○愛知県警察被害者連絡実施要領の制定

平成19年3月23日

刑総・務住・生総・地総・交総・備一発甲第35号

このたび、捜査等に関する情報提供の要望の高まりを踏まえ、別記のとおり愛知県警察被害者連絡実施要領を制定し、平成19年4月1日から施行することとしたので、その適正な運用に努められたい。

なお、愛知県警察被害者連絡実施要領の制定(平成8年刑総・務警・生総・地総・交総・備一発甲第23号)は、平成19年3月31日限り廃止する。

別記

愛知県警察被害者連絡実施要領

第1 目的

この要領は、犯罪等の被害者、その遺族又は被害少年の保護者(以下「被害者等」という。)に対する捜査状況等についての連絡活動(以下「被害者連絡」という。)の確実な実施を期するため、被害者連絡の対象者、推進体制等について必要な事項を定めることを目的とする。

第2 被害者連絡の対象者

被害者連絡は、次に掲げる被害者等に対して行うものとする。

(1) 次に掲げる犯罪の被害者等

ア 刑法(明治40年法律第45号)第199条の罪(殺人罪)及びその未遂罪

イ 刑法第236条の罪(強盗罪)及びその未遂罪

ウ 刑法第238条の罪(事後強盗罪)及びその未遂罪

エ 刑法第239条の罪(こん酔強盗罪)及びその未遂罪

オ 刑法第240条の罪(強盗致死傷罪)及びその未遂罪

カ 刑法第241条の罪(強盗・不同意性交等罪及び同致死罪)及びその未遂罪

キ 刑法第177条の罪(不同意性交等罪)及びその未遂罪

ク 刑法第176条の罪(不同意わいせつ罪)及びその未遂罪

ケ 刑法第179条の罪(監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪)及びその未遂罪

コ 刑法第181条の罪(不同意わいせつ等致死傷罪)

サ 刑法第224条の罪(未成年者略取及び誘拐罪)及びその未遂罪

シ 刑法第225条の罪(営利目的等略取及び誘拐罪)及びその未遂罪

ス 刑法第225条の2の罪(身の代金目的略取及び誘拐罪)及びその未遂罪

セ 刑法第226条の罪(所在国外移送目的略取及び誘拐罪)及びその未遂罪

ソ 刑法第226条の2の罪(人身売買罪)及びその未遂罪

タ 刑法第220条の罪(逮捕及び監禁罪)

チ 刑法第221条の罪(逮捕等致死傷罪)

ツ 刑法第205条の罪(傷害致死罪)

テ 刑法第204条の罪(傷害罪)のうち、被害者が全治1か月以上の傷害を負ったもの

ト アからトまで以外の犯罪で、致死傷を結果とする結果的加重犯のうち、致死の結果が生じたもの又は全治1か月以上の傷害を負ったもの(交通事故事件に係るものを除く。)

ナ 道路交通法(昭和35年法律第105号)第72条第1項前段の規定に違反する罪(以下「ひき逃げ事件」という。)

ニ 暴力団員等(愛知県警察組織犯罪対策要綱の制定(平成17年刑組発甲第140号)に規定する暴力団員等をいう。以下同じ。)が敢行した犯罪並びに女性又は高齢者(満65歳以上の者をいう。以下同じ。)を対象としたひったくりを手口とする刑法第235条の罪(窃盗罪)及びその未遂罪で、その被害者等が被害者連絡を強く要望するなどにより当該事件の捜査主任官(犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)に規定する捜査主任官をいう。以下同じ。)が被害者連絡を必要と認めたもの

(2) 次に掲げる交通事故事件(ひき逃げ事件を除く。以下同じ。)の被害者等

ア 車両等の交通による人の死亡があった交通事故事件

イ 車両等の交通により人が全治3か月以上の傷害を負った交通事故事件

ウ 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年法律第86号)第2条、第3条、第6条第1項及び同条第2項の罪(危険運転致死傷罪)に該当する交通事故事件

エ 被害者が重傷を負った交通事故事件のうち、当事者双方の主張が大きく食い違うなど後日紛議が予想され、かつ、被害者等が被害者連絡を望むもの

第3 被害者連絡の推進体制

1 被害者連絡責任者等

(1) 警察署及び高速道路交通警察隊(以下「警察署等」という。)に被害者連絡責任者(以下「連絡責任者」という。)を置き、警察署にあっては当該捜査業務を担当する課の課長を、高速道路交通警察隊にあっては分駐隊長をもって充てる。

(2) 連絡責任者は、それぞれ主管する事件の被害者連絡の実施状況を把握し、被害者連絡が確実に行われるよう事件の捜査(触法少年(第2に規定する犯罪に触れる行為又は交通事故事件を行った14歳未満の少年をいう。以下同じ。)に係る事件の調査を含む。)を担当する捜査員(以下「事件担当捜査員」という。)を指揮・監督するものとする。

(3) 連絡責任者は、被害者連絡の過程において、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、速やかに警察署長又は高速道路交通警察隊長(以下「警察署長等」という。)に当該実施状況を報告するものとする。

(4) 連絡責任者から報告を受けた警察署長等は、当該実施状況を把握し、被害者連絡が確実に行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

2 被害者連絡担当者

(1) 連絡責任者は、事件ごとに事件担当捜査員の中から被害者連絡担当者(以下「連絡担当者」という。)を指定するものとする。

(2) 連絡担当者は、被害者等の意向に反しない限り、面接又は架電の方法により被害者連絡を行うものとする。

第4 被害者連絡実施要領

1 犯罪を認知した時点における措置

(1) 連絡責任者は、第2の(1)に規定する犯罪を認知したとき、又は交通事故事件が第2の(2)の規定に該当することとなったときは、直ちに連絡担当者を指定するものとする。

(2) (1)の規定により指定を受けた連絡担当者は、速やかに被害者等に面接し、所属係及び氏名を明示した上で被害者の手引を交付し、当該被害者の手引に基づいて、刑事手続及び犯罪被害者のための制度についての教示を行うものとする。また、第2の(1)に規定する犯罪の場合は、被害者等に対して地域警察官による訪問・連絡活動(地域警察官による被害者への訪問・連絡活動実施要領の制定(平成19年地総・務住発甲第36号)に定める訪問・連絡活動をいう。以下同じ。)の要望の有無を確認するものとする。

(3) 連絡担当者は、(2)の結果について被害者連絡経過票(様式第1。ただし、第2の(1)のニに規定する犯罪及び第2の(2)に規定する交通事故事件については様式第2。以下「経過票」という。)を作成し、連絡責任者に報告するものとする。

(4) 連絡担当者から(3)の報告を受けた警察署の連絡責任者は、被害者等が地域警察官による訪問・連絡活動を要望した場合は、自署の地域課長(地域交通課長を含む。以下同じ。)に経過票の写しを交付するものとする。この場合において、被害者等の住居地が他の警察署の管轄区域内にあるときは、当該警察署の同一捜査業務を担当する連絡責任者を経由して、地域課長に経過票の写しを送付するものとする。

なお、被害者等が県外に居住する場合は、警察本部事件主管課に当該住居地を管轄する都道府県警察との調整を依頼するものとする。

(5) 高速道路交通警察隊の連絡責任者は、(4)に準じた処理を行い、経過票の写しは、被害者等の住居地を管轄する警察署の地域課長に送付し、訪問・連絡活動を依頼するものとする。

(6) 連絡責任者は、(4)及び(5)の措置を講じたときは、連絡担当者にその内容を経過票に記載させるほか、経過票の記載事項に追加又は訂正をした都度、(4)又は(5)に準じてその写しを地域課長に送付するものとする。

(7) 連絡責任者は、(1)から(6)までに規定する措置を講じ、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、経過票により速やかに警察署長等に報告するものとする。

2 被疑者検挙までの措置

(1) 第2の(1)に掲げる事件の場合

ア 被害者死亡事件及び死亡ひき逃げ事件

連絡責任者は、犯罪を認知した後、1か月(死亡ひき逃げ事件については2週間及び1か月)、6か月及び1年を経過した時点で被疑者の検挙に至っていない場合は、連絡担当者により、捜査に支障のない範囲で被害者連絡を行わせるものとする。ただし、事件内容により、この期間を短縮することができ、以後、原則として1年に1回以上、定期的に被害者連絡を行わせるものとする。

イ ア以外の事件

連絡責任者は、犯罪を認知した後、1か月(ひき逃げ事件については2週間)を経過した時点で被疑者の検挙に至っていない場合は、連絡担当者により、捜査に支障のない範囲で被害者連絡を行わせるものとする。ただし、事件内容によりこの期間を短縮することができる。

ウ 連絡責任者は、イの規定による被害者連絡を実施した後、1か月を経過した時点で、被害者等の意向、事案の内容等を総合的に勘案して被害者連絡の必要性の有無を検討し、必要と認めた場合は連絡担当者に行わせるものとする。

なお、被害者等の意向、事案の内容等を総合的に勘案して、以後状況に応じて被害者連絡を行うものとする。

エ 連絡担当者は、実施結果を経過票に記載し、連絡責任者に報告するものとする。

オ 連絡責任者は、アからウまでの規定により連絡担当者に被害者連絡を行わせた都度、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、経過票により速やかに警察署長等に報告するものとする。

(2) 第2の(2)に掲げる交通事故事件の場合

ア 連絡責任者は、交通事故事件が第2の(2)の規定に該当し、おおむね1か月を経過した時点で被疑者の送致(送付を含む。以下同じ。)に至っていない場合は、連絡担当者により捜査に支障のない範囲で被害者連絡を行わせるものとする。

イ 連絡責任者は、アの規定により被害者連絡を実施した後、1か月を経過した時点で、被害者の意向、事案の内容等を総合的に勘案して被害者連絡の必要性の有無を検討し、必要と認めた場合は連絡担当者に行わせるものとする。

なお、被害者等の意向、事案の内容等を総合的に勘案して、以後、状況に応じて被害者連絡を行うものとする。

ウ 連絡担当者は、その実施結果を経過票に記載し、連絡責任者に報告するものとする。

エ 連絡責任者は、アからウまでの規定により連絡担当者に被害者連絡を行わせた都度、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、経過票により速やかに警察署長等に報告するものとする。

3 被疑者を検挙した場合の措置

連絡責任者は被疑者を検挙した場合は次により連絡担当者に被害者連絡を行わせるものとし、連絡担当者は実施結果を経過票に記載して連絡責任者に報告するものとする。ただし、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、当該経過票により速やかに警察署長等に報告するものとする。

ア 逮捕事件の場合

被疑者を逮捕した場合は、速やかに被疑者を逮捕した旨、被疑者の人定事項(氏名、年齢及び居住地をいう。以下同じ。)その他必要と認める事項を連絡するものとする。ただし、否認事件(報道発表した場合を除く。)、いまだ逮捕していない共犯者が存在する事件等で、逮捕後速やかに連絡を行うことが捜査に支障を及ぼすと認める場合は、被害者連絡による捜査への支障がなくなった時点で、被害者連絡を行うものとする。

なお、被疑者の身柄拘束中に余罪として送致した場合の被害者連絡の内容についても逮捕事件の場合と同様とするほか、逮捕した被疑者を送致前に釈放した場合は速やかに釈放の旨及びその理由を、勾留(少年事件における勾留に代わる観護の措置を含む。以下同じ。)が行われなかった場合は釈放後速やかにその旨を連絡するものとする。

イ 在宅送致事件の場合

被疑者を在宅で送致した場合は、速やかに被疑者を検挙した旨、被疑者の人定事項、事件を送致した検察庁(以下「送致先検察庁」という。)その他必要と認める事項について連絡するものとする。

なお、被疑者を逮捕したものの、その後に身柄を釈放し、在宅で送致した場合についても同様とする。

ウ 少年事件の場合の特例

被疑者が少年(以下「被疑少年」という。)の場合で、被害者等に被疑少年の人定事項を連絡することにより、当該被疑少年の健全な育成を害するおそれがあると認めるときは、被疑少年の人定事項に代えて、その保護者の人定事項を連絡するものとする。

なお、この場合においては、事後速やかに当該被疑少年の保護者に対してその旨を連絡するものとする。

エ 触法少年に係る事件の場合

触法少年について、送致し、若しくは通告し、又は警察における補導の措置をしたときは、速やかにその旨及び当該触法少年の保護者の人定事項を被害者等に連絡するものとする。

なお、この場合においては、事後速やかに当該触法少年の保護者に対してその旨を連絡するものとする。

4 被疑者の処分決定後の措置

連絡責任者は被疑者の処分が決定した場合は次により連絡担当者に被害者連絡を行わせるものとし、連絡担当者は実施結果を経過票に記載して連絡責任者に報告するものとする。ただし、紛議が予想されるなど特異な状況が認められる場合は、当該経過票により速やかに警察署長等に報告するものとする。

ア 逮捕事件の場合

勾留期間満了後速やかに起訴、不起訴、処分保留等の処分結果及び公訴が提起された裁判所(以下「公訴提起先裁判所」という。)その他必要と認める事項を連絡させるものとする。ただし、少年事件の場合は、処分決定後速やかに送致先検察庁を連絡させるものとする。

イ 在宅送致事件の場合

処分決定後速やかに、起訴、不起訴、処分保留等の処分結果及び公訴提起先裁判所その他必要と認める事項を連絡させるものとする。ただし、少年事件の場合は、処分決定後速やかに送致先検察庁を連絡させるものとする。

第5 被害者連絡推進上の留意事項

1 被害者連絡を行わない場合

連絡責任者は、被害者等及びその関係者の素行、言動等から、被害者等及びその関係者による被疑者への報復の可能性が認められる場合その他被害者連絡を行うことが適当でないと認める場合は、被害者連絡を行わないものとする。

2 暴力団員等が関係する犯罪の場合

暴力団員等が関係する犯罪の被害者連絡については、この要領に定めるところによるほか、愛知県警察保護対策実施要綱の制定(平成24年刑組発甲第68号)に定めるところによるものとする。

3 被疑者等のプライバシーへの配意

被害者連絡に際しては、被害者等に対して、被疑者(被疑少年及び触法少年を含む。以下「被疑者等」という。)及び被疑少年又は触法少年の保護者のプライバシーの重要性について説明を行い、後日、当該被疑者等のプライバシーに関する紛議事案が起こることのないよう特段の配意をするものとする。

なお、少年事件又は触法少年に係る事件の場合は、被害者等に少年法(昭和23年法律第168号)及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)の趣旨又は刑法第41条の規定による犯罪不成立に関する説明を行い、少年の健全な育成に関する理解を求めるものとする。

4 被害認知警察署等と被疑者検挙警察署等とが異なる場合の取扱い

(1) 被害者連絡は、原則として、被害を認知した警察署等が担当するものとするが、被疑者等を検挙し、又は補導した警察署等との連携を密にし、確実な被害者連絡の実施に努めるものとする。

(2) 本県警察の警察署等で認知した犯罪の被疑者等が他の都道府県警察で検挙され、若しくは補導された場合又は他の都道府県警察で認知した犯罪の被疑者等を本県の警察署等で検挙し、若しくは補導した場合の被害者連絡は、警察本部事件主管課を経由して関係する都道府県警察と協議するものとする。

5 交通事故事件の特性の理解

交通事故事件は、当事者双方が被疑者であると同時に被害者である場合もあることから、警察が一方の被害者等に対してのみ便宜を図っていると誤解を受けることのないよう被害者連絡の内容をよく吟味した上で被害者連絡を行うものとする。

6 犯罪被害者支援担当部門との連携

(1) 連絡責任者は、第2の(1)に規定する犯罪を認知したとき、及び被害者等が犯罪被害者等給付金の支給申請を要望したときは、連絡担当者により警察署の警務課住民サービス係(高速道路交通警察隊にあっては隊本部の総務担当)へその旨を連絡させるものとする。

(2) 連絡担当者は、警察署警務課住民サービス係員(高速道路交通警察隊にあっては隊本部の総務担当係員)と緊密に連携するものとする。

第6 経過票の取扱い

1 経過票は、その経過票に係る連絡責任者及び連絡担当者が取り扱うものとする。

2 経過票は、捜査業務を担当する警察署の課及び高速道路交通警察隊の分駐隊において保管するものとする。

第7 報告等

1 警察署長等は、毎月の被害者連絡の実施結果について、当該被害者連絡を行った課ごとに(高速道路交通警察隊にあっては隊本部において)連絡活動結果表(様式第3。以下「結果表」という。)を作成し、翌月の10日までに当該課の事務を主管する警察本部の部の庶務を担当する課の課長(以下「庶務担当課長」という。)に送付するものとする。

2 庶務担当課長は、警察署長等から送付を受けた内容について、結果表により当該課の事務を主管する警察本部の部長に報告するとともに、その写しを刑事総務課長(捜査指導室指導第一係経由)に送付するものとする。

3 刑事総務課長は、庶務担当課長から送付を受けた内容について、結果表により警察本部長に報告するとともに、その写しを住民サービス課長に送付するものとする。

第8 細目的事項

この要領に定めるもののほか必要な細目的事項については、別に刑事部長が定める。

〔平20生非発甲39号同務警発甲124号平21務警発甲40号平25務住発甲19号平26交総発甲118号平28刑総発甲207号平29刑総発甲102号同114号・本別記一部改正〕

〔令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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〔令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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〔平29刑総発甲102号・本様式一部改正、平29刑総発甲114号・本様式全部改正、令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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愛知県警察被害者連絡実施要領の制定

平成19年3月23日 刑総・務住・生総・地総・交総・備一発甲第35号

(令和5年7月13日施行)

体系情報
第6編 事/第1章 査/第3節
沿革情報
平成19年3月23日 刑総・務住・生総・地総・交総・備一発甲第35号
平成20年 生非発甲第39号
平成20年 務警発甲第124号
平成21年 務警発甲第40号
平成25年 務住発甲第19号
平成26年 交総発甲第118号
平成28年 刑総発甲第207号
平成29年 刑総発甲第102号
平成29年 刑総発甲第114号
令和元年 務警発甲第93号
令和5年7月11日 刑総発甲第125号