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平成23年度 人にやさしい街づくり賞 講評

ページID:0047975 掲載日:2012年2月20日更新 印刷ページ表示

総評

 第17回人にやさしい街づくり賞には、13件の応募がありました。応募いただいた皆様には、審査員一同心より感謝しております。応募件数が少なかったことは非常に残念ですが、選定しました大賞1件、特別賞1件、賞3件は、例年の受賞対象に勝るとも劣らぬ「もの」や「活動」です。以下、その概略を紹介します。
 まず、大賞に選ばれた「総合病院 南生協病院」です。病院のもつ閉鎖的な既成概念を破壊し、まちに開かれた新しい病院像を創り出しています。健康づくりによる高齢社会への対応、病児保育など働く女性への支援、協働によるまちづくりの促進などを具現化した設計コンセプトは、計45回の住民会議や現場職員の声を活かすしくみがあってこそ可能となったものです。まさに、時代の要請に応える創造的な人にやさしい街づくり活動が、病院という「もの」となって表わされていると言ってよいでしょう。
 次に、特別賞には「日進市立図書館」を選定しました。ここでも、基本設計から竣工までの過程が市民との協働で進められています。コーナー毎に椅子の仕様を変え目的に沿った座り心地を実現するなど館内の隅々にいたるまで利用者に対する細かな配慮が行き届いています。その結果、利用者の長時間滞在が可能となり、利用者数の増大をも、もたらしています。著名な建築家の手腕と住民のアイディア(盲導犬フックや書架付杖掛けなど)とがコラボしたユニバーサル空間は、特別賞に値するものです。
 最後に、賞に選定した「活動」3件を紹介します。「ダンスサークル トライアングル」は、障害のある子供たちとその母親達、大学生たちが集うダンスサークルです。15年間という継続年数の長さ、関わった人々の成長過程がきちんと整理され年々の課題が導き出されている点を評価しました。「打楽器インターフェースを楽しむ ビブラション(振動)」は、障害の枠を超え、みんなが一緒に楽しめる楽器の提案と音楽イベントを開催する活動です。活動歴は浅いのですが、バリアを超えたエンターテイメント性を重視し受賞対象としました。そして、「社会福祉法人半田市社会福祉協議会」は、共生型福祉の家「おっかわハウス」の活動によって受賞が決まりました。古民家を改修し、地域住民の世代間交流やNPO活動の場の提供や障害のある人のための宿泊体験を実施しています。始まったばかりの活動ですが、社会福祉協議会としての長年の経験から導き出された問題設定とその解決方策として「おっかわハウス」を運営していることを評価しました。
(森田 優己)

平成23年度 人にやさしい街づくり賞
大賞総合病院 南生協病院もの名古屋市
特別賞日進市立図書館もの日進市
ダンスサークル トライアングル活動豊明市
打楽器インターフェースを楽しむ ビブラション(振動)活動武豊町
社会福祉法人 半田市社会福祉協議会 おっかわハウス活動半田市

人にやさしい街づくり大賞

総合病院 南生協病院

総合病院 南生協病院

自然光が差し込む店舗が面した車寄せ / 全景 / 気軽に立ち寄れるベーカリー

総合病院 南生協病院

イベントを催すことができる駅前の玄関広場 / 地域に開放されたエントランスホール / 視認性の高い外来部

データ
所在地 名古屋市緑区大高町字平子36
施設  地上7階  SRC造、S造及びRC造 
延べ面積 29,388平方メートル
竣工  平成22年3月
設計  株式会社 日建設計

講評
 JR南大高駅近くに建つ南生協病院は、明るさと楽しさも感じる不思議な魅力のある所である。医療アドバイスが受けられるジムの併設は健康管理や病気予防に役立ち、オーガニックレストランや石窯ベーカリー等の商業ゾーンは、病院に用が無くともちょっと寄ってみたくなる。また通勤・通学の近道として病院を通り抜ける事も出来る。保育所は3つ、勤務者用の他、小児科診察後そのまま預けられる病児保育所もある。働く親にとって、どんなに心強く嬉しい事だろうか。
 開放感のあるエントランスホールに入ると、柔らかな色調の床が広がり一人掛けソファーが並び、見慣れた病院とはかなり趣が異なる。外来部の廊下は突当りに広く窓がある為、視線が抜け外光も入り、病院にありがちな閉塞感や圧迫感もない。色彩計画は上品で目に優しく、ポイント色が各所に配されて空間のアクセントとなり動線も判り易い。さりげなく多用されているオレンジ色も、心を勇気付けて明るくしてくれる。サインは判り易く読取り易く、病院内を心細く迷うことは少ないだろう。その他、様々な多くの設計上の心配りが随所に感じられる。 
 これらの計画は、病院・設計・そして延べ5,380人の組合員が参加した45回もの住民会議によって決まったものだという。意見調整は大変だったと察するが、こんなにも人々の気持をまとめた病院が出来るということを示してくれた事に感謝したい。そしてそれがとても明るく素敵で、温もりを感じる「ちょっと寄りたくなる」病院となっている。治療にも多大な良い効果をもたらすのではないだろうか。ボランティア・職員・関係する方々にとっても自慢の病院であろう。難しい条件を形にできた稀なケースかもしれないが、病院を「診療治療の場」のみでなく多くの人に安らぎを与える「集いの場」として、皆で新しく創り上げた事も素晴らしく、心から称賛の拍手を送りたい、大賞に相応しい病院である。 
(星田 博子)

人にやさしい街づくり特別賞

日進市立図書館

日進市立図書館

自然光があふれる開架スペース / 全景 / 市民等とのワークショップ等による意見をとりいれた盲導犬フック

データ
所在地 日進市蟹甲町中島3
施設  地上2階 RC造
延べ面積 6,101平方メートル
竣工  平成20年9月
設計  株式会社 岡田新一設計事務所

講評
 
かつての公共図書館は図書の閲覧・貸し出しの場であり、学習の場であったが、少子高齢化が進む中で、「滞在」する場としての役割が求められるようになって久しい。多様な情報媒体に親しみながら過ごす時間や活動プログラムを提供するために、これまでの公共図書館には見られなかった空間や機能が用意されている。
 この図書館も、計画の5つの柱の一つに「滞在型図書館」を掲げており、そのための提案が随所に確認できる。図書館全体の空間構成は回遊性が高く、さまざまな視線の交差や自然光の導入もあいまって、来訪者を飽きさせない。本をもって出られる半屋外の小さなテラスは、気候のよい季節には心地よい読書空間になるであろう。家具についても、さまざまな姿勢を可能にする椅子や机が、図書や雑誌、AV資料とともにくつろぎ、過ごすために用意されている。一方、落ち着いて読書や学習をしたい利用者のためには、落ち着いた学習室が比較的閉じた空間として用意されている。 
 「情報発信」や「みんなと学びあう」という計画目標に対しては、ワークショップゾーンと呼ぶ協働作業のためのスペースが用意されている。このゾーンと子ども向けの絵本が配架されたゾーンが中庭を挟んで並置されているが、一体的に利用することもできる。隣の「おはなしのへや」とともに子育てサロンとして利用するなど、さまざまな活用方法が思い浮かぶ。
 利用状況が気になるところだが、昼間は元気な高齢者や子育て真っ盛りの親子が訪れ、夕刻や休日には若者が数多く訪れている。人口83,000人の都市において年間60万人の利用者数は、十分に利用されていると言える。そのため、さまざまな利用者の使い勝手に応じたきめ細やかな配慮も十分なされている。
 これからの図書館は、広い意味で福祉的な性格を備えることが予想される。その先駆的な図書館として高く評価したい。                        
(小松 尚)


 

 

人にやさしい街づくり賞

ダンスサークル トライアングル

ダンスサークル トライアングル

全員で輪になり踊る、はじまりのダンス /ライブパフォーマンス1 /ライブパフォーマンス2

データ
所在地 豊明市栄町武侍48 名古屋短期大学内 寺田研究室
発足  平成7年

講評
 「トライアングル」は障がい児・者と大学生が中心となって踊ることを共に楽しむダンス・サークルである。障がいのある子どもたちが、社会の中で生きることの楽しさを感じてほしいという思いから1995年に設立された。「トライアングル」では、メンバーである障がい児・者を「パートナー」と呼ぶ。障がい児・者への援助という視点からではなく、ともにダンスを楽しむ仲間として位置づけているからである。大学の教員である代表者はゼミ生とともに16年にわたり、この活動を継続させてきた。「トライアングル」がめざすダンス・パフォーマンスは、みんなと合わせて整然と踊るダンスではなく、その子どものできる動き、楽しくて気持のよい動きを引き出すダンスである。そのダンスからは身体全体からほとばしるエネルギーを感じる。「トライアングル」のすばらしさは、立場の異なる参加者それぞれに豊かさをもたらしていることにある。子どもたちは、ダンスを通じた多様な人々との関わりを通じて、楽しさを認識し、子どもたちとの関わりは若い大学生たちにも、大きな影響を与えていく。参加者それぞれが自分の世界を広げていく試みなのである。年代や障がいを超えて、すべての人々が共にパートナーとして、新しい価値観を育てていく「トライアングル」の活動は、まさに「人にやさしいまちづくり」の本質である。今後もこうした活動の継続と広がりを期待したい。
(坂本 真理子)

打楽器インターフェースを楽しむ ビブラション(振動)

打楽器インターフェースを楽しむ ビブラション(振動)

イベント「バリアフリーコラボレーション」 / 「ビブラション・カホン」体験会1 / 「ビブラション・カホン」体験会2

データ
所在地 武豊町字梨子ノ木2-56
発足  平成20年

講評
 
団体名にある「ビブラション・カホン」とは、フラメンコなどの演奏時にリズムを刻む打楽器カホン(スペイン語で「箱」の意味)にコンピュータ技術を取り入れて機能を拡張し、奏でた音を振動に変換して他者に伝える機能を持つ楽器のことである。
 最大の特色は、音を耳と肌で感じることで、楽器演奏を経験したことのない人や演奏を楽しむことが困難な人にも、楽器に親しんでもらうことが可能となり、音を伝え合う演奏コミュニケーションにより、障がいの枠を超えてみんなで一緒に楽しむことができるところである。
 この団体は、ビブラション・カホンに改良を重ねると共に、特別支援学校や大学、公民館でビブラション・カホンの体験会を催したり、武豊町にあるゆめたろうプラザで「バリアフリーコラボレーション」というイベントを開催するなど、ビブラション・カホンを通して、楽しみながらお互いの壁をなくす活動をおこなっている。
 イベント「バリアフリーコラボレーション」では、ビブラション・カホンの演奏発表や演奏ワークショップに加え、手話サークルによる手話劇の発表や、ドラム演奏での障がいのある方とのセッションなど、音や光、振動が奏でる空間により、さまざまな発表者や来場者が楽しめるひとときをつくりだしている。
 また、ビブラション・カホンを中心に灯りを点滅させることにより、見る楽しさを加えたり、長期展示のための改良や、拍手だけで光る「クラップ・ライト」、音による演奏を振動と光で楽しめる「感じる風船」など、メンバーの発案や体験会等での反省を活かし、さまざまな方法で音楽を感じる工夫をしている。
 今後も、ビブラション・カホンを活用し、地域で音楽を楽しむ方々との絆を深めながら、こうした活動の輪が広がっていくことを期待したい。         
(松井 宏夫)

社会福祉法人 半田市社会福祉協議会 おっかわハウス

社会福祉法人 半田市社会福祉協議会 おっかわハウス

縁側のある多世代交流サロン / さまざまな世代との交流がある多世代交流サロン / 放課後児童クラブの児童達が遊ぶ庭

データ
所在地 半田市庚申町2丁目58-1
発足  平成23年

講評
 
半田市社会福祉協議会が取り組む「おっかわハウス」は、子どもから高齢者まで色々な人が出入りする多世代交流サロン、NPO法人菜の花と協働している放課後児童クラブ「こどものいえ」、障害が軽度の方の自立に備える宿泊訓練施設の3つからなり、国土交通省の高齢者等居住安定化推進事業の助成を活用し、築70年近い古民家を借り受けて、事業を展開している。
 多世代交流サロンは、サロンや交流会、会議の場として、地区の様々な団体に利用され、例えば、手をつなぐ育成会(知的障害の親の会)が子育てサロンを月に2回運営し、障害の有無に関わらず子育て中のお母さんの悩みを聞いたりしている。他にも、住民が講師を務める手芸教室や書道教室が定期的に開催され、教室を通じての礼儀やしつけが地域貢献につながり、講師の自己実現の場にもなっている。また、おっかわハウスが位置する半田市乙川は、歴史のある地区だが近年新興地が入り混じっている。おっかわハウスに放課後児童クラブがある事によって、サロンに集う高齢者との交流に相乗効果を生みだしている。他にも、障害のある方が作った野菜の無人販売は好評とのことで、この事がきっかけで住民への障害理解促進につながると良いだろう。
 さらに、市民にとっては市役所や社協での相談はハードルが高いが、おっかわハウスが身近な相談窓口として気軽に相談できる拠点となり、難しい事案を社協や行政につなげる頼もしい存在になるだろう。
 半田市社会福祉協議会が、積極的に地域住民やNPOに呼び掛け、共生型福祉の家「おっかわハウス」が動き出した。課題もあるが、地域の様々な課題を解決する場として、住民が自分たちの力で地域をよくしていこうと、まず一歩を踏み出した事を高く評価し、笑顔の絶えない場所にしてもらいたい。4、5年後のさらなる活動に期待する。
(村居 多美子)

問合せ

愛知県 建設部 建築担当局住宅計画課 街づくり事業グループ
電話:052-954-6590
E-mail: jutakukeikaku@pref.aichi.lg.jp