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つかみどころがある あいちのウナギの話
うなぎ
うなぎ養殖について
愛知県は全国2位の生産量を誇る主要なウナギ産地で、西尾市一色地区を中心に、豊橋地区、高浜・碧海地区、弥富地区で養殖が行われています。愛知県産ウナギは「新仔(しんこ)」と呼ばれる若いウナギが多く、良質な脂が乗り、身と皮が軟らかいのが特徴です。
ウナギ養殖は冬から春にかけて河口で採捕されたシラスウナギを養殖場に池入れし、半年から1年半かけてビニールハウス内で加温飼育して200g以上/尾に育てます。池上げされたウナギは立て場で冷たい水に数日間さらされて出荷されます。
育て方
うなぎは30℃付近の水温で最も生育が良いため、ビニールハウスの中で加温して育てられています。養殖池には数台の水車が浮かび、主に飼育水へ酸素を供給するために稼働しています。そして、うなぎの餌は他の養殖魚と異なり、お餅のような練餌を食べさせます。うなぎを早く、そして、脂が乗ったおいしいうなぎに成長させるための工夫です。
うなぎは古くから夏病除けのスタミナ食となっていますが、元気一杯に競って餌を食べるうなぎの様子を見ているだけでも、うなぎから元気を分けてもらえるような気がします。
新仔うなぎの出荷
例年6月頃に、新仔うなぎが初出荷されます。この新仔のうなぎは、約5ヶ月半という短期間で出荷サイズまで大きく育ちます。新仔うなぎは体が青色に輝き、その身は柔らかく脂ものって絶品です。是非、新仔の美味しいうなぎを食べてみてください。
土用の丑の日は大忙し
土用の丑の日が近づくと、一色うなぎ漁業協同組合では一年で最も忙しい時期を迎え、通常期の5倍以上のうなぎが出荷されています。
養殖場から池上げされたうなぎは大きさで分けられた後、きれいな水に数日間さらされます。酸素を充満したビニール袋に入れたうなぎは、活きたまま、主に東海地方や関東地方の鰻専門店に向けて出荷されます。
加工
一色うなぎ漁業協同組合の加工場では、土用の丑の日をピークに、多い日には500kg(約2,000尾)のうなぎが白焼きや蒲焼に加工されています。うなぎは一尾ずつ手作業で開かれた後(一尾開くのに約10秒という職人技です)、ベルトコンベアに乗って、白焼きは約30分、蒲焼は約40分で出来上がります。蒲焼の香ばしい香りが充満する加工場は、何とも言えず食欲をそそります。
大きくておいしいうなぎを作り出す技術を開発
技術開発の背景
本県では、西尾市一色町を中心にうなぎの養殖業が盛んで、全国有数の生産量を誇っています。令和4年における本県のうなぎ生産量は全国2位となっています。うなぎ養殖には天然のニホンうなぎ稚魚が種苗として用いられますが、稚魚の国内採捕量は大きく減少しています。
近年、養鰻業界は天然資源を有効利用するために、うなぎを大きく太く育てる「太化」に取り組んでいます。現状、うなぎの市場では体重200~250gサイズが中心に出荷されていますが、主流サイズよりも大きく育てることで、一尾から取れる身の量が増え、資源の有効利用が期待できます。しかし、うなぎは養殖すると大半が雄になり、雄のうなぎは大きく成長すると身が硬くなり品質が低下するという問題があったため、この問題を解決し「太化」の取り組みを促進する技術の開発が求められてきました。
新たな開発技術の内容
雌のうなぎは雄に比べて大きく成長しやすく身が柔らかいことに着目し、養殖うなぎを効率的に雌に育てる技術の開発を行いました。具体的な技術としては大豆食品に含まれる「大豆イソフラボン」をうなぎの餌に混ぜて育てることにより、養殖うなぎの9割以上を雌にすることができます。
この技術を用いて雌に育てることで、従来の2倍(体重400~500g)の大きなサイズに成長させても、身が柔らかく、おいしいうなぎを育てることができ、限りあるうなぎ資源の有効利用が期待できます。
本研究は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの委託事業である「イノベーション創出強化研究推進事業(体系的番号JPJ007097)」により実施しました。
技術の実用化
この開発した技術は、令和3年11月に特許第6970992号を取得した後に実用化しました。各種マニュアルも公開しており、本技術は実際の養殖場で採用され始めています。養殖業者の反応は上々で、技術の更なる普及が期待できます。