愛知県衛生研究所

医薬品成分(エスタゾラム,グリベンクラミド)
が検出されたハーブ製品,漢方薬

―外国製健康食品に関する注意情報―

2007年3月26日

最近のいわゆる「健康食品」が原因と疑われる健康被害

花粉症によいと称される花粉加工食品の写真
図1.厚生労働省のホームページから転載

栄養補助食品やサプリメントといったいわゆる「健康食品」が原因と疑われる健康被害が多く発生しています。つい最近(2007年2月24日)も、花粉症によいと称される花粉加工食品「パピラ」(図1)を摂取した40代女性が、アナフィラキシー(急性アレルギー反応のひとつ)様症状を発現して、医療機関で診察を受けたことが、厚労省と和歌山県から発表されました。この製品は、スギの若い雄花の芽を採取・摘花後、蒸気殺菌、乾燥・粉砕してカプセルに充填したものです。患者は2月23日に同製品を1カプセル摂取し、約30分後に全身に蕁麻疹が出現して医療機関を受診しました。診療中に口腔内が腫脹して気管が閉塞し、意識不明状態に陥りましが、気道確保によって25日午後には意識を回復、快方に向かったということです。患者には花粉症の既往歴があり、摂取直後に全身発疹を呈したことから、スギ花粉抗原によるアナフィラキシーと見られています。製品とアナフィラキシー様症状の因果関係は不明ですが、製品はアレルギー症状を緩和する減感作を目的とした可能性があるため、薬事法上の医薬品に該当するとの見解が厚労省から示されました。このような健康食品は、有効性が確認されていないのに「病気の治療、予防ができる」かの認識を与え、これを信じて摂取すると正しい医療を受ける機会を失わせ、病気を悪化させるおそれがあります。当該製品は、販売停止及び回収を指導されました。

過去の薬事法違反事例

いわゆる「健康食品」は手軽に摂取できることも手伝って、店頭販売やインタ−ネット等による通信販売により広く流通し、その消費は年々増加し、「健康食品」ブームが高まっています。しかし「健康食品」の中には、その効果を高めるために故意かつ違法に医薬品の成分を添加したものがあり、これまでにもそのような違法かつ健康に危害を及ぼす恐れのある少なからずの「健康食品」の流通事例が報告されています(厚労省のウェブサイト)。こうした医薬品の成分を含んだ食品は、「無承認無許可医薬品」に該当し、薬事法違反物として、販売停止、回収などの行政処置が全国レベルで取られています。

愛知県では、県内の店舗で販売されているいわゆる「健康食品」とみられる製品の成分を分析し、「無承認無許可医薬品」の流通調査を実施(平成18年度実施件数12件)しています。過去7年間では計102品を調査し、4品からN-ニトロソフェンフルラミン(米国で1997年に使用禁止とされた食欲抑制剤フェンフルラミンのニトロソ化合物であり,発がん性も予測される危険な成分)、3品から甲状腺末(甲状腺ホルモンを含み生体の代謝を高め痩身効果もありますが、ホルモン作用が過剰となり健康食品としては非常に危険)、1品からデキサメタゾン(副腎皮質ホルモンの一種として炎症性の病気に用いられますが、大量服用中は感染症にかかりやすくなる)、1品からシルデナフィル(狭心症や高血圧の薬との併用により血管拡張作用が増幅される結果、重篤な症状が発生し、時としては死にいたる可能性がある)などが検出されています。もちろん、これらの「健康食品」は法律違反物として回収などの行政処置が全国レベルで取られています。

外国製健康食品に関する注意情報

一方、インタ−ネットなどによる個人輸入,海外旅行の手土産として、外国製健康食品を容易く購入し使用する機会が増えています。外国製健康食品の一部は海外で取り締まりを受けていますが、摘発されていない製品もかなり流通しているとみられます。日本人が知らないで利用するケースも多くなっていますので、今回は、カナダ、香港で最近公表されたハーブ製品、漢方薬に混入された医薬品成分に関する注意喚起情報を紹介します。

睡眠補助ハーブ製品に検出されたエスタゾラム

カナダ保健省( カナダ保健省(Health Canada)のウェブサイト(英語) 、2007年2月23日)は消費者に対し、エスタゾラムを含む「Sleepees」という製品を使用しないよう勧告しています。睡眠補助ハーブ製品として市販されている「Sleepees」には表示されていない医薬品成分エスタゾラムが含まれていました。

エスタゾラム(estazolam):ベンゾジアゼピン系の薬物で、日本では向精神薬として承認されていますが、ベンゾジアゼピンアレルギーのある人や重症筋無力症患者、睡眠時無呼吸患者は使用すべきではありません。また、妊婦に対してはどうしても必要な場合のみ使用し、高齢者や薬物濫用歴のある人は十分注意する必要があります。

「糖尿病に効く」健康食品に検出されたグリベンクラミド

グリベンクラミドを含有している漢方薬の写真
図2.香港衛生署のホームページ(英語)から転載

香港衛生署(香港衛生署のウェブサイト(英語)、2007年2月5日)は、糖尿病の経口剤(血糖降下剤)として治療に使われるグリベンクラミドを含有しているいわゆる漢方薬「Xiaokeshuping Jiangtangning Jiaonang(消可舒平降糖寧膠嚢)」(図2)を使用しないよう警告しています。この製品には、フェンフォルミン、ロシグリタゾンなどの糖尿病治療効果を有する医薬品成分も、同時に添加されていました。摂取した79歳の女性が低血糖を発症し、入院するという健康被害事例が報告されました。この製品は中国本土から入手されたようで、日本の特定保健用食品に相当する保健食品の登録を取り消すと発表されました。

フェンフォルミン(phenformin):以前は糖尿病の治療薬として用いられていましたが、副作用として重篤な乳酸アシドーシスを起こす可能性があり、米国では1977年に使用禁止となっています。

グリベンクラミド(glibenclamide):治療濃度域の狭い糖尿病治療薬で、医師による処方が必要です。血糖降下作用が強いので、決められた内容と量の食事を摂らないで服用を続けていると、低血糖症となり、意識障害を起こすことがあります。その他、吐き気や胃腸障害などの副作用があります。

ロシグリタゾン(rosiglitazone):糖尿病治療薬で、医師による処方が必要です。心不全を増悪あるいは発症させることがあるので慎重な服用が必要です。その他、頭痛やめまい、下肢の浮腫などの副作用があります。

「健康食品」と上手につきあうには

「健康食品」はあくまでも食品で、医薬品とは違います。いわゆる「健康食品」は、医薬品よりも作用が緩和で、有害作用もなく、しかも有用性について科学的根拠があると保証されたものばかりではありません。また、病気の治療・予防を目的とするものではないことから、医薬品とは異なり、製造販売に関する許可制度や「健康食品」そのものに関する規格基準も厳しく規定されておらず、副作用や薬物相互作用などの臨床上注意すべき評価も十分に管理されているとは言えません。製造工程での不純物の混入や、ハーブ類と有毒植物の取り違えの事故も発生しやすいと考えられています。消費者は由来の不明確ないわゆる「健康食品」の摂取をひかえることも必要です。

今回紹介した外国製ハーブ製品、漢方薬のなかに違法に添加された医薬品成分は強い副作用が出現する可能性があるものばかりです。日本では、勃起不全治療剤である医薬品「バイアグラ」の主成分シルデナフィル、医薬品「シアリス」の主成分タダラフィル、医薬品「レビトラ」の主成分バルデナフィルなどが混入された健康食品の回収、行政指導がなされています(厚労省のウェブサイト)。またやせに効果のあるとされている「健康食品」の中には、これまでに下剤や甲状腺ホルモン剤など生体に大きな影響を与える薬物が検出されたこともあります。このような「健康食品」について、消費者は十分に理解し、健康は「健康食品」の摂取等により安直に得られるものではなく、バランスの良い食生活や運動等、日常の生活習慣全体から得られることを認識すると共に、「健康食品」の摂取に際しては、上手に摂取することが大切であると考えられます。また健康食品等を個人輸入するときの注意事項については「健康食品の基礎知識」の「健康食品や外国製医薬品、化粧品等と上手につきあうために(厚生労働省作成2006年版)」を参考にして下さい。