○人身安全対処事案対応要綱の制定

令和6年8月29日

生人・総務・務警・生総・地総・刑総・交総・備総発甲第162号

この度、人身安全対処事案の定義等を見直したことに伴い、別記のとおり人身安全対処事案対応要綱を制定し、実施することとしたので、その適正な運用に努められたい。

なお、人身安全対処事案対応要綱の制定(平成28年生子・生総・刑総・務警・総務・地総・交総・備総発甲第214号)は、廃止する。

別記

人身安全対処事案対応要綱

第1 趣旨

この要綱は、人身安全対処事案に対して、迅速かつ的確に対応するために必要な体制を確立するとともに、その対応に関し必要な事項を定めるものとする。

第2 定義

この要綱における用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。

(1) 人身安全対処事案 恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案、特異行方不明事案、児童虐待事案、高齢者虐待事案、障害者虐待事案及び非定型事案をいう。

(2) 恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案 恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案への対応要領の制定(令和3年生人・生総・務住・地総・刑一・刑総発甲第159号)に定める恋愛感情等のもつれに起因する各種のトラブル又は事件のうち、被害者、被害者の親族その他関係者(以下「被害者等」という。)に危害が及ぶおそれのある事案をいう。

(3) 特異行方不明事案 行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号)第2条第2項に規定する特異行方不明者に係る事案をいう。

(4) 児童虐待事案 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童虐待に係る事案をいう。

(5) 高齢者虐待事案 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)第2条第4項に規定する養護者による高齢者虐待及び同条第5項に規定する養介護施設従事者等による高齢者虐待に係る事案をいう。

(6) 障害者虐待事案 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)第2条第6項に規定する養護者による障害者虐待、同条第7項に規定する障害者福祉施設従事者等による障害者虐待、同条第8項に規定する使用者による障害者虐待及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第40条の3第1項に規定する精神科病院において業務従事者による障害者虐待に係る事案をいう。

(7) 非定型事案 (2)から(6)の事案以外で、主管課が明確でなく、人の生命及び身体に急迫した危険が及ぶおそれがあり、人身の安全を早急に確保する必要が認められる事案をいう。

(8) 指定対処事案 (2)から(7)の事案及びこれらの類型が複合する事案のうち、生活安全部長が指定する事案をいう。

(9) 要確認事案 事案内容から、直ちに急迫性は認められないものの、加害者と被害者等の関係性から人身安全対処事案に発展するおそれが認められる事案をいう。

第3 人身安全対処事案の特性

人身安全対処事案は、被害者等に危害が加えられる危険性及び切迫性を正確に把握することが困難である一方、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが極めて高いという特性を有する。

第4 基本方針

1 人身安全対処事案への対応は、人の生命及び身体を守る誇り並びに使命感を持って各部が連携し、警察の総力を挙げて積極的に取り組むものとする。

2 行政措置を優先する考え方を排除し、被害者等に危害が加えられる危険性又は切迫性に応じ、積極的な検挙措置等による被害者等の安全確保及び被害者と加害者の関係の断絶を最優先とするものとする。

3 被害者等の避難、身辺の警戒等執り得る措置を確実に行い、被害者等の保護を徹底するものとする。

第5 対処体制

1 警察署

(1) 対処責任者

ア 警察署に対処責任者を置き、警察署長をもって充てる。

イ 対処責任者は、被害者等の安全確保を最優先し、危険性及び切迫性を的確に判断して人身安全対処事案に対処すること。

(2) 対処補助者

ア 警察署に対処補助者を置き、生活安全課長、刑事課長(生活安全刑事課長を含む。)及び当番責任者等(愛知県警察処務規程(昭和51年愛知県警察本部訓令第6号)に規定する当番責任者、当直長及び統括責任者をいう。)をもって充てる。

イ 対処補助者は、対処責任者の指揮を受け、人身安全対処事案に対処すること。

(3) 優先的対処要員

ア 対処責任者は、早期に組織の総合力を発揮できる体制を確立するため、人身安全対処事案に優先的に対処する職員(以下「優先的対処要員」という。)をあらかじめ指定すること。

イ 優先的対処要員は、対処補助者の指揮を受け、人身安全対処事案に対処すること。

(4) 人身安全対処事案への対処

対処責任者は、人身安全対処事案に対処する職員を、対処補助者及び優先的対処要員に限定することなく、必要な体制を確立して対処すること。

2 警察本部

(1) 統括責任者

ア 警察本部に統括責任者を置き、刑事部参事官兼生活安全部参事官をもって充てる。

イ 統括責任者は、人身安全対処事案について、統括的な指揮、調整及び指導に当たること。

(2) 人身安全対処初動指揮官

ア 警察本部に人身安全対処初動指揮官を置き、捜査第一課人身安全対処初動指揮係調査官をもって充てる。

イ 人身安全対処初動指揮官は、警察署の初動対応について、統括責任者の指揮を受け、人身安全対処事案に対処すること。

(3) 初動指揮チーム

ア 人身安全対処初動指揮官の下に、初動指揮チームを置き、人身安全対策課、少年課、捜査第一課及び機動捜査隊の警察官をもって充てる。

イ 初動指揮チームは、人身安全対処初動指揮官の指揮の下、警察署の初動対応について、必要な指導、助言等を行うこと。

(4) 初動支援チーム

ア 初動指揮チームの下に、初動支援チームを置き、人身安全対策課及び機動捜査隊の警察官をもって充てる。

イ 初動支援チームは、警察署が行う被害者等の保護対策、被疑者の検挙等に対し、初期的な支援を行うこと。

第6 対応要領

1 警察署の対応要領

(1) 相談等への対応

対処責任者は、人身安全対処事案に係る相談、110番通報等(以下「相談等」という。)の対応については、危険性又は切迫性の判断、事件化のための擬律判断等を的確に行うため、必要に応じて、生活安全部門を担当する警察官及び刑事部門を担当する警察官に、共同で聴取させること。

(2) 速報

ア 対処補助者は、警察署において人身安全対処事案を認知したときは、対処責任者及び人身安全対策課長(初動指揮チーム経由。以下この(2)において同じ。)に直ちに報告すること。

イ 対処補助者は、既に認知及び対応中の事案に関し、被害者等に危害が加えられる危険性又は切迫性が高まる可能性がある事象を新たに認知したときは、直ちに対処責任者及び人身安全対策課長に報告すること。

ウ 対処補助者は、人身安全対処事案であると直ちに認定できるものだけにとらわれることなく、あらゆる可能性を想定して幅広く対処責任者及び人身安全対策課長に速報すること。

(3) 事態の掌握

対処責任者は、人身安全対処事案又はこれに発展するおそれのある事案を認知したときは、表面的な事情だけでなく、その背後にある事情の把握に努めるとともに、当該事案に関連する相談の有無を調査し、及び集約し、全体像を掌握した上で危険性及び切迫性を評価し、適切に対処すること。

(4) 検挙措置

対処責任者は、原則として、刑罰法令に抵触する事案については、検挙措置により加害行為の防止を図ること。

なお、被害者に被害の届出の意思がないときは、過去の事例から被害者等に生命の危険が及び得ることを十分に説明し、被害者等に被害の届出の働き掛け及び説得を行うこと。この場合において、被害者等が被害の届出を行わないときであっても、当事者双方の関係性を考慮した上で、客観的証拠があり、逮捕の必要性が認められるときには、加害者の逮捕を始めとした強制捜査を行うことを積極的に検討すること。

(5) 被害者等の保護等

ア 対処責任者は、被害者等に危害が加えられる危険性又は切迫性が高いと認められるときは、被害者等を速やかに安全な場所へ避難させること。ただし、やむを得ない事情により避難させることができないときは、保護体制を確立し、身辺警戒等の保護対策を確実に講ずること。

なお、被害者等に危害が加えられる危険性若しくは切迫性を否定できないとき又は評価することが困難であるときは、危険性又は切迫性が認められるものとみなして必要な措置を講ずること。

イ 被害者等の保護対策については、平素から管内の自治体等と連携し、対処体制を確立しておくこと。

(6) 関係警察署との情報共有

対処責任者は、人身安全対処事案に関係する場所が複数の警察署の管轄区域に及ぶときは、関係警察署長と連携を密にして、確実に情報共有すること。

(7) 人身安全対処事案の継続的な管理

対処責任者は、人身安全対処事案を継続的に管理し、当該事案の再発、被害者等の避難状況等の経過を把握すること。特に、指定対処事案のうち、児童虐待事案については少年課長と、児童虐待事案以外の事案については人身安全対策課長と緊密に連携し、当該事案を継続的に管理すること。

(8) 人身安全対処事案の終結

対処責任者は、人身安全対処事案について、その後の危険性が認められないと判断したときは、児童虐待事案にあっては少年課長、児童虐待事案以外の事案にあっては人身安全対策課長の指導及び助言を受けた上で、事案終結の適否を判断すること。ただし、指定対処事案については、生活安全部長の指導及び助言を受けること。

(9) 要確認事案への対応

対処責任者は、要確認事案について、人身安全対処事案に準じて適切に対応すること。ただし、事案の終結については人身安全対策課長又は少年課長の指導及び助言を受けることを要しない。

(10) 確実な記録化

対処補助者又は優先的対処要員は、人身安全対処事案の対応について、警察安全相談等・苦情取扱システム(警察安全相談等・苦情取扱システム運用要綱の制定(平成25年務住・総情発甲第2号)に定める警察安全相談等・苦情取扱システムをいう。)に登録するとともに、事案ごとに別に定める要領により確実に記録すること。ただし、行方不明事案については、行方不明事案情報管理業務(行方不明事案情報管理業務実施要領の制定(令和6年生人発甲第30号)に定める行方不明事案情報管理業務をいう。)により確実に記録すること。

2 警察本部の対応要領

(1) 速報の受理

ア 人身安全対策課長は、警察署から1の(2)の速報を受けたときは、事案の危険性及び切迫性を判断し、当該事案に対して講ずるべき初動措置について指導、助言等を行うこと。

イ 人身安全対策課長は、速報を受けた事案のうち、特に危険性又は切迫性が高いと認められるものについては、統括責任者に速報して指揮を受けること。

(2) 初動支援チームの派遣

人身安全対処初動指揮官は、必要に応じ、人身安全対処事案に対処する警察署に初動支援チームを派遣すること。

(3) 警察本部執行隊の支援

統括責任者は、危険性又は切迫性が高い人身安全対処事案を認知したときは、自動車警ら隊長、鉄道警察隊長、第一交通機動隊長、第二交通機動隊長、高速道路交通警察隊長及び機動隊長に対し、一時的な支援を要請することができる。

(4) 関係警察署等との連携

ア 統括責任者は、人身安全対処事案に関係する場所が複数の警察署の管轄区域に及ぶときは、関係警察署長と緊密な連携を図ること。

イ 統括責任者は、人身安全対処事案に関係する場所が複数の都道府県に及ぶときは、関係都道府県警察と確実に情報を共有し、迅速かつ的確に対処すること。

3 支援要員の派遣

(1) 要請

対処責任者は、人身安全対処事案において、被害者等の保護対策の長期化、保護対象が複数存在する等により、大規模な保護体制が必要となるなど自所属のみでは対応することが困難なときは、統括責任者(人身安全対策課長経由)に支援要員の派遣を要請することができる。

(2) 決定

(1)の要請を受けた統括責任者は、その必要性を判断した上で、派遣を決定すること。

(3) 派遣

ア (2)の決定をした統括責任者は、各部長に対し、支援要員の派遣を要請すること。

イ アの要請を受けた各部長は、部内の警部補以下の階級にある者を支援要員として派遣すること。

(4) 支援要員の活動

支援要員は、派遣された警察署の対処責任者の指揮を受けて活動すること。

人身安全対処事案対応要綱の制定

令和6年8月29日 生人・総務・務警・生総・地総・刑総・交総・備総発甲第162号

(令和6年8月29日施行)

体系情報
第4編 生活安全/第1章 生活安全/第6節 ストーカー対策
沿革情報
令和6年8月29日 生人・総務・務警・生総・地総・刑総・交総・備総発甲第162号