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現在地 ホーム > あいち水循環再生基本構想 第5章 地域ごとの具体的な取組

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健全な水循環を目指して

第5章 地域ごとの具体的な取組

ページID:0275389 掲載日:2020年3月23日更新 印刷ページ表示

1.重点的な取組

 水循環再生の取組にあたっては、流域の上流から下流までの県民、事業者、民間団体、行政による連携・協働した継続的な取組が必要となります。

(1)地域区分

 川や海などの水質や水量、生態系、水辺の状況や課題は、地形等の条件や県民生活、経済活動などにより、それぞれの地域で異なることから、水循環再生の取組は、地域ごとに行うことが効果的・効率的であり、尾張地域、西三河地域、東三河地域を単位として取り組んでいきます。
地域区分

(2)特徴と課題

 取組の単位とした尾張地域、西三河地域及び東三河地域の、水循環の観点から見た地域的特徴と地域ごとの主な課題は次表のとおりです。
地域的特徴と地域ごとの主な課題
  尾張地域 西三河地域 東三河地域
特徴  木曽川によってつくられた広大な濃尾平野が拡がり、東部には尾張丘陵があり、南西部はゼロメートル地帯となり、南部には知多半島が伊勢湾に向って延びており、臨海部は工業地帯となっています。  矢作川が南北に貫き、上流では三河山地が形成され、下流の岡崎平野は農業が盛んな地域であり、近年では著しい工業化の進展がみられます。  豊川に沿って上流では設楽山地などが、下流では豊橋平野が形成され、豊橋平野から西に渥美半島が三河湾を囲むように延びています。従来の林業や農業に加えて、最近は沿岸部において貿易港としての重要性が増しています。
主な課題

・生活用水や農業用水などの水源の多くを木曽三川に依存している地域であり、県域を越えた広域的な連携による取組が必要です。

・里地里山の開発が進み、保水・かん養機能が低下するとともに、湿地などの動植物に影響が見られます。

・都市の中小河川は、自流水が少なく、河川流量が低下する非灌漑期の水質悪化や、護岸のコンクリート化など親水性のある水辺が減少し、人と水とのかかわりが希薄化しています。
また、都市域の雨水不浸透面積の増加により、都市型水害の発生が懸念されます。

・知多半島では、自流水の少ない小規模な河川が殆どであり、生活排水などで水質汚濁がみられます。

・閉鎖性海域である伊勢湾では、生活排水や産業排水などにより、水質の改善が進まず、人と水とのかかわりが希薄化しています。

・矢作川流域においては水源を確保するため、利水者による水源かん養林の保有などの先進的な流域保全活動やダムによる対応が図られていますが、下流域での工業・農業などの発展により水利用が進んでいるため、流域全体を通して安定した、水量の確保が必要となっています。

・都市域が拡大していることや、自流水が少ないことなどから、油ヶ淵流域などでは、生活排水により河川・水路の水質汚濁がみられます。

・閉鎖性海域である三河湾では、生活排水などによる汚濁負荷、干潟・浅場の減少などにより水質の改善が進まず、赤潮が発生しています。

・矢作川方式といわれる流域保全の先進地域として、上下流の交流など、人と水とのかかわりを育む取組が行われており、この流れを引き続き発展させることが必要です。

・この地域における水需要の多くを賄っている豊川の集水面積が狭いことから、渇水の頻度が高くなっているため、ダムによる対応を図るとともに、森林の整備・保全などにより水源かん養機能を高めることが必要です。また、豊川と天竜川は、利水協力が行われていることから、県域を越えた連携による取組も必要です。

・生活排水などの影響を受ける中小河川では水質汚濁がみられます。

・閉鎖性海域である三河湾の湾奥部では、水質の改善が進んでおらず、赤潮、苦潮(貧酸素水塊)が発生しており、アサリへの影響もみられます。生活排水や産業排水などからの汚濁負荷が主なものであり、水質浄化の機能を有する干潟・浅場の減少もみられます。

・県下最大の農業・畜産地帯であり、引き続き環境保全対策を進める必要があります。

 

(3)取組内容

 水循環再生のためには、水循環の課題が地域ごとに特徴的であることから、「きれいな水」など4つの水循環の機能で連携した取組や、「森林の整備・保全」などの特定のテーマで連携した取組など、さまざまな取組を、県民、事業者、民間団体、行政が連携・協働して、各々の地域ごとに実施します。
 また、水循環の広域性を考慮して、全県域で実施する取組や地域にまたがる取組、県域を越えた取組も併せて実施します。
 特に、地域ごとの水循環の課題を解決するため実施する重点的な取組について、その視点と主な内容は次のとおりです。

ア 尾張地域

取組の視点
 都市・産業用水を支える水源の森の保全を行うとともに、里地里山を含む都市域における保水・かん養機能の向上、親水性のある水辺の整備、ウォーターフロントの開発などのまちづくりや豊かな海づくりを通じて、人と水とのふれあいを創造します。
主な取組
1.木曽三川広域連携プログラム
 木曽三川に関連する地域の広域的な連携により効率的な水利用の徹底や水源の森の保全を行う。
○ 節水や循環使用の徹底などによる効率的な水利用の推進
○ 広域的な住民参加による、間伐など森林整備の推進
○ 水源基金等による県域を越えた森林の整備・保全の推進
2.里地里山の適切な保全活用プログラム
 里地里山の適切な保全と活用により地下水かん養機能を向上させるとともに、生態系の保全を図る。
○ 海上の森の保全と活用など県内の里山保全の推進
○ アダプト制度の活用による里地保全の推進
○ 農地の出し手と受け手との利用調整による耕作放棄地の解消
3.水が感じられるまちづくりプログラム
 都市部における親水性に富んだ水辺の整備や透水性舗装等により保水・かん養機能の向上を図る。
○ 多自然型川づくり等による生態系の保全や水辺景観の保全
○ 親水性のある身近な水辺の整備の推進
○ 湧水や地下水によるせせらぎなど環境用水への適正な利用の推進
○ 学校や事業場におけるビオトープ整備の推進
○ 雨水貯留浸透施設整備の推進
4.伊勢湾活性化プログラム
 港や周辺施設の利用促進や水質浄化によりウォーターフロントの活性化と漁業振興を図る。
○ 海に親しむウォーターフロント整備の推進
○ 緩傾斜護岸などによる海辺の整備
○ 干潟・浅場・藻場の保全・再生
○ 栽培漁業の推進と増殖場の整備
○ 海砂に代わる干潟造成材として循環資源材の利用推進
○ 水産業体験学習の推進
○ 赤潮等の監視及び広報
○ ヘドロの浚渫・有効利用の推進
○ 下水道の整備などの生活排水対策、産業排水対策などの推進

イ  西三河地域

取組の視点
 森林や農地でかん養された水は、下流の都市などの生活・産業用水や漁業を支えていることから、水源かん養機能の向上や保水機能の維持など、矢作川流域共同体として、上下流が一体となった取組を実施します。
主な取組
1.森林の整備・保全プログラム
 流域住民が一体となった連携のもとでの、県域を越えた森林の整備・保全により水源かん養や水質浄化機能の向上を図る。
○ 他県と一体となった上流域の水源かん養に配慮した広域的な森林整備の推進
○ 下流住民など広域的な住民参加による、間伐など広域的な森林整備の推進
○ 水源基金等による県域を越えた森林の整備・保全の推進
○ 節水や循環使用の徹底等による効率的水利用の推進
○ 三河材の利用促進
○ 林業の担い手育成の推進
2.農地の活性化プログラム
 農地の保全を通じて、保水・かん養機能の維持向上を図る。
○ 産地情報の発信などによる地産地消の促進
○ 農地の出し手と受け手との利用調整による耕作放棄地の解消など農地の保全の推進
○ 農業生産・出荷用の機械・施設等の整備支援
3.身近な川とのふれあいプログラム
 油ヶ淵や中小河川の水質浄化や水辺の整備等により、人と水との豊かなふれあいを図る。
○ 下水道の整備などの生活排水対策、産業排水対策などの推進
○ 農業団体との連携による適正施肥など環境保全型農業の推進
○ 矢作川を利用した上下流交流イベントの開催
○ 親水公園整備の推進
○ 県民参加の水質モニタリングなど情報の共有による県民との連携推進体制の確立
○ 水辺マップの作成による環境学習の推進や水文化の保存・伝承
○ 学校や事業場におけるビオトープ整備の推進
4.漁業振興プログラム
 干潟・浅場の保全や藻場の保全・再生、水質浄化等により漁業の振興を図る。
○ 干潟・浅場・藻場の保全・再生
○ 栽培漁業の推進
○ 海砂に代わる干潟造成材として循環資源の利用推進
○ 覆砂・浚渫の推進
○ 川や海の一斉清掃
○ 水産業体験学習の推進
○ 赤潮等の監視及び広報

ウ 東三河地域

取組の視点
 森林の整備・保全などによる森を活性化させる森づくり、海の自然浄化機能向上などによる海を活性化させる海づくりを通じて、水源かん養機能の向上と水質の改善を図ります。そして森と海をつなぐ川を豊かにする取組を広域的に実施します。
主な取組
1.天竜・豊川水系広域連携プログラム
 天竜・豊川水系に関連する地域の広域的な連携により節水意識の高揚や水源の森の保全を行う。
○ 流域全体での節水意識の高揚
○ 広域的な連携による利水の安定的な確保
○ 県域を越えた広域的な住民参加による、間伐など森林整備の推進
2.奥三河の森づくりプログラム
 林業の採算性の向上を通じた森林の手入れ不足の解消により、水源かん養機能を向上させ、生活や産業用水を確保する水源の森づくりを行う。
○ 三河材の利用促進
○ 公共工事での間伐材の利用促進
○ 過疎対策の推進
○ 林業の担い手育成の推進
○ 水源基金等による森林の整備・保全の推進
3.森と海をつなぐ豊かな川づくりプログラム
 川の豊かさを実現するため、効率的な水利用の徹底や、下水道の整備、後背地での農業からの負荷削減による水質改善などを推進する。
○ 下水道の整備などの生活排水対策、産業排水対策などの推進
○ 工業用水の循環使用など効率的水利用の推進
○ 農業団体との連携による適正施肥など環境保全型農業の推進
○ 畜産廃棄物のバイオマスエネルギー利用等による環境負荷の削減
○ 農地の出し手と受け手との利用調整による耕作放棄地の解消など農地の保全の推進
○ 学校や事業場におけるビオトープ整備の推進
4.海づくりプログラム
 海の自然浄化機能の向上や、海に人を誘い、水産業が盛え、マリンスポーツでにぎわう三河湾の活性化を図る。
○ 干潟・浅場・藻場の保全・再生
○ 栽培漁業の推進と魚礁の整備
○ 覆砂・浚渫の推進
○ 海砂に代わる干潟造成材として循環資源材の利用推進
○ アサリ放流稚貝の安定供給
○ 水産業体験学習の推進
○ 赤潮等の監視及び広報
○ 海浜緑地の整備の推進
○ マリンスポーツの振興