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多文化ソーシャルワーカーとしての軌跡・最終回

ページID:0232913 掲載日:2019年4月1日更新 印刷ページ表示

多文化ソーシャルワーカーとしての軌跡・最終回

多文化ソーシャルワーカーとして在住外国人の若者に伝えたいこと~あなたたちはわたしたちの希望の光です~

~日本で生まれ育った外国人の子ども、若者たちの現状についてどのように思いますか~

親の世代は3K労働に就くしかなかったという時代背景があります。親は、子どもには学歴をつけてやろうと努力し子どもを大学へ進学させます。そうやって日本人と同じように教育の機会を得た外国人の子どもは、「自分の状況は日本人の子どもが置かれている状況と何も変わらない。」と思っています。しかし、日本の企業は外国人を採用したがらない傾向にあります。子どもたちは、学歴があっても就職難なのは不況が原因ではなく外国人であることが原因であると分かると、親や日本を恨むようになってしまいます。

しかし私たちは、それは『差別』ではないのだと若者に伝える必要があります。日本の社会は入管法の改正後、外国人と共生しなければならないという急激な変化に対応しきれていないため、制度が追い付いていなかったり、外国人と共生するための知識が不足しているだけなのです。そのような状況を「差別」と捉え、思考停止するのではなく、今の社会を変えるように努力していく力を外国人の若者には身につけてほしいのです。

~例えば、どのように身近な社会を変えられると伝えていくべきなのでしょうか~

外国人お断りの企業であっても、履歴書を持参してちゃんと話をしてみるのです。面接で「日本語がうまいね。」と興味を持ってもらえることもあります。ポルトガル語やスペイン語など、外国語が話せることをアピールするなど外国人であることをPRしていけば、「日本語もポルトガル語もきちんと話せてすごいね。」と好感度がアップします。日本で育っている日系人の若者は、日本の文化に精通しているため、親の世代が持っていない知識が豊富にあります。それも強みです。

外国人だからと現状に負けていてはいけないのです。そこが戦いです。企業はよくわからずに、なんとなく外国人を敬遠していることのほうが多いのです。今の若者の最大の強みは、「失敗できる世代」であることなのです。親の世代は、仕事を手に入れ子どもに教育を受けさせることで精いっぱいだったので、失敗はできなかったのです。

若者に親の世代の歴史を伝え、前向きに社会を変えるように伝えていくことも、多文化ソーシャルワーカーの役割の一つだと思っています。

~ネイティブの多文化ソーシャルワーカーとして日々思うことはありますか?~

多文化ソーシャルワーカーがネイティブである必要はないです。会話は通訳を介していても、言葉が通じなくても、気持ちや努力で必ず何とかできます。お互いに学ぶ姿勢さえあれば、大丈夫です。ブラジルなど母国(外国)をよく知っているからというのではなく、自分が住んでいる国(日本)を愛し、地球をよくしたいという気持ちさえもっていれば、外国人、日本人の区別なく、共生できると思います。

時々、自国の人たちのことを「時間にルーズ」など、気楽な感じで他国の人たちに紹介する人がいます。自分の発言や意見が一国の印象を大きく変えてしまうのだという責任感を持ってほしいと思います。

~多文化ソーシャルワーカーとして大事なことは?~

多文化共生という考え方がまだ社会に浸透していません。多文化ソーシャルワーカーはパイオニアです。自分の職場から地域、社会へと共生の試みをしていくことが、まずは必要です。自分たちの職場のヴィジョンを確認し、皆で共有することが大切です。

ソーシャルワーカーは、相談者(クライエント)にたとえ恨まれても、きちんとリスクについて伝えていく必要があると思います。その伝え方には工夫が要りますが、たとえ日本での生活が困難であっても、クライエントに何でもやってあげないことが必要です。ソーシャルワーカーは自分の支援実績をアピールするのではなく、自立のために支援をしていくべきだと思います。

また、自分の所属する機関で、例えば病院などで患者さんのために戦うことは職場に居づらくなるなどハイリスクです。だからこそ、ソーシャルワーカーの身分の保障も大切だと思います。支援を通じて組織の中できちんとした専門職としての地位を築いていくことに貢献していくべきだと思います。

~多文化ソーシャルワーカーとして今後取り組んでいきたいことなどありますか?~

私の夢は、多文化青年会などを立ちあげ外国籍の若者の力を育成していくことです。若者は日本語や文化の吸収が早いため、地域参画がしやすいです。彼らは将来の光になれる存在です。親の世代とは違って多様な生き方があると思うのです。そんな彼らの未来が楽しみです。(おわり)