○交通事故負傷者を搬送した者に対する報償金贈与制度要綱の制定

昭和49年4月15日

交指・総会発甲第22号

交通事故による負傷者を医療機関へ搬送した者に対して、一定額の報償金を贈与することによつて、善意の負傷者の搬送行為を促進し、迅速な救護活動と交通道徳の高揚を図るため、別記のとおり「交通事故負傷者を搬送した者に対する報償金贈与制度要綱(以下「要綱」という。)」を制定し、昭和49年4月1日から施行することとしたから、次の諸点に配意し、その運用に誤りのないようにされたい。

運用上の留意事項

1 第1(趣旨)関係

(1) 「負傷者」とは、交通事故が原因となつて負傷した者をいい、交通事故との間に因果関係が認められれば、道路上で負傷した者はもちろん、屋内で負傷した者も含まれる。

なお、胴体のれき断、脳挫滅、頸部及び胸腹部の離脱等、客観的明白に即死と判断される者以外は、医師の診断による死亡の認定がなされていない限り、負傷者として取り扱うものとする。

(2) 「搬送者」のなかには、運賃を受領して搬送したタクシー等の運転者は含まない。

なお、搬送しようとする者が搬送途中、救急自動車、警察用自動車等の乗務員に当該負傷者を引き継いだ場合においては、搬送者として取扱うものとする。

(3) 「医療機関」とは、救急医療病院その他の病院、医院等であつて、負傷者の治療を行うすべての施設(動物を専門に治療する施設を除く。)をいう。

(4) 「報償金」とは、搬送者の善意の労に報いるという性質のほかに、搬送者の被服及び車両の座席等の汚損又は破損に対する償いという性質をもつた金員をいい、実費を補償するものではない。

2 第3(報償金の贈与対象者)関係

(1) 法令により当該負傷者を救護又は扶養すべき義務のある者等は、報償金の贈与対象者から除かれているので、特に注意すること。

ア 交通事故の当事者及びその他の乗務員

道路交通法第72条第1項の救護義務者をいう。

イ 警察職員及び消防職員

警察法(昭和29年法律第162号)第55条第1項に規定する警察職員及び消防組織法(昭和22年法律第226号)第12条第1項に規定する消防職員をいう。

ウ 当該負傷者の親族

民法(明治31年法律第9号)第725条に規定する親族をいう。

エ 医師、看護婦その他の者で、業務として当該負傷者の救護活動に従事した者

「業務」とは、例えば医師が通行中負傷者を発見して搬送したが自己の患者として治療したような場合は、業務として救護活動をしたものとする。

(2) 搬送者が2人以上いる場合の取扱い

搬送行為1件(同一の機会及び車両等によつて搬送した場合を1単位とする。)について搬送者が2人以上いる場合は、搬送者のうち、主として搬送に従事した者を報償金の贈与対象者とすること。

なお、搬送行為1件について、搬送者が2人以上いる場合において、これらの者が、ほぼ同程度の搬送に従事し、これらの者のうち、1人を主として搬送に従事した者と認定することが困難なときは、搬送行為1件を単位として報償金を定めていることから、搬送者の代表者を報償金の贈与対象者とし、報償金はこれら搬送者の間で分配するよう指導すること。

3 第4(報償区分等)関係

報償区分を決定するに当つては、次の点に留意すること。

(1) A級に該当する場合

「搬送者の被服、車両の座席等が著しく汚損若しくは破損した場合」とは、搬送者の被服、車両の座席等が血まみれになり、使用にたえない程度に汚損した場合等をいう。

「搬送行為が極めて困難であつた場合」とは、例えば、谷底へ転落した事故の負傷者をかつぎ上げて搬送した場合又は負傷者を極めて長距離(おおむね20キロメートル以上)にわたり搬送した場合等をいう。

(2) B級に該当する場合

「搬送者の被服、車両の座席等が相当汚損若しくは破損した場合」とは、搬送者の被服、車両の座席等がA級に該当するまでに至らないが、血、どろ等で相当汚損した場合等をいう。

「搬送行為が相当困難であつた場合」とは、負傷者を相当の困難を克服して搬送した場合又は相当長距離(おおむね10キロ以上20キロメートル未満)にわたり搬送した場合等をいう。

(3) C級に該当する場合

「A級及びB級に該当しない場合」とは、搬送行為による搬送者の被服、車両の座席等の汚損若しくは破損が認められない場合、又は負傷者に肩を貸して短距離搬送した場合等をいう。

4 第5(搬送行為の申告等)関係

(1) 搬送カードは、あらかじめ警察署等並びに交番及び駐在所に備えておき、搬送者等から申し出があつたときに交付すること。

(2) 警察署等又は交番若しくは駐在所に勤務する警察官は、搬送者の被服、車両の座席等の汚損又は破損の確認を求められたときは、当該事故を取り扱つたか否かにかかわらず、速やかに確認すること。

(3) 搬送者等から搬送カードの提出を受けた警察官は速やかに報告すること。

〔平6交総・交指・交駐・交制・交管・交免発甲66号・本項一部改正〕

5 第6(警察官による搬送行為の認知報告)関係

この制度は、搬送者の申告に基づいて行うものであるが、搬送者のなかには、この制度を知らないため申告しない場合があると思われるので、警察官は、交通事故の処理等の過程において搬送者を認知したときは当該搬送者に代つて報告すること。

6 第7(報償金の決定)関係

警察署等において搬送カードを受理したときは、搬送者報償処理簿に登載し、毎年1月1日から起番した番号を付すこと。

〔平14総会発甲52号・本項一部改正、平16務警発甲164号・本項全部改正〕

7 第9(報償金を贈与しない場合の通知)関係

警察署等の長は、申告者が報償金の贈与対象者に該当しないと認めたときは、報償非該当通知書にその理由を明確に記載した上、速やかに申告者に通知するように配意し、善意の協力者の心情を害することのないようにすること。

〔平14総会発甲52号・本項一部改正〕

8 第10(報償金の支出方法)関係

(1) 報償金は資金前渡による随時の経費として扱うほか、該当者の預金又は貯金の口座への振込みの方法により支出することができる。

(2) 資金前渡扱いにより直接搬送者に報償金を支出するときは、領取書を徴するが、この場合において、被贈与者が印鑑を所持していないなど領取書に押印できないときは、警察署等の交通課長若しくは交通課長代理(交通課長が置かれていない警察署にあつては交通係長)又は中(小)隊長が、領収書末尾の余白部分に報償金を贈与したことを添書し、記名押印すること。

〔昭53務警発甲10号昭54交指・総会発甲33号平10交総・交指・交駐・交制・交免・務警発甲27号平14総会発甲52号・本項一部改正〕

9 第11(他の報償との関係)関係

警察職員及び消防職員の搬送行為については、愛知県警察表彰等取扱規程の定めるところにより取り扱うこと。

10 第12(搬送者報償処理簿の備付け)関係

搬送カード及び搬送者報償処理簿は、支出証拠書となるものであるから、取り扱いに誤りのないよう留意すること。

11 第13(報告)関係

搬送者報償処理報告書による報告は、報償金の贈与の有無にかかわらず行うこと。

12 搬送者に対する言語、態度等

搬送者は、いわゆる善意の協力者であるから、親切に取り扱い、いやしくも相手に不快の念をいだかせ、又は迷惑をかけることのないように心がけること。

13 制度の周知徹底

(1) 部内教養の徹底

警察署等の長は、この制度の適正かつ円滑な運用を図るため、この制度の趣旨、運用要領等について部内教養を徹底すること。

(2) 部外広報の徹底

この制度を適正かつ円滑に運用するため、医療及び救急機関はもとより、交通安全に関する各種講習会、講演会等の機会並びに市町村、交通安全協会等の機関紙を通じて、この制度の趣旨及び内容を一般に、周知徹底すること。

別記

交通事故負傷者を搬送した者に対する報償金贈与制度要綱

第1 趣旨

この要綱は、交通事故による負傷者(以下「負傷者」という。)の救護活動の促進を図るため、当該負傷者を医療機関へ搬送した者(以下「搬送者」という。)に対する報償金の贈与に関し、必要な事項を定めるものとする。

第2 適用地域

この要綱は、愛知県の区域内において発生した交通事故について適用する。

第3 報償金の贈与対象者

報償金は、搬送者のうち、主として搬送行為に従事した者に贈与する。ただし、次の各号に掲げる者には贈与しない。

(1) 交通事故の当事者及びその他の乗務員

(2) 警察職員及び消防職員

(3) 当該負傷者の親族

(4) 医師、看護婦その他の者で、業務として当該負傷者の救護活動に従事した者

第4 報償区分等

報償区分、決定基準及び報償金額は、次表のとおりとする。

報償区分

決定基準

報償金額

A級

負傷者を搬送したことにより、搬送者の被服、車両の座席等が著しく汚損若しくは破損し、又は搬送行為が極めて困難であつたと認められる場合

5,000円

B級

負傷者を搬送したことにより、搬送者の被服、車両の座席等が相当に汚損若しくは破損し、又は搬送行為が相当困難であつたと認められる場合

3,000円

C級

負傷者を搬送し、A級及びB級に該当しない場合

1,000円

第5 搬送行為の申告等

搬送者は、報償金を受けようとするときは、高速道路交通警察隊及び警察署(以下「警察署等」という。)並びに交番及び駐在所に備え付けてある搬送カード(様式第1号)に必要な事項を記載して、当該交通事故の発生地を管轄する警察署等の長に申告するものとする。

2 搬送者は、搬送行為により被服、車両の座席等が汚損又は破損したときは、最寄りの警察署等又は交番若しくは駐在所において警察官の確認を受けて申告するものとする。

第6 警察官による搬送行為の認知報告

警察官は、交通事故の処理等の過程において、搬送者を認知したときは、搬送カードに記入して報告するものとする。

第7 報償金の決定

警察署等の長は、搬送カードを受理したときは、その記載内容について調査し、報償金の贈与を必要と認めたときは、その額を決定するものとする。

ただし、高速道路交通警察隊にあつては報償金の決定者を警察本部長とする。

第8 搬送カードの移送

警察署等の長は、受理した搬送カードの交通事故が他の警察署等の管内で発生したものであることが判明したときは、速やかに当該交通事故の発生地を管轄する警察署等の長に搬送カードを移送するものとする。

第9 報償金を贈与しない場合の通知

警察署等の長は、前記第7の規定により調査した結果、報償金の贈与対象者に該当しないと認めたときは速やかに報償非該当通知書(様式第2号)により、申告者にその旨を通知するものとする。

第10 報償金の支出方法

報償金の支出は、資金前渡扱いによるほか、搬送者の預金又は貯金の口座への振込みの方法により支出することができる。

2 前項の規定により報償金を贈与するときは、報償金贈与通知書(様式第3号)を交付して行うものとする。

第11 他の報償との関係

搬送者の搬送行為が愛知県警察表彰等取扱規程(平成24年愛知県警察本部訓令第1号)に定める事由に該当すると認めたときは、この要綱に定める報償金の贈与とは別に表彰又は賞揚を行うことができる。

第12 搬送者報償処理簿の備え付け

警察署等の長は、搬送カードを受理したときは、その都度搬送者報償処理簿(様式第4号)に登載し、その処理状況を明らかにしておくものとする。

第13 報告

警察署等の長は、毎月の処理状況を搬送者報償処理報告書(様式第5号)により、翌月5日までに警察本部長(交通捜査課長経由)に報告するものとする。

第14 備付簿冊

警察署等に備え付ける簿冊の名称、保存期間等は、次表のとおりとする。

簿冊名

保存期間

摘要

搬送カード

5年

警察署の会計課(係)に備え付け、会計年度ごとに編てつする

搬送者報償処理簿

1年

高速道路交通警察隊及び警察署交通課(係)に備え付け、会計年度ごとに編てつする

〔平6交総・交指・交駐・交制・交管・交免発甲66号平14総会発甲52号平24務監発甲3号平25務警発甲76号・本別記一部改正〕

〔平5総務発甲42号平6交総・交指・交駐・交制・交管・交免発甲66号平14総会発甲52号令元務警発甲93号令2務警発甲176号・本様式一部改正〕

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〔平5総務発甲42号令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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〔平5総務発甲42号令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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〔平5総務発甲42号令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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〔平5総務発甲42号平25務警発甲76号令元務警発甲93号・本様式一部改正〕

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交通事故負傷者を搬送した者に対する報償金贈与制度要綱の制定

昭和49年4月15日 交指・総会発甲第22号

(令和2年1月1日施行)

体系情報
第7編 通/第3章 交通指導取締り/第3節 事故捜査
沿革情報
昭和49年4月15日 交指・総会発甲第22号
昭和53年 務警発甲第10号
昭和54年 交指・総会発甲第33号
平成5年 総務発甲第42号
平成6年 交総・交指・交駐・交制・交管・交免発甲第66号
平成10年 交総・交指・交駐・交制・交免・務警発甲第27号
平成14年 総会発甲第52号
平成16年 務警発甲第164号
平成24年 務監発甲第3号
平成25年 務警発甲第76号
令和元年 務警発甲第93号
令和2年 務警発甲第176号