愛知県衛生研究所

魚・貝の毒

2006年5月11日(2022年12月一部改訂)

(A)貝類の毒

二枚貝の毒

アサリなどの二枚貝を食べて中毒を起こす毒の中で代表的なものは麻痺性貝毒と下痢性貝毒ですが、記憶喪失性貝毒、神経性貝毒、アザスピロ酸もあります。麻痺性貝毒と下痢性貝毒の毒は、無毒の二枚貝類が渦鞭毛藻という有毒プランクトンを摂取した結果、貝に蓄積されるものです。貝毒は、貝の体内では中腸腺と呼ばれる消化器に局在することが一般的です。

愛知県では、毎年有毒プランクトンが増加しやすい3~5月にかけて麻痺性および下痢性貝毒の調査を実施し、県を代表する水産物であるアサリを含む二枚貝を安全に供給できるよう貝類の毒化状況を監視しています。貝毒発生時には出荷自主規制※により、毒化した二枚貝が出荷されない体制となっています。

愛知県の貝毒情報は、愛知県 農業水産局水産課 貝毒情報でご覧になれます。

愛知県の貝類出荷自主規制基準
むき身の麻痺性貝毒
4マウスユニット/gを超えた場合
〈1マウスユニット:20gのマウスを15分間で死に至らしめる毒力〉
むき身の下痢性貝毒
0.16mgOA当量/kgを超えた場合〈OA:オカダ酸〉

麻痺性貝毒とは

麻痺性貝毒はAlexandrium属等の有毒渦鞭毛藻が主に生産する強力な神経毒であり、二枚貝が原因プランクトンを捕食することで毒化します。毒成分の基本骨格は、サキシトキシンという化学兵器にも指定されている猛毒と同じものになります。また、毒成分によって毒性は大きく異なり、三河湾では比較的毒性の低いC1、C2という貝毒成分が見られます。

その薬理作用はふぐ毒のテトロドトキシンと同じで、神経細胞のナトリウムチャンネルをブロックして細胞外からのナトリウムイオンの流入を阻害するため、まず始めに運動神経麻痺が起こり、それが次第に全身へと広がって最終的には呼吸麻痺により死に至ります。

下痢性貝毒とは

下痢性貝毒原因プランクトンのディノフィシス属のプランクトンは、三河湾ではほとんど見られません。毒成分としては、ディノフィシストキシン、オカダ酸などであり、下痢をひきおこし、また吐気、腹痛、嘔吐を伴うこともあります。

巻貝の毒

ツブガイ(ヒメエゾボラ、エゾボラモドキが代表的)の唾液腺に含まれているテトラミンによる貝毒で、症状として視力の低下やめまいなどを伴う場合があります。また、同じ巻貝のバイガイ(エゾバイなど)では、スルガトキシンといわれる視覚異常(視力低下や瞳孔散大など)を引き起こす貝毒が報告されています。

(B)魚類の毒

魚を食べて中毒を起こす魚といえば、まずフグが思い浮かぶでしょうが、中毒を起こす毒魚はかなり多くあります。フグのほかにもシガテラ毒を含むバラフエダイやイシガキダイ、パリトキシン様毒を含むアオブダイなどの毒魚が挙げられます。また、卵巣を食べると胃腸障害をおこすナガズカ、ニゴイ等の魚があり、この中毒を魚卵中毒とよびます。