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重要文化財愛知県朝日遺跡出土品の保存修理について
重要文化財愛知県朝日遺跡出土品
弥生時代を代表する集落遺跡朝日遺跡からは、膨大な量の遺物が出土しています。これらの出土品うち、特に重要な2028点は「東海地方を代表する弥生時代の大規模集落の出土品一括として、弥生時代の多様な生産、流通の様相、精神生活を復元するうえで極めて重要な資料である」との理由により、平成24(2012)年9月に国の重要文化財に指定されました。
朝日遺跡出土品の特徴としては、集落出土の一括として2000点を超える数が指定されていること、材質としては、土製、石製、木製、骨角牙貝製、金属製、ガラス製と、弥生時代に用いられた材質のほぼ全てがそろっていることがあげられます。また、稲作・漁労・狩猟といった生業に関わるもの、玉作りをはじめ木工、骨角器製作などものづくりに関するもの、銅鐸・卜骨・鳥形木製品など祭祀・信仰に関わるものなどは、弥生時代の生活、文化、技術、信仰を復元するうえで、この地域だけでなく日本の歴史にとっても重要な資料です。
保存修理事業
朝日遺跡は昭和40年代から発掘調査が長い期間続けられてきました。指定された出土品のなかには、発掘調査から長い年月がたち、その保存状態に問題を抱えているものもあります。
文化財は、適切な状態で保存し後世に残していくとともに、その価値を広く共有できるよう活用していく必要があります。愛知県では、国の補助を受けて、重要文化財朝日遺跡出土品の保存修理事業を行い、劣化の著しい出土品を順次修理することで、文化財を永く保存・活用することができるよう努めています。
土器・土製品の保存修理
遺跡でみつかる土器のほとんどは、われて破片となって出土します。これらをパズルのようにつなぎ合わせ、接着剤や石膏を用いて、元の形へと復元します。図や写真など記録を作成した後は、そのまま収蔵庫に保管されます。しかし、復元後長い年月が経つと、接着剤や石膏による接合部が劣化し、形にゆがみが生じたり、壊れてしまうこともあります。
平成30年度は、赤彩土器、高坏形土器、壺形土器、銅鐸形土製品など、6点の保存修理を行いました。
保存修理の工程
- 解体・クリーニング
接合部の接着剤を除去し、破片の状態に戻します。
- 再接合
すべての破片を並べ、接合部を確認します。
- 接合・樹脂充填
接合し、欠損部を樹脂で補います。
- 補彩
樹脂で補った部分を彩色し目立たなくします。
平成30年度保存修理が完了した土器・土製品
左から 壺形土器/高坏形土器/赤彩土器(広口壺)
赤彩土器(台付壺)/赤彩土器(台付広口壺)/銅鐸形土製品