愛知県衛生研究所

ふぐによる食中毒について

2009年3月2日

本年1月26日に山形県の飲食店でフグを食べて7名の方が病院に搬送されるという食中毒事件が発生し、2名が重体となりました(下段記事参照)。さらに、2月7日には、大分県のスーパーで誤って売られたフグの卵巣を食べた2名が中毒症状をおこして入院したという事件が発生しています。幸いなことにいずれも死亡例はありませんでした。

「フグ中毒で1人が重体」新聞記事

フグは昔から美味な魚として食されてきましたが、同時に非常に強力な毒を有していることが知られています。フグによる食中毒発生状況は最近10年、全国で年間平均35件発生し、患者数は50名となっており、毎年数名の死者が出ています。愛知県でも平成9年と17年に1名ずつの死者が出ています。

ふぐのイラスト

フグ毒はテトロドトキシンという毒素で、その毒性は青酸カリのおよそ1,000倍といわれています。中毒症状は、唇や舌のしびれが早ければ食後20〜30分から遅くとも3時間程度で発症し、次いで指先のしびれを感じるようになります。重症例では、知覚麻痺、言語障害や呼吸困難の後、血圧降下で死亡する場合もあります。フグ毒は加熱や消化酵素では分解せず、治療薬もないので、医療機関では呼吸不全や血圧低下を防ぐ対症療法を行うことになります。

フグの処理に関して、各都道府県での対応は異なりますが、愛知県では「愛知県ふぐ取り扱い条例」に基づき届出をした施設で「ふぐ処理師」の資格を持った人が取り扱うこととなっており、素人調理は行ってはならないことを念頭におく必要があります。(詳細は愛知県ホームページ「ふぐについて」をご覧ください)

フグを調理して食べる習慣は、わが国以外でもあるようですが、刺身(てっさ)や鍋もの(てっちり)などは、既に世界中に定着した刺身や寿司などとならんで、誇るべきわが国伝統の食文化でもあります。愛知県はトラフグの漁獲量が全国1位の県です。冬の味覚のフグは今が旬です。適正に処理された店で安全なフグを楽しんでみてはいかがでしょうか。