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「知の拠点あいち」重点研究プロジェクトにおいて食中毒菌等を始めとした微生物を迅速に検査できる装置を開発しました

ページID:0085433 掲載日:2015年8月4日更新 印刷ページ表示

平成27年8月4日(火曜日)発表

愛知県は、公益財団法人科学技術交流財団に委託して、大学等の研究シーズを企業の製品化につなげる産学行政連携の共同研究開発プロジェクト『「知の拠点あいち」重点研究プロジェクト』※1を実施しています。

「食の安心・安全技術開発プロジェクト」※2において、豊橋技術科学大学大学院工学研究科の中内茂樹教授と株式会社槌屋※3(本社:名古屋市)の研究グループは食中毒菌等を始めとした微生物を迅速に検査できる装置を開発しました。

本検査装置は、微生物と蛍光試薬との反応の時間変化に着目した新規検出法※4を用いることで、微生物を早期に自動で検査することができます。

例えば、これまで、約1日の培養期間の後、目視による検査が必要だった大腸菌の場合、本検査装置を用いることで3~4時間程度の培養の後、自動的に検査することが可能となりました。これにより、食品の出荷前検査等への活用が期待されます。

今後、株式会社槌屋が本検査装置を製造販売する予定です。平成28年度に試行販売を開始し、その後、本格販売を目指します。試行販売は県内の食品関連企業を想定しています。

1 開発の背景

近年、食品や農産物に含まれる有害化学物質や、異物混入、食中毒等、食の安心・安全に対する関心が高まっています。食の安心・安全を確保するため、食品関連企業において様々な検査が行われていますが、特に食品中の微生物の検査※5は、品質低下や変敗※6、食中毒の発生等を防ぐために、極めて重要です。

食品中の微生物の検査は、一般的に培養検査法によって行われます。培養検査法は、目視による検査が可能となるまで微生物を増殖※7させて、増殖した微生物のコロニー※8を観察する方法です。培養検査法では、微生物を増殖させるために長時間の培養が必要であり、例えば、大腸菌の場合は約1日、乳酸菌の場合は約3日の培養時間を要します。検査時間の短縮のため短時間の培養で観察する場合、検査時に混入する食品残渣※9を識別することが課題でした。

本検査装置は、微生物と蛍光試薬との反応の時間変化に着目した新規検出法により、微生物と食品残渣を自動識別することで、大腸菌を3~4時間程度、乳酸菌を24時間程度の培養時間で検査することが可能となりました。本検査装置を出荷前検査等に役立てることで、食の安心・安全のさらなる向上が期待できます。

2 本検査装置について

(1)本技術と従来技術の比較

本技術と従来技術の比較

項目

培養及び検査時間

(大腸菌の場合)

検査時に混入する

食品残渣への対応

判定方法

本技術

3~4時間

自動識別

自動カウント

従来技術

22~26時間

目視による識別

目視による

手動カウント

(2)従来技術(図1)

 

検査したい食品を液体の中で破砕し、食品に付着した微生物を剥がします。破砕液をフィルタで濾過すると、フィルタ上に微生物や微小な食品残渣が残ります。このフィルタを栄養成分の入った寒天の上に乗せて、体内の温度に近い37℃で保持し、微生物が増殖するのを1日から数日待ちます。1個の微生物が1000万個以上まで増殖すると、増殖した微生物のコロニーを目視で確認できるようになります(図1)。

図1 従来技術

(3)本検査装置による測定(図2~図5)

本検査装置は、微生物が増殖を始めてから、100個程度のコロニーになった時点で測定を行うことで、迅速な検査を可能としています。

本検査装置を使用する際は、増殖した微生物を保持したフィルタを、非殺菌性の蛍光染色剤と反応させるためのケースに移してから、本検査装置内部にセットして、内部のカメラにより蛍光撮影※10を行います(図2)。その結果、蛍光撮影では微生物だけでなく食品残渣も検出されます(図3)が、本検査装置では、微生物と蛍光試薬との反応の時間変化に着目した新規検出法により、微生物と食品残渣を自動識別することができます(図4)。さらに自動カウントにより、微生物だけを数えることもできます。検査後、微生物の種類を調べる場合等は、目視で確認できる大きさまでもう一度微生物を増殖し、微生物の種類を同定することも可能です(図5)。
図2 本検査装置による測定例
図3 検査装置による検査例
図4 微生物と食品残渣の蛍光反応の時間変化  図5 再培養後の観察例

3 今後の展開

平成28年度に試行販売を開始し、その後、本格販売を目指します。試行販売は県内の食品関連企業を想定しています。

4 問合せ先

○プロジェクト全体に関すること

・あいち産業科学技術総合センター 企画連携部

(1)担 当:村上、鹿野

(2)所在地:豊田市八草町秋合1267番1

(3)電話:0561-76-8306

(4)FAX:0561−76−8309

・公益財団法人科学技術交流財団 知の拠点重点研究プロジェクト統括部

(1)担 当:青木、松村、中山、青井

(2)所在地:豊田市八草町秋合1267番1

(3)電話:0561-76-8370

(4)FAX:0561−21−1653

 

○本開発の技術内容に関すること

・豊橋技術科学大学 大学院工学研究科

(1)担  当:中内教授、海谷研究員

(2)所在 地:豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1

(3)電話:0532-44-6763

(4)F A X:0532-44-6757

・株式会社槌屋

(1)担  当:松村執行役員

(2)所在 地:名古屋市中区上前津二丁目9番29号

(3)電話:052-331-5451

(4)F A X:052-332-5191

 

用語説明

※1 「知の拠点あいち」重点研究プロジェクト

高付加価値のモノづくりを支援する研究開発拠点「知の拠点あいち」を中核に実施している産学行政の共同研究プロジェクト。大学、公的研究機関等の研究シーズを企業の製品化へつなげる橋渡しの役割を担い、食の安心・安全技術開発プロジェクト等3つのプロジェクトを実施。

 

※2 食の安心・安全技術開発プロジェクト

 <プロジェクトリーダー>
豊橋技術科学大学大学院工学研究科 教授 田中三郎 氏

 <内容>
全国有数の食品工業の集積地であり、多様な農産物を産出する本県において、食品や農産物 に含まれる有害化学物質、固形異物、微生物を高精度、迅速、安価に検査する技術を確立する

 <参加機関>
11大学5公的研究機関32企業(うち中小企業13社)(平成27年8月1日現在) 

・うち大学
豊橋技術科学大学、名古屋大学、名古屋工業大学、静岡大学、名城大学、中部大学、名古屋市立大学、青山学院大学、富山大学、金沢工業大学、香川大学

 ・うち公的研究機関
(公財)科学技術交流財団、愛知県農業総合試験場、(公財)京都高度技術研究所、あいち産業科学技術総合センター、愛知県衛生研究所  

 

※3 株式会社槌屋

名古屋市に本社を置く、自動車部品からエレクトロニクス、塗料、セラミック、ケミカル、繊維製品等幅広く製造販売を行う企業。

Webサイト http://www.tsuchiya-group.co.jp/

 

※4 新規検出法

紫外線やX線等の波長の短い光を被写体に照射すると、被写体に蛍光物質が含まれている場合、自ら光を放出する。これを蛍光反応という。微生物と食品残渣とでは、この蛍光反応の時間変化に違いがあり、その違いを利用することで、高感度かつ正確に微生物を識別できる。この検査法は、特願2015-58653「微生物検出装置、微生物検出プログラム及び微生物検出方法」として、特許出願済み。

 

※5 食品中の微生物の検査

食品の微生物検査は、食品衛生法、県や市の条例等で食品の種類ごとに、どのような微生物についてどのような試験をするかが、厳密に決められている。こうした基準に加え、自社内で検査基準を自ら定め、自主検査を行っている企業も多い。

 

※6 変敗

微生物によって炭水化物や脂肪が分解されて、風味が悪くなり食用に適さなくなること。

 

※7 増殖

微生物は分裂によって増殖するため、1個から、2個、4個、8個と倍々に増加していく。一度の分裂にかかる時間は微生物ごとに異なるため、食品衛生法においては、大腸菌は24時間、乳酸菌は72時間、全体的な微生物数の目安を調べるときは48時間増殖させる、といったように検査ごとに微生物を増殖させる時間が指定されている。

また、大腸菌や乳酸菌等、特定の微生物を検査するときは、検査対象の微生物だけが増殖できるように試薬や酸素濃度等を調製して増殖を行うよう定められている。

 

※8 増殖した微生物のコロニー

微生物は、特定の条件下で増殖を行い、微生物の塊を形成する。これは微生物コロニー(もしくは微生物集落)と呼ばれる。

例えば、大腸菌一個の大きさは1μm程度(0.001mm程度)に過ぎない。これが1000万個~10億個まで増殖すると、数mm程度の大きさとなって目で確認できるようになる。食品衛生法で定められる培養検査法では、微生物を増殖したあと、この微生物コロニーを目視で数え、食品に何個の微生物が付着していたのかを逆算して検査することとなっている。本検査装置では、微生物が100個程度(0.02~0.05mm程度)の微生物コロニーを測定している。

 

※9 食品残渣

食品の製造、流通及び消費の際に生じる食品かす、くず等。ここでは主に検査する食品試料内に非意図的に混入する食品かす、くず等を指す。

 

※10 蛍光撮影

紫外線やX線等の波長の短い光を被写体に照射し、被写体に含まれる蛍光物質が自ら光を放出する現象をカメラで撮影すること。

問合せ

あいち産業科学技術総合センター
企画連携部企画室
担当 村上、鹿野
ダイヤルイン 0561-76-8306

産業科学技術課科学技術グループ
担当 吉富、福田
内線 3384、3409
ダイヤルイン 052-954-6351

公益財団法人科学技術交流財団
知の拠点重点研究プロジェクト統括部
担当 青木、松村、中山、青井
ダイヤルイン 0561-76-8370