○拳銃射撃訓練における衛生管理対策要綱の制定
令和6年9月6日
務教発甲第168号
この度、拳銃射撃訓練における鉛粉じんによる健康障害を防止するため、拳銃射撃訓練における衛生管理対策要綱を別記のとおり制定し、令和6年9月9日から実施することとしたので、その適正な運用に努められたい。
別記
拳銃射撃訓練における衛生管理対策要綱
第1 目的
この要綱は、拳銃射撃訓練(以下「射撃訓練」という。)における、職員の健康管理、訓練環境の整備その他の衛生管理対策を定め、もって職員の鉛粉じんによる健康障害を防止することを目的とする。
第2 準拠
射撃訓練における衛生管理対策については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)の規定によるほか、この要綱に定めるところによる。
第3 定義
この要綱における用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。
(1) 職員 警察官及び拳銃を取り扱う業務に従事する警察職員(愛知県警察一般職非常勤職員等の身分、勤務管理等に関する要綱の制定(令和2年務警発甲第55号)に定める一般職非常勤職員、臨時的任用職員、任期付採用職員及び臨時補助職員を除く。以下同じ。)をいう。
(2) 学校射撃場 愛知県警察学校内に所在する射撃場をいう。
(3) 岡崎射撃場 愛知県岡崎警察署内に所在する射撃場をいう。
(4) 実射訓練指揮官 拳銃・警棒等の使用及び取扱要綱の制定(平成27年務警・総装・務教・務監発甲第68号)に定める実射訓練指揮官をいう。
(5) 訓練立会責任者 拳銃・警棒等の使用及び取扱要綱の制定に定める訓練立会責任者をいう。
(6) 拳銃特別訓練 拳銃訓練のうち、警務部長が別に定める訓練をいう。
(7) 特別訓練員 拳銃特別訓練に従事する警察官をいう。
(8) 主任健康管理者 愛知県警察職員健康管理規程(令和5年愛知県警察本部訓令第6号)に定める主任健康管理者をいう。
第4 射撃場の衛生管理体制
1 管理責任者
(1) 学校射撃場及び岡崎射撃場に管理責任者を置く。
(2) 管理責任者は、学校射撃場にあっては警察学校長を、岡崎射撃場にあっては教養課長をもって充てる。
(3) 管理責任者は、射撃場における衛生管理対策に関する事務を統括する。
2 管理主任者
(1) 学校射撃場及び岡崎射撃場に、管理主任者を置く。
(2) 管理主任者は、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)第60条に規定する鉛作業主任者技能講習を修了した警察官(妊娠中(妊娠の可能性がある場合を含む。)、出産後1年以内又は哺育(授乳)中の女性警察官を除く。)のうちから、学校射撃場にあっては警察学校長が、岡崎射撃場にあっては教養課長が指名するものをもって充てる。
(3) 管理主任者は、管理責任者を補佐し、射撃場における射撃訓練に従事する職員に対する衛生管理上の指示、換気装置の点検、保護具の使用状況の監視、射場内の換気及び鉛粉じんの発散防止その他射撃場における衛生管理のための措置を行うこと。
第5 健康安全教育
1 採用時教養における健康安全教育
警察学校長は、新たに採用された警察官に対し、鉛粉じんによる健康障害を防止するために必要な教育を実施すること。
2 担当業務変更時における健康安全教育
管理責任者は、新たに実射訓練指揮官及び訓練立会責任者(以下「訓練指揮官等」という。)並びに特別訓練員を指定したときは、これらの者に対し、鉛粉じんによる健康障害を防止するために必要な教育を実施すること。
第6 射撃訓練実施上の衛生管理対策
1 遵守事項
管理責任者は、次に掲げる職員の区分に応じて、それぞれ次に掲げる事項を遵守させること。
ア 射撃訓練に従事する全ての職員の遵守事項
(ア) 保護具の着装
射撃訓練及び拳銃の手入れに従事するときは、防じんマスク、ゴーグル、ゴム手袋等の保護具を確実に着装すること。
(イ) 手洗い及びうがいの徹底
射撃訓練又は拳銃の手入れの終了後はもとより、必要に応じて有害金属除去剤、爪ブラシ等による手洗い及びうがいを徹底すること。
(ウ) 飲食及び喫煙の禁止
射場内で飲食及び喫煙をしてはならない。
なお、射撃訓練又は拳銃の手入れに従事したときは、射場外においても手洗い及びうがいを行わずに飲食及び喫煙をしてはならない。
(エ) 手への鉛粉じんの付着防止
拳銃の手入れ、撃ち殻薬きょうの回収等の作業を行うにあたっては、ゴム手袋を着装することにより、鉛粉じんが手に直接付着することを防止すること。
(オ) 足部に付着した鉛粉じんの除去
射場から出る際は、有害金属除去剤を含む水溶液により湿らせた足拭き用マットを使用し、足部に付着した鉛粉じんを除去すること。
(カ) 衣類に付着した鉛粉じんの除去
射撃訓練の終了後は、塵埃除去機等を使用して、衣類に付着した鉛粉じんを除去すること。
(キ) 換気時間の確保
採点及び標的の修正作業は、実射後、射場の換気に必要な時間を確保した上で実施すること。
イ 訓練指揮官等及び特別訓練員の遵守事項
(ア) 射場内の滞在時間の抑制
鉛粉じんの曝露を軽減するため、射場内に滞在する必要のないときは射場の外に出るなど、滞在時間の抑制に努めること。
(イ) 二次汚染の防止対策
射撃訓練中は、ジャンパー等の訓練衣を着装することにより、衣類に鉛粉じんが付着することを防止するとともに、訓練衣と通勤用の衣類とを隔離して保管すること。
ウ 女性警察官の遵守事項
妊娠中(妊娠の可能性がある場合を含む。)、出産後1年以内又は哺育(授乳)中の女性警察官は、射撃訓練に従事してはならない。
2 女性警察官に対する配意事項
管理責任者は、女性警察官が射撃訓練に従事するときは、十分な換気を行うとともに、同時に射撃する人数を抑制するなど、訓練環境に特段の配意をすること。
第7 環境測定等
1 環境測定の実施
管理責任者は、射撃場の環境について作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)に定める方法により、年に1回以上、空気中における鉛の濃度を測定すること。
なお、射撃場の換気装置等に係る設備の変更が行われたときは、その都度測定すること。
2 測定結果の評価
管理責任者は、1の測定結果について、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)に基づき、作業環境の管理の状態に応じ、第1管理区分、第2管理区分又は第3管理区分に区分することにより評価を行うこと。この場合において、警察学校長は、当該評価の区分を教養課長に報告(術科指導室経由。以下同じ。)すること。
3 測定結果の評価に基づく措置
管理責任者は、2の評価の結果、第3管理区分に区分されたときは、直ちに施設、設備及び訓練方法の点検を行い、施設の整備、設備の設置、訓練方法の改善その他訓練環境を改善するために必要な措置を講ずること。この場合において、警察学校長は、当該措置の内容を教養課長に報告すること。
4 警察本部長への報告
教養課長は、2の区分及び3の措置の内容について、速やかに警察本部長に報告すること。
5 警察庁への報告
警察本部長は、4の報告を受けたときは、速やかに警察庁長官官房人事課長に報告するものとする。
6 射撃場の周辺環境への配意
管理責任者は、射撃場からの排気及び排水について、必要に応じて環境調査を行うなど、周辺環境の汚染の防止に十分配意すること。
第8 職員の健康管理
1 健康診断の受診
主任健康管理者は、訓練指揮官等及び特別訓練員について、半年に1回以上、医師による健康診断を受診させること。
なお、人事異動等により新たに訓練指揮官等及び特別訓練員となった者についても、同様に健康診断を受診させること。
2 健康診断の項目
1の健康診断の受診項目は次のとおりとする。
ア 業務経歴の調査
イ 作業条件の簡易な調査
ウ 鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査並びにオ及びカに掲げる項目についての既往の検査結果の調査
エ 鉛による自覚症状又は他覚症状と認められる症状の有無の検査
オ 血液中の鉛量の検査
カ 尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査
3 健康診断の結果に基づく医師からの意見聴取
主任健康管理者は、1の健康診断が行われた日から3か月以内に、当該健康診断の結果に基づく医師からの意見聴取を行うこと。この場合において、管理責任者は、射撃訓練に従事することが健康の保持のために適当でないと医師が認めた職員を、医師が必要と認める期間、射撃訓練に従事させてはならない。
4 結果等の報告
主任健康管理者は、3の意見聴取により、射撃訓練に従事することが健康保持のために適当でないと医師が認めた職員の健康診断の結果等について、教養課長に報告すること。
5 警察本部長への報告
教養課長は、4の報告を受けたときは、速やかに警察本部長に報告すること。
6 警察庁への報告
警察本部長は、5の報告を受けたときは、速やかに警察庁長官官房人事課長に報告するものとする。
第9 訓練環境の整備
1 射撃場の計画的な整備
管理責任者は、射撃場について、環境測定の結果等を踏まえ、換気装置の改修その他必要な衛生管理対策を計画的に講ずること。
2 衛生管理対策に必要な装備品等の整備
管理責任者は、次に掲げる装備品等について整備に努めること。
ア 保護具等
射撃訓練に従事する職員が使用する防じんマスク、ゴーグル等の保護具、訓練指揮官等及び特別訓練員が使用するジャンパー等の訓練衣等
イ 射撃場に備え付けるべき備品
塵埃除去機、工業用掃除機、洗濯機、足拭き用マット、有害金属除去剤等
3 射撃場の清潔の保持
(1) 射場内の清掃
射撃訓練を行ったときは、射撃訓練の終了後に1回以上、工業用掃除機を用いて射場内を清掃すること。
(2) 鉛の回収作業を行う場合の留意事項
管理責任者は、鉛の回収作業を行う場合は、鉛が堆積している場所を湿らせるなどの措置を実施した後、回収作業に従事する職員に全面型防じんマスク、労働衛生保護衣類等を着用させることにより、鉛粉じんの吸入防止に特段の注意をすること。
なお、回収した鉛については、鉛がこぼれ、又は粉じんが発散するおそれのない有蓋の容器に収納し、及び保管すること。
第10 関係所属長との連携
管理責任者は、この要綱に基づく衛生管理対策の推進に当たって、関係所属の長と緊密な連携を図ること。