愛知県衛生研究所

紙パック入り乳児用ミルク中にイソプロピルチオキサントンの混入

2005年12月9日

EU/RASFF(欧州連合の食品及び飼料に関する緊急警告システム)の2005年第48週(11月20日〜26日)の通告欄に「容器からの幼児用ミルクへのイソプロピルチオキサントン(ITX)の移染」と題してイタリアから22日と24日に各2件ずつ計4件の通告がありました。これらは既に本年9月に同国から通告された内容と同じであると思われます。更に第49週(11月27日〜12月3日)の通告欄にはイタリア及びスペインからそれぞれ3件ずつ計6件の同様な通告が掲載されています。

紙パック入りミルクのイラスト

これらの通告について外電情報を総合しますと、ITXはインクに配合されている化学物質で、このインクで印刷された紙パック容器のミルクから検出されたようです。食品メーカーは既に当該品の多くが出回っていたイタリア市場からのリコールを実施しており、併せてフランス、ポルトガル、スペイン等でも同メーカーによる回収が進められています。また食品容器メーカーは、乳児用紙パックについては9月にITXの使用を停止し、その他の紙パック容器への使用も段階的に停止するとコメントしています。

この事態にEFSA(欧州食品安全機関)は、「限られたデータに基づく評価ではあるが、検出されたITXの濃度範囲(ppbレベル)では恐らく人体に影響はないであろう。なお、健康リスクについて遅くとも来年3月までに最終的な意見書を取り纏める」といった内容のプレス発表をしました。

一方、英国食品基準庁は、EFSAのプレス発表翌日に、容器メーカーが乳児用紙パック印刷に本インクの使用中止を表明して1800時間(75日)経過していること、最新の知見(EFSAのプレス発表)に基づき赤ちゃんの食事内容を変更する必要はないこと、一部食品メーカーの紙パック入り乳児用液状製品ではITX汚染の可能性を否定できないが、固体製品では問題ないとする見解を発表しました。

当該製造者の発表、及び厚生労働省から本件について正式なコメントがないことから、当該品は日本に輸入されていないと思われます。

イタリアの所管省庁が9月にEU/RASFFに通告した食品と今回のそれらが同じものであったのか詳細は不明ですが、今回の事件はミルクそのものに問題があったのではなく、紙パック容器の印刷インクからの汚染事例であったこと、ITXの人の健康に関するデータが限られていること等食品衛生の観点からはいささか気になります。

何れにしても、EFSAが遅くとも来年3月までにITXの健康リスクについて最終的な意見を取り纏めますので、その報告を待ちたいと思います。

イソプロピルチオキサントン(ITX)とは:

紫外線オフセット印刷用インクに使用され、化学名はイソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、試薬としては2−及び4−イソプロピル体の混合で市販され、化学式C32H28O2S2、現時点で人体影響の報告はない。

EU/RASFF(Europian Union / Rapid Alert System for Food and Feedの頭文字、欧州連合の食品及び飼料に関する緊急警告システム)とは:

欧州連合域内の食品の安全確保対策の一環として、食品及び飼料に関する衛生情報を相互交換するシステムとして1979年に構築され、現在ではEU加盟25ヶ国及びノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの合計28ヶ国がネットワークにより結びつき、自国の食品不適格事例等を通告している。EFSA(European Food Safety Authorityの頭文字、欧州食品安全機関)が主導している。