カビ毒「デオキシニバレノール(DON)」と「ニバレノール(NIV)」について
2026年3月19日
デオキシニバレノール(DON)とニバレノール(NIV)は、フザリウム属菌が麦類などに感染した際に産生するカビ毒(マイコトキシン)で、トリコテセン類に分類されます。両者は水やアルコールに溶けやすく、加熱調理ではほとんど分解されないため、食品加工で除去することが難しいという特徴があります。日本では、麦類の食の安全性において最もリスク管理が必要なカビ毒とされています。
さらに、フザリウム属菌がDONを産生する過程で生合成される3-アセチル-DON、15-アセチル-DONや、植物体内でDONから変換されるDON-3-グルコシドなど、いくつかの類縁体の存在も知られています。
DON・NIVの規制と毒性について
日本では、DONについて平成14年に小麦に対して暫定基準値(1.1 mg/kg)が定められましたが、令和3年に基準が見直され、小麦中のDONの規格基準(1.0 mg/kg)が新たに設定されました。これにより、実質的に規制がより厳格化されています。NIVについては現時点で基準値はありませんが、リスク管理の観点から低減対策が推奨されています。
食品安全委員会の評価によると、DONは動物実験で嘔吐、摂餌量減少、体重増加抑制、免疫系への影響が確認されています。高用量では胎児毒性や催奇形性も報告されています。また、マウスを用いた試験からTDI(耐容一日摂取量:ヒトが一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)は1 μg/kg体重/日とされています。NIVも同様に動物実験で免疫系への影響や体重増加抑制が認められ、TDIは0.4 μg/kg体重/日と設定されています。
一般的な日本人では食品からのDON、NIVの摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いとする評価結果が出ています。
当所での取り組み
愛知県衛生研究所では、県内で流通する食品の安全性確保の視点から、平成元年より30年以上にわたり、DONとNIVの検査を継続しています。また近年、類縁体である3-アセチル-DON、15-アセチル-DON、DON-3-グルコシドを測定できる分析法を構築しました。これらの類縁体は食品衛生法上の基準値は設定されておらず、行政検査としての位置づけにはありませんが、今後のモニタリングに活用できるよう体制強化を進めています。