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令和6年度外部評価結果
令和6年度愛知県森林・林業技術センター研究成果評価検討会議の開催状況
日時
場所
評価委員(敬称略)
所属 | 氏名 |
---|---|
名古屋大学大学院 |
梶村 恒(座長) |
設楽森林組合 |
佐々木 公仁 |
鳳来製材協同組合 |
峰野 晋 |
林業経営者 |
後藤 齊 |
評価内容
評価基準
A:このまま続行
B:内容を修正して続行
C:計画を見直して続行
D:課題の中止
報告
第1回研究成果評価検討会議(中間評価)の結果
研究テーマ エリートツリーの効果的な結実促進技術の関する研究(研究期間 R5~R7)
研究の目標
水分ストレス、薬剤処理等による雌花形成量及び球果量の増加
実施内容
閉鎖型採種園におけるエリートツリー採種木の結実を促進させるため、雌花の形成量を増加させる最適な条件を明らかにするとともに、受粉効率を高める方法等について検討を行う。
中間成果
・ヒノキ採種木の雌花形成には、毎日潅水でも十分な着花促進が認められた。
・エリートヒノキのジベレリン処理枝の雌花着生効果が認められた。
・効率的な交配方法の検討では、扇風機のみより花粉銃と扇風機併用の方が、1球果当たりの種子数は増加した。
講評
着花量や種子充実度を増大させる潅水・施肥条件を見出しつつあり、継続して検討してほしい。ジベレリンによる着花促進効果は順調に成果が得られている。スギでは花粉銃による種子数の向上に成功し、目標球果数を超えた系統もあり、交配方法のさらなる改善に期待している。
評価 A
研究テーマ エリートツリーの雄花形成・花粉採取技術に関する研究(研究期間 R5~R7)
研究の目標
水分ストレス、薬剤処理等による雄花形成量及び球果量の増加
実施内容
閉鎖型採種園におけるエリートツリー採種木の雄花の形成量を増加させるため、乾燥ストレスや薬剤処理等による最適な条件を明らかにするとともに、効率的に花粉を採取する技術の開発を行う。
中間成果
・ヒノキ採種木の潅水条件では、毎日、2日毎の潅水で雄花着生量が増加した。
・エリートスギで、ジベレリン処理により雄花着生量が増加した。
・ヒノキ閉鎖型採種園では、花粉飛散時期の3月下旬に閉鎖するよりも早く閉鎖することで、棟内の温度が上がり花粉飛散時期が早まると考えられた。
講評
閉鎖型採種園(ハウス)の管理方法の検討は類似研究が少なく、その挑戦的取り組みはとくに高く評価できる。花粉飛散に悪影響を及ぼす高湿度に対策が必要で、ハウスの部分開放が実用的であることを証明しつつあり、今後、外部花粉の流入を考慮した研究進展に期待している。
評価 A
研究テーマ 少花粉ヒノキの採種木等の育成技術に関する研究(研究期間 R5~R7)
研究の目標
施肥等による枝径の増大、剪定技術の確立
実施内容
少花粉ヒノキの採種木等を早期に育成するため、最適な施肥条件を明らかにするとともに、効率的に種子生産を行うための剪定方法の検討を行う。
中間成果
・エリートスギの種子生産を考慮した剪定については、新しい枝は、強度剪定した上部、中部、下部ともに多く萌芽した。
・樹高成長は肥料の種類による差はなく、1液性の液体肥料は代替肥料として有効である。
講評
従来品よりも安価で省力的な液肥は有用であり、固形肥料の配合についても、実験条件を追加し、データを蓄積してほしい。萌芽枝の増加や伸長、花芽着生促進をめざした剪定手法に関しては、各樹種の系統ごとに、その位置や強度の最適化を引き続き追求してもらいたい。
評価 A
研究テーマ 早生樹等の生育特性及び強度性能評価に関する研究(研究期間 R5~R7)
研究の目標
クスノキ等の強度特性の解明及び利用法の提案
実施内容
森林所有者の植栽木の選択肢を増やすため、成長等に優れた早生樹やクスノキ等の有用広葉樹について、生育特性や強度性能を評価し、利用法の検討を行う。
中間成果
・クスノキは県内に広く分布している。
・クスノキ人工林では純林より針広混交林の残存率が高い。
・クスノキの平均年輪幅、曲げ強さ、曲げヤング率それぞれ強い相関がみられた。
講評
クスノキについて、植栽木と自生木の残存率、樹幹解析による成長様式、材質強度など、学術的にも貴重な成果が得られている。今後、さらに綿密な強度試験が行われ、そのデータも踏まえて、家具への利用方法が認知されることを期待している。
評価 A
研究テーマ 花粉の少ない品種の早期育苗・育成技術の開発(研究期間 R6~R8)
研究の目標
幼苗を活用した屋外における苗木生産期間の短縮
実施内容
花粉の少ない苗木の安定供給に向けて、ヒノキコンテナ苗生産における発芽促進方法や幼苗を育成する最適な条件を明らかにし、生産期間を短縮する技術の開発を行う。
中間成果
2月に温室で播種し、発芽した毛苗を3月及び4月にコンテナに移植した苗の成長を継続調査中で、3月移植の方が4月植栽より平均苗高が高い。
講評
育苗のコスト削減や期間短縮は苗木生産現場における重要な課題である。毛苗のコンテナへの移植時期、施肥・培土条件や水分管理方法が苗高や根張りに与える影響など、着手した調査の経過観察に努めてほしい。
評価 A
研究テーマ 早生樹等の効率的な苗木生産及び育林技術に関する研究(研究期間 R6~R8)
研究の目標
マルチキャビティコンテナ苗生産技術の確立、施業技術の確立
実施内容
早生樹のセンダンについて、コンテナ苗の効率的な生産技術を開発するとともに、優良材生産に向けて間伐等の施業方法の検討を行う。
中間成果
・センダン種子のジベレリン処理により、発芽促進は確認されたが、5月下旬の最終的な得苗への影響は見られなかった。
・センダン苗をR4年植栽した試験地では、平均樹高513cmとなる試験地があった。
講評
センダンについて蓄積してきた、発芽・育苗・育林の基礎的な知見を、実用化に向けて発展させる研究である。現場で見出された病害虫の被害対策の実証試験や、間伐時期の検討など、生産・収穫を見据えた意欲的な内容も含まれており、成果が得られることを期待している。
評価 A
研究テーマ 海岸クロマツ林の保全・管理技術に関する研究(研究期間 R6~R8)
研究の目標
海岸クロマツ林の施業方針及び薬剤散布時期の提案
実施内容
海岸クロマツ林の保全に向けて、現地の実態を調査し、間伐等の施業指針の検討を行うとともに、虫害を防除するための適切な薬剤散布時期の検討を行う。
中間成果
・抵抗性クロマツの植栽や間伐の施業履歴を20か所で情報収集した。
・マツノマダラカミキリの発生予察では、2002年からのデータによる成虫脱出初確認日は、全体的に早期化かつ年によるばらつきが大きくなる傾向がみられた。
講評
植栽後の間伐の時期や方法が残した木の成長や林内環境に及ぼす影響を現場で経年的に追跡し、過密林分問題に資する研究である。気候変動に伴う害虫の発生時期の変化を羽化脱出消長で検証し、防除適期を提案する実験計画も明解である。ともに継続データが貴重な知見になる。
評価 A
研究テーマ 強度間伐施業地のモニタリングによる効果の検証(研究期間 R6~R10)
研究の目標
開空度、植生、土砂流出量等の調査による施業効果の検証及び今後の施業方法の提案
実施内容
強度間伐施業地のモニタリング調査を行い、施業効果を検証するとともに、今後の施業方法の検討を行う。
中間成果
・既設調査地2箇所のモニタリング調査を実施した。
・R6年度間伐実施予定の3調査地を設定し、開空度調査を実施した。今後、下層植生調査、土壌調査、成長量調査を実施する。
講評
既設地で開空度、土砂流出量、下層植生を引き続き長期間調査するとともに、新設地では土壌pH・EC、スギ・ヒノキのDBHも測定するなど、さらに充実が図られている。強度間伐の効果が検出できることを期待している。
評価 A