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罰則
選挙犯罪は、これを実質犯と形式犯に分けることができます。選挙を公正に行うためには、買収のような実質犯のほかに、ポスターの掲示違反のようないわば形式的な規定違反も処罰することになっています。
同じルールの下で競争をする以上、その規定の内容が何であれ、全部の候補者が守らなければ、選挙の公正は期せられないからです。まして議員であれ長であれ、当選のあかつきには、いろいろなきまりを作ったり、そのきまりによって公の仕事をする人たちですから、きめられた約束はよく守って選挙を行う必要があるといえます。
1 選挙犯罪の種類
選挙犯罪の種類を大別すると次のようなものがあります。
- 買収及び利害誘導の罪
- 選挙の自由妨害の罪
- 投票の秘密侵害の罪
- 選挙犯罪の煽動の罪
- 虚偽事項公表の罪
- 氏名等虚偽表示の罪
- 新聞や放送による選挙の公正を害する罪
- 詐偽登録等の罪
- 不在者投票に関する罪
- 事前運動の罪
- 公務員等の選挙運動の罪
- 公務員、教育者の地位利用による選挙運動の罪
- 選挙事務所に関する罪
- 一般の選挙運動の罪
- 戸別訪問、署名運動、飲食物の提供、連呼行為、自動車・拡声機・船舶の使用、気勢を張る行為
- 文書図画による選挙運動の罪
- 言論による選挙運動の罪
- 選挙期日後のあいさつ行為の罪
- 選挙運動の収支の罪
- 寄附制限の罪
- 推薦団体、政党等の政治活動の規制に関する罪
- 偽証の罪
- 候補者の選定に関する罪(衆議院議員の選挙及び参議院比例代表選出議員選挙の場合)
2 選挙犯罪と当選無効
次のような場合には、その当選人の当選は無効となります。
- 当選人が、買収などの特定の選挙犯罪により刑に処せられたとき
- 総括主宰者(地域主宰者を含む。)、出納責任者(事実上の出納責任者を含む。)が買収などの罪を犯し刑に処せられたとき
- 候補者及び候補者となろうとする者の親族又は秘書が候補者、総括主宰者等と意思を通じて行った選挙運動により買収などの罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき
- 組織的選挙運動管理者等が買収などの罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき
- 公務員が、その離職後最初に立候補した国の選挙で当選人となった場合に、その者から指示や要請を受けた元の職場の職員等が買収等の特定の選挙犯罪により刑に処せられたとき
また、上記2~4については、さらに、当該選挙における選挙区から5年間立候補することができなくなり、衆議院小選挙区選出議員選挙における候補者が重複立候補者である場合は、衆議院比例代表選出議員選挙における当選も無効となりますが、2及び3についてはその刑に処せられた罪に係る行為がおとりや寝返りによるものである場合は、適用がありませんし、4についてはその行為がおとり、寝返りによる場合とそれを防止するため候補者等が相当の注意を怠らなかったときは、立候補制限や比例代表選挙の当選無効だけでなく当該選挙の当選無効そのものの適用がなくなります。
上記2~5については衆議院比例代表選出議員選挙(重複立候補者を除く。)においては、適用はありません。
選挙権、被選挙権の停止
選挙犯罪により刑に処せられた者は、次の区分により選挙権、被選挙権が停止されます。
- 特定の選挙犯罪のため、罰金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から5年間(執行猶予の者はその期間中)
- 選挙犯罪(選挙人等の偽証罪を除く。)により禁錮以上の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から刑の執行を受ける期間とその後の5年間(執行猶予中の者はその期間中)
- 買収等いわゆる悪質な犯罪を重ねて犯した罪により刑に処せられたときは、前記1及び2の5年間は10年間に倍加されます。
- 裁判所は1に当たる者(買収等の悪質犯を除く。)については、情状により、選挙権を停止しない旨又は期間を短縮する旨宣告することができますが、そのほかについては、短縮を宣告することはできますが、停止しないという宣告はできません。
4 罪の時効
選挙犯罪は、一般犯罪の時効と同様の取扱いとなっており、ごく一部の科料に当たる罪を除き、全部3年以上の期間となっています。