本文
“ひとつぶだね”で育つ芳醇な「あいちの牡蠣」
“ひとつぶだね”で育つ 芳醇な「あいちの牡蠣」
シングルシード牡蠣の特徴
シングルシードとは、牡蠣を一個ずつバラバラの状態でバスケットのなかに入れ育てる方法。波に近づけることで、身がしっかりとした牡蠣ができる。
形やサイズが均一
バスケット内でほぼ同じ環境で育てられるシングルシード牡蠣は、どの個体も形とサイズがほぼ均一に成長。一般的な牡蠣と比べて小ぶりに見えるが、貝の中には大粒の身が詰まっている。見た目の美しさはシズル感にも大きく繋がる。特に飲食店で提供される場合は形やサイズの均一性は重要な要素であり、高級感や特別感を演出してくれる。
クリーミーな味覚
バスケット内で波に揺らされながら育つ牡蠣は、ムラなく栄養がいきわたるため濃厚な味わいのしっかりとした身を付ける。牡蠣の成長に適した環境で養殖されるため塩味とうま味のバランスが良好。まさしく海からの贈り物だ。
環境にやさしい
バスケットは牡蠣の殻の落下を防ぐため海域汚染を起こしにくい。長期的に見ても自然環境に対する影響を最小限に抑え、持続的な養殖生産をすることが可能。
味わいの分析データ
他県産(垂下式)と比較して愛知県産シングルシードはうま味が強く塩味は穏やかで、まろやかでリッチな味わいを楽しめる。牡蠣ならではの複雑な味わいと余韻もしっかりしているため、コクや味の厚みも感じられる。
タンパク質を構成するアミノ酸の1 つで、うま味物質として知られるグルタミン酸も豊富。県外産( 垂下式)サンプルと比較した分析結果では、愛知県産シングルシードのグルタミン酸量が上回った。
シングルシード牡蠣の養殖方法
愛知県のシングルシード式養殖はどのようなものか見ていこう。手間暇をかけた工程でひとつひとつ大切に育てられ、美味しい牡蠣が育つ。
STEP1
牡蠣の幼生を海中から採取することを「採苗」という。プラスチック製の採苗器を海中に入れておくと、海の中を漂っていた幼生が付着する。この作業は毎年7月中旬から9月中旬まで行われる。
STEP2
このバスケットのなかに一定数の牡蠣を入れて、海中へと沈める。牡蠣は固定されず波に揺らされることとなり、いわば筋トレをしながら成長していく。
STEP3
牡蠣へムラなく栄養がいきわたるようにバスケットを管理する。大きさの選別、収容密度の調整、付着物の除去など、バスケットのこまめな交換が欠かせない。
STEP4
冬になるといよいよ収穫が始まる。約1年半のあいだ、バスケットのゆりかごで育ち、整った形と均一なサイズの、身がぎっしり詰まった質の良い牡蠣になる。
漁師同士が協力しあい 新ブランドの価値を創出
愛知県で広がりを見せている牡蠣のシングルシード養殖。まずは日間賀島で牡蠣の養殖を行っている、漁師の鈴木豊隆さんのもとを訪ねた。普段はボンベを背負って海に潜り、天然の貝を採る潜水器漁業を行っているという。バスケットを順番に組み立てていく作業。「普段やってることと違うもんだで、すげえ疲れる」と笑いつつ、牡蠣の養殖には確かな手応えを感じている。「冬場は旅館や民宿で食べてもらえる食材が限られてくるんです。日間賀の牡蠣が、タコやフグに次ぐ名物になってくれれば」と話してくれた。次に訪れたのは渥美半島の田原市で牡蠣の養殖を行う、漁師の川口拓馬さん。養殖の現場まで船を出してもらい実際に作業風景を見学させて頂くことができた。巧みな操作で杭と杭の間に漁船の先端を入れ、海中に沈めたバスケットを徐々に引き上げていく。すると小ぶりながら形が整った美しい牡蠣が、バスケットの中から姿を現した。「天候によっては漁に出られない日もあって、夏には牡蠣が死んでしまったこともありました。養殖も自然との勝負。状況を見極めつつ、どう育てていくかというのが一番難しいところですね」と川口さん。同じく牡蠣の養殖を行うほかの漁師たちと、仲良く談笑する姿もとても印象的だった。「まだまだ慣れない作業も多いですが、みなさんと『こういう風にしたら上手くいったよ』と情報を共有しながら牡蠣を育てています」。愛知の海はひとつ。牡蠣の養殖に携わる人々は、自分たちが育てた牡蠣が多くの人々の笑顔に変わることを夢見て今日も船を進める。
渥美漁業協同組合漁師の皆さん
『分厚い身がいっぱい詰まった愛知の牡蠣は、とってもおいしいですよ。浜焼きで豪快に味わうのが一番おすすめ。牡蠣のシングルシード養殖で得た知識や技術を、ゆくゆくはほかの魚貝類の養殖にも活かしていきたい。漁師みんなが協力しあい日夜励んでいます!』
日間賀島漁業協同組合漁師の皆さん
『愛知の牡蠣は臭みが少なく、後味がいいのが特徴。「日間賀島の新しい名物にしたい!」と、旅館や民宿からの期待も大きいです。まだまだ流通量が多くないですが、ほかの漁師さんや愛知県とも協力し合いながら品質のよい牡蠣をお届けできるようがんばります。』
県内の産地
垂下式牡蠣の養殖方法
シングルシードの他に、愛知県では「垂下式養殖」が行われている。ホタテの貝殻に牡蠣の種を密集させた状態で1~2年間養殖し、それをロープに連ねて海中に沈める。一度に大量の生産が可能。
牡蠣の幼生を付着させたホタテの貝殻を、1 枚ずつ等間隔で針金に通し養殖用の垂下連を作り、いかだに吊るす。「牡蠣の養殖」と聞けば、まさにこのイメージを浮かべるだろう。
季節による海水温度の変化や餌となる植物プランクトンが多く発生する深度などを考慮し、牡蠣を吊るす深さなどを調整する。
垂下をはじめてから1年後の冬には収穫が始まる。この時期、垂下連はとても手では上げられない大きさに成長しているため、船に搭載したウィンチで巻き上げ収穫する。
お問合わせ
愛知県農業水産局水産課
〒460-8501 愛知県名古屋市中区三の丸1番2号
TEL:052-954-6458
E-mail:suisan@pref.aichi.lg.jp