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伝統工芸品有松・鳴海絞の「涼しく柔らかい風合い」を先端技術で守る~セルロースナノファイバーで凹凸(しぼ)を生かした抗菌製品を開発~

(写真:抗菌性有松・鳴海絞の製品)
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市。以下「センター」という。)は、愛知絞販売株式会社(名古屋市緑区、屋号:絞りの久田)、水野金属商事株式会社(名古屋市東区)と共同で、有松・鳴海絞(*1)ならではの立体的な凹凸(しぼ)を生かしつつ抗菌加工を行う技術を開発し、製品化しました。
有松・鳴海絞には、糸で生地を括る、縫う、巻くなど、100種類を超える多彩な絞り技法があります。こうした技法で、立体的な模様(凹凸(しぼ))による、涼しくやわらかい独特の風合いと模様が生まれます。
今回、抗菌剤として、銅の微粒子と、天然の植物性素材であるセルロースを微細加工した「セルロースナノファイバー(CNF)(*2)」の水分散液(特開2023-013406号)を用いました。この抗菌剤は綿への親和性が高く、糸抜き前の綿生地に容易に吸収されます。また、高温での乾燥が不要で、日陰干し乾燥だけで抗菌加工を施すことができます。この結果、熱による立体的な凹凸(しぼ)の損失を抑え、絞り独特の風合いを保った抗菌性有松・鳴海絞製品を実現しました。
本商品は、2026年10月4日(日曜日)の「有松山車まつり」の日から、有松しぼり久田(本店および有松駅前店:名古屋市緑区)で販売を開始します。また、11月7日(土曜日)・8日(日曜日)に開催される「くらふとフェア蒲郡」でも販売するほか、10月22日(木曜日)・23日(金曜日)の「静岡県セルロース循環経済国際展示会in富士」では、糸抜き体験とともに、今回開発した技術を紹介します。
1 開発の背景、概要
(1) センターの取組
環境意識の高まりを背景に、製品の脱石油化学化や生分解性素材開発を目指す製造業に対して、生活衛生品や食品、自動車、繊維、研磨材、環境浄化用フィルタなど多岐にわたる製品分野において、植物素材のセルロースナノファイバー(CNF)やバイオエタノールなどの技術支援を行っています。
様々な開発目的に適合するCNFを、主に県内企業(吉田機械興業(株):名古屋市熱田区)の機械装置で試作・最適化し、知財創出・社会実装化を推進しています。2024年7月11日(木曜日)には、当センターの成果について、共同研究企業とともにセルロース学会技術賞を受賞しています。
(2) CNFを用いた繊維用抗菌剤開発と有松・鳴海絞製品の経緯について
こうした取り組みの一環として、セルロースナノファイバー(CNF)を添加した抗菌剤について、日清紡テキスタイル(株)(東京都)と共同研究を行い、抗菌加工した織物の洗濯耐久性が大幅に向上する技術を開発し、特許出願しました(特開2023-013406号)。
上記特許の活用を目的に、2021年度から水野金属商事(株)に対し技術支援を行い、2022年2月には銅の微粒子とCNFを混合した繊維用抗菌剤を製品化しました。本製品は2023年7月20日にCU STAR(シー・ユー・スター)(*3)の認定を受けました。
さらに、2025年度より、愛知絞販売(株)と共同で、上記抗菌剤を用いた有松・鳴海絞の抗菌加工に着手し、糸抜き前の生地に抗菌剤を含浸し、日陰干し乾燥で抗菌加工ができる技術を開発しました。これにより、立体的な凹凸(しぼ)を生かした、絞り製品独特の風合いを持つ抗菌性有松・鳴海絞製品を実現しました。
2 開発の詳細
(1) 抗菌加工技術の特徴
有松・鳴海絞には、糸で生地を括る、縫う、巻くなど、100種類を超える多彩な絞り技法があります(図1)。これにより、立体的な模様(凹凸(しぼ))と、涼しく快適でやわらかな肌触りを持つ、独特の風合いと模様が生まれます。

図1 括り(絞り技法の一つ)の例
一方、絞り製品に抗菌加工を施す際には、抗菌剤の脱落防止のため石油化学系のバインダー(固着剤)を用いることが多く、糸抜き(糸を解く工程)の後に行う強いプレスや、バインダー硬化のための乾燥時の加熱(120℃〜150℃程度)によって、絞り特有の凹凸(しぼ)が潰れてしまう、また、バインダーによって生地の吸水性や肌触りを損ねてしまうといった課題がありました。
今回の絞り製品の抗菌剤では、綿と同じ植物素材(セルロース)のCNFを抗菌性銅粒子の分散とバインダーに用いています。これにより、糸抜き前の生地に天然染液と同様に含浸することが可能となり、温和な乾燥条件で抗菌加工ができるようになりました。強いプレスや高熱をかける必要がなくなったことで、立体的な凹凸(しぼ)を生かした、綿の絞り製品独特の風合いを持つ抗菌製品が完成しました(図2)。

図2 抗菌加工有松・鳴海絞
左:開発加工(大きい凹凸)、右:従来加工(小さい凹凸)
(2) 開発した抗菌性有松・鳴海絞製品の特徴
〇伝統的な「絞り」が醸し出す、立体的で豊かな風合い
綿の絞り製品特有の立体的な凹凸(しぼ)を生かし、独自の柔らかな肌触りと豊かな風合いを実現しました。
(化学処理による凹凸(しぼ)の固定化はしていませんので、洗濯により凹凸(しぼ)は徐々に小さくなります。)
〇生乾き臭・汗臭の原因菌ともに抑制
繊維製品の汗の臭いのもととなる「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」に加え、部屋干し時の生乾き臭の原因菌とされる「モラクセラ菌(Moraxella osloensis)」に対する抗菌活性を確認しています。
〇50回洗濯しても効果が続く、高い抗菌耐久性
一般社団法人繊維評価技術協議会の「SEKマーク繊維製品認証基準(抗菌防臭加工)」と同等の試験において、50回洗濯後も抗菌活性値2.2以上を維持。繰り返しの洗濯でも高い抗菌効果が持続します。
〇石油化学製バインダー不使用で、綿本来の吸水性と肌触りをキープ
加工の際に石油化学製バインダー(固着剤)を使用していないため、綿が持つ本来の優れた吸水性と優しい肌触りを損ないません。
3 今後の予定
2026年10月4日(日曜日)、名古屋市緑区の有松地区で開催される、有松山車まつりに合わせて、有松しぼり久田(本店:名古屋市緑区)で抗菌加工したタオルハンカチの販売と抗菌加工の受注を開始します。また、10月24日(土曜日)から11月1日(日曜日)まで豊田市民芸館(豊田市)で開催される「加藤南美子(かとう なみこ)絞り染め作品展」に合わせ、会場内にて、抗菌加工を施した同氏の絞り染め作品を販売いたします。さらに、11月7日(土曜日)、8日(日曜日)に開催される「くらふとフェア蒲郡」(蒲郡市)でも販売を行うほか、10月22日(木曜日)、23日(金曜日)に開催される「静岡県セルロース循環経済国際展示会in富士」では、糸抜き体験とともに、今回開発した技術をご紹介します。
4 イベントの概要
(1) 有松山車まつり
有松天満社秋季大祭として、10月の第1日曜日に開催されており、3輌の山車が有松東海道を曳行します。まつり全体が名古屋市の無形民俗文化財に指定されています。
開催日時:2026年10月4日(日曜日)9時30分~15時/18時30分~21時30分
場所:有松・東海道一円(名古屋市緑区)
問合せ先:052-621-0111(有松・鳴海絞会館)
URL:https://aichinow.pref.aichi.jp/events/detail/1720/
(2) 加藤南美子絞り染め作品展
絞り染め等で功績のあった、加藤南美子氏の令和8年度豊田文化功労賞(公益財団法人 豊田市文化振興財団)の受賞記念として開催され、同氏の作品の展示・紹介に加え、一部作品の販売も行います。
開催日時:2026年10月24日(土曜日)~2026年11月1日(日曜日)9時30分~17時(月曜日は休館日)
場所:豊田市民芸館 第3民芸館(愛知県豊田市平戸橋町波岩86-100)
閲覧料:無料(第3民芸館は入場無料)
問合せ先:0565-45-4039
URL:https://www.mingeikan.toyota.aichi.jp/
(3) くらふとフェア蒲郡
クラフト・伝統工芸作品の作り手と使い手が作品を通した交流を行う場として、クラフト・伝統工芸作品の展示・販売やワークショップを開催しています。
開催日時:2026年11月7日(土曜日)10時~16時、2026年11月8日(日曜日) 9時~15時
場所:みなとオアシスがまごおり及び竹島ふ頭一帯
問合せ先:0533-66-1119(実行委員会事務局(蒲郡市産業政策課内))
URL:https://www.craft-gamagori.com/
(4) 静岡県セルロース循環経済国際展示会in富士
CNFを始めとした環境に優しいセルロース素材を活用した製品開発の促進を目的とした、国内外の関連メーカーや応用製品開発企業等による展示会です。
開催日時:2026年10月22日(木曜日)13時〜16時、2026年10月23日(金曜日) 9時30分〜16時
場所:富士市産業交流展示場「ふじさんめっせ」(静岡県富士市柳島189-8)
入場料:無料
問合せ先:054-221-3622(静岡県経済産業部産業革新局先端技術振興課)
URL:https://www.pref.shizuoka.jp/sangyoshigoto/kigyoshien/shuseki/1054121.html
5 問合せ先
CNF添加剤に関すること
・あいち産業科学技術総合センター産業技術センター環境材料室
担当:伊藤(雅)、森川
刈谷市恩田町一丁目157番地1 電話:0566-45-6901(直通)
https://www.aichi-inst.jp/sangyou/
抗菌剤に関すること
・水野金属商事株式会社豊田支店
担当:営業部 係長 佐藤 幸治 (さとう こうじ)
住所:豊田市駒場町田戸(たど)51-1 電話:0565-57-5311
https://www.mizunokinzoku.com/
有松絞りに関すること
・愛知絞販売株式会社
担当:久田 麻祐子 (ひさだ まゆこ)
住所:名古屋市緑区有松616 電話:052-621-1067(代表)
https://www.shibori-hisada.com/
【用語説明】
*1 有松・鳴海絞(ありまつなるみしぼり)
かつて尾張藩が藩の特産品として保護したことで知られる、400年以上の歴史を持つ絞り染めです。蜘蛛絞りや雪花絞りなど、100種類以上の多様な技法が特徴です。布を細かく糸で括ったり縫ったりして染めるため、糸を解いたあとに布に独特の立体的な凹凸(しぼ)が残ります。これにより、肌との接触面が減り、さらりとした涼しくやわらかい感触を生み出します。有松鳴海絞は、経済産業大臣指定の伝統的工芸品であり、地域団体商標(登録番号第5023084号)として愛知県絞工業組合に登録されています。
※2 セルロースナノファイバー(CNF)
木材などの植物由来の繊維(セルロース)を100ナノメートル以下のサイズ(ナノメートルは100万分の1ミリ)まで細かく解きほぐした、再生可能な最先端の天然素材のこと。CNFの特性を活用することにより、部素材の高機能性付加、材料の少量化や軽量化による二酸化炭素(CO2)排出量削減、および生分解性によるマイクロプラスチック対策への貢献といった利点が見込まれています。
※3 CU STAR(シー・ユー・スター)
銅(元素記号:Cu)が持つ高い抗菌性能を生かした材料や製品を広く普及させることを目的に、一般社団法人日本銅センターが2017年から運用している認証制度およびその登録商標(シンボルマーク)。銅の優れた抗菌性能を消費者に分かりやすく伝え、安心して製品を選んでもらうための目印として機能しています。
このページに関する問合せ先
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター環境材料室
担当:伊藤(雅)、森川
電話:0566-45-6901

