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2020年度 食と緑の基本計画推進会議 結果概要

ページID:0302242 掲載日:2020年8月25日更新 印刷ページ表示

日時

2020年7月28日(火曜日)午後1時30分から午後3時15分まで

場所

愛知県図書館 大会議室

出席者数

構成員13名

 

会議の様子

会議の様子

座長選出

構成員の互選により、名古屋大学大学院生命農学研究科の徳田教授が座長に選出された。

座長

座長 名古屋大学大学院生命農学研究科 徳田教授 

協議事項

(1)「食と緑のレポート2020」(案)について・・・資料1

(2)「食と緑の基本計画2025」の策定について・・・資料2、資料3

構成員からの主な発言

 

愛知県農業協同組合中央会 加藤代表理事理事長

  • 現行計画では、主要目標として農林水産業総生産の全国シェアを3.5%、農業産出額について3番手グループのトップをめざすという目標を立て、今日まで取り組んできた。しかしながら各施策の数値目標の達成状況としては順調であったが、結果はでていないということになっている。現行計画の指標をみると色々と手段が書いてあるが、結果として生産力・生産額が増えなければいけないということで、もう少しブレークダウンして県の主力品目ごとに産出額等の目標数値をしっかり立て、その目標に対してどのように臨むか具体的なプランを立てて、それぞれの手段を実行していく、そういうスタイルにしたらいかがかと思う。県内の主力産地で産地づくりを具体的に進めていくための目標をたてないと実績が残らないのではないかと思うので、人、施設などの支援についてはJAグループも一緒になって対応していかなければならないと考えているが、行政の協力もいただきたいというのが1点目である。
  • 2点目はスマート農業について。次期計画にも記載されているが、重要な取組であると考えている。ただこの取組についてはかなりお金がかかるため、国の助成制度を活用するにせよ、農業者個人が経費の負担をして取り組んでいくのは大変厳しいものがある。県からも一定の助成をお願いしたい。
  • 3点目は農地に関して。近年、優良農地が大型の工場に転用されてしまうことが見受けられる。防災面からも農地の保全は大切であるので、こういったことは止めていただきたい。また、農地の活用に関してもう一点申し上げると、畑地の集積がなかなか進んでおらず、そのため畑地が雑種地になったり、雑草地となったりしているところが点在している。こういった所を優良農地にして近代的な農業ができるような体制になんとか持っていけないかと思っており、そうした取組を県としても計画の中にいれていただきたい。
  • もう1点は、コロナの関係で食の安全・安心とか国内農産物に関心が高まりつつあるというふうに思っているが、長期的な目線で考えると、小さな頃から国産農産物の大切さを理解してもらわなければならないと強く思う。JAグループとしても、食農教育の一環として、県内の小学校5年生に冊子を配付し県内農業の状況や国産農産物の大切さを理解してもらおうという取組をしているが、やはり5年生の1回だけではなかなか難しいと感じていて、小学校6年間で、食農教育のメニューを作り、色々な体験をしたり、DVDを観たり、お互いに話し合いをしたり、農家の方の話を聞いたり、いろんなことを織り交ぜながら、国産・県産農産物の大切さ、食の大切さ、こういったことを6年間通じて学べる、“愛知モデル”というと格好が良いかもしれないが、そういったプログラムを作って学校で取り組んでいただけたら大変ありがたい。
  • いくつか申し上げたが、愛知県が3番手グループのトップに立とうと思ったらかなり大きな目標となるので、具体的な産地を作っていく、人を作っていく、施設に投資する、こういったことが必須要件であると思うので、そこに焦点を当てて、どういった指標が必要になるかということを考えるべきだと思うのでよろしくお願いしたい。

愛知県農業経営士協会 加藤副会長

  • まず、担い手の確保について申し上げる。担い手を確保するためには、農業が他の産業と比較した中で、選ばれる産業となる必要がある。近年の災害発生による被害であるとか、農作業のキツさ、休みも上手く取れないことがある、その上所得もそれほど高くはないとなれば、新規就農者に多く来てもらうことはなかなか難しい。また、新規就農者については就農後にいかに定着させるかということも重要ではないかと考えている。
  • それから、雇用労働力の確保についても取組を進める必要がある。新型コロナの影響で、飲食業等で失業者が発生しているという話があるが、そういったこと等で発生した労働力を農業へいかにして取り込むか、ということが重要になってくるのではないか。ただ、雇用には賃金の問題がある。製造業等と比較すると、どうしても農業の賃金は低くなってしまうので、それとは別に、農作業の雰囲気の良さだとか、作業環境を整えることで労働者に農業を選んでもらえるようにしなくてはならないと思っている。
  • また、今般の新型コロナウイルスで農林水産物の需要に影響が出ている。需要回復にしっかりと取り組んでもらいたい。私は花の生産者だが、花きには産地表示の義務がないが、愛知県の花を消費者に選んで購入してもらえるような工夫をしていただき、「花の王国あいち」のPRとともに、県産花きの消費拡大に取り組んで欲しい。新型コロナウイルスの影響で生活様式が変わりつつあるので、そういった点にも留意して、花を生活に取り入れてもらえるような取組を進めて欲しい。

名古屋大学大学院環境学研究科 杉山特任教授

  • 3点申し上げる。今年も残念ながら各地で気象災害が起こっている。地球温暖化は「気候危機」として認識されるフェーズになった。こういった中で気候変動への適応策について国が法律を定めており、各地域で対応していくことが求められている。特に農業県である愛知県への影響は非常に大きいと思われるので、農林水産業への影響を県としてしっかり把握し、どういった脆弱性があるのか、リスクに対してどのような適応策が相応しいのか、そういったことを検討したうえで、農林漁業者へのサポートを行っていくことが大切ではないかと考えている。なかでも水産業については、分かっていないことも多いが、影響が大きく現れていると言われている。対象が水中生物であり、水温や水中の環境の影響を大きく受けるということで、水産資源の状況を的確に把握して、早く適応策を考えていく必要がある。全国的にも県単位で気候変動適応センターが設置されており、愛知県にも設置されている。愛知県も気候変動適応センターや水産試験場、農業総合試験場などで様々な取組をしていると思うが、そういったところと連携・協力して影響の把握や対策の検討を進めていただきたい。また、その情報を関係者だけにとどまらず、県民・消費者にも発信していただきたい。そうしたことで消費者・県民が愛知の農林水産物を応援し、愛知産を食べたり、買いたくなったりするということにつながっていくと思う。気候変動の適応策を進めることは、農林漁業者の経営安定化や新たな担い手の確保にもつながっていくのではないかと思われる。現状で愛知県が把握している影響や、今後5年間でどのように取り組んでいくのかという方針があれば教えていただきたい。
  • 2点目は、次期計画の数値目標について、今後作成していくということであるが、これまでの成長路線の延長線上の目標を掲げるだけではなく、愛知県としてどのような将来ビジョンを描くのかを踏まえ数値目標を検討いただきたいと思う。
  • 3点目は、SDGsについて。昨年の会議でSDGsとの関連性を整理することが重要という意見を述べ、資料にSDGsアイコンを付していただいた。SDGsと施策の関連性を整理した結果、愛知県としてどのように評価しアイコンを付してあるのかという方法を教えていただきたい。また、その中でどのような課題があることが分かったのか。SDGsの目標である2030年に向けて、これからの10年で取り組むべきことはどういうことなのか検討されていれば教えていただきたい。

公益財団法人愛知県農業振興基金 鈴木理事長

  • 2点申し上げたい。1点目は、これから人口減少や高齢化が進行していく社会となっていくが、行政が作る計画はどうしても右肩上がりの目標となる傾向があり、産地・生産現場の現状や県民の皆さんの意識と計画の目標との乖離が顕著になってしまうのではないかと心配している。決して暗いイメージの計画を作るという意味ではなく、大切なことは金額よりも生産量をいかに考えるかということだと思っている。これから愛知県の農産物をいかに安定的に量的に良いものを供給していくか、そういう視点に立って品目ごとに産地の方々としっかりこれからどういう方向に向かっていくのかということを、短期的な視点だけでなく、長期的な視点からもしっかり検討し、そういったものを積み上げて目標や施策の方向性を打ち出していただきたいと考えている。
  • もう1点は新型コロナの関係である。ブランド農林水産物が売れなかったり、一部の品目の需要が冷え込んでしまったり、色々なところで影響が出ているが、このままでは経済が死んでしまうので、いずれ元に戻っていくとは思われる。しかし、中には戻らない部分もあると思われるので、そういった部分をしっかり見極めて、先手、先手に対策を打っていけば逆にビジネスチャンスが生まれると思われる。そこの部分を皆さんにしっかり検討していただいて対応していただけたらと考えている。

愛知県土地改良事業団体連合会 竹下事務局長

  • 食と緑のレポートの4ページの数値目標の達成状況について、当連合会に関係する項目として柱1(3)「農地や農業水利施設等の整備・更新面積」や柱3(2)「農地の保全・整備面積」などの項目について、目標に対して80%以上の対応をしていただいていることに感謝申し上げる。ただ、柱1(3)「意欲ある人が活躍できる農業の実現」の、「新規就農者数」以下の4項目について、昨年度は「担い手への農地集積面積」を除く3項目は◎であったのに対し、今回は〇となっている。何か要因があったのか教えていただきたい。
  • また、レポート16ページの農山漁村地域の防災・減災対策プロジェクトについて、国内で多くの災害が起こる中、農村地域の防災・減災事業が3か年緊急対策で着実に進められているが、整備が必要な施設はまだまだ県内に沢山ある。次期計画にも防災減災プロジェクトが位置付けられており安心するとともに、今後も期待したいと思っている。
  • 最後に、次期計画の目標についてであるが、現行計画の主要目標を見ていて、全国シェアのような目標は、他県の頑張りの影響も受けて、県の実績がわかりにくい部分があるし、直近数値として4年前の2016年の数字しかでていないということもあるので、次期計画の目標は、できるだけ分かりやすく、かつ算定しやすいものとしていただきたい。

トヨタ自動車株式会社アグリバイオ事業部農業支援室 灘波主査

  • 3点ほど申し上げたい。1点目は、次期計画の策定にあたって、いままでの取組の評価が具体的にまとめられており、レポートの4ページでも◎、〇、△の評価がされているが、これらに対する「振り返り」をしっかりとやらないといけない。トヨタ自動車では「なぜなぜ分析」ということをよくやる。それは真因を追求しないと、対策がうまくできないためである。このため、現行計画の評価と真因の追求をもう一度見直したうえで、次期計画に反映していただきたいと思う。
  • 2点目は、次期計画において6つのプロジェクトがあり、多くの取組が記載されているが、優先度が分かりにくく、総花的な感じがするので、優先度を明確にしておいた方が良いのではないかと感じている。
  • 3点目は、課題と対策についての表現の部分に関して。重点プロジェクト1で新型コロナウイルス対策について記載がされているが、どういったところが課題でそれに対してどういう施策を打つのかということを明確にした方が理解しやすいと感じている。やることだけを書くのではなく、課題も記載した方が分かりやすいと思われる。例えば、スマート林業に関して、国でも色々な事業に取り組まれているが、他の事例も参考にして、愛知県としてはどのようなことに絞り込んで重点的にやりたいとか、地域性を示していただけると良いのかなと感じている。

一宮市立木曽川東小学校 平岩校長

  • 私が住む一宮市は尾張地域になる。愛知県産の農産物にはとても美味しいものがあると感じていて、渥美半島のキャベツやブロッコリーなどを知り合いから貰うことがあるが、とても美味しいと思う。ただ、尾張地域に住んでいると、そういった県産農産物を頻繁に買うことが難しく、県産品の魅力をなかなか感じることができないのが残念である。例えば花でも渥美半島では様々な花が生産されていると聞いているが、尾張地域に流通している花は岐阜県産であったりする。県内で生産された農産物が三河地域から尾張地域へと、県全域で身近に購入できるようになると良いのではないか。
  • また、次期計画の生産の柱において、意欲ある人材の確保を進めるとある。私の勤める小学校の子供たちには農業体験として、トマトを作ったりサツマイモの収穫をしたり、5年生には田植えを体験させている。もっと農業体験をさせたいと考えているが、地域の指導者が高齢化しており、学校として協力者を確保するのが難しくなっている。一宮市内にはJAに協力いただいて農業体験を実施している学校もあるが、私たち教員だけでは十分に農業体験の機会づくりに対応しきれないことがあるので、応援していただける身近な存在があると良いと思っている。

愛知県森林組合連合会 前田代表理事専務

  • 現在の新型コロナによる影響を含めた林業業界の状況と課題を述べさせていただく。1点目は、県産木材の需要拡大について。コロナウイルスの影響で、木材需要の大きな部分を占めている住宅着工件数が減少しており、野村総研の予測ではリーマンショックの水準を下回るとまで言われている。実際に製材工場や合板工場が原木の丸太の受入れを制限するようなこともあって、我々事業体は現場作業者の雇用維持に苦慮している状況である。ついては喫緊の課題として、県においては原木流通の早期回復や木材生産の増大につながるような即効性のある木材需要を喚起する施策、いわゆる出口対策をぜひお願いしたい。また、長期的な木材需要の拡大も課題であり、住宅以外についても木材利用の拡大が必要である。そのために昨年度から市町村に配分されている森林環境譲与税の使途として、県産木材の利用促進について、森林の少ない都市部の市町への御指導をお願いしたい。これは昨年度開催された全国植樹祭の開催理念にもつながるのでぜひお願いしたい。
  • 2点目は、林業の労働力対策について。次期計画においても、生産性の向上とともに林業の担い手確保が位置付けられているが、このためには林業技術者の知識・技術の向上が重要であると考えている。現在、森林林業技術センターで各種研修が行われており、森林環境譲与税の配分をきっかけに昨年から研修が拡充されているところであるが、研修を受ける側にとってわかりやすく魅力のある研修カリキュラムとなるよう、研修体系の見直しも含めて検討をお願いしたい。
  • また、労働力を確保するため、労働現場の安全性は非常に重要なことであるが、林業の現場は労働災害発生率が他の業種に比べて高く、平均と比べると10倍近い発生率となっている。我々事業体も努力しているが、県が進めているICTを活用したスマート林業なども労働安全対策につながるので積極的な推進をお願いしたい。
  • 最後に、労働安全に対する意識と技術の向上のため、他県では「伐木競技会」といって、作業者が日ごろの技術を発揮する場がある。作業者のモチベーションも上がると思うので、愛知県でも「伐木競技会」のような場を設けていただけると良いと思う。

愛知県農村生活アドバイザー協会 山内会長

  • 私は結婚して農業経営に参加するようになったが、私や私たちの親世代の感覚では、農家に嫁ぐということは農業をするということで、農業経営の労働力の一人として働くのが当たり前であった。しかし、今の若い世代は考え方が違っていて、我が家の場合でも、農家の長男に嫁いできてくれた息子の嫁は農業以外の仕事を続けているし、また、やりたいことをやれば良いよ、という感じになっている。農家に嫁いだら農業をやるものという考え方では、若い農家に嫁は来てくれないのではないかという思いを持っている。
  • 我が家も規模拡大をしており、労働力はパートや技能実習生などで確保をしている。報道で知ったことだが、技能実習生が新型コロナウイルスの影響で来日できないので、援農に来てくれる方が出てきているということである。そういった場合において、他産業で働いていた人や子育て世代の女性、あるいは高齢者などが農業で働きやすくなるような取組、例えば子供の託児であるとか、経験の浅い方でも無理なく農作業が行えるような、省力技術や栽培方法の開発などが進むと良いと思う。

愛知消費者協会 吉田会長

  • 消費者の立場から2点お話したい。まず、新型コロナウイルスに対する事業者の対応に格差を感じている。飲食店を例にとると、店内販売の落ち込みを踏まえて、素早くテイクアウトやネット販売に取り組める経営者がいる一方で、そういった新しい取組に踏み切れない経営者もいる。規模が小さかったり人脈が無かったりなど、できない事情も色々あると思うが、どんな対応をしたら良いかについての情報や行動力の格差が発生しているように思う。私たち消費者は、目に見えるもの以外にも様々な情報を参考に行動する。県産品を買って欲しいという話があれば支援をしたいと思う方もたくさんいるから、事業者からの働きかけが重要で、多くの事業者が新しい取組を始められると良い。格差については農業経営も同じだと思うので、経営体の対応を促し、行動を支援する役割が県に求められるのではないか。例えば、消費者の手元に直接情報が届くLINE等のツールを用い、農産物の価格や購入できる場所などを簡単に発信することができるようにすれば、多くの農業者が活用できるのではないか。
  • もう1点は家族経営体への支援について。家族経営では女性や高齢者の役割が大きい。男女共同参画の視点からもそういった方の活躍について考えていく必要がある。また、経営体の置かれている状況は千差万別なので、農業団体や県の指導員にはコミュニケーション能力が求められる。相手と同じ目線に立ち、相手の事情に合わせた取組のコーディネートができるよう、指導スキルを向上させることが重要。指導員には様々な研修をしていただいて、広い視点で助言ができる存在になって欲しい。

オーガニックファーマーズ名古屋 吉野代表

  • 新規就農者の支援に取り組んでいる。本日は4点お話ししたい。まず、ここのところ新規就農を志して相談に来る方が増えつつある。新規就農者にとって、研修は技術を習得し、円滑に経営を開始する上で極めて重要。しかし、昨年度、国の研修機関に対する基準が大きく変わり、県が研修機関に求める基準も変更を余儀なくされた。その結果、研修機関になれないという事態が発生し、そこでの研修を予定していた就農希望者が右往左往することとなった。前職を辞めるところまで来ていたのに、研修に入れなくて困っているというような事例もあった。私どもも一時期研修機関から外れ、研修希望者に「対応できない」とお伝えせざるを得ないこともあった。幸い、今年度は私どもも研修機関に再認定していただいたが、今回の件のように、研修体制に大きな変更があると、中長期的な計画を持って就農を志す人達に大きな影響を与えてしまう。国の方針に合わせて県の対応を変えなくてはいけないという事情は理解するが、新規就農者を育てるために研修機関として果たすべき役割は大きく変わるものではない。本気で新規就農者を増やすには、実績や姿勢などの面で研修機関にふさわしい資質を備えた団体や農家を研修機関として認めた上で、県が研修機関と連携して新規就農者を支援していくことに尽きると思う。県が研修機関に期待していることを聞かせて欲しい。
  • 2点目に、中山間地域に移住する若手の多くは、高い志を持って地域の活性化につながる役割を果たす担い手になっていく。その一方で、彼らが共通して抱える不安に、子供の教育の問題がある。親として、子供に高校卒業までは自宅から通わせてあげたいと思うのだが、交通の便が悪く通学可能な高校が地域になかったり、学校の選択肢が非常に少ないことが多く、中山間地域への若手の移住を推進する上で避けられない問題になっている。新型コロナウイルスをきっかけに、リモートで教育が行われるようになりつつあるが、この問題の解決につながる方策が示されたように感じている。子供に十分な教育を受けさせることができる環境は、地域の農林水産業を支える優秀な人材の移住を促す大きな要素になると思う。中山間地域に暮らしながら高校の選択肢を増やせるよう、公立高校の一形態としてリモートの授業を中心に据えた取組を教育のセクションと連携して進めることはできないか。
  • 次に、近年の気候の劇的な変動により、新規就農者が研修で学んだ栽培技術が、その通りに実践しても上手く成功しないという事態が起きている。気候に合わせた品種の改良等も重要だが、今ある品種を愛知県で上手く栽培するための技術を学ぶ機会を作っていただきたいと思う。
  • 最後に、次期計画の暮らしの柱に記述のある半農半Xについて。半農半Xには多様なパターンがある。自分の食を確保する半農と、そのほかのやりたい仕事をするライフスタイルで、これまではリモートの仕事をしている人がその形態をとることが多かったが、最近はバリエーションが広がって、半Xがスイーツやパン作りであったり、珈琲の焙煎であったりなどと事例が増えてきた。半農半Xにより地域を支える多様な人材を確保することで、農山漁村の活性化につなげることができる。その推進に向け、まずは実践者に話を聴きながら、普及啓発を進めていただきたい。

愛知県漁業協同組合連合会 和出代表理事常務

  • 1点目は水産業の担い手の確保について。漁業者は年々減少しており、なかなか歯止めがかからない。漁業者が減るのはやはり生活ができないからであり、儲かれば後継ぎも残り、漁業が維持される。県は様々な施策を打っているが、沿岸域においては様々な開発事業があり、加えて海域の栄養もなくなってきており、海の環境は悪くなるばかりである。このような状況で漁業者を増やすのは簡単ではないと思う。今までと同じような施策では、今後5年、10年と漁業を継続できるか漁業者には大きな不安がある。この不安を払拭し漁業者がこれ以上減少しないよう、漁業者の所得向上につながる思い切った施策をぜひお願いしたい。
  • また、今般のコロナ禍において漁業者は大きな影響を受けたが、漁業者が減ることにより漁協の存続も危ぶまれている。今後も同じことが起きるかも知れず、足腰の強い漁協の経営基盤、販売体制を作ることが喫緊の課題と考える。こうした中、愛知の漁業の将来に向けて、漁業者が行う漁協の経営基盤強化の取組が進むよう、県にはしっかりとした指導体制を敷いていただくことも併せてお願いしたい。

 

県側の発言

徳田座長

  • 構成員の皆様から一通り御発言をいただいた。県への質問事項について事務局から回答をお願いする。始めに、食と緑のレポート2020に関する質問への回答をお願いする。

農業経営課長

  • 竹下委員からの御質問のうち「新規就農者数と農業法人数が2018年度は◎で2019年度は〇となった要因」についてお答えする。新規就農者数は毎年210人確保することを目標としている。2016年度から2018年度の3年間の新規就農者数は、210人以上確保できており、達成率は100%以上で◎となっていた。2019年度は168人で達成度は80%で○という表記となった。新規就農者には農家の後継者と農外からの新規参入者があり、2019年度に就農者数が減少したのは後継者の就農が減少したためである。数字でいうと、2018年度は181人後継者の方が就農されているが、2019年度は91人となった。この要因については、現在分析を進めているところであるが、後継者が就農する場合、新規参入に比べて国からの支援の要件が少し厳しいなどの意見がある。
  • 農業法人数についてであるが、農業経営の法人化には、社会的信用の向上、円滑な経営継承などのメリットがあり、法人化の推進を目標に位置づけて推進してきた。目標は800法人とし、計画策定時の595法人から毎年40法人、5年間で205法人を積み上げる計画をたてた。2019年度の目標は755法人であるが、実績は745法人ということで、○になったが、4年間で150法人増加しており、おおむね計画どおりではないかと考えている。県としては、2018年度からJA愛知中央会、愛知県農業振興基金と連携して、法人化について税理士などの専門家と相談できる窓口を開設している。今後、さらに、窓口を活用していただき、農業経営の法人化を推進していきたいと考えている。

農地整備課長

  • 竹下委員からの御質問のうち「農地や農業水利施設等の整備・更新面積が◎から〇になった要因」についてお答えする。2019年度までの実績が、目標に対し94%と100%をやや下回っているが、これは2019年度に完了する予定の地区の工期延期に伴う整備面積の減によるものである。なお、農業水利施設等の整備・更新を行う関係事業は順調に進捗しており、本年度末までに目標9,500haを達成する見込みとなっている。

徳田座長

  • 次に、食と緑の基本計画2025の策定に関する質問に対して回答をお願いする。

農政課担当課長

  • 杉山委員から御質問のあった、「SDGsに関連する課題や取り組むべき事項」についてお答えする。当計画の施策とSDGsの関連を整理した結果、17のゴールのうち特に関連の深い項目としては、ゴール2の食料安定供給や持続可能な農業の推進、ゴール12の持続可能な生産消費、更には海の豊かさや持続可能な森林の管理などが挙げられる。その他にも多くのゴールに関連があると認識しており、それぞれ重点的に取り組んでいく必要があると考えている。
  • また、課題としては、SDGsの169のターゲットのうち、一例を挙げると、「小規模食料生産者の農業生産性や所得の倍増」や「健全で生産的な海洋の実現」などが必要と考えており、次期計画において「家族経営体への支援」、「スマート農林水産技術の開発」、「貝類増殖場の整備」、「漁業生産に必要な栄養塩濃度の確保に向けた取組」などを新たに位置づけ、これまでの取組と併せて効果的に取り組みたいと考えている。

食育消費流通課長

  • 平岩委員からの「尾張部において渥美半島産の農産物を見かけない、また、県産農林水産物をもっと身近に購入できるようにして欲しい。」との御意見についてお答えする。御承知のとおり、渥美半島はキャベツ、メロンや花きなどの国内でも有数の産地であり、実際に、スーパー等で販売されている愛知県産キャベツやメロンなどの多くが渥美半島産であることが多い。しかし、食品表示法における原産地表示は都道府県までで良いとされているため、一般的に市町村や地域までの表示はなく、渥美半島産や田原市産であっても、愛知県産として流通しているのが実情である。また、食品ではない花きは、産地表示の義務が無く、多くは産地表示なしで流通している。一方、地域の産地直売施設では、地産地消を目的として地場産の農産物を扱うことから、それぞれの施設のルールの中で生産市町村や生産者名まで表示されることが多い。地域や生産者などにこだわられる方は、まずは目当ての生産地の近くの産直施設の御利用をお願いしたいと考えており、産地直売施設を訪れていただくことが地域の活性化にもつながると考えている。
  • また、県産農産物全般の消費拡大について、本県は全国有数の農業県であり、生産された農産物の約1/3が県内で流通している。しかし、本県は大消費県であるため、他県からの流入農産物も多く、県産農産物が目立ちにくいという問題がある。このため、県としては、かねてから「愛知県版地産地消の取組」である「いいともあいち運動」を推進しており、愛知県で生産された農林水産物を積極的に販売したり、食材を利用する飲食店を「いいともあいち推進店」として1,200店ほど登録し、その利用をPRしているほか、愛知県産農林水産物やその加工食品の識別力のアップを図るため、いいともあいち運動のシンボルマークである「あいまる」を商品に貼付したり、店頭のプライスカードやポップに印刷していただく取組を実施している。また、大手量販店で愛知県産フェアを実施したり、地産地消コーナーを設置していただいているので、消費者の皆様にはこうした機会を利用していただきたい。
  • さらに、今週(7月30日)からは新型コロナの影響を受けた生産者や事業者を支援するため、愛知県産農林水産物や特産品の通販サイトを開設し、翌日の31日からはお得に県産品が購入できるキャンペーンも始める。吉田委員から、こうしたネット販売等の新しい方法に対応できない方もいるので支援をという御意見があったが、今回のECサイトについては、ただ販売するだけでなく、取り組んだことの無い人にも参加いただけるよう専門のアドバイザーが、出品から販売、代金精算について支援をするオプションも準備している。新しい販売の方法の普及もあわせて取り組んでいきたい。今後もこうした取組により、「いいともあいち運動」の一層の推進を図り、県産農林水産物の消費拡大を図ってまいりたいと考えているので御支援いただきたい。
  • 次に「学校での農業体験における指導者や場の提供への支援」について、県では、農業体験を含め、地域での食育を推進するために、食育活動を自主的に行っていただく方を「愛知県食育推進ボランティア」として現在1,000名ほど登録しており、地域の保育園や幼稚園、小学校や公民館などにおいて、毎年延べ10万人を超える、子供から高齢者まで幅広い世代に対して、収穫体験や調理実習などの食育活動を行っていただいている。なお、「愛知県食育推進ボランティア」への活動依頼の方法は、県の食育ネットあいちのHPに掲載しており、必要に応じて地域の農林水産事務所農政課や食育消費流通課でボランティアと依頼者とのマッチング支援を行っているので御相談いただきたい。また、農業体験については、既に「学校での農林漁業体験学習に係る地域の協力者一覧」を作成し、教育委員会を通じて各小学校に配布しているので併せて活用いただけたらと考えている。
  • 関連して加藤委員から御要望あった小学校6年間を通じた食農教育について、現在、学校での農業体験等の食農教育の多くは、総合学習の時間に実施されている状況である。6年間を通じた実施については、学校には決められたカリキュラム等もあるので、この場で私どもからすぐにコメントはできないが、こうした要望があったことは教育委員会に伝えてまいりたい。

農業経営課長

  • 山内委員から御意見のあった「女性や高齢者等でも無理なく農作業が行えるような省力技術や栽培方法」についてお答えする。省力化のためにはICTやAI等の新しい技術の導入を進める、あるいはスマート農業の活用が非常に重要であると考えている。次期計画の中でスマート農林水産技術の開発と現場への普及をしっかりと位置付けていきたいと考えている。次期計画に基づき、農業でいうと農業総合試験場においてスマート農業技術の開発として、農作業機器の自動化などを民間企業等と連携しながら本県農業に適した技術の実証を進めていく。また、ドローンやほ場等に設置したセンサーを使ったモニタリング技術を活用することで、作物の生育を「見える化」し、従来、経験や勘が必要であったものを「見える化」することによって、最適な栽培管理方法を提供する技術の実用化を図っていきたい。これらの取組により、女性や高齢者、農作業経験の浅い方でも容易に農作業を行うことができるような取り組みを進めてまいりたい。
  • 次に吉野委員から御意見のあった「新規就農を支援する研修機関の基準が変わり現場が混乱したこと」についてお答えする。新規就農者の研修機関については、従来、先進農家、農業法人、教育機関等が認定されていたが、2019年度は国の制度改正により教育機関等のみとなり、現場で混乱が生じた。このことについては申し訳なく思っている。こうした反省を踏まえて、2020年度からは国の制度が再び改正され、従前と同様に、先進農家、農業法人、教育機関等が認定されることになった。本県では、研修ニーズに応じたカリキュラムの整備や事故防止への配慮など研修を着実に実施できることや、関係機関と連携し、新規就農者へ適格な助言・指導ができることなどといった、研修機関の認定基準を設けて認定をしている。研修機関の方々には、日頃から、情熱をもって研修者の指導に取り組んでいいただき、感謝申し上げたい。県としては、研修機関は、農業経験のない研修者が、まず始めに、栽培技術や農業経営、農村生活を学ぶ場として、大変重要な役割を果たしていただいていると認識している。引き続き、安心して新規就農者の円滑な確保・育成に取り組んでいただけるよう、県としても国に要請するとともに支援していきたいと考えている。

園芸農産課長

  • JA愛知中央会の加藤委員からの「主要な農作物について品目毎に目標を掲げ、産地の姿を描き、生産から流通まで関係者が一体となって取り組む必要がある」との御意見について、県としても同じように考えている。近年の取組の一部を紹介すると、2016年から「農業生産力パワーアッププロジェクト」に取り組んでいる。これは、産地ごと、品目ごとに具体の目標を定めた「産地戦略」を取りまとめ、取組を展開するもの。地域のプロジェクトチームでは、生産者を始め、JAや市町の方々と県が一緒になって取組を進めている。また、県域のプロジェクトチームでは、県庁内の関係課や広域の普及指導員、県域の団体と意見交換をしながら進めている。2019年度からは、農業団体等との話し合いを基に、緊急度が特に高いと思われるイチゴやキク、いちじく、ブロッコリー、なすの5品目を選定し、生産、流通、販売を一体的に捉えてボトルネックの解消に取り組む「あいちの園芸生産力の強化に向けた一体的支援プログラム」の作成を開始している。昨年12月には先行してイチゴのプログラムを決定し、現在、地域において産地のJA等と協力して担い手確保の取組を開始している。また、品目別の目標ということでは、「食と緑の基本計画」の個別計画として、米麦大豆、野菜、花きなどの生産振興方針を今年度中に策定する作業を行っており、農業団体を始め、生産者や流通関係者などの御意見をすり合わせながら進めている。この中で、品目別の数値目標の設定やその実現に向けた具体的な取組などについて盛り込んでいく。いずれにしても、皆様と具体策を出し合い、役割分担を明確にして、密接に連携して取組を進めていく。
  • 続いて、愛知県農業経営士協会の加藤委員からの、県産花きの消費拡大に向けた取組について、なるべく県産の花を選んで購入していただくため、今年から花と緑のイベントとして「あいち花マルシェ」を開催する計画である。従来から「花フェスタ」というイベントを開催し、愛知県の花を御覧いただき、知名度を上げていこうということで取り組んできたが、これからは、素晴らしい花を見て、触れて、購入していただこうという目的をもって工夫して開催する。今年の夏の開催に向けて、花屋の団体と連携して準備を進めていたが、残念ながら新型コロナウイルスのため開催できなくなった。しかし、秋にはマルシェを開催する予定なので、しっかりと準備を進めていく。また、先ほど紹介した県産品の通販サイトについて、花も参加する予定で進めている。生産者の皆さんの花に対する想い等も併せて配信することで、消費者の方々にあいちの花を知っていただき、直接購入していただく。インターネットでの取引に慣れていない生産者の方々にも気軽に参加いただけるよう、工夫していく。

水産課長

  • 杉山委員から御質問のあった「地球温暖化の漁業への影響の把握状況や今後の取組」についてお答えする。地球温暖化の漁業への影響については、海水温の上昇により、水産生物の生息域が変化することが上げられる。国からの報告では、サワラやブリなどの分布域が変化し北上している。それから北の方に生息しているサケやホッケなども同じように北上しており、漁獲が減少しているとの報告がある。本県海域においても、マダイやサワラは増加傾向にある一方、イカナゴが大きく減少するなど獲れる魚が変化してきている。また、冬季に養殖するノリ養殖の開始時期が、20年前と比べて10日程度遅くなっており、養殖できる期間が短かくなるなどの影響が生じている。このため、水産試験場では、自動観測ブイにより連続観測した水温と塩分の情報や、稚魚の分布調査結果などをウェブページなどで広報して、これまでの経験を重視する漁業者に効率的な操業が行えるよう支援する他、国の研究機関と連携して高水温耐性のあるノリ種苗の開発も進めており、漁業者への普及を図っている。今後の取組については、これまで愛知県の漁業は単一の資源を効率的に漁獲する漁業経営を進めてきたが、単一魚種では資源変動が大きい場合、漁業経営にダメージを受けてしまうところがあるので、資源変動の大きい環境下でも安定的な経営を行うことができるよう、今後、貝類や藻類など養殖業の新たな手法を取り入れた多角的・複合的な漁業を推進して経営安定につなげたいと考えている。なお、気候変動に係る種々の情報については国の関係機関や気候変動適応センター等と情報共有し、今後の取組に生かしていきたいと考えている。

農政課担当課長

  • 多くの御発言のうち、御意見については県として受け止め、次期計画や施策に生かすよう努めてまいりたい

 

座長総括

徳田座長 

  • 3点ほど私から申し上げたい。まず1点目として、今回、何人かから意見があったが、新型コロナウイルスが感染拡大する非常に不透明な中での策定となっている。実際、新型コロナウイルスの関係で様々な問題が発生しており、今、施策が求められていると思う。特に経済面に関しては先が見えない状況であり、今回の新型コロナウイルスによって社会が変わるのではないかと言われている。おそらくコロナウイルスが収まったとしても、全てが元通りには戻らないと思われる。先が見えない中での今回の計画作りということで、場合によっては途中で状況が変わったということも起きてくると思われる。そういう意味で、計画は5年間継続で5年間大事にしていただきたいということもあるが、情勢が変わる中では、場合によっては見直し、ということも、今回の進行管理では一つ考えておくべきだと思う。
  • 2点目として、多くの方からいただいた意見としては人材だったのではないかと思う。担い手と、特にシニアの雇用労働力の問題が非常に深刻化している。これは現在喫緊の課題であると認識している。これに関しては、その対策は様々で、そもそも多様な人材を想定するのなら、非常に多面的な対策が必要であろうと思う。人材として来ていただく人に対してだけではなく、受入れ側の問題もあるのではないかと思う。なかなか定着し難いというのも、当然様々な理由があるが、受入れ側にとってもどれだけで定着してもらえるかというのも実は課題だと思う。それに対して多面的な形で取り組んでいただきたい。
  • 最後3点目として、このような計画はほとんどの都道府県で作られていると思う。こういう計画は地名のところだけ変えたら使えるという部分もある。多くの都道府県で似たような問題を抱えているので、同じような課題に数えられることについては当然だと思う。各地域の特性を計画の中に取り込んでいただきたい。愛知県の特性というものがある。大都市であることと同時に、全国的なトップレベルの産地となっている地域もある。両面あるというのは、他の都道府県には無い特性であり、それぞれが同じ取組にならない、地場の地産地消のマーケットと全国のマーケットでは、違った取組になると思う。愛知県の特性を計画に、それに基づく施策に取組んでいただきたい。色々と意見があったが、それを含めて考慮していただきたい。

 

会議資料

次第 [PDFファイル/73KB]

資料1 [PDFファイル/2.92MB]

資料2 [PDFファイル/87KB]

資料3 [PDFファイル/699KB]

 

 

 

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