愛知県衛生研究所

第十六改正日本薬局方について

医薬品の新しい剤形が大幅に追加されました

2011年10月20日

第十六改正日本薬局方の写真

日本薬局方(以下「日局」)は、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事法第41条に基づき、厚生労働大臣が公示するもので、日本における医薬品の規格基準書となっています。1886年(明治19年)の初版以来、学術の進歩に伴い改正されてきましたが、2011年(平成23年)3月24日に第十六改正となる新しい日局(日局16)が公示され、同年4月1日から適用されました。

日局16の主な改正点

日局の役割は、医薬品全般の品質を総合的に保証するための規格及び試験方法の標準を示すとともに、医療上重要な医薬品の品質に係る判断基準を明確にすることにあります。日局16では、

等多くの項目が新規に収載され、また様々な項目が改正されました。詳しくお知りになりたい方は、厚生労働省"「日本薬局方」ホームページ"をご覧下さい。

新剤形の大幅追加

医薬品は、その成分が最も効果的・効率的に人体へ発揮されるよう錠剤、注射剤等様々な剤形で投与されます。日局には、医療上重要な剤形が製剤各条として収載され、その定義・試験法等が記載されています。近年製剤技術の進歩により、これまで規定されていなかった新しい剤形が開発、臨床応用されてきました。このため今改正では、剤形が28項目から71項目へ大幅に追加収載されました。各剤形は、まず経口、口腔内、注射等、投与経路・適用部位ごとに分類され、その分類の中で、特別な機能、特徴を持つ剤形が、錠剤、注射剤等主要な剤形ごとにグループ化されました。また、エキス剤、丸剤等8項目は、生薬に関連する製剤として別に分類されました。さらに各剤形の定義と適用すべき試験を整理する等、製剤各条が全面的に改正されました。

<剤形の大分類>
1.経口投与する製剤
2.口腔内に適用する製剤
3.注射により投与する製剤
4.透析に用いる製剤
5.気管支・肺に適用する製剤
6.目に投与する製剤
7.耳に投与する製剤
8.鼻に適用する製剤
9.直腸に適用する製剤
10.膣に適用する製剤
11.皮膚などに適用する製剤
12.生薬関連製剤

剤形の分類例 −錠剤の細分、グループ化−

医薬品製剤の中で最もよく使用される錠剤は、これまで製剤各条で「錠剤」として1つの剤形のみで定義されてきました。しかし、同じ錠剤でも様々な特徴をもった新しい剤形の開発が進んだため、今改正では、錠剤の剤形が大幅に細分化されました。日局16では錠剤は、経口投与して消化管で吸収されたり効果を発揮する製剤、口腔内で吸収されたり効果を発揮する製剤及び膣に適用する製剤の3つに分類され、製剤分類ごとにそれぞれ「錠剤」、「口腔用錠剤」及び「膣錠」として定義されました。さらに様々な特徴をもった新剤形が、各製剤分類の錠剤中に定義、細分類されました。例えば、経口投与する製剤に定義された「錠剤」には、「口腔内崩壊錠(口腔内で速やかに溶解又は崩壊させて服用)」や「チュアブル錠(咀嚼(そしゃく)して服用)」等新しく定義された剤形5項目が含まれることになりました。なお、「トローチ剤」はこれまで「錠剤」と別に定義されていましたが、今改正で「口腔用錠剤」の中に分類、定義されました。

日局15から日局16への錠剤の細分、グループ化の図

散剤と顆粒剤の定義変更

これまでの日局では、「散剤」は「医薬品を粉末又は微粒状に製したもの」、「顆粒剤」は「医薬品を粒状に製したもの」と定義され、ふるいを使用した粒度試験によりそれぞれ分類されてきました。今改正で、「散剤」は「経口投与する粉末状の製剤」、「顆粒剤」は「経口投与する粒状に造粒した製剤」と定義され、製法の違いにより分類されることになりました。この変更により、これまで「散剤」に分類されてきた微粒状の「細粒剤」などの造粒散剤は、「顆粒剤」に分類されることになります。ただし、これまで「散剤」として医薬品の承認を受けた造粒散剤は、これまでどおり散剤と称することができます。