○暴力団排除等のための部外への情報提供要領の制定

平成24年8月27日

刑組発甲第122号

この度、暴力団排除等のための部外への情報提供要領を別記のように制定し、実施することとしたので、その適正な運用に努められたい。

別記

暴力団排除等のための部外への情報提供要領

第1 趣旨

この要領は、暴力団情報の部外への提供に関し必要な事項を定めるものとする。

第2 基本的な考え方

1 組織としての対応の徹底

暴力団情報の提供については、個々の警察職員が依頼を受けて個人的に対応するということがあってはならず、必ず、提供の是非について捜査第四課長又は警察署長の責任において組織的な判断を行うものとする。

2 情報の正確性の担保

暴力団情報を提供するに当たっては、必要な補充調査を実施するなどして、当該情報の正確性を担保するものとする。

3 情報提供に係る責任の自覚

情報の内容及び情報提供の正当性について警察が立証する責任を負わなければならないとの認識を持つものとする。

4 情報提供の正当性についての十分な検討

暴力団員等(暴力団員、暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロをいう。以下同じ。)の個人情報の提供については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の規定に従って行うものとする。特に相手方が行政機関以外の者である場合には、法令の規定に基づく場合のほかは、当該情報が暴力団排除等の公益目的の達成のために必要不可欠であり、かつ、警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難な場合に行うものとする。

第3 積極的な情報提供の推進

1 暴力団犯罪の被害者の被害回復訴訟において組長等の使用者責任を追及する場合や、暴力団事務所撤去訴訟等暴力団を実質的な相手方とする訴訟を支援する場合は、特に積極的な情報提供を行うものとする。

2 債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号)及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)のように提供することができる情報の内容及びその手続が法令により定められている場合又は他の行政機関、地方公共団体その他の公共的機関との間で暴力団排除を目的として暴力団情報の提供に関する申合せ等が締結されている場合には、これによるものとする。暴力団排除を目的として組織された事業者団体その他これに準ずるものとの間で申合せ等が締結されている場合についても、同様とする。

3 愛知県暴力団排除条例(平成22年愛知県条例第34号。以下「暴排条例」という。)上の義務履行の支援、暴力団に係る犯罪被害者支援、資金源対策の視点や社会経済の基本となるシステムに暴力団を介入させないという視点からは、第4の1の基準に従いつつ、可能な範囲で積極的かつ適切な情報提供を行うものとする。

第4 情報提供の基準等

1 情報提供の基準

暴力団情報については、警察は厳格に管理する責任を負っていることから、情報提供によって達成される公益の程度によって、情報提供の要件及び提供できる範囲・内容が異なってくる。

そこで、次に掲げる観点から検討を行い、暴力団対策に資すると認められる場合は、暴力団情報を当該情報を必要とする者に提供するものとする。

ア 提供の必要性

(ア) 暴排条例上の義務履行の支援に資する場合その他法令の規定に基づく場合

事業者が、取引等の相手方が暴力団員、暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者等でないことを確認するなど暴排条例上の義務を履行するために必要と認められる場合には、その義務の履行に必要な範囲で情報を提供すること。

その他法令の規定に基づく場合についても、当該法令の定める要件に従って提供すること。

(イ) 暴力団による犯罪、暴力的要求行為等による被害の防止又は回復に資する場合

情報提供を必要とする事案の具体的内容を検討し、被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、被害の防止又は回復のために必要な情報を提供すること。

(ウ) 暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合

暴力団の組織としての会合等の開催、暴力団事務所の設置、加入の勧誘、名誉職への就任や栄典を受けること等による権威の獲得、政治・公務その他一定の公的領域への進出、資金獲得等暴力団の組織の維持又は拡大に係る活動に打撃を与えるために必要な場合、その他暴力団排除活動を促進する必要性が高く暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合には、必要な情報を提供すること。

イ 適正な情報管理

情報提供は、その相手方が、提供に係る情報の悪用や目的外利用を防止するための仕組みを確立している場合、提供に係る情報を他の目的に利用しない旨の誓約書を提出している場合、その他情報を適正に管理することができると認められる場合に行うものとする。

ウ 提供する暴力団情報の範囲

(ア) アの(ア)の場合

暴排条例上の義務を履行するために必要な範囲で情報を提供すること。この場合において、まずは、情報提供の相手方に対し、契約の相手方等が条例に規定された規制対象者等の属性のいずれかに該当する旨の情報を提供すれば足りるかを検討すること。

(イ) アの(イ)及び(ウ)の場合

次に掲げるa、b、cの順に慎重な検討を行うものとする。

a 暴力団の活動の実態についての情報(個人情報以外の情報)の提供

暴力団の義理掛けが行われるおそれがあるという情報、暴力団が特定の場所を事務所としているという情報、傘下組織に係る団体の名称等、個人情報以外の情報の提供によって足りる場合には、これらの情報を提供すること。

b 暴力団員等該当性情報の提供

aによって公益を実現することができないかを検討した上で、次に、相談等に係る者の暴力団員等への該当性に関する情報(以下「暴力団員等該当性情報」という。)を提供することを検討すること。

c 暴力団員等該当性情報以外の個人情報の提供

bによって公益を実現することができないかを慎重に検討した上で、それでも公益実現のために必要であると認められる場合には、住所、生年月日、連絡先その他の暴力団員等該当性情報以外の個人情報を提供すること。

なお、前科・前歴情報は、そのまま提供することなく、被害者等の安全確保のために特に必要があると認められる場合に限り、過去に犯した犯罪の態様等の情報を提供すること。また、顔写真の交付は行わないこと。

2 提供する暴力団情報の内容に係る注意点

(1) 指定暴力団以外の暴力団

指定暴力団以外の暴力団のうち、特に消長の激しい規模の小さな暴力団については、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号に規定する暴力団に該当することを明確に認定できる資料の存否につき確認すること。

(2) 暴力団準構成員及び元暴力団員等の場合の取扱い

ア 暴力団準構成員

暴力団準構成員については、当該暴力団準構成員と暴力団との関係の態様及び程度について十分な検討を行い、現に暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあることなどを確認した上で、情報提供の可否を判断すること。

イ 元暴力団員

現に自らの意思で反社会的団体である暴力団に所属している構成員の場合と異なり、元暴力団員については、暴力団との関係を断ち切って更生しようとしている者もいることから、過去に暴力団員であったことが法律上の欠格要件となっている場合や、現状が暴力団準構成員、共生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者、総会屋及び社会運動等標ぼうゴロとみなすことができる場合は格別、過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供をしないこと。

ウ 共生者

共生者については、暴力団への利益供与の実態、暴力団の利用実態等共生関係を示す具体的な内容を十分に確認した上で、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断すること。

エ 暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者

「暴力団員と社会的に非難されるべき関係」とは、例えば、暴力団員が関与している賭博等に参加している場合、暴力団が主催するゴルフコンペや誕生会、還暦祝い等の行事等に出席している場合等、その態様が様々であることから、当該対象者と暴力団員とが関係を有するに至った原因、当該対象者が相手方を暴力団員であると知った時期やその後の対応、暴力団員との交際の内容の軽重等の事情に照らし、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断する必要があり、暴力団員と交際しているといった事実だけをもって漫然と「暴力団員と社会的に非難されるべき関係にある者である」といった情報提供をしないこと。

オ 総会屋及び社会運動等標ぼうゴロ

総会屋及び社会運動等標ぼうゴロについては、その活動の態様が様々であることから、漫然と「総会屋である」などと情報を提供しないこと。情報提供が求められている個別の事案に応じて、その活動の態様について十分な検討を行い、現に活動が行われているか確認した上で情報を提供すること。

カ 暴力団の支配下にある法人

暴力団の支配下にある法人については、その役員に暴力団員等がいることをもって漫然と「暴力団の支配下にある法人である」といった情報提供をするのではなく、役員等に占める暴力団員等の比率、当該法人の活動実態等についての十分な検討を行い、現に暴力団が当該法人を支配していると認められる場合に情報を提供すること。

3 愛知県暴力追放運動推進センターに対する情報提供

愛知県暴力追放運動推進センター(以下「センター」という。)から情報提供を求める相談があった旨の通報を受けた場合は、1及び2に従って判断した上で必要な暴力団情報をセンターに提供し、センターが相談者に当該情報を告知するものとする。

第5 情報提供の方式

1 第4の1のアの(ア)による情報提供を行うに当たっては、その相手方に対し、情報提供に係る対象者の住所、氏名、生年月日等が分かる身分確認資料及び取引関係を裏付ける資料等の提出を求めるとともに、提供に係る情報を他の目的に利用しない旨の誓約書の提出を求めるものとする。

2 情報提供の相手方に守秘義務がある場合等、情報の適正な管理のために必要な仕組みが整備されていると認められるときは、情報提供を文書により行うことができるものとする。これ以外の場合においては、口頭による回答にとどめるものとする。

3 情報提供は、原則として、当該情報を必要とする当事者に対して、当該相談等の性質に応じた範囲内で行うものとする。ただし、情報提供を受けるべき者の委任を受けた弁護士に提供する場合その他情報提供を受けるべき者本人に提供する場合と同視できる場合は、この限りでない。

第6 協議

警察本部の所属(捜査第四課を除く。)及び警察署の各課(刑事課(生活安全刑事課及び組織犯罪対策課を含む。以下同じ。)を除く。)において暴力団情報の提供を求める相談を受けた場合は、当該所属にあっては捜査第四課と、当該各課にあっては当該警察署の刑事課と提供の是非について協議するものとする。

第7 暴力団情報の提供に係る記録の整備

1 捜査第四課及び警察署の刑事課においては、部外への暴力団情報の提供(第6による協議を受けた場合を含む。)に関し、第4の基準による判断を行ったときは、情報提供の求めの概要、提供の是非についての判断の理由及び結果等について、確実に記録した上、捜査第四課長又は警察署長の決裁を受けて対応するものとする。

2 常に所属長又はこれに相当する上級幹部が実際に最終判断を下すものとする。ただし、情報提供を行うことについて緊急かつ明確な必要が認められる場合においては、事後報告としても差し支えない。

3 捜査第四課長は、情報の適正な管理に万全を期するため、部外からの暴力団情報に係る照会及びそれに対する警察の回答状況について、定期的に把握するものとする。

第8 その他

この要領の実施に関し必要な細目的事項は、刑事部長が別に定めるものとする。

〔平25務住発甲19号令3務警発甲62―1号令4務警発甲58号・本別記一部改正〕

暴力団排除等のための部外への情報提供要領の制定

平成24年8月27日 刑組発甲第122号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
第6編 事/第1章 査/第3節
沿革情報
平成24年8月27日 刑組発甲第122号
平成25年 務住発甲第19号
令和3年 務警発甲第62号の1
令和4年 務警発甲第58号
令和5年3月28日 務住発甲第72号