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第2回愛知まちなみ建築賞

ページID:0199402 掲載日:2024年3月1日更新 印刷ページ表示

表紙

総評

​ 昨年に続いてたくさんの応募があった。今年の傾向としては、いくつかのレベルの高い建築とその次のレベルとの間にやや開きがあり、またまちなみそのものを圧倒的に変えていくようなインパクトの強いものがなかったように思う。そのためか今年の審査は、まちなみよりも建築のよしあしに重点が置かれ、また間接的には大賞受賞作がないという結果にもつながったようだ。
 受賞作の一つに、設計競技で選ばれたきわめて意欲的な作品でありながら、その実現過程において、安全などの面で施主である市当局とトラブルが生じて話題となったものがあった。審査委員は建築にかける情熱を評価し、作品そのものを審査することとした。審査委員長の私見として、この地域には、こういった挑戦的な作品がもっと出てきていいように思う。とかく問題になることを回避する社会風土であるが、そのことが刺激的な建築作品が生まれにくいということにもつながっていると思われるからである。担当者は大変だろうが、物議をかもすこと自体が悪いわけではない。またこれにこりず、設計競技によって傑出した作品を募集することをもっと積極的に進めるべきでもあると思う。
 審査を終えてみて、創作的で挑戦的な作品、オーソドックスな質の高い作品、まちなみのちょっとした刺激になる作品、あるいは保存的な事業など、それぞれにバランスよくいいものが選ばれているが、全体的にやや小粒な印象も受ける。これもある意味で、バブル崩壊現象の一つであろう。まちなみに対してもっと積極的に貢献するスケールの大きな作品、あるいは小さくとも現在の建築界をリードするような意欲的な作品を望んでいる。昨年事情によって、受賞できなかったものにも窓を開いているので、積極的に応募してもらいたい。

名古屋工業大学教授  若山 滋

第2回愛知まちなみ建築賞 受賞作品​

愛知芸術文化センター 愛知県図書館

2-1

概要

所在地:名古屋市中区三の丸
建築主:愛知県
設計者:株式会社日建設計名古屋事務所
施工者:佐藤・西松・大日本・名工・六合・長瀬建設共同企業体

主要用途:図書館
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上5階
敷地面積:10,120.24平方メートル
建築面積:3,516.15平方メートル
延床面積:19,604.39平方メートル

講評

 本施設は名古屋城郭の特別史跡の土塁、石垣に隣接する敷地に計画された。設計者はこの立地環境を十分に吟味し、外部の意匠を建物の質感を磁器質タイルによって史跡の重みに対峙させつつ、セットバックや雁行などの手法によりうまく馴染むようにまとめあげている。また、エントランスホールやブラウジングコーナーの2層吹き抜けや開架書架の閲覧机周辺の開口部を、史跡が借景として映えるように巧妙に配置し、明るく快適な内部空間を実現させている。このように周辺環境を有効に利用しながら、図書館の建築計画としても解りやすく伸びやかな平面を実現させている実力を高く評価する。

清水 裕之

愛知県陶磁資料館

2-2

概要

所在地:瀬戸市南山口町
建築主:愛知県
設計者:株式会社山下設計名古屋支社
施工者:フジタ・徳倉・信和建設工事共同企業体

主要用途:資料館
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上3階地下2階
敷地面積:135,454.00平方メートル
建築面積:10,049.81平方メートル
延床面積:20,610.00平方メートル

講評

 この資料館は、愛知県の誕生100年記念事業のひとつとして1978年に建設され、この度1994年に大きく増築、改修されたものである。
 当初は全体構想のおよそ1/2規模で窓の極めて少ない背高の日本様式の建物が、ややまわりとなじみにくい様な雰囲気で寂しげであったが、増築により全く内部空間も豊かになり、深い軒をもつ勾配屋根が幾重にも重なりながら心地よい開角をもって展開する様子が、まわりの緑の空間と溶け合って見事である。バブルとともに消え去ったポストモダンが、いくらか余燼を残すなか、日本風土に生まれた正統派の建築のまぶしさがある。
 基本設計は谷口吉郎氏によるものであるが、今回の増改築については、設計者は当初の全体構想の基本主旨に添って発展的に計画したと述べられている。この賞の候補に上がったとき、受賞は基本設計者か、今回の設計者かと議論もされたが、基本設計者の主旨を発展的に実現されたことが評価された。

三浦 忠誠

アポロドーム名古屋S.S.

2-3

概要

所在地:名古屋市東区東桜,中区東桜
建築主:出光興産株式会社名古屋支店
設計者:清水建設株式会社名古屋支店
施工者:清水建設株式会社名古屋支店

主要用途:ガソリンスタンド
構造:鉄骨造
階数:地上2階
敷地面積:1,534.68平方メートル
建築面積:1,019.67平方メートル
延床面積:1,061.97平方メートル

講評

 それは、都市の中に丁度いい着陸場所を見いだしたUFOの姿にも似て、驚きと、楽しさを感じさせてくれる。建築の斬新なデザインや、適切な素材の選択、そして計算された照明計画は、企業のCIを巧みに表現しつつ、サイン的効果を最大限に発揮している。絶え間なく変化する都市の色を映し込みながら、建築自らが豊かな表情を創り出し、演じている。周辺の建築物の中にあって、都市の未来像を予期させるような奇抜さがありながらも、その都市景観に不協和音をつくりだすことなく、しっくりおさまっている感じがするところがいい。また内部の明るく、穏やかな空間は人々にくつろぎのひとときを与えるだろう。
 アポロドームはピットインしてくるマシーンを迎え入れ、再び都会の流れに送り出す、そんな人と自動車の流れを大きく包み込み、短い都市物語を演出する、まさに、SF的アーバンデザインの成功例といえるであろう。

 水尾 衣里

問屋記念館

2-4

概要

所在地:西春日井郡西枇杷島町西六軒町
建築主:西枇杷島町
設計者:株式会社澤田造景研究所
施工者:株式会社魚津社寺工務店 株式会社八神工務 株式会社豊苑

主要用途:展示館
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:1,391.55平方メートル
建築面積:151.63平方メートル
延床面積:151.63平方メートル

講評

 西枇杷島は、江戸時代初期に「下小田井の市」が開かれたことに始まるといい、この問屋記念館は「市」の由緒ある問屋の一つであった山田九左衛門家を移築、周辺をふれあい広場として開放したものである。
 建物については解体、移築の過程を報告書として記録するなど、町の文化財を大切に保護しようとする取組みも大いに評価されるところであろう。
 実際、建物は細心の注意を払った丁寧な仕事の跡が感じられるし、周囲の広場も解体時の古瓦を再利用したり、隣家との境の細い路地までも一体とした舗装を行うなど、心憎い演出がなされている。
 建物内には作り物の野菜などが飾られていたが、実際にこの広場で「野菜市」などが開かれていたなら、もっと「問屋」を楽しめたのにと思ったことである。

岡本 真理子

新美南吉記念館

2-5

概要

所在地:半田市岩滑西町
建築主:半田市
設計者:株式会社新家良治建築工房
施工者:株式会社七番組

主要用途:博物館
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上1階地下2階
敷地面積:15,065.60平方メートル
建築面積:1,371.94平方メートル
延床面積:2,121.18平方メートル

講評

 新美南吉の童話「ごんぎつね」などに描かれているごんげん山、矢勝川を望んだ位置に、新美南吉記念館はある。半田市郊外の風景はなだらかな丘で特徴づけられる。地元の人は今でもこうした風景を、南吉の愛した風景として大切にしている。南吉記念館の建築の形態の決定にはこうした半田の風景認識が大きく影響している。そこでは建築はできるだけ風景にとけ込もうとしているようである。建物の半分は地下に埋められ高さを低くするとともに、いくつものうねりをもつ屋根は丘をイメージさせるよう設計されている。建物の周囲は緑の芝生広場、その背後は木立と散歩道がある。南吉記念館はあたかも自然の一部になるように設計されている。
 記念館の内部の床は外見同様に緩く起伏している。建物の内部にも半田の自然が取り込まれている。見学者はこうしたことを肌で感じさせられる。

瀬口 哲夫

へきなん芸術文化村

2-6

概要

所在地:碧南市鶴見町
建築主:碧南市
設計者:株式会社久米設計名古屋支社
施工者:戸田・白竹・梶川・木村建設共同企業体

主要用途:図書館、コンサートホール、イベントホール
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階数:地上3階
敷地面積:10,926.78平方メートル
建築面積:5,424.62平方メートル
延床面積:9,099.78平方メートル

講評

 吹奏楽の盛んな土地柄から、その創作活動の場がほしいという要望の小規模音楽ホールと、手狭になり建替の時期にあった図書館との複合施設である。
 敷地は住宅地の中で、住環境の保全から高さは最低限に押さえ、図書館棟とホール棟の間を通り抜けの道とし、その中心を水と緑のアメニティー空間とし、芸術、人、情報の出会い場としての野外フォーラムを用意している。
 各施設はこの通り庭を介してアクセスし、隣接する住宅はこの喧騒から守られる。全体は円形という完結した形でまとめられているが、街路に面するところはタイル貼りのハードな表情でまとめ、通り庭の側はカーテンウォールのガラスで、対面をお互い写しあいながらの拡がりを演出している。
 細部のデザインもそつなくまとめられているが何はともあれ、市民のニーズから生まれ、身近な場所で利用しやすい反面、住環境にとって好ましくないという二律相反する敷地条件を克服した成果が高く評価された。

藤川 壽男

第2回愛知まちなみ建築賞概要と選考経過

選考基準

​ 良好なまちづくりを進めていくためには、建築物が地域環境の形成に積極的に関わり、一定の社会的役割を果たしていくことが重要であるという認識の下、募集条件に適合しているもののうち、良好なまちなみ景観の形成や潤いあるまちづくりに寄与する等、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物又はまちなみで、次の基準のいずれかに適合し、かつ社会的貢献度の高いものを選考する。
 1、地域における新しい建築文化の創造に寄与しているもの。
  ●新しい地域景観の形成を先導し、モデルとなるもの。
  ●意匠・形態等に優れ、地域の文化性を高めているもの。
 2、地域固有のまちなみに調和し、特色ある景観の形成に寄与しているもの。
  ●地域の風土を生かし、新しい地域文化を創造しているもの。
  ●歴史的または、伝統的なまちなみに調和し、地域の特色ある景観を創造しているもの。
  ●建築協定等の住民の主体的な活動や総合的な計画等により、地域固有のまちなみ景観が形成されているもの。
 3、魅力と潤いのある空間の創造に寄与しているもの。
  ●公開空地やアトリウム等の、地域に魅力と潤いを与える空間を創出しているもの。
  ●通抜け空間や開放ギャラリー等の、地域コミュニティの形成に寄与しているもの。
  ●地区計画等の詳細な整備計画や住民活動等により、良好な地域整備が図られているもの。
 4、その他、本賞の趣旨に適合し、地域に貢献しているもの。

選考委員

    浅野宏(愛知県建築部長)
  大西英二(愛知県建築士事務所協会会長)
  岡本真理子(文化環境計画研究所取締役)
  清水裕之(名古屋大学助教授)
  瀬口哲夫(豊橋技術科学大学助教授)
  納所克志(国際デザインセンター取締役)
  藤川壽男(愛知建築士会会長)
  三浦忠誠(新日本建築家協会東海支部 副支部長)
  水尾衣里(名古屋女子文化短期大学助教授)
  宮脇壇(宮脇檀建築研究室代表取締役)
 ●若山滋(名古屋工業大学教授)

(50音順/敬称略/肩書は当時/●印は選考委員長)

主催・後援・協賛

主催
 愛知県
後援
 建設省  愛知県市長会  愛知県町村会  愛知県商工会議所連合会
協賛
 (社)愛知建築士会  (社)愛知県建築士事務所協会  (社)新日本建築家協会東海支部  (社)愛知県建設業協会  愛知県建築技術研究会  (財)愛知県建築住宅センター  (財)東海建築文化センター  中部デザイン協会