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「朝の小1の壁」について~仕事と育児の両立による従業員確保のために~
1 「朝の小1の壁」とは
「小1の壁」とは、こどもが小学校に入学するタイミングにおいて直面するさまざまな課題や困難を指します。
中でも「朝の小1の壁」と呼ばれる問題は、保育園における早朝保育の預かり開始時間に比べて小学校では登校時間が1時間程度遅くなることにより生じます。こどもが不安な気持ちで1人過ごす時間ができてしまい、小学校入学前には対応できていた仕事と育児の両立が難しくなることから共働き世帯やひとり親世帯にとっては大きな問題となっています。
企業にとっても、今まで仕事と育児を両立できていた従業員が「朝の小1の壁」によって両立が難しくなるケースがあり、従業員の確保や定着に影響を及ぼす可能性があります。
<「朝の小1の壁」の例>
・小学校入学前であれば保育所が早朝保育を実施しており、保護者が勤務開始に間に合う時間に家を出ても、保育所にこどもを預けることが可能ですが、小学校入学後は保護者が家を出る時間よりも後に登校時間が設定されている場合が多く、こどもが家で1人で過ごす時間ができてしまうことをいいます
※時間は地域や家庭で異なる。
<参考>「朝の小1の壁」問題の実態把握(令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業)
(1)こども家庭庁による実態把握(「小学生の朝の居場所づくり報告書」より抜粋)
こども家庭庁では、平日(学校がある期間)の朝のこどもの居場所の必要性が顕在化したことから、平日の朝のこどもの居場所について実態把握を行いました。
・調査期間:2024年9月~10月
・調査対象:1 全国の小学1年生~小学6年生(令和6年度時点)のこどもを持つ、共働き家庭
(配偶者がおらず回答者自身が就労している場合も含む)の保護者3,708名。
2 全国の市区町村 計1,741自治体
3 全国の小学校の夏季休業期間のみ利用を希望する家庭のこどもを対象とした
居場所の運営主体(約9割が放課後児童クラブを運営)
・調査結果:
1 保護者への調査
学校がある日の朝の主な居場所(自宅で起床し準備ののち、学校が始まるまで過ごす場所)は、「自宅(こどもが一人で過ごす時間は 特になく、不安はない)」が48.2%と最も多く、次いで「自宅(こどもが一人で過ごす時間があり、不安がある)」が28.3%。
2 市町村への調査
平日の朝のこどもの居場所確保に向けた施策有無について聞いたところ、「実施している」が1.4%、「実施に向けて検討中」が1.7%、「実施 していない(未検討)」が96.7%。
また、「実施していない」「実施に向けて検討中」と回答した自治体に、実施に当たっての課題を聞いたところ、「居場所運営に従事する人材の 確保が難しい」が70.0%、「居場所(場所)の確保・調整が難しい」が42.9%、「運営者を見つけるのが難しい」が35.7%。
3 運営主体への調査
平日(学校がある期間)の朝のこどもの居場所の運営状況について「実施している」が3.5%、「実施に向けて検討中」が3.2%、「実施していない(未検討)」が90.2%。
- 調査研究の報告(小学生の朝の居場所づくり報告書)(PDF/918KB)
(出典:令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業/みずほリサーチ&テクノロジーズ)
(2)こどもの居場所づくり支援モデル事業について
こども家庭庁では、NPO等の民間団体が創意工夫して行う居場所づくりやこどもの可能性を引き出す取組への効果的な支援方法等を検証するためのモデル事業を実施しています。
【こども家庭庁】
NPO等と連携したこどもの居場所づくり支援モデル事業について|こども家庭庁
【愛知県内の事例(大府市)】
2 企業における取組の必要性
「朝の小1の壁」の解決に向けては、朝のこどもの居場所づくりを推進することが重要ですが、企業においても、この問題を理解していただき、従業員が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいただくことが大切です。企業に取り組んでいただきたい内容は次のとおりです。
(1)従業員の抱える事情の把握
小学校の登校時間や家を出発する時間は従業員によって異なりますので、まずは個別事情の把握を行ってください。
(2)フレックスタイム制度や短時間勤務制度、テレワーク、時間単位の年次有給休暇等の
多様な働き方が選択できる職場環境の整備
多様で柔軟な働き方が可能になることにより、従業員はこどもの登校時間に対応した働き方が可能になりますので、整備に向けた取組をご検討ください。
これらの取組は「小1の壁」に直面している従業員だけでなく、従業員全体のワーク・ライフ・バランスの実現に資することになり、優秀な人材の確保・定着、企業イメージや競争力の向上につながります。
また、<参考>のとおり国の助成制度もありますのでご活用下さい。
<参考>企業(※)が活用できる国の助成制度
(1)両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)
育児を行う労働者の柔軟な働き方に関する制度を複数導入した上で、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を策定し、制度利用者を支援する取組を行った中小企業事業主に助成するものです。(助成額:20万円~25万円)
(2)人材確保等支援助成金(テレワークコース)
適切な労務管理下におけるテレワークを制度として導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主に助成するものです。(助成額:20万円~35万円)
(3)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主に助成するものです。(助成額:対象経費の3/4、上限あり)
※(1)~(3)の助成要件は異なりますので、詳しくは各助成制度のWebページをご確認ください。