メラミン添加による ペットフード原材料の擬装
2007年6月7日(更新日:2025年12月16日)
2007年5月8日、中国国家品質監督検験検疫総局(現:国家市場監督管理総局)は、江蘇省と山東省の2社が製造し北米に輸出したペットフード原材料に、工業用化学物質「メラミン」が違法に添加されていたと発表しました。
この事件については、日本国内ではそれほど報道されませんでしたが、食品の安全・安心の観点から情報提供します。
事件の概要
米国及びカナダでは同年3月以降、これらの原料を用いたペットフードを食べた数百匹の犬や猫が原因不明の腎障害で死亡していました。米国食品医薬品庁(FDA)の追跡調査により、中国から原材料として輸入された小麦グルテンにメラミンが含まれていたことが判明したため、中国側に調査を依頼していました。
FDAは、小麦グルテン以外に、中国から輸入されたコメタンパク質濃縮物にもメラミンおよびシアヌル酸などの関連化合物が含まれていたことを確認しています。 このコメタンパク質濃縮物はペットフード製造に使用されたあと、その残渣も家畜飼料に転用されていました。
さらにFDAは各種製品約880検体を検査し、そのうち500検体以上からメラミンを検出しましたが、メラミン陽性検体はいずれも中国の上記2会社の2つに由来するものでした。
病因はメラミンとシアヌル酸の化学反応物
当時の米国獣医師会(AVMA)の報告によると、リコールされたペットフードを食べたペットの腎臓内に、メラミンとシアヌル酸が反応して形成された不溶性結晶が確認されました。
その結晶は、シアヌル酸70%とメラミン30%で構成された物質であったこと、ネコの尿サンプルにシアヌル酸とメラミンを混ぜたところ、類似の結晶が短時間で形成されたことも併せて発表されました。
これにより、メラミン単独では毒性が低いものの、シアヌル酸と同時ばく露することにより結晶が形成され、腎臓の尿細管を閉塞し、急性腎不全を引き起こしたと考えられています。
メラミン添加の目的
メラミンは分子量あたりの窒素含量が高く(約66.7%)、見かけ上のタンパク質量を増加させる欺まん材として不正に使用されました。これは、食品や飼料の品質検査において、窒素量をもとにタンパク質量を分析していることを悪用したものです。
日本国内の対応と規制状況
当時、厚生労働省はFDAの発表を受けて、中国産植物性タンパク質に対する検疫強化を通知しました。その後の調査では、該当する汚染原材料の輸入実績は確認されていません。
現在では、メラミンはEUのREACH規則*1によりSVHC(高懸念物質)に指定され、日本でもその影響を受けて規制対応が進んでいます。一定濃度以上のメラミンが含まれる製品や化学薬品については、企業に対してSCIPデータベース*2への届出義務や情報伝達義務が課されています。
*1REACH規制:EUの化学物質管理における、化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規制
*2SCIP(スキップ):SVHC含有情報を登録するデータベース
メラミン及び関連化合物について
メラミン(2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)は白色単斜晶系の結晶で、主にメラミン樹脂の原料として用いられています。
| 基本骨格:1,3,5-トリアジン | 化学名 | R1 | R2 | R3 |
|---|---|---|---|---|
![]() |
メラミン | NH2 | NH2 | NH2 |
| シアヌル酸 | OH | OH | OH | |
| アンメリン | OH | NH2 | NH2 | |
| アンメリド | OH | OH | NH2 |
