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土地収用Q&A
(1) 収用と使用の違いは?
土地収用法は、土地などを収用する場合だけでなく、使用する場合についても規定しています。
「収用」とは、所有権を取得し、賃借権、抵当権などの所有権以外の権利を消滅させるものをいいます。
「使用」とは、公共事業のための使用権を設定し、又は権利を制限する場合をいいます。
「収用」の場合も「使用」の場合も、裁決までの手続きは同じです。
(主な関係条文 2条)
(2) 収用されるものは?
土地収用法の規定により収用又は使用することができるものは、次のとおりです。
・土地
・地上権、抵当権、賃借権などの土地に関する所有権以外の権利など
・立木、建物その他土地に定着する物件(土地とともに事業の用に供する場合)
・土石砂れき
(主な関係条文 2条・5条・6条・7条)
(3) 収用手続きの当事者は?
収用手続きにおける当事者は、起業者、収用対象となる土地や建物などの所有者及び関係人です。
「起業者」とは、土地収用法などにより土地を収用することができる公共事業の施行者をいいます。
「関係人」の範囲は、収用対象となる目的物によって異なります。具体的には、次の表のとおりです。
収用又は使用の |
関係人の範囲 |
---|---|
土地 | 当該土地に関して、地上権、永小作権、地役権、採石権、質権、抵当権、使用貸借若しくは賃貸借による権利その他所有権以外の権利を有する者 |
当該土地にある物件に関して、所有権その他の権利を有する者 | |
権利 | 当該権利に関して、質権、抵当権、使用貸借若しくは賃貸借による権利その他の権利を有する者 |
物件 | 当該物件に関して、所有権以外の権利を有する者 |
土石砂れき | 当該土石砂れきの属する土地に関して所有権以外の権利を有する者及びその土地にある物件に関して所有権その他の権利を有する者 |
ただし、これらの権利を有する者がすべて関係人となるわけではなく、事業認定の告示後に新たな権利を取得した者は、既存の権利を承継した者を除き、関係人には含まれません。 また、裁決手続開始の登記がされた後は、当該登記にかかる権利を承継した者であっても、相続人などの一般承継人を除き、当該承継を起業者に対抗することができません。 |
(主な関係条文 8条・45条の3)
(4) 不明裁決とは?
収用委員会は、補償金を受けるべき土地所有者及び関係人の住所及び氏名を明らかにして裁決を行わなければなりませんが、収用委員会がこれを確知することができないときは、不明のまま裁決できることになっています。
また、収用する土地又は物件に関する所有権以外の権利について争いがある場合において、裁決の時期までにその存否が確定しないときは、その権利が存するものとして裁決し、あわせて、裁決後にその権利が存しないことが確定した場合における土地又は物件の所有者が受けるべき補償金を裁決しておかなければならないことになっています。
このように、裁決で明らかにすべき事項の一部に不明の点があっても、不明のまま、又は「甲又は乙」などとして裁決することができることになっており、このような裁決を一般に「不明裁決」と呼んでいます。
不明裁決がなされた場合、起業者は収用しようとする土地又は物件の所在地を管轄する供託所(法務局)に補償金を供託することになります。
なお、不明裁決がされる場合としては、
・権利者の住所も氏名も不明であるとき
・権利者の氏名は確知しているが、住所が不明であるとき
・土地又は物件に関する所有権又は所有権以外の権利の帰属をめぐって争いがあるとき
・土地又は物件に関する所有権以外の権利の存否をめぐって争いがあるとき
・隣接者間で土地の境界に争いがあり、収用しようとする土地の地番が不明であるとき
などが考えられます。
(主な関係条文 48条第4、5項・49条第2項・95条第2、4項・97条第2項・99条)
(5) 抵当権者などに対する損失の補償は?
損失の補償は原則として各人別になされることになっていますが、抵当権者などに対する損失の補償は、個別に見積もることが困難であるため、土地所有者に対する補償に含められるのが通常です。
このような場合、抵当権者などは、起業者から土地所有者に補償金等の払渡又は替地の引渡が行われる前に、これらの請求権について差押えをしなければ、債務者が受けるべき補償金等又は替地に対して、抵当権などを行使することができなくなりますので、注意してください。
ただし、裁決手続開始の登記(「2 裁決までの手続きについて (7)裁決手続開始決定、登記」をご参照ください。)前においては、これらの請求権について差押えをすることはできません。
なお、抵当権などが設定されている土地について補償金の支払請求(「3 土地所有者、関係人の権利について (2)(イ)補償金の支払請求」をご参照ください。)がされた場合には、起業者は、補償金の支払前にあらかじめこれらの権利者に対して、その支払いをする旨を通知しなければならないことになっています。
(主な関係条文 45条の3第2項・46条の4第2、3項・69条・101条・104条)