ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 組織からさがす > あいち産業科学技術総合センター > 自動車の電動化や軽量化に貢献するアルミニウム合金板の絞り成形技術を開発しました ~産業技術センターの技術支援により企業が開発~

本文

自動車の電動化や軽量化に貢献するアルミニウム合金板の絞り成形技術を開発しました ~産業技術センターの技術支援により企業が開発~

ページID:20230929 掲載日:2023年9月29日更新 印刷ページ表示
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに9 産業と技術革新の基盤をつくろう

   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市。以下「センター」という。)は、各種試験評価機器を活用し、企業の方々の新技術や新製品開発、モノづくりの現場で発生する様々な課題解決を支援しています。
   この度、センターの技術支援により、テクノエイト株式会社(瀬戸市。以下「テクノエイト」という。)が、成形が難しいアルミニウム合金板の絞り成形※1技術を開発しました。本開発により、アルミニウム合金板の絞り深さが、従来と比べて約1.6倍に向上しました。
   近年、自動車の電動化や軽量化のため、各種自動車部品にアルミニウム材料の適用が進んでおり、このような部品への技術展開が期待されます。
   今後もセンターでは、地域企業への総合的な技術支援を通じて、付加価値の高いモノづくりを支援していきます。

1 開発の背景

   近年、自動車の電動化や軽量化のため、重い鉄鋼材料から軽いアルミニウム材料への置換が進んでいます。しかし、アルミニウム材料は鉄鋼材料と比べて成形時に割れやすいという課題がありました。
   センターでは、サーボプレス機※2を活用して、企業のプレス技術の高度化を支援してきました。自動車部品のプレス加工メーカーであるテクノエイトは、自社の絞り成形技術を更に高めて顧客ニーズに対応するため、センターが所有するサーボプレス機とその活用に関する知見及び、大同大学(名古屋市南区)の技術シーズ「部分軟化成形法※3」に着目し、2022年度「新あいち創造研究開発補助金※4」の採択を受け、今回の技術開発に着手しました。

2 開発内容

(1)部分軟化成形法を活用したアルミニウム合金板の絞り成形技術
   本開発では、絞り成形が難しいA6061-T6※5アルミニウム合金板の、角筒(かくとう)絞り成形を開発対象としました。また、絞り成形は以下の1~3の手順で行いました。
1 CAE※6による成形性や軟化範囲の検討
   事前にCAEで絞り成形のシミュレーションを行い、変形が大きく、割れが発生しそうな部分を予測する。
2 サーボプレス機による部分軟化加工(図1)
   温度制御した金型をサーボプレス機に取り付け、予測した部分を金型で挟み込み、瞬間的に加熱する。加熱することで、絞り成形で大きく変形する部分の靭(じん)性(せい)※7が改善され、割れが生じにくくなる。
3 汎用プレス機による角筒絞り成形(図2)
   部分軟化加工したアルミニウム合金板を、汎用プレス機で角筒絞り成形する。

1
​図1 部分軟化加工

2
​図2 角筒絞り成形

   本開発では、部分軟化加工に金型とサーボプレス機を用いました。サーボプレス機による成形時の動作を工夫することで、短時間での処理が可能となり、生産性の確保を実現しました。また、部分軟化処理を実施しない場合と比較して、絞り深さが約1.6倍に向上する結果が得られました(図3、図4)。

3
​図3 角筒絞り成形品(従来品)

4
​図4 角筒絞り成形品(開発品)

(2)研究開発体制
   今回の開発は、センター、テクノエイト、大同大学の3者による産・学・行政の連携により推進しました(図5)。
   センターは、サーボプレスでの軟化処理条件、軟化処理品の品質評価方法や成形メカニズムなど、成形品質向上に関する技術指導を行いました。
   テクノエイトは、アルミニウム合金板絞り構造の設計・開発、部分軟化成形法の開発品への適用検討を行いました。
   大同大学は、今回の技術シーズ「部分軟化成形法」やCAE解析手法に関する指導を行いました。
   また、県の「新あいち創造研究開発補助金」により、開発に必要な試作金型、周辺部材や計測機材等を導入しました。

5
​図5 開発体制と支援内容

3 今後の予定

   本開発内容の詳細と開発品を、2023年10月5日(木曜日)及び10月6日(金曜日)に愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」(常滑市)で開催される、「あいちモノづくりエキスポ2023」で展示します。また、2023年度に採択された「新あいち創造研究開発補助金」により、更なる品質向上とDC/DCコンバーターケース※8など自動車の電動化対応部品への適用を目指し、今後も開発を進めていく予定です。​

○あいちモノづくりエキスポ2023
   日時:2023年10月5日(木曜日)、10月6日(金曜日)  午前10時から午後5時まで
   場所:愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」展示ホール C
            常滑市セントレア5丁目10番1号  電話:0569-38-2361
   参加費:無料
   主催:あいちモノづくりエキスポ2023実行委員会
   URL:https://aimexpo.jp/

4 問合せ先

(技術支援、県の取組に関すること)
   あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
   金属材料室(担当:津本、花井、太田)
   刈谷市恩田町一丁目157番地1
   ダイヤルイン:0566-45-5644
(開発成果に関すること)
   テクノエイト株式会社
   営業技術部 技術開発室 新製品開発グループ(担当:田口、後岡(うしろおか))
   瀬戸市暁町1番地
   電話:0561-48-3750
(技術シーズ「部分軟化成形法」に関すること)
   大同大学 工学部 機械工学科
   教授  西脇 武志
   名古屋市南区滝春町10番地3
   電話:052-612-6651

 

【用語説明】
※1  絞り成形
​   平らな板から底のある容器形状を作る加工方法。一般的にはプレス機械に工具(金型)を取り付けて加工を行う。特に丸い容器底形状に加工する方法を「円筒絞り成形」、四角い容器底形状に加工する方法を「角筒(かくとう)絞り成形」と呼ぶ。

1
​円筒絞り成形の例

※2  サーボプレス機
   数値制御可能なサーボモータを使用することで、加圧部の速度や移動量などを自由に設定できるプレス機。これにより、従来のプレス機では実現できないような高度な成形を行うことができる。

2
サーボプレス機(産業技術センターに設置)

※3  部分軟化成形法
   高温に加熱された金型と金属材料を接触させ、金型からの熱伝達により材料を短時間で加熱させて軟化させた後、必要な成形を行う手法。CAE等を活用して、軟化させる部位をうまく選ぶことで、成形性を向上させることができる(大同大学 西脇 武志 教授の技術シーズ)。
※4 新あいち創造研究開発補助金
   愛知県が行う補助制度。次世代自動車や航空宇宙など、将来の成長が見込まれる分野において、企業等が行う研究開発・実証実験を支援し、本県における付加価値の高いモノづくりの維持・拡大につなげることを目的としている。
※5 A6061-T6
   JIS(日本産業規格)にて定められているアルミニウム材料の一種。建材や自動車など、様々な製品に使用されている。素材状態にて強度を高めるための熱処理が施されている。
※6 CAE
   Computer Aided Engineering(コンピュータ支援による設計)の略。コンピュータを活用して仮想的に実験や試作を行い、製品の性能予測や生産性の検討などを行うツール。
※7 靭性
   材料の粘り強さのこと。鉄鋼材料は比較的靭性が高く、ガラスなど割れやすいものは靭性が低い(脆い)。
※8 DC/DCコンバーターケース
   電気自動車やハイブリッド車のバッテリーから供給される電圧を各種車載電装機器で使用可能な電圧に変換するための機構をDC/DCコンバーターと呼び、この機構を収納し、車体の必要な部位に設置、固定するための部材をDC/DCコンバーターケースと呼ぶ。

このページに関する問合せ先

あいち産業科学技術総合センター産業技術センター
金属材料室(担当:津本、花井、太田)
刈谷市恩田町一丁目157番地1
ダイヤルイン:0566-45-5644