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平成27年度外部評価結果

ページID:0122776 掲載日:2024年3月27日更新 印刷ページ表示

平成27年度愛知県農業総合試験場外部評価会議の開催状況

1 日時

  平成27年11月30日(月曜日)  午後2時15分から午後5時まで

2 場所

  愛知県農業総合試験場 中央研究棟 第2会議室

3 評価委員(敬称略)

平成27年度愛知県農業総合試験場外部評価委員
所属・職名 氏名
名古屋大学大学院生命農学研究科 教授 山内 章(座長)
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会・相談員協会 消費生活アドバイザー 柴田 智子
東海漬物株式会社漬物機能研究所 所長 吉澤 一幸
中日新聞事業局社会事業部 部次長 邨瀬 隆治

4 評価内容

  「愛知県農林水産業の試験研究基本計画2015」に基づき実施した試験研究(研究課題)に関する評価について

5 報告

  会議座長の山内章氏から下記の評価結果票が提出されました。

 

平成27年度農業総合試験場外部評価結果票

評価結果の総括

 今回評価の対象となった研究は、本県の「試験研究基本計画2015」に沿って設定された目標と期間の中で、予算と人員は限られていたにもかかわらず、着実な成果を挙げてきたと言える。これらは栽培研究や育種研究であり、成果が出るまでに長い時間を要し、それゆえ長期的な戦略が重要である。以下に記述したいずれの評価においても、研究を継続することによってさらなる発展が期待されている。

 「総合的防除技術」では、とくに寄生蜂の利用という面で、学術的な見地からも極めて興味深い一方、防除技術として実用化するにはまだ多くの基礎研究の積み重ねが必要であり、また有機物施用による耕地土壌中の炭素貯留についての研究では、その性質上、長期にわたる追跡調査こそその成果の価値そのものになる。カーネーションの新品種開発では、萎凋細菌病抵抗性品種育成の完成が期待され、自然薯の研究では、さらに技術の完成度を上げるために継続的な栽培試験の実施が提言されている。

 これらの点について、「基本計画」において設定された研究期間と、各研究プロジェクトの研究期間や研究員の任期などの関係を柔軟かつ不断に見直し、次の基本計画に反映させていただきたい。

 また、他県も含んだ他機関との共同研究についても言及しておきたい。カーネーションと自然薯の研究においては、愛知県の特色をいかに出し、他の産地との差別化をどう図るかが研究の重要な目的となるのは言うまでもない。一方、「ミナミアオカメムシ等の総合的防除技術」や有機性資源循環利用に関する研究では、むしろ他機関との協働がその成否を握ると考えられるし、また、研究成果は普遍的に活用されるべき内容を含んでいる。種々の制約がある中で、そのような視点での研究成果の評価の基軸も加えつつ、新たな基本計画を発展させていただくことを期待したい。

 

 

(研究テーマ)ミナミアオカメムシ等の総合的防除技術の確立

研究テーマの設定について

 1950年以降、西日本の温暖な地域を中心に小麦、水稲、大豆に重大な被害をもたらせているカメムシは気候温暖化で北上している。愛知県にとどまらず、全国規模の被害の抑止のための総合防除技術の確立を目指した本研究は、食料の生産・供給の確保への貢献という点において、消費者の信頼にこたえる、とした重点目標に合致したテーマ設定として評価に値する。また、土着天敵として寄生蜂の活用という防除法の組み合わせについても、環境保全への配慮ならびに学問的な価値から高く評価できる。

研究の成果について

 「総合的防除技術の開発」において、明きょなどの除草、農薬使用、土着天敵利用など、いくつかの方法を組み合わせることによる、防除対策マニュアルの作成は、とくに意欲ある農家にとって非常に有益であると考えられる。一方、総合的防除技術における発生予察、除草による防除は効果的ではあるが、農家の協力が必要であり、防除技術の浸透には時間と努力を要すると考えられる。天敵による防除は、先述のように新しい取り組みとして評価に値するが、卵寄生蜂による防除効果の検証はこれからの課題であり、研究の継続が必要と判断する。県全域での寄生蜂の分布調査や土着天敵利用の効果測定がさらに発展することを期待したい。

 以上のように、明きょなどの除草、農薬使用、土着天敵利用を組み合わせた総合的な防除法をマニュアル化できるところまで進んでおり、研究目的は概ね達成できていると判断される。

今後の計画について

 現状の総合防除技術の中では、除草が最も効果的であるとの説明を受けたが、耕作放棄地を含め除草の取組みは現場の農家等の協力が不可欠と考えられ、普及の段階でどの程度、現場に受け入れられるのかが重要であろう。そこで本研究の成果が、現場でどう受け止められるのか、また、どの程度の効果があるのか、に関して継続的な調査を期待したい。

 マニュアルに基づいた防除対策の普及には他県との情報交換や連携が重要である。また、作物の種類や圃場によって、農家間にも利害が反する関係が生じる場合も想定される。農総試、県、農家、地域の連携体制を整えることは容易ではないが、全国に先駆けた愛知モデルの確立を強く望む。

 そして、総合防除技術の改善・確立と小麦、水稲、大豆の品種改良による生産性の向上で、安心・安全な農作物が供給されることを期待する。


総合判定:B (A~Dの4段階評価)


 

 

 

(研究テーマ)露地野菜地帯の有機性資源循環利用による総合的養分管理技術の開発

研究テーマの設定について

 農業生産由来の温室効果ガスの削減は地球的な課題であり、堆肥の使用量と土壌の炭素貯留量の関連を調べることは、地球温暖化対策を進める上で、高い価値を有する研究と言える。

研究の成果について

 LCAによる評価は容易ではないと想像されるが、家畜ふん堆肥の連用による耕地からのN2Oの発生量と土壌中炭素貯留量とを定量的に比較して、その効果を検証し、全工程を通じて環境への負荷を検討するという手法は消費者の合意を得やすく支持されると判断される。

 提供された資料では、試験に供された圃場の経年比較が提示されていなかったが、降水量など気象条件と土壌炭素流亡との関係については興味ある点である。

 また、化学肥料、牛ふん堆肥、豚ふん堆肥の三種の施肥区について、LCA評価で経年比較し、牛ふん堆肥の連用と化学肥料の減肥が効果的であるとの結果を得ているが、それらの間の差はわずかであり、さらに詳しい検討が必要であろう。

今後の計画について

 堆肥連用畑土壌中の炭素及び窒素含量は増加傾向を続けているという結果を得ているので、さらに継続的な長期の調査を期待したい。

 この効果を継続させるためには、東三河の営農活動に家畜ふん堆肥の連用を定着させる仕組み作りが必要であると考えられる。さらには、化学肥料施用の削減によるコスト削減についても実施モデルの構築が必要になろう。

 これらの調査に、堆肥による地下水汚染など、他の環境負荷についても調査の対象に加えて、より普遍的な研究への発展が期待される。


総合判定:B (A~Dの4段階評価)


 

 

 

(研究テーマ)カーネーションの新品種開発良日持ち性および萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーション品種の開発

研究テーマの設定について

 カーネーション生産量第2位の本県としては、民間種苗会社が取り扱っていない、良日持ち性、萎凋細菌病抵抗性を県が取り上げることは妥当であると考えられる。輸入切り花の増加で縮小している国内切り花生産の産業維持のために、これは重要な研究であり、農総試の果たす役割は大きい。高度な技術を用いた付加価値のある切り花として生産量の増加が見込める。

研究の成果または進捗状況について

 本研究によって開発された品種(農研機構花き研究所との共同開発品種)が、寒冷地作型の産地を中心に県外へも普及する見込みであることはたいへん喜ばしい。

 具体的には、平成22年度までに開発した5つの新品種から、日持ち向上、萎凋細菌病抵抗性品種の開発の結果、4品種を育成できたが萎凋細菌病抵抗品種の開発には成功しなかったのは残念である。今後の研究の継続と成果に期待する。一方、日持ち向上品種の愛農1号は、市場で人気のピンク系で早生性も併せ持ち、今後、日本のカーネーション栽培の柱となり得るのではないかと期待される。

今後の計画について

 輸入切り花との競争力の強化に加え、現在国内1位の他県と本県との間で、出荷量がほぼ等しいにもかかわらず産出額の差異が生じた要因についても明確な分析が必要であろう。

 また萎凋細菌病抵抗性品種育成に関わる研究の発展を期待する。その他、より高い収量率・秀品率を有する品種、花色、花弁の差別化品種など、国内生産の縮小に歯止めをかける品種、さらには攻めの農業の旗手となる品種の開発を期待したい。


総合判定:B (A~Dの4段階評価)


 

 

(研究テーマ)ジネンジョの省力的多収技術の開発 

研究テーマの設定について

 地域資源の特性を活かした中山間地域らしい作物である自然薯栽培の生産量の向上を目的とした本研究の課題設定は妥当である。

 この結果、収穫時間が短縮でき、高齢生産者の作業軽減にもつながる効果により、収益性が高まり、農業従事者の減少に歯止めをかけることが期待できる。

研究の成果または進捗状況について

 本技術は、雨樋利用の超密植栽培法の発展型であり、農家が利用しやすい形になっている。

 安価な波板を活用し栽培容器を効率的に使用することによって収量の増加と省力化を同時に達成することをめざして おり、実践しながら発展させる生産現場主体の研究で農家の要請に基づき成果を挙げている。具体的には、収穫時間の半減、単位面積あたり収量の倍増、断面の美しさなど多くのメリットがあり、研究成果は顕著である。

 波板のピッチや1枚あたりの波数、埋設密度などの影響の評価があるとなお良い。また、業務・加工向け生産のため、贈答用との収益性の比較も欲しい。

今後の計画について

 本研究では、クレバーパイプを利用した栽培技術向上を目指していて、波板に続き、作業効率を向上させる成果が期待できる。本研究の結果、密植することによって省力化と収量増加が達成できたが、地上部の蔓の成長が影響を受け、それによって自然薯のサイズが小さくなる傾向が認められた。事業者、消費者など関係者との情報交換や調査を精力的に進め、サイズや形状を含め、市場から支持される自然薯を追求する必要がある。

 密植による生産量の増加は収益性を損なう可能性があるので、その点についても注意を要する。さらに、自然薯の栽培を行っている他県との差別化も課題である。


総合判定:B (A~Dの4段階評価)


 

問合せ先

愛知県農業総合試験場
研究戦略部企画調整室
電話: 0561-41-8963(ダイヤルイン)
E-mail: nososi@pref.aichi.lg.jp