愛知県衛生研究所

小麦中カビ毒デオキシニバレノールに暫定基準値設定!

平成14年5月21日付で厚生労働省は、赤カビ病菌(フザリウム属)が産生するカビ毒デオキシニバレノール(DON)について、行政上の指導指針として小麦中に存在する暫定基準値を1.1ppmと設定されました。これは、市場に流通する小麦の安全性を確保するために出された通知です。

その背景には、(国連)食料農業委員会(FAO)と世界保健機構(WHO)の合同食品規格計画(コーデックス委員会)において食品中DONの安全性評価が行なわれ、かつ、昨年国内で実施された麦類中DONの実態調査で、国産小麦から0〜2.25ppm(平均0.39ppm)、輸入小麦から0〜0.74ppm(平均0.1ppm)、はだか麦から0〜0.05ppm(平均0.006ppm)等の残留実態が報告されたことがあります。この程度のレベルの汚染によって直ちに人の健康障害がおきることはありませんが、DON摂取による健康リスクを低減し、健康被害を未然に防止するために今回の基準値が設定されました。これに基づいて市場に流通する小麦の安全性を確保するよう通知が出されたものです。

愛知県では、平成元年から県内で流通する食品の安全性確保の視点から、食品に含まれる有害物質の調査(モニタリング)のひとつとして、DONとニバレノール(NIV:DONと同様に赤カビ病菌が産生するカビ毒)の検査を10年以上継続しています。検査の対象は、毎年20件程度のトウモロコシ、大豆、小豆、そばなど多種類の輸入穀物としています。

麦の写真

その結果、小麦(玄麦)からは17検体中 4検体(23.5%)からDONが0.01〜0.28ppm検出されました。しかしながら、検出されたDONの平均値は0.11ppmと、今回設定された暫定基準値1.1ppmの約1/10の値であり、問題となる汚染は見られませんでした。また、NIVは1検体から0.04ppmが検出されただけでした。その他、作物としてはトウモロコシからが62検体中29検体(46.8%)と最も高頻度に検出されましたが、その濃度は0.01ppmから0.18ppmの範囲、平均値は0.04ppmと、小麦の暫定基準値と比べても問題となるような高濃度の汚染は見つかっていません。

参考リンク:衛研技術情報 2002年 VOL.26 NO.3「フザリウム毒デオキシニバレノール、ニバレノール」