愛知県衛生研究所

メタミドホスについて

2008年9月18日

概要

野菜などの農作物を害する昆虫を殺すための有機リン系殺虫剤です。動物の中枢神経系のシナプスに存在するアセチルコリンエステラーゼの正常な働きを阻害する作用を持ち、例えば人が経口摂取した場合の急性中毒としては、瞳が極端に小さくなる縮瞳、胃けいれん、下痢、嘔吐(おうと)といった症状を呈します。また、メルカプタン臭というタマネギの腐ったようなにおいがします。

分子式:
C2H8NO2PS
分子量:
141.1
構造式:
メタミドホスの構造式の図

規制

日本では、農薬取締法により農薬としての登録はされていません。ただし、一部の外国において稲作などに使用されているため、食品衛生法ではポジティブリスト制度の導入に伴う残留基準値が農作物、畜産物、加工品に設定されています。残留基準値は、農作物等に付着した農薬を摂取しても人の健康に影響がない量として、各農作物ごとに定められています。

メタミドホスを検出する方法としては、厚生労働省からアセフェート、オメトエート及びメタミドホス試験法(農産物)、加工食品に残留するメタミドホスなど有機リン系農薬試験法が通知されています。

なお、輸入食品監視業務(命令検査およびモニタリング検査)におけるメタミドホスの残留農薬違反事例は平成18年7月以降平成20年8月までに30件以上発生しています。

毒性

慢性毒性の指標として、一日摂取許容量「Acceptable Daily Intake (ADI)」があります。メタミドホスのADIは2008年内閣府食品安全委員会において評価がなされ、0.0006mg/kg体重/日が設定されています。この値は国際機関であるCodex設定値の0.004mg/kg体重/日よりもかなり厳しく設定されています。

ADIとは「人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響をおよぼさないと判断される量 」として、「一日当たりの体重1kgに対するmg数(mg/kg体重/日)」で表されます。このADIに、人の平均体重を乗じた値が、人ひとりあたりの一日摂取許容量になります。体重50kgの人の一日摂取許容量は0.0006mg/kg×50kg=0.03mgとなります。これは、例えば、メタミドホスが0.03μg/g(ppm)残留している食品を毎日1kg摂取する量に相当しますので、仮にこのような残留食品を数回摂取したとしても、通常の喫食状況からみると、一日摂取許容量を超えることはまれと思われます。

一方、中国産冷凍ギョウザによるメタミドホス混入事件のように、人体に重大な影響がでるほどの高濃度の有害物質が混入している場合は、急性毒性を把握することが大切です。急性毒性の指標として急性参照用量「Acute Reference Dose (ARfD)」があります。ARfDとは、「人が24時間または、それより短時間の間の経口摂取によって、健康に悪影響を示さないと推定される量」を示します(食品安全委員会農薬評価書「メタミドホス」より)。通常、急性参照用量は、単回投与からおおむね1ヶ月以内の短期の毒性試験で、有害な影響のない量を安全係数で割って算出します。メタミドホスの急性参照用量は0.003mg/kg体重/日が設定されています。体重50kgの人の急性参照用量は0.003mg/kg×50kg=0.15mgとなります。