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18 「天竜川からもらい水」をいただくお話し

ページID:0401264 掲載日:2022年5月27日更新 印刷ページ表示

「天竜川からもらい水」をいただくお話し

 球磨川支流川辺川が始まるところ、熊本県の五木村に残る「五木の子守唄」には、「水は天からもらい水」という歌詞があります。
 球磨川流域は大雨による洪水災害の多い地域であるため、この歌詞から潤沢な雨水をイメージしますが、実は、渇水も含め「水は天からもたらされるものであって、こちらの都合どおりにはならない」ということを意味しているのだそうです。
 さて、お話しは終戦直後に遡ります。
 戦後日本は、厳しい食糧難と就職難に直面するなかで、これを打開するため、全国的に農地の開拓事業を進めていきます。
 東三河地域においても、渥美半島や高師・天伯原などで、大規模な開拓事業が始まりました。
 水に恵まれないこの地域で、昔は、水を求めて各地で雨乞いの神事が行われていたとのことですが、食糧難と就職難を克服し、農業で地域を発展させるためには、現実的な問題として、大規模で計画的な水の供給を実現することが必要でした。
 このようにして、豊川用水のプロジェクトが動き出すこととなりましたが、メインの水瓶である宇連ダムは集水面積が小さく、それだけでは水が足りません。
 そこで、新たな水源を求め、天竜川水系で設楽町(旧津具村)・豊根村を流れる大入川、東栄町を流れる振草川から取水し、2つの頭首工を通じて宇連ダムに導水する「流域変更」が計画されます。
 しかし、複雑な水利権が絡むなかで、流域変更を実現することは大変な作業であり、愛知県と静岡県の間で、何度となく難しい協議が持たれることとなります。
流域変更マップ
 流域変更マップ(独立行政法人水資源機構リーフレットより)
 この解決の糸口となったのが、1950年に制定された国土総合開発法による「天竜東三河特定地域」の指定(1951年)でした。
 国土総合開発法は、終戦後の荒廃した国土の保全、水力や農産物等の国内資源の開発、工業立地の条件整備などを念頭に、河川総合開発等を重点的に行っていくための法律で、愛知・静岡・長野の3県をまたにかけたエリアが「特定地域」のひとつに指定され、治水、かんがい、水力発電といった事業が総合的に進められることとなります。
 この「天竜東三河特定地域」に関係する一連の計画の中で、静岡県が発電用のダムとして建設を予定する佐久間ダムの計画地域内に、豊根村と旧富山村の一部が入っていたことから、この問題の解決のため、静岡県は、愛知県に対して協力要請を行うとともに、静岡県もまた、豊川用水のための水源として、流域変更を行うことに協力することとなったのです。
大入頭首工の様子
 大入頭首工
 一方で、当初、農業用水として計画された豊川用水は、「特定地域」の指定を経て、生活用水や工業用水なども含む総合用水事業に性格を変えることとなり、それには更なる水の供給が必要となりました。
 そこで、これを補うため、宇連ダムが当初の計画から10メートルかさ上げされるとともに、先の流域変更での取水に加えて、佐久間ダムから直接水を分けてもらう「佐久間導水」が協議され、国の仲介の下に両県の間で分水協定が締結された結果、現在に至る豊川用水の水源が確保されることとなったのです。
振草頭首工の様子
 振草頭首工
 宇連ダムのダム湖、鳳来湖の湖畔にある貴船神社では今年も水神祭が行われました。この神社は先人が末永い水の恵みを祈って、京都貴船神社から御祭神である水源の神の分身をいただき建立したものだそうです。
 流域変更での取水と佐久間導水による天竜川からのもらい水のおかげで、豊川用水は安定的な水供給が可能となりましたが、大渇水ともなればそうはいきません。
 やはり最後は、「水は天からもらい水」。それは人の手の及ばぬところ。
 改めて水の恵みに感謝したいと思います。

流域変更での取水について

 いずれも天竜川水系の大入川から、大入頭首工により最大5.0立方メートル/秒を取水して振草川へ導水、振草川から振草頭首工により最大15.0立方メートル/秒を取水して宇連ダムへ導水するもので、豊川用水の水源の約15%を賄っています。

佐久間導水について

 佐久間ダムから最大14.0立方メートル/秒(年間最大5,000万立方メートル)の水を宇連川支流亀淵川に導水するもので、5月6日から9月20日の間に、一定の条件を満たした場合のみ導水が可能となっています。

本日こぼれ話し

 治山や治水、水資源の涵養に重要な役割を果たしている森林の保全とダム等の水源開発に伴う影響緩和を目的に、国、愛知県及び東三河8市町村が設立した「公益財団法人豊川水源基金」では、豊川上流域で行われる水源林整備に対する助成事業を行っています。
 この助成事業は、一部、豊川流域ではない長野県南信州地域の市町村にも適用されていますが、これには、佐久間導水による「もらい水」への心ばかりの恩返しの意味が込められています。
※「三遠南信地域連携ビジョン」が策定されるなど、現在に至る三遠南信地域のつながりは、「天竜東三河特定地域」が起点となっています。
※本稿の作成にあたって、「豊川用水 水の流れとともに25年(豊川用水通水25周年祭実行委員会)」を参考にさせていただきました。

独立行政法人水資源機構豊川用水総合事業部https://www.water.go.jp/chubu/toyokawa/

豊川総合用水土地改良区http://www.toyosou.jp/index.html

牟呂用水土地改良区

https://muroyousui.or.jp/

松原用水土地改良区

https://matsubara-yousui.jp/