強壮用「健康食品」にご用心!
─新たにシルデナフィル類似成分などが検出されました─
2006年7月28日
厚生労働省は平成18年7月25日、全国の店舗やインターネットで販売されているいわゆる「健康食品」とみられる製品の成分を分析した結果について発表しました(表)。強壮効果をうたった「健康食品」では、134品のうち27品、すなわち5個に1個以上の「健康食品」から法律に違反してバイアグラの成分であるシルデナフィルなどが検出されました。また、発見を逃れるため化学構造を少し変化させたものもありました(図)。さらに、やせ効果をうたった「健康食品」に関しては66品を調べましたが、今回の調査では医薬品成分は検出されませんでした。この調査は、昨年9月から今年3月にかけて各都道府県に買い上げを依頼し、国立医薬品食品衛生研究所(東京)で分析されたものです。なお、同調査において愛知県内で買い上げられた製品「PHOENIX」からも、シルデナフィルと同様な作用のあるタダラフィルが検出されました。
また、愛知県では今回の国の調査とは別に、以前から同様な調査を実施し(平成17年度実施件数12件)、過去5年間では計77品を調査し、4品からN-ニトロソフェンフルラミン(米国で1997年に使用禁止とされた食欲抑制剤フェンフルラミンのニトロソ化合物であり,発がん性も予測される危険な成分)、3品から甲状腺末(甲状腺ホルモンを含み生体の代謝を高め痩身効果もありますが、本来のホルモン作用が過剰となり健康食品としては非常に危険)、1品からシルデナフィルが検出されています。もちろん、これらの「健康食品」は法律違反物として回収などの行政処置が全国レベルで取られています。
今回検出されたシルデナフィルは医薬品「バイアグラ」の主成分、タダラフィルは医薬品「シアリス」、バルデナフィルは医薬品「レビトラ」の主成分であり、三者とも勃起不全治療剤です。シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルは特定部位における血管拡張作用により、勃起不全・勃起障害の治療に用いる医薬品成分ですが、副作用として血管拡張作用による頭痛、ほてり、視覚障害が報告されています。さらに重要なことは、狭心症や高血圧の薬として用いられるこれらの物質とは作用機序の異なる血管拡張剤である硝酸剤及び酸化窒素供与剤(ニトログリセリン等)との併用により血管拡張作用が増幅される結果、降圧作用が増強され、重篤な症状が発生し、時としては死にいたる可能性があることです。また、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルに類似した化学構造を有するヒドロキシホモシルデナフィル、ノルネオシルデナフィル、ホンデナフィル。キサントアントラフィル、アミノタダラフィル、プソイドバルデナフィルは、シルデナフィルと同様の作用を有すると考えられ、健康被害が発生するおそれが否定できないと思われます。
これらの製品については、販売中止、回収等の必要な措置がとられ、現時点では、医薬品成分を含有していることが確認された製品による健康被害事例は報告されていません。しかしながら、健康被害が発生するおそれが否定できませんので、これらの製品を服用されている方は、直ちに服用を中止し、製品の服用が原因と疑われる症状を示している場合には、医療機関への受診や最寄りの保健所まで相談して下さい。
「健康食品」はあくまでも食品で、医薬品とは違います。いわゆる「健康食品」は、医薬品よりも作用が緩和で、有害作用もなく、しかも有用性について科学的根拠があると保証されたものばかりではありません。また、病気の治療・予防を目的とするものではないことから、医薬品とは異なり、製造販売に関する許可制度や「健康食品」そのものに関する規格基準も厳しく規定されておらず、副作用や薬物相互作用などの臨床上注意すべき評価も十分に管理されているとは言えません。消費者は由来の不明確ないわゆる「健康食品」の摂取をひかえることも必要です。
今回検出された強壮効果を期待させ、違法に添加された医薬品成分は強い副作用が出現する可能性があるものばかりです。また、やせに効果のあるとされている「健康食品」の中には、これまでに下剤や甲状腺ホルモン剤など生体に大きな影響を与える薬物が検出されたこともあります。このような「健康食品」について、消費者は十分に理解し、健康は「健康食品」の摂取等により安直に得られるものではなく、バランスの良い食生活や運動等、日常の生活習慣全体から得られることを認識すると共に、「健康食品」の摂取に際しては、個人の責任において上手に摂取することが大切であると考えられます。