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広域担当の普及員情報(農業気象)

ページID:0043634 掲載日:2011年8月25日更新 印刷ページ表示

農業気象の情報

早急に求められる施設園芸と秋冬露地野菜の高温対策について(2010年10月)

近年の夏期高温化の影響

 温暖化に伴う夏期の高温は、多くの園芸作物で問題となり始めている。

 施設野菜のトマトでは、8月上中旬定植の抑制栽培において落花や尻腐れ果の発生や青枯病が、イチゴでは、育苗期の炭疽病が大きな問題となっている他、9月上旬定植で2番花房(えき花房)の着果遅延が目立つようになってきた。いずれの野菜も、単価安や雇用労働の有効利用のため、作期を前進化させる傾向にある。

 施設花きでは、活着不良、生育障害、開花遅延、立ち枯れ等病害発生など、収量や品質に悪影響がある。花き生産は、周年安定供給が特徴であるため、高温対策は重要な課題である。

 露地の秋冬野菜キャベツでは、収穫期が10月から6月まで広がり、秋冬キャベツと初夏どりキャベツによる二期作の面積が増加傾向にある。温暖化により最も早い7月下旬から8月上旬の播種では高温による発芽不良が問題となっている。


技術対策と今後の取組

 
施設園芸では遮光や細霧冷房が導入されつつあるが、費用や手間の問題で普及はごく一部に留まっている。広域指導グループでは、普及課、試験研究、企業、大学と国の受託事業(産学官連携経営革新技術普及強化促進事業)に取り組んでいる。

 野菜ではイチゴで遮熱資材による外部遮光(15万円/10a)で2~4℃、遮熱資材とミストファン
(100万円/10a)の併用では、さらに4℃程度昇温防止が可能であることが実証でき、農家もその効果を実感している。

 花きではバラにおいて、冬期の省エネのために多くの農家で導入されているヒートポンプの夜間冷房とともに、日中ミストファンを併用する実証(図)や、農家が自作した安価なパッドアンドファン(外気を強制的に吸引する際、湿らせたパネルを通過させ、気化熱で冷却させる方法)の現地調査と解析を行い、体系化を進めている。

 露地キャベツでは、地域の育苗センターでの冷蔵の他、ビニールなどで仕切った小さな室に、播種したトレイを積み上げ、スポットクーラー(20万円/台)で1~2日冷房して催芽する方法が普及しつつあり、部会によっては3割程度普及している。

 いずれの方法も、効果が見込めるものの初期投資が必要である。急激に進展する温暖化に対して産地の生産安定を図るためには、省エネと同様早急に普及を図ることが必要で、補助事業化の検討も含めて対策に取り組む必要がある。

ミストファンによるバラ温室内の温度分布

ミストファンによるバラ温室内の温度分布(豊川市)
 (左:ミスト噴霧前、右:ミスト噴霧直後)


暑熱による農作物への影響(2010年9月)

 本年夏の暑さは、7、8月で猛暑日が21日、真夏日が52日、最低気温が25℃を超える熱帯夜も39日(名古屋気象台観測データ)と大変厳いものとなっている。特に7月、8月の下旬は、平年の気温を3℃近く上回り、農作物にも影響が出ている。
 以下に主要な品目の状況についてまとめた。

7月8月の気象概況(2010年)
 最高気温(℃)最低気温(℃)平均気温(℃)真夏日(日)うち猛暑日(日)熱帯夜(日)
7月上旬30.5(+1.4) 22.9(+1.5) 26.2(+1.4) 

7月中旬30.8(+0.6) 24.3(+1.7) 26.9(+1.0) 
7月下旬35.1(+3.2) 26.2(+2.5) 30.1(+2.9) 10 
8月上旬33.4(+0.8) 25.8(+1.8) 28.9(+1.3) 
8月中旬33.6(+1.1) 26.0(+1.9) 29.2(+1.5) 
8月下旬35.3(+3.6) 26.5(+3.1) 29.9(+3.0) 11 11 
作 物
○水稲
 水稲の外観品質は、出穂後20日間の気温の影響が大きい。本年のコシヒカリの出穂期は、7月20日前後であり、出穂後20日間が高温に推移したため、白未熟粒などの品質低下が懸念される。
 また、早生品種の「ゆめまつり」及び「あさひの夢」、中生品種「あいちのかおりSBL」は8月中下旬に出穂期を迎えており、今後も高温が続くと、これら品種の外観品質低下も心配される。

○ダイズ
 ダイズは8月中旬から9月上旬が開花期であり、この時期に土壌が乾燥すると花ぶるいが起き、収量低下を招く。この対策として、乾燥の激しい地域では、8月27日頃からかん水が行われている。今後も乾燥には注意が必要である。

野 菜
○キャベツ・ブロッコリー・ハクサイ
 育苗については概ね順調であるが、一部で高温による発芽遅れが生じている。また、高温・乾燥による被害を防止するためかん水量を増やしており、多かん水による軟弱徒長など苗質の低下がみられる。
 定植は概ね順調に進んでいる。主産地は畑かんが整備されており、利水状況も良好なことから特に支障は生じていない。

○イチゴ
 育苗中における炭そ病の発生が県域全体で多く、9月上旬からの定植における苗不足が予想される。

花 き
○キク
 輪ギク、スプレーギクともに35℃以上の極端な高温条件が続いたことにより、5日から7日程度の開花遅延がみられる。特に、お盆出荷を狙ったものが遅れて出荷されている。また、岩の白扇などの品種では、高温の影響により花の発達が抑制され、花が小さいといった品質低下がみられている。なお、8月下旬にも高温が続いているため、9月に奇形花の発生割合が心配される。

○バラ
 高温により樹勢が低下し、出荷が本格化する敬老の日(9月下旬)向けのものに影響がでないか(出荷遅れ)心配されている。しかし、ヒートポンプを導入し夜冷を実施している温室では、計画的な出荷が見込まれ、その効果が確認できると予想される。

○洋らん(シンビジウム、デンドロビウム等)
 愛知県・長野県山間部へ山上げしているが、山上げ地の気温が下がらず、花芽分化が遅れる可能性がある。また、オンシジウムなど9月中旬から山下げを行う場合は、十分な順化が必要である。

果 樹
○ハウスミカン
 収穫期前のハウスミカンでは、夜間の高温により果実の着色が停滞、遅延している。しかし、果肉の成熟、特に減酸は着色の遅れに関係なく進むため、収穫適期の判断には注意が必要である。

○ブドウ
  巨峰などの黒色品種では着果が多い園を中心に着色の遅れ、いわゆる「赤熟れ」の果実が目立っている。これは、8月に入り熱帯夜が続いたため、昼夜温格差が小さくなったことが影響している。また、ロザリオ等の青系品種の一部で昼間の高温による日焼けの発生が見られる。
 さらに、高温・乾燥により玉のびの抑制や肉質の低下が見られる。

○イチジク
 高温により玉のびが抑制され、平年よりも小玉傾向である。一部で高温障害とみられる果肉が白いまま異常成熟する果実がみられ、出荷物に混入しないよう注意が必要である。また、根域の浅い園やかん水が少ない園で、葉のしおれがみられる。

問合せ

愛知県 農業総合試験場

電話: 0561-62-0085

E-mail: nososi@pref.aichi.lg.jp