○配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に係る措置要領の制定
平成13年11月16日
生総・務住・地総・刑一発甲第162号
配偶者からの暴力事案(内縁関係におけるものを含む。)については、法に触れる行為があれば、被害状況等を把握した上で厳正に対処することを基本とするが、夫婦間の特性に配慮し、被害者の意思を尊重しつつ、個々の事案に即し、警察法、警察官職務執行法その他の法令に基づき、被害防止措置及び事件化措置を執ってきたところである。
このたび、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年法律第31号)が施行されたことに伴い、別記のとおり配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に係る措置要領を定め、平成13年11月16日から実施することとしたから、適正に運用されたい。
〔平16生総・務住・地総・刑一発甲148号・制定文一部改正〕
別記
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に係る措置要領
第1 趣旨
この要領は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「法」という。)に基づく事務の取扱い及び配偶者からの暴力事案に係る被害者の保護に関し必要な事項を定めるものとする。
第2 定義
この要領において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによる。
(1) 被害者 法第10条第1項(法第28条の2において準用する場合を含む。)に規定する被害者をいう。
(2) 配偶者からの暴力 配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者及び生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。以下同じ。)をする関係にある者を含む。以下同じ。)からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又は生命等に対する脅迫(被害者の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下同じ。)をいう。
(3) 配偶者からの暴力事案対応 配偶者からの暴力(配偶者からの暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、若しくはその婚姻が取り消された場合又は生活の本拠を共にする交際をする関係を解消した場合において、当該配偶者から引き続き受ける身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を含む。)に関する相談(110番通報等により現場対応した場合又は被害届、告訴若しくは告発を受けた場合を含む。)を受け、又は援助若しくは保護を行うことをいう。
(4) 親族等 法第10条第4項に規定する親族等をいう。
(5) 援助 法第8条の2の規定による援助をいう。
(6) 住民基本台帳閲覧制限等 次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 市町村(特別区を含む。以下同じ。)が住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第11条の2第1項各号に掲げる活動に該当しないとして住民基本台帳の一部の写しの閲覧の申出又は同法第12条第6項若しくは第20条第5項の規定に基づき住民票の写し等の交付の請求を拒むこと。
(イ) 運輸支局、自動車検査登録事務所等(以下「運輸支局等」という。)が道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第22条第6項に基づき登録事項等証明書の交付の請求を拒むこと。
(ウ) 軽自動車検査協会の事務所及びその支所(以下「軽検協事務所等」という。)が道路運送車両法第72条の3に基づく検査記録事項等証明書の交付請求又は同法第70条に基づく検査証の再交付申請若しくは軽自動車情報の閲覧申請(以下「交付請求等」という。)に対する回答を保留し、被害者及び警察署に連絡し、必要な措置を講じた後に交付請求等に対する回答を行うこと。
(7) 配偶者暴力事案情報管理業務 警察共通基盤システムにおける相談業務・人身安全関連業務等システムによる配偶者暴力事案情報管理業務をいう。
第3 配偶者からの暴力事案対応の記録等
1 記録の作成
配偶者からの暴力事案対応を行った場合は、対応経過を記録するため、配偶者暴力事案情報管理業務に登録するものとする。
2 所属長への報告及び引継ぎ
(1) 配偶者からの暴力事案対応を行った場合は、1により作成した記録に基づいて所属の長(以下「所属長」という。)に報告(警察署にあっては、主管課長経由)するものとする。
(2) 警察署当番、当直勤務又は総合業務において配偶者からの暴力事案対応を行った場合は、次の措置を講ずるものとする。
ア 警察本部
当直司令又は当直責任者が、事案にあっては管轄警察署長に、配偶者暴力事案情報管理業務に登録した記録にあっては人身安全対策課長に引き継ぐこと。
イ 警察署
当番責任者等(愛知県警察処務規程(昭和51年愛知県警察本部訓令第6号)に規定する当番責任者、当直長及び統括責任者をいう。)が、警察署長に報告するとともに、事案にあっては主管課に引き継ぎ、配偶者暴力事案情報管理業務に登録した記録にあっては生活安全課長(生活安全刑事課長を含む。以下同じ。)に引き継ぐこと。
(3) 所属長は、配偶者からの暴力事案対応を行った場合において、必要があるときは関係所属長に連絡し、又は他の所属で処理することが適当と認められるものについては当該所属長に引き継ぐものとする。
第4 裁判所への書面提出
1 登録内容の点検
法第14条第2項の規定により裁判所から配偶者からの暴力事案対応に係る書面の提出を求められた場合は、生活安全課において、該当する配偶者暴力事案情報管理業務の登録内容を点検し、配偶者からの暴力相談等対応票(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律等の運用上の留意事項について(令和6年警察庁丙人少発第13号、丙人発第35号、丙犯被発第10号、丙刑企発第19号、丙捜一発第10号)別添1の配偶者からの暴力相談等対応票をいう。以下「対応票」という。)を用紙に出力をして提出するものとする。この場合において、警察署において裁判所へ書面を提出するときは、その提出前に人身安全対策課長(ストーカー・DV対策係経由)に報告するものとする。
2 未登録の場合の措置
配偶者暴力事案情報管理業務に登録されていない段階で、法第14条第2項の規定により裁判所から書面の提出を求められた場合は、相談等を担当した所属において、作成されている関係記録を参照し、把握している限りにおいて配偶者暴力事案情報管理業務に登録し、対応票を用紙に出力をして提出するものとする。
第5 保護命令の通知を受けた後の対応
1 人身安全対策課長及び申立人等の住所地等を管轄する警察署長の執るべき措置
(1) 人身安全対策課長の執るべき措置
ア 法第15条第3項の規定による通知を受けた場合の措置
人身安全対策課長は、裁判所から法第15条第3項の規定による通知を受けた場合は、速やかに申立人又は親族等と連絡を取り、申立人又は親族等の住居、勤務先その他その者の通常所在する場所を把握し、当該場所を管轄する警察署長(以下「関係署長」という。)に対し、保護命令が発せられた旨及びその内容を連絡するものとする。この場合において、申立人の居所が他の都道府県であることが判明したときは、当該地の都道府県警察にその後の措置を引き継ぐものとし、その旨を当該通知を行った裁判所に連絡するものとする。
イ 保護命令の効力の発生を確認した場合の措置
人身安全対策課長は、裁判所から保護命令の効力の発生について通知を受けるなどして保護命令の効力の発生を確認したときは、速やかに関係署長に対し、その旨を連絡するものとする。
ウ その他保護命令に係る通知を受けた場合の措置
人身安全対策課長は、裁判所から法第15条第3項の規定による通知及び保護命令の効力の発生についての通知以外の保護命令に係る通知を受けたときは、速やかに関係署長に対し、その内容を連絡するものとする。
(2) 申立人の住所地等を管轄する警察署長の執るべき措置
申立人の住所(居所が別にある場合にあっては、居所)の所在地を管轄する警察署長は、申立人の意向を確認した上で、速やかに申立人方(婦人保護施設等に保護されている場合にあっては、当該施設)を訪問するなどして、次の事項を教示するものとする。
(ア) 配偶者暴力相談支援センターの利用に関する事項
(イ) 緊急時の警察への通報に関する事項
(ウ) 援助に関する事項
(エ) 防犯上の留意事項
(3) 親族等の住所地等を管轄する警察署長の執るべき措置
親族等の住所(居所が別にある場合にあっては、居所)の所在地を管轄する警察署長は、親族等の意向を確認した上で、速やかに親族等方を訪問するなどして、次の事項を教示するものとする。
(ア) 緊急時の警察への通報に関する事項
(イ) 防犯上の留意事項
(ウ) 配偶者暴力相談支援センター等関係機関に関する事項
(4) 相手方の住居地を管轄する警察署長の執るべき措置
相手方の住居地を管轄する警察署長は、速やかに相手方に面接するなどして、保護命令を遵守するよう指導するものとする。
2 申立人又は親族等の住居等が複数の都道府県の区域に及ぶ場合の連携
人身安全対策課長は、申立人又は親族等の住居、勤務先その他その者が通常所在する場所が複数の都道府県の区域に及ぶ場合は、関係都道府県警察と連絡を取り、連携を図るものとする。
第6 援助
1 援助の申出の受理
(1) 援助の申出の相当性の判断
被害者から援助を受けたい旨の申出(以下「援助の申出」という。)があった場合は、当該申出をした被害者(以下「援助申出者」という。)から援助申出書(配偶者からの暴力等による被害を自ら防止するための警察本部長等による援助に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第18号。以下「規則」という。)別記様式)の提出を求める前に、配偶者からの暴力の内容及び受けたい援助の内容について聴取し、援助の申出の相当性の判断を行うものとする。
(2) 援助申出書の提出
援助を実施するに当たっては、援助申出者から援助申出書の提出を求めるものとする。
(3) 警察本部長等への報告
援助の申出を受理した場合は、第3の2により作成した記録により所属長に報告するものとする。この場合において、警察本部の所属長が当該報告を受けたときは、警察本部長に報告(人身安全対策課長経由)するものとする。
なお、援助申出書の提出を受けたときは、当該援助申出書を添付するものとする。
2 援助の実施に関する調整
(1) 警察本部長への協議
警察署長は、援助の申出を受理した場合において、当該援助の申出に基づいて行う援助の内容が、規則第1条第3号ロ又はハの規定に該当し、かつ、警察本部長又は他の警察署長が援助を実施することが適当と認められるときは、援助申出者の同意を得た上で、警察本部長に具申(人身安全対策課長経由)するものとする。
(2) 警察本部長による調整等
警察本部長は、(1)の協議を受けた場合は、援助の実施に関する調整を行うものとする。この場合において、援助を実施することとなった警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)及び当該援助の申出を受けた警察本部長等は、調整の結果を当該援助申出者に連絡するものとする。
3 援助の実施
援助は、規則第1条各号に規定する措置のうち、適当なものを執ることにより行うものとする。このうち、規則第1条第2号に規定する加害者に援助申出者の住居を知られないようにする措置は、次により行うものとする。
ア 住民基本台帳閲覧制限等に係る措置
警察本部長等は、援助申出者が更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあり、住民基本台帳閲覧制限等が必要であると認める場合は、次に掲げる措置を執るものとする。
(ア) 援助申出者が住民基本台帳閲覧制限等を求める市町村、運輸支局等及び軽検協事務所等(以下「支援措置実施機関」という。)に対し、援助申出者から住民基本台帳閲覧制限等の要望を受けている旨及び住民基本台帳閲覧制限等の必要性があると認める旨を電話により連絡すること。
(イ) 援助申出者に対し、支援措置実施機関の窓口に赴き、住民基本台帳閲覧制限等の申出に係る書面(以下「申出書面」という。)を提出するよう促すこと。
(ウ) 支援措置実施機関から警察本部長等に対し、申出書面による住民基本台帳閲覧制限等の必要性を判断するための意見聴取(以下「意見聴取」という。)があった場合、警察本部長等は、申出書面に必要事項を記載した上で、公印を押印し、速やかに回答すること。
イ 行方不明者届による追跡防止のための措置
(ア) 援助の申出を受理した警察本部長等は、援助の申出を受理したことを次に掲げる警察署長に通知するものとする。
a 援助申出者について行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号。以下「発見活動規則」という。)第6条第1項に規定する行方不明者届を受理している警察署長
b 加害者の住居地を管轄する警察署長
c 援助申出者の現在の所在地を管轄する警察署長
d 援助申出者の実家等加害者に所在を知られた最後の所在地であると思慮される地を管轄する警察署長
(イ) (ア)のaによる通知を受けた警察署長は、被害者の同意がある場合を除き、加害者に対して発見等の通知をしないものとする。この場合において、これらの取扱いについて届出人である加害者から説明を求められた場合は、発見活動規則第26条第2項の規定に基づく措置であることを説明するなどの措置を講ずること。
(ウ) (ア)のb、c及びdによる通知を受けた警察署長は、加害者が当該被害者を追跡する手段として行方不明者届をしようとすることが明らかな場合において、加害者に対し、個人の生命及び身体の保護を図るために行う行方不明者の発見のための活動等を定める発見活動規則の制定の目的に鑑み、行方不明者届を受理することはできない旨を説明し、加害者からの行方不明者届を受理しないものとする。
(エ) 加害者が援助申出者の追跡のために、援助申出者が同居している子に係る行方不明者届をし、又はしようとしている場合は、(ア)から(ウ)までと同様の措置を執ること。
4 援助の申出を受理していない場合における支援措置実施機関からの意見聴取等に対する措置
(1) 警察本部長等は、支援措置実施機関からの意見聴取又は連絡により、配偶者からの暴力事案対応を行った際に援助の申出をしなかった被害者が、その後、支援措置実施機関に対して住民基本台帳閲覧制限等の申出をしたことを認知した場合は、速やかに当該被害者に連絡を取り、事後の経過を確認するとともに、警察本部又は警察署に赴き相談するよう促すこととし、これに応じて当該被害者が来訪したときは、当該被害者から援助申出書の提出を求めた上で、第6の3のアの手続を執るものとする。
(2) 警察本部長等は、支援措置実施機関から配偶者からの暴力事案対応を行っていない被害者に係る意見聴取を受けた場合は、申出書面に記載及び公印の押印をせず、返送するものとする。この場合においては、速やかに当該被害者に連絡を取り、警察本部又は警察署に赴き相談するよう促すこととし、これに応じて当該被害者が来訪したときは、当該被害者から援助申出書の提出を求めた上で、第6の3のアの手続を執るものとする。
5 援助の実施上の留意事項
(1) 援助の実施に関しては、被害者が真に望んでいないにもかかわらず援助の申出を勧めたり、又は被害者自らの意思による積極的な申出がないにもかかわらず援助を実施することのないように努めること。
(2) 援助の申出を受理した場合において、他の所属において当該援助申出者に係る配偶者からの暴力事案対応を行っているときは、当該他の所属から当該配偶者からの暴力事案対応に係る記録を取り寄せ、事案の概要を把握した上で、援助を実施すること。
(3) 被害者の引っ越しの際における警戒や緊急やむを得ない事由がある場合の一時保護場所への搬送は、法に規定する援助には当たらないが、必要がある場合は、実施すること。
第7 留意事項
1 被害者の安全確保及び受傷事故防止
配偶者からの暴力事案対応は、記録の有無にとらわれることなく、被害者の生命及び身体の安全の確保を最優先するとともに、受傷事故防止に配意すること。
2 現場臨場時の措置
110番通報等を受けて現場に臨場した場合は、暴力行為を直ちに制止するとともに、現場の状況等に応じ、被害者の保護、加害者の現行犯逮捕等の所用の措置を講ずること。また、配偶者間の特性から加害者の面前では、被害者が明確な処罰意思を示さない場合があるため、個別に事情聴取を行い、場合によっては後日改めて被害者からの事情聴取を行うこと。
3 刑罰法令の的確な適用
暴力行為が認められるときは、法第8条の規定に従い、被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるとともに、保護命令の発令の有無にとらわれることなく、その他抵触する刑罰法令の適用も検討し、迅速かつ適切な対応に努めること。
4 被害者に対する配慮
法第23条第1項の規定により被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重し、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をするとともに、被害者に二次的被害を与えることのないよう、女性相談員の充実、相談室の環境整備、関係者のプライバシーの保持等に十分配意すること。
5 被害者に対する情報提供
配偶者からの暴力事案対応を行った場合は、被害者の置かれている状況に応じて、刑事手続、保護命令制度、配偶者暴力相談支援センターにおける一時保護及び被害者が要望すれば利用し得る制度について網羅的に教示を行い、被害者の要望を聴取すること。
6 関係機関との連携協力
配偶者暴力相談支援センター、福祉事務所等との連携体制を構築するとともに、法第5条の2の規定により協議会が設置された場合は、積極的に参加すること。
また、相談を受理した場合において、当該相談に係る被害の内容が身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(生命等に対する脅迫を除く。)のみであるとき、又は当該相談の内容が警察以外の機関で対応することが適当であると認められるときは、適切な機関に円滑に引き継ぐこと。
〔平16生総・務住・地総・刑一発甲139号同148号平18生総発甲125号平20生総・務住・地総・刑一発甲3号平22生総発甲48号平24務住発甲33号同務警発甲52号平26生子・務住・地総・刑一発甲13号平27生子発甲182号平28生子発甲217号平29生子発甲183号平30情管発甲105号平31務警発甲47号令4生人発甲95号・本別記一部改正〕