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第5回愛知まちなみ建築賞

ページID:0199705 掲載日:2024年3月1日更新 印刷ページ表示

表紙

総評

​ 審査は、これまでと同様の手順により、厳正に厳正に行われた。第1次選考の結果、15点が残され、第2次選考においては、事務局が撮影したビデオによる詳細の把握とともに、写真及び図面の再評価、及び現地を見に行っている審査員の意見を加え慎重に検討した結果、7点の入賞作品が選ばれた。
 選にもれたものの中には、惜しいと思われるものもあったが、入賞作はそれぞれ力作で、やはりそれなりの内容を伴っていると思われる。
 問題になったのは大賞の扱いである。過去、何度か「大賞該当作品なし」という年があった。今回は、該当するものがありそうだということでは、評価が一致していた。しかしその候補には3作品が上げられ、それぞれ議論された。外部空間の質の高さという点では、豊田市美術館が断然すぐれていた。周辺も含めて街並みを変化させたという点では、ナディアパークが評価された。町立の中学校であるにも関わらず、これだけの試みがなされたという点で、旭中学校が強く押され、該当作品となった次第である。

名古屋工業大学教授  若山 滋

第5回愛知まちなみ建築賞 受賞作品​

旭町立旭中学校 ~愛知まちなみ建築賞大賞~

5-1

概要

所在地:東加茂郡旭町大字杉本
建築主:旭町
設計者:株式会社中村勉総合計画事務所
施工者:前田建設工業株式会社中部支店

主要用途:中学校
構造:鉄筋コンクリート造一部木造
階数:地上2階
敷地面積:60,047.28平方メートル
建築面積:5,101.849平方メートル
延床面積:5,865.28平方メートル

講評

 山の斜面の高低を利用して立体的に建物が配置されていて、囲いがなくてオープンであり、全く自由に誰でも、どこからでも校舎に近づける。囲っているのは自然、山と木立である緑に囲まれたすばらしい教育環境である。
 アプロー チの大階段が楽しい。中段の時計台広場からピロティを通して中心になるフォーラム広場が見える。上りつめると広いグランドがある。
 建物の下部はコンクリート打放し、上部は木造軸組・木製集成材アーチ梁・木製サッシ(すべて素地仕上)、広いガラス面、白を基調にした明るい色調、教室棟の曲面の壁、曲面屋根の群造形、柔らかくやさしいデザインである。
 プランの特長は教科教室型でオープンな多目的スペースが多く、廊下が非常に少ないので広い連続した空間として活用されている。フォーラム広場は施設の中心に位置し、床は木デッキで上履で自由に教室の延長として利用できる。劇場、朝礼等に使われ、ここを通って各教室と食堂・体育館・プールにコンパクトに連絡する。在来の規格形の学校とは異なり、新しい設計思想・工法による意欲的な試みがなされている。地方の小規模な中学校(生徒141名、5学級)のこの試みがこれを契機に、地域規模をこえて、多様な施設造りに発展することが期待されるのである。

畑中 圭助

丈山苑 (詩泉閣)

5-2

概要

所在地:安城市和泉町
建築主:安城市
設計者:株式会社環境開発研究所名古屋事務所
施工者:株式会社東海ヴィレッジ

主要用途:公園施設
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:8,552.87平方メートル
建築面積:346.66平方メートル
延床面積:304.58平方メートル

講評

 国道23号線のインターを降り、ありふれた近在の町並みを過ぎると、そこに、懐かしい日本の原風景を感じさせる「丈山苑」がある。
 北門からアプローチすると、せせらぎ沿いの小径は夕暮れの中で幽玄の世界を醸し出し、私に「市中の山居」という言葉をふと思い出させた。
 建物は丈山が終の栖とした京都詩仙堂をイメージして作られているが、細部にわたって新しい日本の伝統様式を創出している。
 丈山苑は安城市内の「歴史の散歩道」のルートともなっており、点から線へ、さらには面としての歴史的町並み空間の形成に大きく貢献している。

岡本 真理子

名古屋能楽堂

5-3

概要

所在地:名古屋市中区三の丸
建築主:名古屋市
設計者:名古屋市建築局営繕部/大江宏建築事務所
施工者:清水・間・永楽特別共同企業体

主要用途:劇場
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階数:地下1階地上1階
敷地面積:21,972.87平方メートル
建築面積:4,554.25平方メートル
延床面積:5,610.62平方メートル

講評

 名古屋城正門であるお堀前の桜並木道の斜め前に位置する名古屋能楽堂は、スッキリと洗練された和風の門を北向きに構え、正面に向かって左脇の大樹と右脇の低い頂部黒瓦の和風土塀が良く調和し、その塀を通してそびえ立つ黒色和風瓦屋根各棟の峰々は優美な日本建築様式で、日本古来の歴史を語るが如く名古屋城正門のロケーションを一層文化の薫る町並みを形成しているのが印象的である。
 会館東側ポーチ床は、御影石張の広い空間に等間隔の銅色丸列柱ピロティーで梁を支えその庇は銅版平葺で和風の雰囲気をかもし出している。
 しかし、軽感覚の銅板平葺下の柱頭部の二段梁が重圧感となり柱脚が少し軽く思われるので、円錐台形石口等を設ければ一層安定感ある様に思われる。
 建物南面の外観は銅板平葺庇を支える独立丸柱が水中に立ち池に映る鏡影と水のさざ波が白壁に映し出す姿が素晴らしく優雅であるが、水中面に立ち上がる壁の幅木のモルタルコテ仕上げはあまりにも粗末の様でせめてコモノ石の差石等を考慮されたら如何であろう。
 また、西面外観も大型のサッシが目立ち西陽射しも強く思われるので内部の意匠のみで無く庇下に和風感覚のスダレ形のルーバー等は如何であろう。
 会館内部の檜造りの意匠は、観覧者の心を豊かにし中庭の池は広く明るい空間をつくり市街地とは思えない遮音性も考慮され静けさを保ち京の都を忍ぶ優美な雰囲気をかもし出している。
 「能楽堂」は、伝統芸能のルーツの探求を基本として平面計画がなされるべきであると思考する。
 「能」は、室町時代に観阿弥・世阿弥父子により大成された舞台芸能であると言われているが、能舞台はもともと野外に建てられ今日の能楽堂の様に舞台と客席とが一つの建物の中に収まっている劇場様式になったのは、明治以後のことであり本来は、舞台をぐるりと取り囲む様に三方に見物席を持つ野外で吹き抜ける裸の舞台で演じられて来た演劇である。「能」の演出はこうした舞台で創造されるものであるので、本設計の能楽堂も舞台と見物席の間の白州空間を広くすると共に、三方見物席を設け空天は高い自然光を取り入れる様な考慮がなされれば、一層伝統文化が忍ばれたであろう。

萬谷 和民

世界のタイル博物館

5-4

概要

所在地:常滑市奥栄町
建築主:株式会社INAX
設計者:株式会社下山建築・デザイン研究所 スペースアンドプロダクツ
施工者:清水建設株式会社名古屋支店

主要用途:博物館
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上2階
敷地面積:4,056.17平方メートル
建築面積:1,005.53平方メートル
延床面積:1,380.02平方メートル

講評

 やきもののまち常滑に新しい表情が加わった。
 「窯のある広場」の黒壁の木造建築と煉瓦の煙突と一体となるべく、この博物館は建築されている。しかし、隣接の建物とはそのデザインは全く異なったものであるともいえる。明るく、斬新なファサードや、穏やかさが感じられるタイル貼りの外壁のやさしく明るい色や風合い、街並みのスカイラインを考慮した勾配屋根など、環境とデザインに対するある種の勇気と配慮の両方が感じられ、評価できるものだと思う。これまでの風の形を変えることなく、それでいて新鮮な香りのする空気が流れていくような空間が実現している。また、ミュージアムカフェのテラスが内部空間と外部空間のつながりを巧みに演出している。
 この博物館の建設により、広場の新しい活用の仕方も広がりを見せることであろう。

水尾 衣里

ナディアパーク NADYA・PARK

5-5

概要

所在地:名古屋市中区栄
建築主:三菱信託銀行株式会社名古屋支店/名古屋市/株式会社国際デザインセンター
設計者:株式会社大建設計/KMD/株式会社ダブルスマーケティング/名古屋市建築局営繕部
施工者:戸田・竹中・三菱・ナカノ・福田・大日本・矢作共同企業体 熊谷・浅沼・大平・大豊・伊藤工特別共同企業体

主要用途:店舗、事務所、多目的ホール、展示施設
構造:鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地下4階地上23階
敷地面積:8,271.07平方メートル
建築面積:6,835.27平方メートル
延床面積:91,668.60平方メートル

講評

 ナディアパークは名古屋市、株式会社国際デザインセンター、三菱信託銀行の三者が事業主となり、中央高校跡地を再開発したものであり、「青少年文化センター」と「国際デザインセンター」を内包した、デザインセンタービルと民間商業施設、オフィスを有するビジネスセンターがアトリウムを介して結ばれたツインビルである。建物は南側、北側、西側にエントランスを設け、廻遊性を持たせた事により、周辺の人々の流れが、面的なものに変化すると共に、建物内部に於いても、1階から12階まで連続するアトリウムが設けられており、そこにはシースルーエレベーター、エスカレーター、多数のバルコニーがあり、人の動きを常に感じることができ、縦の廻遊性をも生みだしている。
 竣工当初より特に若者の人気が高く周辺にまで活気を与え新しい名古屋の名所として親しまれている事を評価したい。

本田 伸太郎

トークハイム八事

5-6

概要

所在地:名古屋市瑞穂区弥富町円山
建築主:日新火災海上保険株式会社
設計者:株式会社竹中工務店名古屋一級建築士事務所
施工者:株式会社竹中工務店名古屋支店

主要用途:共同住宅
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地下1階地上3階
敷地面積:2,673.32平方メートル
建築面積:452.54平方メートル
延床面積:1,477.93平方メートル

講評

 この建物は、閑静な住宅地に、背面を山の斜面に、前面を交通量のやや激しい道路に面したやや細長い敷地に計画されている。周辺は起伏に富んで緑の多い落ちついた環境である。設計者はこの環境の持つ豊かさをさらに高めるような質を独身寮にもたせるように努力している。外部空間の設計における敷地にある桜の大木や石積みを保存しつつ景観を損なうようなフェンスをできるだけ設置しない努力、住宅の設備、特に屋外機を、デザイン要素としてまとめ裏側に配置する手法など、きめ細かな対応が特徴である。選定にあたり、特に抜き出たデザイン性というよりは、修景について手堅い手法でやるべきことをきっちりやったという姿勢を高く評価した。

清水 裕之

豊田市美術館

5-7

概要

所在地:豊田市小坂本町
建築主:豊田市
設計者:谷口建築設計研究所
施工者:大成・大啓・伊藤建設共同企業体

主要用途:美術館
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
階数:地下2階地上3階
敷地面積:30,041平方メートル
建築面積:6,804.25平方メートル
延床面積:11,126.95平方メートル

講評

​ 緩い坂道を登ると美術館の前庭に出るが、これは豊田市の市街地をー望できる城址に、この建物が立地しているためである。「西側の新しい都市と東側の歴史的景観が同時に望める場所を選んだ」というように、彫刻テラスから市街地と城址の緑を同時に見ることができる。
 敷地の一番高いところには、彫刻テラスと白い水の泡の輪を浮かべた人口池があるが、この池の縁に立つと、周囲より高いところに池があることと、美術館の列柱及び水面とが相俟って不思議な高揚感を覚える。人口池に面して延びる回廊の列柱は張り詰めた緊張感を与えており、この部分が豊田市美術館の最も素晴らしい空間の一つとなっている。外部空間の緊張感は、ゆとりを持たせた内部空間にもそのまま引き継がれている。さらに、「観客動線を変化する視覚の連鎖としてとらえる」という設計者の意図も、この建築では十分に達成されている。その意味で、この建築は機能を超えた美しさを持っており、現代建築の1つのあり方を示す秀作と言える。
 広い人口池と前庭を作ったこともあり、豊田市美術館はかなり大きなものになっている。そのため挙母城址のかなりの部分を占めることになってしまい、城址と言う歴史空間を圧迫している感じがする。この点がやや気になった。​

瀬口 哲夫

第5回愛知まちなみ建築賞概要と選考経過

選考基準

 良好なまちづくりを進めていくためには、建築物が地域環境の形成に積極的に関わり、一定の社会的役割を果たしていくことが重要であるという認識の下、募集条件に適合しているもののうち、良好なまちなみ景観の形成や潤いあるまちづくりに寄与する等、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物又はまちなみで、次の基準のいずれかに適合し、かつ社会的貢献度の高いものを選考する。
 1、地域における新しい建築文化の創造に寄与しているもの。
  ●新しい地域景観の形成を先導し、モデルとなるもの。
  ●意匠・形態等に優れ、地域の文化性を高めているもの。
 2、地域固有のまちなみに調和し、特色ある景観の形成に寄与しているもの。
  ●地域の風土を生かし、新しい地域文化を創造しているもの。
  ●歴史的または、伝統的なまちなみに調和し、地域の特色ある景観を創造しているもの。
  ●建築協定等の住民の主体的な活動や総合的な計画等により、地域固有のまちなみ景観が形成されているもの。
 3、魅力と潤いのある空間の創造に寄与しているもの。
  ●公開空地やアトリウム等の、地域に魅力と潤いを与える空間を創出しているもの。
  ●通抜け空間や開放ギャラリー等の、地域コミュニティの形成に寄与しているもの。
  ●地区計画等の詳細な整備計画や住民活動等により、良好な地域整備が図られているもの。
 4、その他、本賞の趣旨に適合し、地域に貢献しているもの。​ 

選考委員

    岡本真理子(文化環境計画研究所取締役)
  清水裕之(名古屋大学教授)
  瀬口哲夫(名古屋市立大学教授)
  納所克志(名古屋芸術大学教授)
  畑中圭助(愛知建築士会会長)
  本田伸太郎(日本建築家協会東海支部支部長代理)
  萬谷和民(愛知県建築士事務所協会会長)
  水尾衣里(名古屋女子文化短期大学助教授)
  宮脇壇(宮脇檀建築研究室代表取締役)
  山中保教(愛知県建築部長)
 ●若山滋(名古屋工業大学教授)
 ​​(50音順/敬称略/肩書は当時/●印は選考委員長)

主催・後援・協賛

主催
 愛知県
後援
 建設省  愛知県市長会  愛知県町村会  愛知県商工会議所連合会
協賛
 (社)愛知建築士会  (社)愛知県建築士事務所協会  (社)日本建築家協会東海支部  (社)愛知県建設業協会  愛知県建築技術研究会  (財)愛知県建築住宅センター  (財)東海建築文化センター  中部デザイン協会