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21世紀を展望した愛知県の生涯学習振興の基本方策について(答申)

ページID:0007745 掲載日:2023年4月1日更新 印刷ページ表示

21世紀を展望した愛知県の生涯学習振興の基本方策について(答申)

はじめに

 愛知県生涯学習審議会は、平成5年8月23日、愛知県知事と愛知県教育委員会から「21世紀を展望した愛知県の生涯学習振興の基本方策について」諮問を受け、審議を進めてきた。また、平成5年9月24日には基本構想策定専門部会を設け、集中的、効率的な審議に努めてきた。
 本審議会は、平成6年9月1日、それまでの調査審議の結果を取りまとめ、中間まとめとして愛知県知事と愛知県教育委員会に提出した。これを公表し、市町村、学校、生涯学習関係団体等に意見を求め、さらに審議を重ねた結果をここに答申として取りまとめた。
 第1部においては、21世紀を展望した愛知県における生涯学習振興の方策を考察し、第2部においては、第1部で示した振興の方向のうち、21世紀初頭までに当面重点を置いて実現を目指す3つの方策について提言した。

第1部 生涯学習振興の方向

第1章 生涯学習振興の視点

1 生涯学習振興の意義
(1) 生涯学習の必要性
   今日、私たちは、科学技術の飛躍的な発展の恩恵の中で暮らしている。この高度な科学技術に支えられ、本県は世界に誇り得る高い技術を有する工業県であり、かつ、全国的に有数の農業県でもある。産業技術の先端を担う誇りと豊かな実りを産みだす安定感の中で、本県は、堅実で豊かな人間性を育んできた。
   科学技術の進歩や経済の発展は、人々にゆとりと長寿という恩典をもたらした。人々に、時間のゆとりや生活のゆとりを生かして、何かをやってみよう、人生をもっと楽しんでみようという心のゆとりが生まれている。人生80年の中で、仲間づくりや生きがいづくりは、人々にとって関心の強いことがらになっている。長い伝統の中で育まれてきた芸術や文化に興味や関心を抱く県民に、人生をさらに充実するために、興味や関心を深めてみたり、新しいことをやってみようという意欲が高まっている。
   一方、技術革新の展開や産業構造の変化は、新しい学習を人々に求める状況も作りだしている。職業人は、社会の変化に的確に対応していくために、絶えず高度で専門的な知識や技術を学んでいかなければならない。また、職業人も含めたすべての県民にとって、社会の変化により生じた健康や高齢化の問題、あるいは環境の問題等に対処し豊かな生活を実現するため、問題解決のための新しい知識の習得が重要になっている。
(2) 生涯学習振興の意義
   行政と学校、企業、民間の生涯学習関連機関等は、連携・協力して、県民の、自ら学んでみようという意欲と、学ばなければならないという思いにこたえることにより、すべての県民の充実した人生の実現を可能とするために、いつでも、どこでも、誰でも学習できる生涯学習の基盤を整備していくことが期待されている。
   県民の求める学習活動は、県民一人ひとりにより異なると言える。幼児期から高齢期までの各ライフステージにより異なるし、求める内容も多様である。県民一人ひとりが自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果を社会において生かすことにより、日々生きがいを持って充実した人生を送ることができる生涯学習社会の実現を目指すものである。

2 生涯学習振興の基盤
  21世紀に向けて豊かな生涯学習社会を目指すためには、次のような基盤の上に、振興を図ることが重要である。
(1) 生涯学習社会における学校教育
   今日の我が国の経済的な繁栄は、学校教育に負うところが極めて大きい。
   しかしながら、一方では、学歴を偏重する社会的風潮の中で、学校教育への過度の期待や負担等に伴い生じた弊害が指摘されているのも事実である。
   社会の変化に主体的に対応できる能力の育成や個に応じた子どもの教育は、学校教育、家庭教育、社会教育の三者の有機的な連携により進められるものである。平成4年9月から実施されている学校週5日制は、家庭や地域での子どもの生活時間の比重を高めたり、家庭や地域と学校との連携を深めていく機会として期待されている。
   学校教育における学習が、生涯にわたる学習の一つであり、その初期における学習であることを考えると、今、学校教育に求められるのは、生涯にわたって学習を続けていくための基礎的な能力や自ら学ぶ意欲や学習する楽しみなどを身につけるための教育である。さらに、社会の進展に対応できるように、柔軟な思考力や創造的な能力を育成するための教育も求められている。この点において、21世紀に向けた生涯学習社会を築く柱となる児童、生徒の教育を担う学校教育への期待は大きい。
(2) 企業の生涯学習社会づくりへの参加
   生涯学習の背景の一つとして、職業上の専門的な学習の必要性をあげた。
   そのための方策として、現在、企業の内外で、職業能力向上のための教育が行われている。また、週休2日制と労働時間の短縮といった勤労者を取り巻く新しい社会環境も生まれている。企業には、企業内における新しい知識や技能習得のための学習機会の充実に努めることや、ボランティア休暇や研修休暇の制度の充実により、勤労者が企業を離れて行う学習活動に参加しやすい条件づくりに努めることが期待される。
   企業は、企業の保有する体育館や運動場などの施設を開放したり、専門的かつ高度な知識を有する人材を地域へ講師として提供することにより、地域における生涯学習社会の実現に積極的に参加することが望まれる。
(3) 生涯学習における主体と行政の役割
   生涯学習の主役は、当然のことであるが県民自身である。生涯学習社会での学習は、強制されるものではなく、義務でもない。学習者の自発的な意思に基づき、必要に応じて、自分に合った学習の方法を選択し行うものである。
   一方、県民は、新しい地域社会の形成者としての役割を発揮することも、21世紀に向けた生涯学習社会において期待されるところである。行政は、県民が社会の変化に対応するために学ぶ必要の生じた現代的課題(健康、高齢化社会、男女共同参画型社会、環境、国際理解等)についても、県民の意識の啓発を図るため、学習機会を提供し、その成果を地域社会の中で生かすことができる環境の整備をしていかなければならない。

3 生涯学習振興の基本的な考え方
  行政と学校、企業、民間の生涯学習関連機関等は、県民一人ひとりが、日々生きがいを持って充実した人生を送ることができる生涯学習社会を築いていくためには、次の考え方により取り組む必要がある。
(1) 多様な学習需要への対応
   幼児期から生涯にわたる人生の各ライフステージにおける県民の学習意欲や仲間づくり、生きがいづくりを支援するため、県民の多様な学習需要に対応した生涯学習の基盤整備を図る必要がある。
(2) 市町村の生涯学習活動の活性化
   生涯学習の基盤整備は、地域における生涯学習活動を発展させる方向で推進することが重要である。そのためには、市町村の公民館、図書館、博物館、文化施設、スポーツ施設等生涯学習関連機関の拡充と、生涯学習のまちづくりを推進することが必要である。
(3) 行政と生涯学習関連機関との連携・協力
   行政と学校、企業、民間の生涯学習関連機関、地域の生涯学習関係団体等は、緊密な連携・協力により、生涯学習の基盤づくりや支援体制の整備を図る必要がある。
(4) 学習機会の地域間格差是正
   文化施設や民間カルチャーセンター等が集中する都市部とその他の地域では、学習機会の格差が大きく、今後さらに拡大することも懸念される。この地域間格差の是正に配慮した取組が必要である。
(5) 障害者等学習活動に参加しにくい県民への配慮
   障害者、家庭で子どもや家族の世話をしている人々、職業人等の学習活動に参加しにくい県民に対して、施設・設備の改善、託児のための条件の整備、講座の休日・夜間の開設、休暇制度の充実等による学習しやすい環境づくりに配慮する必要がある。

第2章 学習機会の拡大

 生涯学習は、知識や技術習得のための学習だけでなく、スポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動等多彩な活動を通して行われる。学習の内容も職業に関すること、市民生活に関すること、教養、趣味・けいこごとなど社会生活全般にわたっている。生涯学習社会の実現を目指す上で重要ないつでも、どこでも、誰でも学習できる環境を整備するには、これら広範な学習活動と学習内容に対応した、学習機会の拡大を図ることが重要である。
 意欲ある人々は、県、市町村、学校、民間の生涯学習関連機関等が提供している講座や自主的なグループ活動により既に生涯学習活動を開始している。しかし、それらへの参加者は県民の一部に限られている。学習意欲はありながら、それを具体的な学習行動に結びつけていない県民が存在することを考えると、より一層の学習機会の拡大を図ることが求められる。
 学習機会拡大のために、次のような方策が考えられる。

1 生涯学習カレッジ
  現在県と市町村では、教育委員会を始め各部局において、それぞれの事業目的により生涯学習関連講座が開設されている。県と市町村は、それぞれに各部局間の連携を図ることにより、現在ある学習資源を有効に活用した仕組み(以下「生涯学習カレッジ」という。)をつくることが考えられる。これにより、県民の系統的、継続的な学習への対応が期待される。
  県におけるこの仕組みを仮に生涯学習県民カレッジと称することとし、ここでは、市町村やカルチャーセンター等民間の生涯学習関連機関と役割分担を行い、専門的な知識や技術に関すること、現代的課題に関することなどを中心にした学習機会の提供等が望まれる。
  また、市町村の生涯学習カレッジにおいては、地域の実情に即した学習機会の提供等により、住民の系統的、継続的な学習を支援することが望まれる。
 県における生涯学習県民カレッジの開設については、第2部において述べる。

2 リカレント教育
  近年における技術革新の進展や産業構造の変化を背景にして、職業能力の向上や人間性を豊かにするための社会人の再教育が求められており、この教育を一般にリカレント教育と呼んでいる。リカレント教育は、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校、各種学校、企業、職業能力開発施設等において行われている。特に、リカレント教育の中核機関として、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程等の高等教育機関への期待は大きい。
  これにこたえるための方策については、第2部において述べる。

3 学校のコミュニティスクール化
  この項において学校とは、小学校、中学校、高等学校を指す。文部省は、学校を「高機能化、多機能化し、地域の文化的シンボルとして整備し」、それをコミュニティスクールと称している。
  県民は、公民館や学校等の身近な施設での学習を希望している。本来の教育機能に配慮しつつ、コミュニティスクール化を進め、生涯学習の場として学校を地域の住民に開放することが重要である。
(1) 高等学校開放講座
   本県においては、高等学校が有する教育機能を地域社会に開放し、県民の生活や職業に必要な知識、技術及び一般的な教養に関する学習機会を提供する高等学校開放講座を開設している。この講座は、身近な学習機会の場として、県民に親しまれている。
   今後、本来の学校教育機能に支障をきたさないよう配慮しながら、専門的教育施設・設備を有する職業高等学校での開設を含め、各地域での積極的な増設が望まれる。
   なお、講座の増設にあたっては、地域での学習需要と地域での市町村やカルチャーセンター等民間の生涯学習関連機関の講座の開設状況を考慮する必要がある。また、受講者の適正な負担の在り方などを含めた講座の開設について検討していく必要がある。
(2) 学校施設の開放
   小学校、中学校、高等学校は、幅広く地域の生涯学習のための役割を果たすよう、その教育機能を社会や地域に広げることが期待されており、学校の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校図書館や体育施設等を社会教育のための利用に供するように努めなければならないとされている。
   現状では、学校施設のうち、運動場、体育館等の体育施設はかなり開放されているが、学校図書館等の特別教室の開放は、ほとんど進んでいない。この理由は、これらの施設が開放することを前提に造られていないので、管理運営上の問題から開放しにくいためと考えられる。
   今後、身近な学習機会の場として学校施設を積極的に開放するためには、施設の改修や新築にあたって、コミュニティスクール化を視野に入れて取り組む必要がある。同時に、施設開放時の管理責任の所在を明確にするなど管理運営の在り方についての検討が必要である。

4 生涯学習のまちづくり
  今日の生活構造の急激な変化や価値観の多様化などにより、人々の連帯感が薄れ、人々の生活を支えてきた家庭や地域の基盤がもろくなってきている。
  このような中で、求められるのは、人々の参加と連帯を通して、県民が自ら創造する生涯学習社会の実現である。県民一人ひとりが新しい社会の形成者としての役割を発揮できる環境の整備を図る必要がある。
  そのための具体的方策として、地域におけるまちづくりがある。生涯学習を通してのまちづくりの中心となるのは、住民に最も身近な市町村の役割である。既に、県下の多くの市町村で、行政を中心に、住民、社会教育機関、学校、企業等の連携により、それぞれの地域の特性を生かしながら、地域に関わる課題の解決や創造的な環境づくりを図るため、地域全体で生涯学習を推進する生涯学習のまちづくりが進められつつある。
  この生涯学習のまちづくりの推進にあたって、市町村は、地域における史跡、伝統芸能等を学習資源として積極的に活用していくことが期待される。

5 ボランティア活動
  生涯学習とボランティア活動の関係は密接である。生涯学習は、人々が自発的意思に基づいて行う学習であり、ボランティア活動は、個人の自由意思に基づき、その技能、労力、時間等を提供し、社会に貢献する活動である。ボランティア活動そのものが生涯学習になると考えられたり、生涯学習の成果を生かす場としてボランティア活動があると考えられたりしている。このことから、ボランティア活動を推進することは、生涯学習の振興の重要な方策の一つであると考えられる。
  ボランティア活動の領域は、日常生活と深く結びついている活動から国際協力に関する活動まで多岐にわたっている。いずれの場合にも、参加者が無理をせず、楽しく活動できる環境づくりに努めることにより、ボランティア活動の推進を図ることが重要である。
  現在、行政と民間団体等は、幅広く学習機会を提供しているが、参加者が限られていることから、行政と民間団体等が、ボランティア活動に関する学習機会の提供をより積極的に行うことにより、ボランティア活動参加者の裾野をさらに広げていくことができる。特に、児童、生徒を対象としたボランティア精神を培う体験活動の機会は、社会教育の中だけではなく、学校教育も含めた教育全体の中で充実していくことが重要である。彼らが青年期に達したときに、ボランティア活動の貴重な推進役となることが期待される。
  また、生涯学習に関するボランティア活動の推進を図るためには、学習機会の提供のほか、ボランティア事業に関する連絡・調整、ボランティア活動人材バンクの運営、ボランティアの養成・研修、ボランティア受入れ体制の整備等を行うことが望まれる。

6 学習成果の評価
  生涯学習社会は、豊富な学習機会の提供と適切な学習成果の評価とがあいまって実現されるものである。両者の関係は密接なものであり、学習成果が適切に評価されることによって、県民の学習需要が高まり、さらに学習機会の提供が広がると考えられる。
  一方、学習成果の評価についてはさまざまな議論があり、生涯学習における評価は必要ないという意見もある。これは、生涯学習が個人の自発的意思に基づき、必要に応じて行うものであるから評価する必要はないとの考え方があること、また、評価ということばが学校教育における評定を連想させるためであることが考えられる。しかし、個人の学習意欲を高めることができるような多様な仕組みで評価を行うことは、生涯学習活動を発展させていく上で重要である。
  具体的な評価の方法としては、発表会・展示会等成果の発表の機会の提供、講師や指導者としての登用、資格取得等にあたっての特典付与、修了証や認定証の発行等が考えられる。特に、学習成果を公の場で発表したり、ボランティア活動として地域のために役立てたりすることは、学習者にとっては生きがいや励みとなり、地域にとっては生涯学習の振興につながることから、このような学習成果活用の機会を積極的に開拓することが望ましい。
  このことから、行政は、学習の内容に合った多様な仕組みによる評価方法について研究する必要がある。この場合、学習成果の評価を重視しすぎて新たな弊害を生じさせないよう留意し、研究することが大切である。

第3章 生涯学習支援体制の整備

 生涯学習は、学習者の自発的意思に基づいて行うものであるから、行政の役割としては、県民の多様な潜在的学習需要を顕在化し、具体的な学習行動にまで高めるための支援体制づくりが重要である。具体的には、的確で迅速な学習情報の提供、学習相談体制の整備、効果的な施策の実施をするための調査研究、学習活動を指導・助言する支援者の養成と研修体制の整備が考えられる。

1 学習情報の提供
(1) 学習情報の収集、整理
   学習活動は、情報への依存度の高い活動であり、正確な情報を持っているかどうかが、学習目標達成の基本的な条件となる。県民に適切な学習情報を迅速に提供するためには、的確な学習情報の収集と系統的な整理が不可欠である。
(2) 学習情報提供システムの構築
 ア 学習情報ネットワークシステムの構築
   行政は、学習情報をそれぞれ独立した情報としてではなく、ネットワーク化することにより、県民が効率良く活用できるためのシステムを構築する必要がある。県民は、このネットワークシステムにより、多くの学習情報の中からそれぞれ必要な学習情報を得、自分にあった学習方法を選択することが可能となり、これにより、多くの県民の参加が期待できる。
   将来的には、県の生涯学習関連施設間のオンライン化や市町村の生涯学習関連施設間のオンライン化及び県と市町村とのオンライン化が必要である。
   情報の整備は、第1段階で公共の情報、第2段階で民間の情報へと段階的に整備することが期待される。この整備にあたって、県は、国や他の都道府県とのネットワーク化を図ることができるように情報分類や機器の互換性に配慮することが望ましい。
 イ 情報誌等による情報の提供
   幼児から高齢者まで幅広い年齢層と県民の多様な学習活動への取組を支援するためには、様々な媒体による情報の提供が考えられる。なかでも、県民が親しみやすい情報誌等の紙面を媒体とする情報提供の充実が期待される。
   例えば、現在、県や各市町村において生涯学習関連講座案内が発行されたり、大学において単独で公開講座の案内が新聞やリーフレットで広報されているが、これらを、一定の地域圏、又は、県下全域でまとめて情報誌を発行することなどが考えられる。

2 学習相談体制
  学習相談は、主に学習機会に関する相談と、学習者の主体的な活動を支援するための相談が考えられ、県民を県民が求める学習へ誘導する役割を持つ重要な支援の一つである。現在行政では、それぞれの担当部局が専門的な相談の機会を設けているが、今後、県民が学習を開始する以前に総合的な相談を行うことができる体制と、学習を開始してからの学習活動を支援する体制の両面で相談体制を整えていく必要がある。

3 調査研究
  生涯学習社会の実現を目指した施策の実施にあたっては、県民の意向を踏まえて実施していくことが重要である。そのためには、十分な調査研究を行い、その研究成果に基づいて施策を決定することが求められる。
  調査研究にあたっては、県民が未だ体験していない生涯学習環境についての調査研究も想定されるため、県民が理解しやすいように進める必要がある。
  また、この調査研究を継続的に行うことによって、県民の生涯学習に関する意識を高めることも期待できる。

4 支援者の養成と研修
  県民の生涯にわたる学習活動を適切に指導・助言する支援者の養成と研修は、極めて重要である。支援者として、社会教育主事、公民館主事、司書、学芸員、社会教育施設の職員、ボランティア等が活躍している。このほか、小学校、中学校、高等学校、大学等の教員経験者、官公署や企業の実務経験者等を、支援者としてそれぞれの専門的知識や経験を活用することも考えられる。行政は、これら支援者に対する学習機会を充実する必要がある。
  また、生涯学習の成果を生かす面から、学習者の中から支援者を発掘していく努力も必要であろう。
  さらに、行政がこれら支援者の登録や紹介を行い、人材を活用できる仕組みを設けることが望まれる。

第4章 生涯学習推進体制の整備

21世紀に向け、県民の求める多様な学習需要にこたえる体制を整備するには、行政の役割及びカルチャーセンター等民間の生涯学習関連機関(以下この章において「民間の機関」という。)と行政との関係の明確化、行政と学校、企業、民間の機関等との緊密な連携・協力や行政内部の連携による推進体制の確立、推進の拠点となる施設の設置が重要になる。

1 行政の役割及び民間の機関と行政との関係
  行政に期待される役割は、学校、企業、民間の機関等と連携・協力し、県民の自主的な学習活動を支援する生涯学習の基盤整備を図ることにより、生涯学習の振興に努めることである。
  県と市町村は、県民の生涯学習のニーズにこたえ、種々の施策を実施してきた。さらに高まりが予測される県民の期待に対処するためには、県と市町村がそれぞれの役割を踏まえ、施策の展開に取り組むことが重要である。
  また、民間の機関と行政との関係を明らかにすることで、より効果的に県民のニーズに即した対応が可能となると考えられる。
(1) 県の主たる役割
   県は、学習者である県民の視点に立って、生涯学習の振興のための諸施策の調整を図り、効果的にこれらを実施することが望まれる。
   県においては、生涯学習推進計画を策定し、生涯学習の振興のための施策を実施することが重要である。具体的には、学習情報提供システムのネットワーク化と相談体制の整備、関連機関、団体との連携・協力、施設の整備、学習需要や学習成果の評価に関する調査研究、学習方法・学習プログラムの開発、支援者の養成と研修、広域的、先導的学習機会の提供等が考えられる。
(2) 市町村の主たる役割
   市町村は、住民に最も身近な自治体として地域の実情に即した施策の実施により生涯学習の振興に努めることが期待される。
   そのためには、住民の学習ニーズを把握し、住民の日常生活圏において学習活動に参加することができる生涯学習の基盤整備を図る必要がある。
具体的には、学習機会や場の提供、支援者の養成と研修、学習情報の収集・提供、学習相談体制の整備、施設の整備、関係団体等の育成や自主的な学習活動への支援等が考えられる。
(3) 民間の機関と行政との関係
   本県における民間の機関が、職業能力向上のための多様な知識や技術、趣味・けいこごと、スポーツ等に関する生涯学習関連事業を実施してきた歴史は古く、その実績は大きい。民間の機関においては、事業実施にあたり、採算性の重視という制約があるが、これまでに培ってきた事業実施に関する経験を生かし、さらに本県の生涯学習振興に積極的に貢献していくことが期待される。
   行政においては、民間の機関の設置が少ない地域での学習機会の提供や民間の機関が実施しにくい内容に重点を置いた事業の展開が望まれる。
   行政は、民間の機関の自主性を尊重しつつ、県民の学習需要や指導者等に関する情報の交換や事業実施にあたっての連携を図ることが期待される。

2 生涯学習推進組織の整備
(1) 県、市町村、学校、企業、民間の機関等の連携・協力体制の整備
   県民に対して、多様で身近な学習機会の提供を図るため、県や市町村は、学校、企業、民間の機関等と連携・協力して、生涯学習社会構築への体制を整備する必要がある。
(2) 行政内部の推進体制の整備
   生涯学習振興の重要性が高まる中で、生涯学習関連事業は、教育委員会を始め行政全体で行われている、いわば部局横断的な政策分野であることから、各部局が連携して積極的にこれに取り組む体制を整備することが重要である。
   県においては、生涯学習に関する施策を総合的かつ効果的に推進するために、県庁内に生涯学習推進本部を設置する必要がある。また、生涯学習振興に関する総合的な企画・調整と生涯学習に関する行政課題を的確に処理するために、教育委員会事務局の組織の整備も重要である。

3 生涯学習推進センターの設置
  生涯学習関連施設としては、公民館、図書館、博物館などの社会教育施設、小学校、中学校、高等学校、大学などの学校教育施設、文化施設、スポーツ施設など各種の施設が存在し、これら施設の設置者や運営主体は、行政、学校、企業、民間の機関等多岐にわたる。県は、これらの機関と連携を図りながら体系的、総合的に生涯学習を進めていくために、推進の中核となる生涯学習推進センターを設置する必要がある。県は、県民からも期待の高い生涯学習推進センターの具体的計画を早急に策定する必要がある。
  生涯学習推進センターに期待される機能や施設の整備等については、第2部で述べる。
  なお、県下の地域の特性、地理的状況等を考慮し、地域生涯学習センター設置の期待があるが、これについては、市町村の中核となる公民館等との連携強化を図ることなどを含め、今後の研究課題とするよう提言したい。

第2部 生涯学習振興の当面の重点方策

第1章 生涯学習県民カレッジの開設

 現在県にある学習資源(情報、施設、事業、支援者、教材、機器等の学習資源)を最大限活用して総合的かつ有機的な体制を整備することは、生涯学習振興の効果的な方策である。
 生涯学習県民カレッジは、教育委員会を始め県の各部局がそれぞれの事業目的で実施している関連講座を、各部局間の連携によって分類・整理し、県民が系統的、継続的に一連の講座として受講できる仕組みを目指すものである。生涯学習県民カレッジを開設することによって、それぞれの講座の内容がより深く理解されるようになり、それぞれの講座の魅力が増して参加者の増加につながることも期待される。また、県民の系統的、継続的な学習機会の拡大を図るために、新しい講座や長期の講座の開設にも努める必要がある。
 県は、この生涯学習県民カレッジにおいて、県民の学習意欲をさらに高め、県民に魅力のある学習成果の評価方法を研究し、取り入れることが望まれる。

1 生涯学習県民カレッジの機能
  生涯学習県民カレッジの機能として、主に次の機能が考えられる。
 ○ 学習機会の提供
 ○ 学習情報の提供
 ○ 学習相談
 ○ 人材の活用

2 生涯学習県民カレッジの運営
  生涯学習関連事業を実施している県の各部局担当課室や関係機関で組織する運営委員会等を設置し、生涯学習県民カレッジの円滑な運用を協議することが必要である。
 また、この本部機能を生涯学習推進センターに設置することが考えられる。

第2章 大学におけるリカレント教育の充実

1 リカレント教育の機能
  社会人に対する、専門的な知識や技術の習得と教養を身につけるためのリカレント教育の必要性は、職業人を中心に大変高まっている。
  リカレント教育の機能は、次の三つに類型化されている。
 ○ 社会の変化に対応する、専門的で高度な知識・技術の習得やリフレッシュするための機能
 ○ 既に一度学校や社会で学んだ専門分野以外の幅広い知識・技術や新たに必要となった知識・技術を身につけるための機能
 ○ 現在の職業や過去の学習歴・学習分野に直接かかわりのない分野の教養を身につけ、人間性を豊かにするための機能
  職業人を対象としたリカレント教育に求められる最新かつ高度な知識や技術の提供機関として、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程等の高等教育機関(以下この章において「大学」という。)への期待は極めて大きい。また、職業を持たない学習者にとっても、地域の生涯学習関連機関や民間の生涯学習関連機関で趣味や一般的な教養として学んだ内容を、より専門的に学びたいとき、次に期待する機関は大学であろう。大学が広く社会人に門戸を開くことで学習者の専門的、体系的学習を可能にすることができる。

2 大学開放への取組
  生涯学習振興の重要な役割を担う大学が積極的にその教育機能を県民に開放していくにあたっては、二つの在り方が考えられる。
 ○ 社会人のためのプログラムの開設
   社会人のために大学が新たに教育プログラムを用意するものである。これは、いわゆる公開講座であるが、それぞれの大学の実情により、多様な形態で実施されている。
 ○ 大学カリキュラムの開放
   学生を対象にした教育研究機能を社会人にそのまま開放するものである。社会人特別選抜入試、編入学制度、科目等履修生制度、通信教育、昼夜開講制、夜間大学院、図書館の夜間や休日の開放等の形態で実施されている。
   大学は、リカレント教育の中核機関としての役割を認識し、特に、大学が本来もつ教育研究機能の開放に積極的に取り組むことが期待される。そのためには、職員の生涯学習に対する意識を高めること、大学開放を推進するための専門的知識の習得を図ることなどが必要である。さらに、現在行われている公開講座等の開設は、資金面での大学の負担が大きいため、大学開放が単発的になりやすく積極的な大学開放の妨げとなりかねないことから、この点について開放の在り方とともに検討が必要である。
   一方、勤労者がリカレント教育としての生涯学習活動に参加しやすくするために、企業等にあっては、例えば、在職したまま一定期間大学で学べるような研修休暇制度を設けることが望まれる。

3 生涯学習に関する教育研究機関の設置
  今後、大学がその教育機能を社会人へ開放し、リカレント教育の拠点としての機能を発揮していくためには、継続的な公開講座の実施、学習情報の提供、学習相談、大学開放の在り方や教育方法に関する調査研究等を行う生涯学習に関する教育研究機関(以下「教育研究機関」という。)の設置が望まれる。
  大学は、この教育研究機関の設置にあたって、地域の学習需要を考慮しながら積極的に取り組むことが期待される。
  そのために、現在県にある生涯学習に関する大学連絡会議を充実し、県が大学に教育研究機関の設置を促したり各大学間の連携を深めたりすることが重要である。

第3章 生涯学習推進センターの設置

 県は、県民への学習機会の提供や相談、学習需要の調査研究等を総合的、体系的に実施することが望まれる。生涯学習関連事業の実施主体や生涯学習関連施設の設置主体が行政、学校、企業、民間の生涯学習関連機関等とそれぞれ異なり、その事業内容も多岐にわたることから、県において生涯学習を総合的、体系的に推進していくために、その中核となる施設として生涯学習推進センターの設置が必要である。

1 生涯学習推進センターの機能
  生涯学習推進センターは、学習情報の提供、調査研究、支援者の養成や研修、開発したプログラムの提供等により、市町村を始めとする生涯学習関連機関を支援することが、その重要な機能として期待される。
  具体的には、次の機能が考えられる。
(1) 学習情報の提供と学習相談
    県民の希望する情報は、1.どこで、何が学べるかという施設と学習内容に関する情報、2.指導者に関する情報、3.生涯学習活動を行っている団体・サークルに関する情報、4.学習に関する情報をどこで得たらよいかという情報源に関する情報、5.学習したい内容の教材、資料に関する情報等がある。県は、県民の要望の高いこれらの情報を収集・整理し、絶えず更新することにより、的確で最新の情報を県民に提供するとともに、これらに関する相談に応ずる。
   そのためには、今日急速に進展を続けている情報化に対応したネットワークシステムにより、県下各地域の県民に情報を提供することができる機能が期待される。
(2) 調査研究
    生涯学習の推進にあたっては、県民のニーズを把握するための調査研究が必要である。調査研究の内容は、学習需要に関すること、学習内容に関すること、学習成果の評価に関することなどが考えられる。これらの調査研究、あるいは、学習機会の提供等にあたっては、大学等高等教育機関との連携が不可欠であろう。
(3) 支援者の養成と研修
    指導者や助言者といった学習活動の支援者は、学習者の意欲を高めたり、団体の活動の活性化を左右する重要な存在であるから、支援者の養成と研修は生涯学習推進センターの重要な機能の一つである。研修内容は、高度で専門的な情報や知識の習得と実践、支援者相互の交流等が考えられる。
(4) 学習機会の提供
    本センターにおいては、市町村や民間カルチャーセンターを始めとする多数の生涯学習関連施設で提供される学習機会とは異なり、支援者に対する高度で専門的、あるいは広域的で先導的な学習機会を提供することが考えられる。
    また、一般の学習者に対しては、実験的、先導的な内容を中心とする学習機会の提供が考えられる。例えば、生涯学習推進センターの各種機能を活用した実験的な学習機会や、これまで学習意欲をもちながら学習活動に参加しにくかった幼児を育てる親を対象にした、親と子が同一の施設でそれぞれ学習できるような先導的な学習機会等である。
    このような実験的、先導的な学習機会によって得られた結果を学習プログラムの開発に役立て、さらには、市町村等の生涯学習関連施設で活用していくことが期待される。
(5) 学習方法・学習プログラムの開発
    県民の多様な学習需要に対応するために、これまで中心であった講座方式による学習方法に加え、各種の情報機器等を積極的に活用した新しい学習方法や学習プログラムの開発が考えられる。
    また、学習機会の少なかった都市部以外の地域においても、都市部と同様の学習ができるような学習方法や学習プログラム等の開発も期待される。
(6) 学習機会の場と学習成果発表の場の提供
    学習機会の場と学習成果発表の場を提供できる機能を備え、学習者の利用に供していくことが必要である。
    なお、生涯学習推進センターに期待される機能として、県民の生涯学習活動に大きな役割を果たしている放送大学との連携・協力を行うことも考えられる。 

2 生涯学習推進センターの施設の整備と管理運営
  生涯学習推進センターに求められる機能を効率的に発揮できるように、施設・設備を充実し、県民のニーズを十分反映しうる組織と運営体制の整備を図ることが重要である。また、専門的で高度な知識や経験を有する専門職員の配置にも留意する必要がある。
  県は、早期の具体的計画の策定が望まれるので、生涯学習推進センターの建設計画に関する委員会等を設置し、県民の期待にこたえうる施設の設置に向けて、検討することが必要である。

おわりに

 本答申は、愛知県生涯学習審議会に諮問を受けた愛知県における生涯学習振興の基本方策について、長期的展望に立った種々の提言をした。
 いずれも重要な方策であるが、生涯学習社会の実現に向けて、その重要性を認識し、行政、学校、企業、民間の生涯学習関連機関等が力を合わせ、県をあげてこれら方策の展開に取り組んでいくことが必要である。
 また、生涯学習推進センターは、県の生涯学習振興の拠点となり、さらに、県下の市町村における同様の施設のモデルともなるべき施設であるので、県にあっては、具体的な計画にあたり、県民の期待に十分こたえられるような施設とすべく、関係者の意見を採り入れ進める必要がある。
 生涯学習社会実現への端緒は既に開かれている。21世紀に生涯学習社会を謳歌できるのは、一部の人々であってはならない。県民の誰もが、学ぶ楽しさ、仲間と生きる喜びを感じられるよう、行政が、県民には生涯学習活動への参加を、学校、企業、民間の生涯学習関連機関等には生涯学習の基盤整備を、繰り返し呼び掛けていくことを望むものである。