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あいち肝炎ネットワーク(ウイルス性肝炎とは)

ページID:0400789 掲載日:2022年12月1日更新 印刷ページ表示

ウイルス性肝炎とは

B型慢性肝炎

【原因】
 B型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染。
 具体的には…
<思春期前>
・母子感染(母親がHBVの持続感染者(キャリア)で出産時の産道出血によりHBVが新生児の体内に侵入することによる)
<思春期後>
・HBV持続感染者との性的接触(思春期後の感染原因の大部分)
・十分に消毒していない器具を使った医療行為、ピアスの穴開け、入れ墨及びいわゆるアートメイク
・カミソリや歯ブラシの共有
・麻薬、覚せい剤使用時の注射器の回し打ち 等
【経過】
 思春期後で、自己の免疫力が発達し、HBVを病原菌であると認識できるようになると、白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始め、このとき、リンパ球がHBVの感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が起こりはじめます。
 一般に、10-30才代に一過性で強い肝炎を起こし、HBVはHBe抗原陽性の増殖性の高いウイルスからHBe抗体陽性の比較的おとなしいウイルスに変化します。HBe抗体陽性となった後は、多くの場合そのまま生涯、強い肝炎を発症しません。
 このように思春期以降一過性の肝炎を起こした後はそのまま一生肝機能が安定したままの人がおよそ80-90%、残りの10-20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝がんになる人も出てきます。

図1

【治療】
 B型慢性肝炎患者の人に持続感染しているHBVは基本的に完全排除することはできませんが、近年、様々な治療薬が開発されています。
 現在の有効な抗ウイルス薬は、インターフェロン(IFN)(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2剤に大きく分けられます。
(1) インターフェロン(IFN)治療

  • 自己の免疫を強めてHBVの増殖を抑えます。
  • 慢性肝炎の方が対象です。
  • 治療期間は24週から48週です。
  • IFN治療にはインフルエンザ様症状(発熱、全身倦怠感、筋肉痛等)、白血球や血小板の減少、うつ病、脱毛等の副作用が出る場合があります。

(2) 核酸アナログ製剤治療

  • 直接薬の力でHBVの増殖を抑えて、肝炎を鎮静化させます。
  • 慢性肝炎、肝硬変、肝がんの方が対象です。(肝がんについては、慢性肝炎、肝硬変の段階から助成を受けている方)
  • 薬を飲んでいる間はウイルス量が低下し、肝炎は起こりません。
  • 薬を中止するとほとんどの症例で肝炎が再燃するため、長期間の内服継続が必要となります。

(3)肝庇護療法

  • 肝機能を正常化し、肝炎の進行を抑える治療法ですが、ウイルス量を減少させることはなく、肝炎を抑える効果はあまり高くないため、ごく軽い肝炎治療を除き、初めから行われることはありません。(例)ウルソデオキシコール酸(内服薬)、グリチルリチン(注射薬)

C型慢性肝炎

【原因】
 C型肝炎ウイルス(HCV)が血液を介して感染。
 具体的には…
・過去の輸血や血液製剤の投与
・臓器移植
・十分に消毒していない器具を使った医療行為、ピアスの穴開け、入れ墨及びいわゆるアートメイク
・カミソリや歯ブラシの共有
・麻薬、覚せい剤使用時の注射器の回し打ち
・出産や性交渉(ごくまれ)等
【経過】
 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こすことがありますが、急性肝炎を起こすことは比較的稀です。多くは自覚症状があらわれにくい感染であり、60~80%の症例が慢性化すると言われています。慢性肝炎は約20年の経過で約30~40%の患者さんが肝硬変に進行し、さらに肝硬変の患者さんにおいて約70%が肝がんを合併するとも言われています。また、肝硬変は食道静脈瘤を合併することも多く、破裂すると致死的なこともあります。肝硬変や肝がんが末期状態に進行しますと肝不全状態となり、黄疸や腹水貯留、意識障害が進行していきます。

図2

【治療】
 HCVは、HBVと異なり、ウイルスを完全に排除することが可能ですので、ウイルスを体内から排除することを目的とした「抗ウイルス療法」を行います。
 また、何らかの理由で抗ウイルス療法が出来ない方に対しては、肝臓の破壊を防ぎ、肝炎の沈静化を目的とした「肝庇護療法」を行います。

(1)インターフェロン+リバビリン併用療法

  • インターフェロン(ペグインターフェロン)とリバビリン(内服薬)を併用する抗ウイルス効果の高い治療です。
  • 催奇形性がありますので、投薬中、投薬後しばらくは避妊が必要となります。

(2)インターフェロンフリー治療(内服薬)

  • ウイルスに直接作用して増殖を抑える抗ウイルス薬を用いて、HCVの排除を目指します。
  • 副作用も少なく、95%以上の人でウイルスを体内から排除することが可能となっており、治療期間は3から6ヵ月間で、毎日薬を飲み続ける必要があります。

(3)肝庇護療法

  • HCVの排除が目的ではなく、肝細胞を保護して肝炎を沈静化させることを目的とした治療法です。
  • 抗ウイルス療法でウイルスを排除できなかった方などが、これによって肝硬変への進行を遅らせることができます。

 

肝硬変

【原因】
・B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス
・自己免疫性肝炎
・原発性胆汁性肝硬変
・非アルコール性脂肪性肝炎
・ヘモクロマトーシス、ウィルソン病
【病態・症状】
 上記の様々な原因により肝細胞の破壊と再生が繰り返されると、肝臓全体が線維化して岩のようにゴツゴツ硬く小さくなり、肝臓の機能が低下します。

 この状態が肝硬変で、病気の進行具合によって、代償性肝硬変、非代償性肝硬変に分けられます。

【治療】
 肝硬変そのものを治療できる薬剤はほとんどありません。
 B型肝炎ウイルスが原因の場合には、エンテカビルやラミブジンという抗ウイルス薬を内服することによって肝機能の改善が期待できます。
 C型肝炎ウイルスが原因の場合には、病態によりますが、インターフェロン(IFN)治療やインターフェロンフリー治療が保険適用となっています。

肝がん

【原因】
・B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス
・アルコール性肝障害
・非アルコール性脂肪性肝炎 等
       
【病態・症状】
 一般的に「肝がん」とは「肝細胞がん」を指します。

 肝細胞がんの多くの場合は慢性肝炎や肝硬変を持つ患者の方におこり、症状や兆候は肝硬変の進行を示唆するものとなるので肝細胞がんそのものでの症状は初期には全くみられません。進行するに従って肝不全症状(肝性脳症,黄疸,出血傾向,腹水,浮腫など)がみられます。他のがん同様、転移、周辺臓器の圧迫による症状もみられます。


【治療】
・外科手術:肝切除、肝移植
・局所療法(穿刺療法):経皮的エタノール注入療法(PEIT)、ラジオ波焼灼術(RFA)
・肝動脈塞栓術、肝動注化学療法
・薬物療法(分子標的薬による化学療法等)
・放射線治療(陽子線治療等)