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いぶし瓦の色を生かした花器を開発しました ~連続した曲線と直線が織りなす陰影美~
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター常滑窯業試験場(常滑市。以下「試験場」という。)、株式会社INUI(イヌイ)(常滑市。以下「INUI」という。)及び創嘉瓦工業(そうかかわらこうぎょう)株式会社(高浜市。以下「創嘉瓦工業」という。)は、いぶし瓦※1の技術を用いた新しい花器「QUNKA(クンカ)-燻火(くんか)-」を開発しました。
開発した花器には、燻化(くんか)※2と呼ばれる、表面に炭素膜を付けるいぶし瓦の製造技術が用いられています。そのため、いぶし瓦が持ついぶし膜独特の味わい深い色や光沢を有する花器となっています。
なお、この花器は、本日より高浜市ふるさと応援寄附金の謝礼品(ふるさと納税の返礼品)の対象となりました。また、本日より高浜市やきものの里かわら美術館・図書館で、2025年7月よりINUIのWEBページで販売を開始します。
1 開発の背景、概要
愛知県では、三州瓦(さんしゅうがわら)と呼ばれる粘土瓦の生産が盛んで、その生産量は年間約1億7千万枚、全国シェアの約4分の3を占めています(経済産業省 2023年「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」)。粘土瓦はその製法によって、いぶし瓦と釉薬(ゆうやく)瓦※3に大別されます。いぶし瓦の表面には、燻化と呼ばれる技術により炭素の薄い膜が付いています。これにより、いぶし膜独特の味わい深い色や光沢が生まれ、屋根に葺(ふ)いた時には連続する陰影美となります。
このように、瓦は優れた屋根材である一方、新設住宅着工戸数の減少や瓦以外の屋根材の普及に伴い、需要の伸び悩みが見られます。そのため、瓦の製造技術を生かした、新たな商品開発が求められています。
そこで、試験場、INUI及び創嘉瓦工業は、いぶし瓦の美しさを生かした新たな用途展開を検討しました。その結果、日々の暮らしの中で手に取ってその美しさを身近に感じられる花器に着目し、開発を行いました。
2 開発の詳細
(1)研究開発の概要
いぶし瓦の美しさを生かした新たな花器の開発では、以下の二つの課題が生じました。
ア いぶし瓦の製造工程をそのまま使用して花器を製造すると、炭素膜は生成し外観は優れているものの、素地の焼締まりが十分ではなく、時間の経過とともにゆっくりと水が染み出してしまう。
イ 花器と同じように焼成した素地を用いて、いぶし瓦の製造工程でいぶし膜を生成させると炭素膜の密着性が十分ではなく、はく離が生じてしまう。
そこで、現在のいぶし瓦の製造工程で可能な素地の焼成方法、表面改質方法、燻化方法などを検討しました。その結果、試行錯誤を重ねる中で、いぶしの炭素膜を密着性良く生成させる、最適な表面改質方法を見出すことに成功しました。また、その成果を元に、瓦の陰影美を模した花器を商品化することができました。
(2)研究開発体制
本開発は、公益財団法人あいち産業振興機構の助成金「令和5年度あいち中小企業応援ファンド新事業展開応援助成金(地場産業枠)」を受け、「いぶしの密着性を向上させた、新たな陶器製品の開発と販路拡大」として実施しました。
3 今後の予定
この花器は、2025年5月に、高浜市ふるさと応援寄附金の謝礼品(ふるさと納税の返礼品)に採択されました。また、本日より高浜市やきものの里かわら美術館・図書館で、2025年7月よりINUIのWEBページで販売を開始します。
・高浜市ふるさと応援寄附金Webページ
https://www.city.takahama.lg.jp/site/furusato/
・高浜市やきものの里かわら美術館・図書館
場所:高浜市青木町九丁目6番地18
電話:0566-52-3366
観覧料(常設展示):無料
開館時間:10時~17時
休館日:月曜日・火曜日(祝休日の場合は翌平日)、年末年始
https://www.takahama-kawara-museum.com/
・株式会社INUI「QUNKA-燻火-」Webページ
https://qunka.jp/
4 問合せ先
(開発技術に関すること)
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター常滑窯業試験場
材料開発室(担当:山口、立木、清水(彰))
常滑市大曽町4-50
電話:0569-35-5151(代表)
URL:https://www.aichi-inst.jp/tokoname/
(花器に関すること)
株式会社INUI
担当:取締役 大野大輔(おおのだいすけ)
常滑市新開町6丁目1の35
電話:0569-35-2955
(いぶし瓦・いぶし技術に関すること)
創嘉瓦工業株式会社
担当:代表取締役 石原 史也(いしはらふみや)
顧問 石原 哲也(いしはらてつや)
高浜市豊田町一丁目5番地5
電話:0566-52-2215
【用語説明】
※1 いぶし瓦
瓦はその製法によって、いぶし瓦と釉薬瓦に大別される。いぶし瓦は、瓦素地表面に炭素の薄い膜を形成させており、独特の味わい深い色や光沢を有する。
※2 燻化
いぶし瓦の製造工程の一つ。焼成工程の最終段階で炉への空気を遮断して蒸し焼き状態にし、そこにLPG(液化石油ガス)などを導入することで、瓦素地表面に銀色の炭素膜を形成させる工程のこと。
※3 釉薬瓦
釉薬瓦は、乾燥工程の後に釉薬を施して焼成することで、瓦素地表面にガラス質のうわ薬の層を形成させている。
このページに関する問合せ先
あいち産業科学技術総合センター 産業技術センター 常滑窯業試験場 材料開発室
担当:山口、立木、清水(彰)
電話:0569-35-5151