

• 障害児（者）地域療育等支援事業は、障害保健福祉圏域のバランスと地域の需要を考慮して実施施設を増やしていく必要があります。
  
  
• 発達障害者支援法（平成16年法律第167号）に基づき、地域の保健、医療、福祉、教育、労働分野の関係機関が連携して、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害（ＬＤ）、注意欠陥多動性障害（ＡＤＨＤ）などの発達障害者に対する、乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応した一貫した支援体制の整備を図る必要があります。
  
  
• ホームヘルプサービス、児童デイサービスやショートステイなどの居宅生活支援については、必要なときに必要なサービスが利用できるよう、サービス提供体制の整備や相談支援体制の充実を図る必要があります。
  
  
• 障害のある中高生の放課後や、長期休暇期間における活動の場を確保するとともに、障害児を持つ親の就労やレスパイト（休息）を支援する必要があります。
  
  
• 障害のある子どもたちに「生きる力」を育み、可能な限り社会的な自立や参加を実現させる観点に立って、保護者からの早期相談体制の充実、職業教育の改善・充実及び進路指導体制の強化、教員への研修内容の充実など、教育指導内容・方法・体制の一層の充実や多様化に努め、教育条件の整備を推進する必要があります。
  
  
• 障害の程度に応じ特別の場で指導を行うこれまでの「特殊教育」から、ＬＤ，ＡＤＨＤ，高機能自閉症を含め、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図っていく必要があります。
  
  
• 盲・聾・養護学校においては、児童生徒の障害の重度・重複化が顕著となっており、日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒が増加しています。
  
  
• 知的障害養護学校においては、中学校卒業者の高等部への進学希望の高まりに加えて、学級編制基準の改善による学級増加等によって過大化が著しくなっており、この過大化解消のための具体的な方策を検討する必要があります。
  
  
  

• 障害児（者）地域療育等支援事業については、人口30万人当たりに１か所の実施施設の設置を目途に、事業を充実していきます。
  
  
• 心身障害者コロニーにおいては、療育施設を始め、中央病院、発達障害研究所、自閉症・発達障害者支援センター等の施設における、療育、職業訓練、医療、専門的研究などその幅広い機能を生かしながら、障害のある子どもの地域での自立生活等への支援の充実を図っていきます。また、本県における障害児（者）福祉の指導的中枢的役割を担っていきます。
  
  
• 発達障害者支援法に基づき、早期発見、就学前や就学中の発達支援、就労支援、地域における生活支援等必要な措置を講じるため、関係機関との連携協力により、発達障害者の生活実態を把握し、乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応した支援体制の整備を図っていきます。
  
  
• 身近な地域での居宅生活支援を推進するため、次の取組に努めていきます。
  ・　必要なときに必要なホームヘルプサービスが提供されるよう、サービス提供事業所の整備充実
  ・　児童デイサービス事業所の整備充実・　必要なときにいつでもショートステイサービスが利用できるよう、事業所の整備充実
  
  
• 保育所や放課後児童クラブにおいて、障害児の受入れに必要な環境改善を行う場合の助成や、発達障害児への適切な配慮が図れるよう保育士や放課後児童指導員に対する研修の充実などの支援に努めていきます。
  
  
• 障害のある中高生の放課後などの活動の場については、そのニーズを把握しながら、市町村との連携のもと、デイサービス事業所、養護学校・小中学校の空き教室などを活用して確保に努めていきます。
  
  
• 障害のある子どもたちに配慮した教育の充実を図るため、次の取組に努めていきます。
  ・　特殊教育を担当する指導主事の見識を深め、指導力の向上を図り、その円滑な活動を推進します。また、特殊教育に携わる教員の研修を行い、教員の資質を高めるとともに、特殊教育の質の向上を図ります。
  ・　障害のある生徒の学校生活から社会生活への円滑な移行を図るため、産業現場等における実習を通して、個々の生徒に職業生活の実際を体験させます。
  ・　個々の障害児の実態に応じた教育を進めるためには、適切な就学が大きな要件となります。そのため、関係機関が連携して相談等を実施し、適切な就学ができるように支援していきます。
  ・　聴覚に障害のある児童には、聴覚の活用や言葉の獲得のため、早期からの教育が必要です。また、保護者が果たす役割を正しく認識するために、家庭で配慮することや日常生活の中で留意しなければならないことについて、聾学校が相談に応じ、保護者を支援していきます。
  ・　日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒が在籍する肢体不自由養護学校に看護師を配置します。
  
  
  
• 障害のある幼児・児童・生徒の教育的ニーズを重視して、適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図っていくための体制づくりを行います。
  
  
• 知的障害養護学校の過大化に伴う解決策として、学校の適正規模化や通学時間の短縮等について検討を進める必要があります。とりわけ安城養護学校の過大化解消については、喫緊の課題として、具体的な方策を講じていきます。
  
  

• 障害児（者）地域療育等支援事業を実施する施設を、引き続き拡大していきます。
  
  
• 地域における発達障害者への支援体制の整備を推進していきます。
  
  
• 居宅支援サービス（ホームヘルプサービス、児童デイサービス、ショートステイ）については、身近な地域における各種社会資源を有効に活用し、引き続き推進していきます。
  
  
• 小・中高生障害児の放課後等における活動の場の確保を推進していきます。
  
  
• 通級指導担当教員研修や特殊教育研究発表大会の開催など特殊教育指導推進事業を、引き続き実施していきます。
  
  
• 自立支援推進事業については、産業現場など実習先の拡充を図りつつ、引き続き実施していきます。
  
  
• 入学前就学相談、養護学校体験入学などの個に応じた教育推進事業を、引き続き実施していきます。
  
  
• 幼稚部を設置する聾学校４校に教育相談員を配置し、聾幼児のための教育相談を、引き続き実施していきます。
  
  
• 特別支援教育への転換に向けて、平成15・16年度に実施した「特別支援教育推進体制モデル事業」の成果を全県に広め、推進体制の構築に努力していきます。
  
  
• 県立高等学校再編整備実施計画に基づき、衛生看護科などを設置している県立桃陵高等学校に養護学校高等部を併設し、両校の生徒の交流を推進することにより、ノーマライゼーションの理念の実現を目指します。
  
  
• 安城養護学校の過大化解消のため、平成21年４月の開校に向けて、岡崎市内に知的障害養護学校を新設します。
  
  
  

項目	実施主体	現状	平成21年度までの目標
障害児（者）支援制度の実施（ショートステイ）	市町村	実施か所数：123か所 （名古屋市、中核市を含む）	159か所 （平成19年度） （同左）
障害児（者）地域療育等支援事業の推進	県	実施施設数：　9か所 （中核市を含む）	13か所 （平成19年度） （同左）

 

【 発達障害 】
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものを言います。（発達障害者支援法第２条（定義）による）

【 学習障害（ＬＤ） 】
基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害を指します。

【 注意欠陥多動性障害（ＡＤＨＤ） 】
年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたす障害を指します。

【 高機能自閉症 】
自閉症（３歳くらいまでに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害）のうち、知的発達の遅れを伴わないものを言います。

【 特別支援教育 】
「特別支援教育」とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、ＬＤ、ＡＤＨＤ、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人ひとりの教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うことを言います。
　 平成13年１月に「21世紀の特殊教育の在り方について（最終報告）」、平成15年３月に「今後の特別支援教育の在り方について（最終報告）」が、それぞれ調査研究協力者会議から示され、障害の程度等に応じ特別の場で指導を行うこれまでの「特殊教育」から、障害のある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図る方向付けがなされました。