２　子どもの生きる力の育成

• 道徳教育は、学校教育において児童生徒の人間形成上極めて重要な役割を持つものです。
  　「生きる力」の核となる豊かな人間性を培う面から、また、児童生徒の問題行動が社会問題化している現状からも、道徳教育の一層の充実が求められています。
  　また、児童生徒の社会性や豊かな人間性を育むためには、成長段階に応じて、ボランティア活動などの社会奉仕体験、自然体験、職場体験などの様々な体験活動を行うことは極めて有意義です。
  
  
  
• 県教育委員会では、道徳教育の一層の充実と、県民全体で「心を育てる教育」に取り組む気運を醸成するため、平成元年度から、５月と11月を「心の教育推進活動強調月間」と定めています。
  　期間中、小中学校では、家庭・地域と連携した様々な取組を行っています。
  　 具体的には、道徳授業の公開、道徳教育に関する討論集会・講演会、奉仕活動、リサイクル活動、勤労生産、福祉実践等の体験活動などを実施しています。
  
  
• 県教育委員会では、道徳教育の一層の充実を図るため、平成16年度において、18か所の小中学校で「自分づくり・仲間づくり」推進事業を進め、その成果を各学校へ広げていくこととしています。推進校では、「人間性という視点から、児童生徒が自分を見つめ、自分を大切にする心をはぐくむ自分づくり」、「社会性という視点から人と社会のかかわりを通して、他を思いやり、互いに高め合う仲間づくり」を重点とした取組を行いました。
  
  
• 県教育委員会では、児童生徒の心に響く道徳教育を推進するため、県内各界の委員による「愛知県道徳教育推進会議」を開催し、道徳教育推進諸方策について広く意見をいただいています。
  　この「愛知県道徳教育推進会議」の意見を踏まえ、平成14年度には「心の教育啓発リーフレット」を作成し、県内の小学校全家庭と全中学校に配布しました。また、平成16年度には「豊かな心をもつあいちの子どもをはぐくむために…」(リーフレット)を作成し、県内全小中学校に配布しました。
  
  
• 県教育委員会では、平成15〜17年度において、体験活動に関する次の取組を実施し、その成果を各地域、各学校へ広げていくこととしています。
  ・ 県内の２地域を「豊かな体験活動推進地域」として指定し、地域内の「豊かな体験活動推進校」が実施する社会奉仕などの体験活動を支援する取組
  ・ ２か所の小中学校を「地域間交流推進校」として指定し、推進校が実施する農林漁業体験活動、自然体験活動などを支援する取組
  ・ ２か所の中学校・県立高等学校を「長期宿泊体験推進校」として指定し、推進校が実施する長期の集団宿泊による共同生活体験活動を支援する取組
  
  
• 県教育委員会では、幼稚園・小中学校が「自然・人・未来」へ働きかけながら特色ある学校づくりを進める活動を支援しています。(「自然・人・未来」へ発信する学校づくり推進事業)
  
  
• 県教育委員会では、「世界・人・未来」へ発信する魅力ある学校づくりを進めるため、様々な体験活動を実施している県立高等学校に対して、その活動を支援しています。（「世界・人・未来」へ発信する学校づくり推進事業）
  
  
• 児童生徒の問題行動や不登校に対応するためには、「豊かな心」を培う教育のほか、専門的な相談体制の強化も必要です。
  　県教育委員会では、「スクールカウンセラー」の設置、「こころのアドバイザー」の派遣、「心の教室相談員」の設置、「子どもと親の相談員」の設置、「家庭教育相談員」の設置、「ホームフレンド」の派遣などの取組を実施しています。
  
  ＜図　３章−II−1＞
  県内における不登校児童生徒数の推移（公立のみ）
  
  ＜図　３章−II−2＞
  県内におけるいじめ発生件数の推移
  
  
  
• 県内の中学校には、いじめや不登校等の生徒の問題行動の解決を図るため、生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有するスクールカウンセラーを配置し、生徒のカウンセリング、教員や保護者への助言等を行っています。
  　平成16年度において、180か所の中学校に、スクールカウンセラーが配置されています。
  
  
• 県立高等学校には、いじめや学校不適応等の生徒に対応するため、中学校同様、スクールカウンセラーが配置されています。
  　平成16年度において、21人のスクールカウンセラーが県立高等学校に配置されています。
  
  
• スクールカウンセラーが配置されていない中学校においては、心の教室相談員を配置し、生徒の悩みなどの相談に応じたり、カウンセリングや精神医学に関して専門的な知識と経験を有するこころのアドバイザーが定期的に学校を巡回し、いじめや不登校などの相談についての指導助言を行っています。
  
  
• 県内の小学校では、いじめや不登校などの早期発見、早期対応や未然防止を図るため、子どもと親の相談員を設置しています。
  　平成16年度において、20か所の小学校に子どもと親の相談員を設置しています。
  
  
• 県教育委員会では、20人の家庭教育相談員を配置し、不登校などの問題を抱える家庭を訪問し、教育の立場から相談に応じています。
  
  
• 家庭教育相談員の助言のもと、希望する家庭に、ホームフレンド活動員を派遣し、児童生徒の話し相手や遊び相手になることを通して、児童生徒の健全育成に努めています。
  
  

• 児童生徒の問題行動が社会問題化していることから、道徳教育の一層の充実が必要です。また、充実にあたっては、「連携」と「体験」を基盤とした取組が必要です。
  
  
• 子どもたちが豊かな人間性や社会性を育むためには、学校教育において様々な体験活動等を充実させていくことが必要です。
  　また、こうした取組を希望する学校の拡大に対応していくための方策を講じていく必要があります。
  
  
• 相談体制の強化のためには、専門的な知識と経験を有するスクールカウンセラーの配置を充実させる必要があります。
  
  
• スクールカウンセラーと教員との連携や情報の共有化については、児童生徒のプライバシーを考慮しつつ、推進していく必要があります。
  
  
• いじめや不登校等の問題行動は中学校になると大きく増加する傾向があります。こうしたことに対処するため、小学校における相談体制を強化する必要があります。
  
  
• ホームフレンド活動員については、性別や居住地区に偏りがあり、適正配置のためのホームフレンド活動員の確保が必要です。
  
  
  

• 豊かな心を育むため、指導方法や指導体制の工夫改善を進め、子どもの心に響く道徳教育の充実を図っていきます。
  
  
• 道徳教育は、その成果を上げるため、次に重点を置いて実施していきます。
  ・　道徳教育の授業時間数を確保し、指導改善に努めること
  ・　道徳教育の授業を要として、教育活動全体を通じての道徳性を養うこと
  ・　教師と児童生徒の人間関係を深めるとともに、道徳教育のねらいや取組について、家庭や地域の理解と協力を求め、連携を密にしていくこと
  
  
• 子どもたちが豊かな人間性や社会性を育むために、学校教育において様々な体験活動を充実させていきます。
  　 また、実施にあたっては、地域と学校が連携協力し、取り組んでいきます。
  
  
• 若い時代からできる国際貢献についてのモデル授業の実施・普及を通して、国際理解教育の充実に努めていきます
  
  
• 子どもたちの創造性や活力を生かし、地域と学校が連携した特色と魅力ある学校づくりを進めていきます。
  
  
• 全中学校にスクールカウンセラーを配置し、中学校における相談体制の強化を図っていきます。
  また、スクールカウンセラーによる相談活動を中学校区内の小学校へと広げていきます。
  
  
• 県立高等学校におけるスクールカウンセラーの活用方法を工夫するとともに、カウンセラーの活動を充実していきます。
  
  
• いじめや不登校等の問題行動は中学校になると大きく増加する傾向があるので、小学校における相談体制を強化し、いじめや不登校の早期発見・早期対応や未然防止に努めていきます。
  
  
• 家庭教育相談員による不登校などの問題を抱える家庭への訪問相談については、きめ細かな対応ができるよう、充実を図っていきます。
  　また、家庭教育相談員の助言のもとに実施するホームフレンド活動員の派遣についても、きめ細かな対応ができるよう、ホームフレンド活動の啓発を図り、必要に応じたホームフレンド活動員の確保に努めていきます。
  
  
• 「愛知の教育を考える懇談会」の提言を踏まえ、命を大切にする教育のあり方について幅広い分野からの研究を行い、その成果をもとに、新たな視点から命を大切にする教育を重点的に推進していきます。
  
  

• 「心の教育推進活動強調月間」における家庭・地域と連携した道徳教育に関する取組を、引き続き実施していきます。
  
  
• 平成17年度において、中学生が参加できる国際貢献について研究を行い、中学校の総合的な学習の時間等に活用できるガイドブックを作成するとともに、モデル授業を実施します。
  
  
• 中学校におけるスクールカウンセラーの配置を、引き続き拡大していきます。
  301か所の中学校（３学級以上）に配置することを目標とします。
  
  
• 県立高等学校におけるスクールカウンセラーの活動を、引き続き充実していきます。
  カウンセリング延べ回数については4,000回、カウンセラーによる研修については200回（研修回数）・2,000人（研修人数）を目標とします。
  
  
• 家庭教育相談員による家庭訪問相談は、引き続き実施していきます。
  
  
• ホームフレンド活動員の派遣は、引き続き実施していきます。
  
  
• 「命を大切にする教育」研究会を設置し、幅広い分野からの研究を行い、その成果をもとに、命を大切にする教育を推進していきます。
  
  
  

項目	実施主体	現状	平成21年度までの目標
スクールカウンセラーの 配置の推進 (中学校)	県教育 委員会 市町村教 育委員会	180校	301校
スクールカウンセラーの 活動の充実 (県立高等学校)	県教育 委員会	ｶｳﾝｾﾘﾝｸﾞ延べ回数： 1,942回 研修回数：136回 研修人数：1,443人	ｶｳﾝｾﾘﾝｸﾞ延べ回数： 4,000回 研修回数：200回 研修人数：2,000人

※　中学校は、名古屋市を除く。

 

【 臨床心理士 】
「臨床心理士」とは、臨床心理学の知識や技術を用いて心理的な問題を扱う「心の専門家」のことで、昭和63年に「日本臨床心理士資格認定協会」が設立され、「臨床心理士」の資格認定が開始されました。平成16年現在、11,533名（医師381名を含む）を認定し、文部科学省の実施するスクールカウンセラーの任用を始め様々な分野で活躍しています。

【 「自然・人・未来」へ発信する学校づくり推進事業 】
幼稚園・小中学校が「自然・人・未来」へ働きかけながら、教育活動の中に家庭・地域の願いや活力を取り込み、子どもたちの「生きる力」を育む場となるような特色ある学校づくりを支援し、学校の活性化を図る事業を言います。
・「自然」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　花づくり・植樹に関わる活動
（2）　地域の環境を生かした体験活動
（3）　愛鳥、メダカ等の飼育活動
・「人」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　地域ボランティア活動
（2）　地域と共に進める環境整備活動
（3）　伝統芸能の継承活動
・「未来」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　ホームページを活用したコミュニケーション活動
（2）　演劇等の創作活動
（3）　地域での音楽や合唱の発表活動

【 「世界・人・未来」へ発信する学校づくり推進事業 】
各学校が創意工夫を生かし魅力ある学校づくりを進めながら、その成果を「世界・人・未来」へ積極的に発信するための様々な活動を推進することを支援する事業を言います。
・「世界」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　環境保全・環境美化に関わる活動
（2）　国際協力・国際理解協力に関わる活動
（3）　町づくりに協力する活動
・「人」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　福祉に関わる体験活動
（2）　地域の子どもたちとのふれあいを図る活動
（3）　文化芸術またはスポーツによって地域との交流を図る活動
・「未来」へ発信する学校づくりのモデルプラン
（1）　情報ネットワークの推進を図る活動
（2）　「ものづくり」の振興に関わる活動
（3）　伝統技術を継承する活動